2015/07/06 のログ
■三千歳 泪 > そして私は早々にみつけてオペラグラスで観戦中。試着室の前から眺めていたりするのです。
「おーーーーーーっと手を伸ばしました桜井選手! サイドを攻めるか? 見てます見てますビビッドな青!」
「行くか? 行くのか行ったーーーーー!! …もどしましたーーーーーーーー!!」
「ここでピッチには店員のお姉さんが入ります! これは見るに見かねたのでしょうかー?」
「さて実況席にはもう一人お呼びしていますベテランバイトの佐々木さん! これまでの試合運びいかがでしょうか!!」
『そうですね~! なんと言っても見どころはお客さまの好みでしょう! 目がはなせませんよ~これは~~!!』
「ありがとうございます佐々木さん! パス回しから…上がっていきます上がっていきます!!」
「おぉーーーーっと桜井選手!! お姉さんのアシストでまずは一点先取!」
「これは大胆に背中が開くデザインだーーーーー!! 佐々木さん、どう見ますか?」
『ドットプリント系を選ばれましたね~!! さすが定番のオールマイティ! 守備範囲の広さが売りでしょう!!』
「この一手が吉と出るのか凶と出るのか、まだまだ目がはなせません!!」
そんなこんなで。
「ここで試合はアディショナルタイムに入ります! おかえり桜井選手!! ありがとう佐々木さん!」
ベテランバイトの佐々木さんとハイタッチして分かれる。ノリのいい人だったなー。
「じゃあそのふたつ、貸してくれる? あとのふたつはお楽しみだよ!」
■桜井 雄二 > 「………実況するくらいなら助けてくれ…!」
酒でも飲んでるのか?というくらい真っ赤な顔で水着を渡した。
いかんいかん、クールダウンクールダウン。
またひんやりとしたハンカチで顔を拭いた。
無表情に勉強している姿を見ているだけなら、彼のことを氷の男と評する者もいるだろう。
男子寮で彼の奇行を目撃したなら、彼のことを奇人変人の類と評する者もいるだろう。
そのどれもが彼である。
そのどれもが彼の真実なのだ。
とりあえず泪の胸は意識しないようにしよう。
そう誓った。不自然に見ることは紳士として恥ずべきことだ。
そう思いながら、三千歳泪が着替えるのを待つのだった。
■三千歳 泪 > インナーだけは先に選んでお買い上げ。衣擦れの音をたてないようにして衣装を変える。
なにしろ今はテスト期間中。時間がないもの。あんまりもったいぶってもいられない。
さっとカーテンをあけてお披露目する。ゴーグルは外して壁に。耳はこの際はっきり出しておこう。
「まずひとつめはこれ!! 二段構えの青系レイヤード!」
「私の肌は寒色系だからさー、白かタンカラーのホットパンツとあわせれば涼しい感じになるわけだよ」
グッとポーズをきめて☆を飛ばす。表情を引き締めたり、誘うような顔をしてみたり。もういいかな?
「撮影禁止だよ! いちおう試着だからさ。じゃ、次いってみよう!」
お次は…どっかで見たデザイン? ニュースで見るよね。スターズアンドストライプス。星条旗だよ!!
「ほんとに実在したんだねこれ!! なんかアメリカの人みたいになっちゃったみたいな気分だよ!」
「いいのかな桜井くん!? 私岩手県民なのに!!」
アメリカっぽいポーズ…わからないよ!!
■桜井 雄二 > 緊張する。喉が渇く。このカーテン一枚挟んだ向こうで三千歳泪が着替えているのだ。
意識するな? いや、無理だろうこれは。
実際はそんなに周りから見られているわけでもないだろうが、視線が痛く感じる。
そして最初の一着目。青系レイヤードを着た三千歳泪に頷く。
「いいと思う。よく似合っているし、涼しげでさっぱりとした印象だな」
「安定していて上品だ、これは悪くない」
相手のポーズにむずむずと写真を撮りたい欲求が起こる。
別に写真は趣味ではないのに。そういう魔力があるんだ、夏には。(言い訳)
その次は、星条旗ビキニ。
「……グラビアにしか存在しないと思っていたぞ、星条旗ビキニ」
「開放的で、明るくて、ノリがよさそうに見える」
「俺は好きだな、それ……まぁ岩手県民でも似合っていればジャスティスだろう」
赤くなる顔を右手で下半分を覆う。鼻の下が伸びていないだろうか?
だとしたらかっこ悪い通り越してただのスケベだ、俺は。
■三千歳 泪 > 「アメリカンの方が私っぽいかなー。言われてみればそんな気もしてきたよ!」
「これは着る人を選ぶよね! 一歩まちがえればギャグになるギリギリ感キライじゃないんだ」
こんなに肌を見せるのははじめてかもしれない。後ろを向けば背中からお尻まで全部開いてるしさ。
桜井くんが赤くなりすぎてて今にも身体じゅうから血を噴きそう。大丈夫かなー。倒れたりしないでよ?
こっちから撮る分には問題ないよね。タブレットを出してパシャリと一枚。
「お待ちかね!! 桜井くんのチョイスひとつめ。これは前よりも後ろが大胆なんだよ。見て見て?」
「背中の方は必要最低限って感じ! それに結構ローライズだよねぇ。そっかー、桜井くんはこういうのが好きかー!」
「でさでさ!! 私は水玉のパターンにあう人かな。そこんとこ率直に聞かせてくれる?」
試験期間中に倒れたら桜井くんの今後にかかわるよね。店員さんの目もあるし、ほどほどにポーズを作る。
「最後のこれは黒!! スレートグレイって言ったほうが近いかな。クールでマッシヴな王道の色」
「私の肌の感じからすると、水着の形がはっきり浮かんでみえるかも。桜井くん。ちょっと言っていい?」
「―――下着みたいだね!!!」
こういうのが好みかー。でも私一コ下の後輩ちゃんだしなー。桜井くんは黒が好き。こんど誰かに言ってみよう。
そして着替えて元どおり。着て帰りますってわけにもいかないでしょ?
「さて桜井くん。君の意見を聞こうッ! どれが一番よかったかな」
■桜井 雄二 > 「そうだな、それっぽいと思う。似合っている」
「十二分に刺激的なのでギャグにはならないと思うが…」
落ち着け、落ち着くんだ。落ち着こう。落ち着くべきだ。
クールだ。クールになるんだ。お前はクールに……
いや無理だろこれ。この状況で冷静になれたら聖人か星人だろ。
金星蟹くらい人間から離れたヤツ。
「あわわわわ………!!」
自分が選んだ水着を女性に着てもらうなんていう体験が初めてである。強烈。
「水玉……というと少し大人しすぎる感じもする…」
「選んでおいてなんだけど、別のにしよう」
嫌いじゃないけどな、と言っておく。
そして黒を着ている三千歳泪を見た時。
「う、おお……?」
くぐもった声が漏れた。
「下着みたいでしたね、すいません…」
何故か敬語になった。眼福とはこういうことを言うのではないだろうか。
桜井は思った。何故、世界から争いがなくならないのだろう、と。
そんな思考を振り払うように首を左右に振る。
「……星条旗ビキニでお願いします」
頭を深々と下げた。これが男の生き様だ。
■三千歳 泪 > 「えっ――――えぇぇぇぇ!? 星条旗だよ! ステイツだよ!?!!」
「いいの? ほんとにこれで泳いじゃうけど? いいのか! いいよ!! じゃあそうしよっかー」
出オチの一発ネタだと思ってたのに。ダークホースおそるべし。
「桜井くんはパツキンでダイナマイツな星条旗ビキニが好きなんだ。わかりやすいなー!」
「いいんだ。私のちょっと変わってるとこ、そういうのも含めて気に入ってくれてるってことだし」
「ありがと、桜井くん!! これで俄然楽しみになったねー」
「あとはビーサン適当に選んで勉強に戻ろう!! コピーとるのも忘れずにね!」
このあと図書館に戻ってもいいけど技術区の工房の方に誘ってみてもいいかもしれない。
理由? 徹夜できる設備があるからだよ!!
「でね、桜井くん。この後なんだけど―――」
■桜井 雄二 > 「に、似合うと思ったからであってだな…泪に……」
「やましい気持ちなんて……あるけど…」
「そうだ。泪の個性も含めて気に入っているんだ、だから…」
必死の言い訳、それを打ち切って溜息。
「ああ、こっちこそありがとう。海開きが楽しみになった」
「そうだった、コピーをとって勉強しないと…これを忘れちゃいけない」
夏前の大冒険はこうして終わった。
顔から火が出るくらい色々と恥ずかしい思いをしたけれど。
とにかく良い結果になったので、よし。
「この後………? 図書館の後に?」
8日に全てのテストが終わる。
それまでに、二人は勉強をしなくてはならない。
ただ、それだけだ。
ご案内:「図書館→商店街」から三千歳 泪さんが去りました。
ご案内:「図書館→商店街」から桜井 雄二さんが去りました。