2015/11/04 のログ
ご案内:「学園祭会場」に蓋盛 椎月さんが現れました。
■蓋盛 椎月 > 学生街、出店の立ち並ぶ区画。
「よーし、やるかぁ~!」
『たこ焼き』ののぼりが立つテントの内側で、
何故か普段の白衣ではなくエプロンを纏い、腕まくりする養護教諭がいた。
どうやら見回っている最中に自分もたこ焼きを焼いてみたくなってしまったらしい。
やめたほうがと本来のテントの主である学生たちが控えめに諫言するも
聞き入れる様子はなかった。
ピックを両手に構え意気軒昂だ。
■蓋盛 椎月 > どうも客という立場では落ち着けない性分らしい。
あー、生地はもっと多く注がないと、とか、
具を欲張り過ぎでは、とかなんとか口を挟まれながらたこ焼きを焼いていく。
その結果のほどは、というと、
「あーっ!」
派手にひっくり返すのに失敗してたこ焼きになれなかった何かが錬成された。
練習しているわけでもない素人なのだから当然と言える。
『だから言ったのに……』という無言の非難の視線が突き刺さったが涼しい顔だ。
■蓋盛 椎月 > 「え? こんなん客に出せない? そう……
わかってるわかってる、あたしが買って食べりゃいーんでしょ」
そう言うと小銭を置いて出店内折りたたみ椅子に座ると、
無残な姿になったたこ焼きもどきを皿にとって
ソースや鰹節を振って口に運びました。
通りがかった祭りの客がなんだあの店……という視線を向けた。
「うん、これはこれで……、……
もんじゃ焼き食べてるみたい……」
なんとも言えない表情で味わい嚥下していく。
それなりに楽しんではいるようだった。
ご案内:「学園祭会場」に茨森 譲莉さんが現れました。
■茨森 譲莉 > 「………ああ、お腹減った。」
時刻は昼時、アタシが朝食口に入れたバターを塗っただけの食パンは、
既に天使にすっかり食べられてしまった。バターを塗っただけのパンはとても美味しい。
早くしないと第七のラッパを鳴らすぞと主張するお腹を押さえながら、
アタシはゾンビのようにふらふらと学園祭の会場を歩き回った。
しかし、時間が良くない、昼時と言えばそれはもうどこもかしこも混みに混んでいて、
すぐにでも胃に食べ物を入れようとしているアタシにはなんとも厳しい限りだ。
「なんかちょっと人が少ない?」
たこやきという文字が翻る店には、何故か他の飲食店に比べて人の姿が少ない。
いや、あれは、遠巻きになんだあの店と見ている感じか、ええい、知った事か。
アタシは1枚のコインを握りしめてたこ焼きを買うと、出店内の折りたたみ椅子に腰かける。
ふぅ、と息をついて、視線が少し横に。
「この店、もんじゃ焼きも売ってるの?」
そのまま体を伝って、そのもんじゃ焼きっぽい何かを食べる人間の顔へ。
見覚えのある顔が目に入ったアタシは、慌てて少しだけ頭を下げた。
「―――あ、蓋盛先生、こんにちは。」
■蓋盛 椎月 > 先程まで完全に乗っ取られていた、たこ焼き店の主である男子学生が
(いや違うんですよ……この迷惑教師タンスに足の小指ぶつけてくれないかな?)
という表情を作っていた。
「うん、もんじゃ焼きとの華麗なるアルミラージ(*)、じゃなくてなんだっけ、
エルミタージュ? を目指したたこ焼きだったんだけど、
出来は60点ってところかな……」
などと店主のエプロンと同じものを着たままの蓋盛が、適当なことを並べる。
皿の上に広がっているのはかなりもんじゃ焼きに近いが、よく見るとたこがちゃんと入っている。
「やあ、ユズリちゃんじゃないか。こんにちは。
常世祭楽しんでる~?」
譲莉を向いて無駄に陽気に両手でピースを作った。
* マリアージュと言いたいらしい
■茨森 譲莉 > いやいや、それで60点はねぇよ。
アタシの見立てだと控えめに言って10点くらいだ。自分で食べてる分マシか。
「アルミラージって、ウサギに角が生えた化物でしたっけ。
角が生える、というよりむしろなりそこなった感じですけど。
エルミタージュは―――ちょっと前に繁華街のほうでそんな名前の店の看板を見ましたね。」
結局何を言いたいのかはさっぱりだ。
ドロドロに溶けたたこ焼きは、いつか映画で見たアレを思い出す。
別に腐ってはないけど、確かに人類には早すぎそうだ。
「こんにちは、楽しんでますよ。
蓋盛先生はこんな場所で何をしてるんですか?
養護教諭は学園祭中は学内を巡回して体調不良の生徒を治療してまわってるはずじゃ?」
■蓋盛 椎月 > 「休憩だよ休憩。
ずっと見回りっぱなし仕事しっぱなしじゃ倒れちゃうよ。
それでたこ焼き屋が目に留まったんだけどさ」
ちら、と店主のほうに目を向けた。
過去へ振り向かないことに決めた彼は手際よく生地をプレートに流し込んでは焼いて、
ちきちきと音を立てて両手のピックでひっくり返していた。
この日のために修練を重ねていたのだろうということが伺える。
「なんだか楽しそうに見えてきちゃってさ。
あたしもやってみたくなっちゃったんだよ。
快く道具を貸してもらえたのまではよかったけど、
あんまりうまくいかなかったねえ」
少し恥ずかしそうに笑いながら、わずかに事実と反する答えを口にした。
■茨森 譲莉 > 「ああ、休憩ですか、お疲れ様です。
……確かになんだか少し楽しそうですね。
でも、あれ簡単そうに見えて難しいんじゃないですか?
あの人も随分と練習しているみたいですし。」
たこ焼きをプスッと刺して一つ口に入れる。
もご、と口を動かした所で気がついた。
あっつ!!これ、出来立て!!!あっつ!!!み、水、口痛っ!!!
「―――あふッ!!!あふッ!!!」
アタシは残念ながら、口を押えて、
もう片手を何かを探るように動かす事しか出来ない。
……ああ、なんか涙出てきた。
■蓋盛 椎月 > 「はい、どーぞ」
迂闊だな~などと笑いながらも、自分の荷物から
ペットボトルのスポーツドリンクを差し出してやる。
「きみはこの間も食べ物で難儀していたよね……
ひょっとするとそういう星の元に生まれついたのかな」
たこ焼きはこうしてほぐして食べると早く冷めるよ、と得意気にアドバイス。
蓋盛の皿はほぐれ過ぎというレベルではなかったが……。
「そうそう、なかなか難しいんだよ。
おかげで食べ物屋さんへのリスペクト上がっちゃったわー。
ユズリちゃんも体験してみる? あの店主女の子からのお願いには弱いよ」
かなり勝手なことを言い出した。
■茨森 譲莉 > 差し出されたスポーツドリンクを一気に飲み干す。
たこ焼きとスポーツドリンクの味が混ざってなんとも言えない味になったが、
そんな事を気にしている場合ではない。ぬるまったたこ焼きは一気にお腹に滑り込んだ。
―――口がザラザラする。二個目は後で食べよう。
「ああ、すみません、思わず全部飲んじゃいました。
そんな星の元には生まれたくないですよ。
どうせならこう、もっと平凡な日常を平穏に過ごせる星に生まれたいです。」
食べ物に難儀する星人より、平凡星人に生まれたい。
思えば、確かになんだか不幸に巻き込まれてばかりだ。
………そういうのは主人公にでも任せておけばいいのに。
空になってしまったペットボトルを傍らに置く。
せめてゴミくらいは自分で捨てよう。
「女の子のお願いって……。」
蓋盛先生もその女の子のお願いとやらでやらせてもらったんだろうか。
女の子って言えるような歳じゃないだろ、というツッコミは言ったら失礼だろうか。
女の子はいつまでも女の子なのだ。多分。
「そうですね、折角ですから体験してみます。
……もうこの学校にいれる時間もそう長くないですからね。」