2015/11/28 のログ
ご案内:「落第街・廃ビル群付近」に蘆 迅鯨さんが現れました。
■蘆 迅鯨 > 過去に無計画な増築がなされたことで、あたかも城砦めいた様相を醸し出す違法建築の廃ビルが立ち並ぶ、落第街の一角。
静寂が支配するこの場所で、一つの戦いがあった。そして今――雌雄は決していた。
地に伏した襲撃者の背を踏みしめていたその足をゆっくりと離す、黒いフードの少女。
その露出した脇腹や太腿には、真新しい傷が深々と刻み込まれている。
彼女――蘆迅鯨<ルー・シュンジン>は現在、島に潜りこんだかつての同郷の少女たち――『星の子ら』<シュテルン・ライヒ>により狙われている。
その襲撃者の一人を、自らも負傷しながらどうにか返り討ちにし、必要な情報を粗方聞き出したところであった。
銀色に光る刃が襲撃者の喉元を切り裂くまでに、そう時間はかからなかった。
■蘆 迅鯨 > 「(面倒な事になる前にズラかるか)」
場所が場所であるとはいえ、死体の側に長居していても良い事は無い。
脇腹の傷を押さえつつ速やかにその場を離れんとし、廃ビルの陰へと隠れ座り込む。
もっとも、仮にたった今発してしまった心中の『声』を聞き取られていようものなら、面倒事は避けられそうにないのだが。
「……さて、と(どうしたもんかな、こいつを)」
迅鯨の心配事は襲撃者の死体ではなく、先の戦闘により負った傷の処理であった。
羽織っているコートで脇腹を圧迫しつつ、ひとり思案する。
■蘆 迅鯨 > 「(保健室で済むほどじゃねェだろうし……アッチの病院はもっと駄目だ)」
迅鯨は最低限の授業を受ける目的を除いて、教室棟方面へ向かうことを望まない。
また太腿の傷はともかく、脇腹の負傷は思ったより深そうだ。保健室で休んだ程度で治るものでもないだろう。
それに自らの異能の関係上、保健病院へ連絡を取り搬送してもらうという選択肢はもっと考えられない。
病室のベッドで眠りについている間に異能の暴走が起きれば、自身の怪我を治すどころではなくなる。
さらに、どちらも歩いて向かうには距離が遠すぎる。似たような手段をとるにせよ、落第街の中の適当な施設で何とかするしかない。
「(大人しく帰って……)っく……」
脇腹の傷の痛みと、出血。コートの黒い布地に混ざる血の赤は、徐々に広がっていた。
ご案内:「落第街・廃ビル群付近」にギルゲイオスさんが現れました。
■ギルゲイオス > ふーむ……
(廃ビル同士の合間にある、細い路地。
一人分の足音が、鳴り響いては闇に滲んで消えてゆく)
落第街での行動範囲を広げようとぶらついてはみたものの、どうやら妙な場所に迷い込んでしまったようであるな。
(文字通り、コンクリートジャングル、とでも言うのだろうか。
視界も狭いうえに、何やら所々と妙な気配を感じる気がする。
双眸を僅かに細めると、周囲をぐるりと見渡して)
こういう場所は、早めに去るべきなの、だろうがな。
さて、どうしたモノか……新しい血の匂い、面倒事の予感しかせぬのだよなぁ。
(ボヤきながらも、そのままと進んでゆく魔王様。
冷たい風を防ぐように、ジャケットの前を閉じると、死体やら、物陰の迅鯨が居る方角へと進んでいく)
■蘆 迅鯨 > 「…………まだだ」
物陰に居た迅鯨は、決して軽くは無い苦痛に表情を歪めつつも、
心の声ではなく自らの肉声で、他ならぬ自分自身へ言い聞かせるように呟きながら。
「俺ちゃんは……こんな中途半端な所で」
傷を押さえつつ、静かに立ち上がらんとする。
しゃがむような状態になりかけたところでまた傷が痛み、地に両の膝を付く。
「むざむざ、死ぬような、タマじゃあ……」
そこから右足、左足の順に体勢を立て直し、視線は足下から前方へと移す。
「……ねえんだ、よ」
ようやく両の脚で立ち、よろめきながらも一歩、また一歩と歩みを進めていく迅鯨。
ここまで来た道を戻らんとするその足取りは重い。
そうしてふらふらと歩いていけば、その視線の先には一人の人影が見える。
その姿をはっきりと判別する前に、迅鯨の視界は徐々に霞んでゆき、意思に反して四肢からは力が抜けてゆく。
「(……くそ……っ)」
やがて、黒フードの少女の体はおもむろに前方へと倒れ込む。
■ギルゲイオス > ……此方に向かってくる人の気配、一つであるかな。
さて、何の理由か足取りが悪いようであるが……敵でなければいいのだがな。
(そのまま数歩と進んでゆくうちに、影から現れてくるように、視界へと移る人の姿。
距離と明かりの関係で、誰とまですぐには判別がつかないところ、ではあるが。
すくなくとも、今すぐに此方へと襲い掛かるほど元気があるようには見えない。
ややと警戒しながらも、歩みの速度は変えぬまま、近づいていく、のだが)
――おや?
(唐突と頭に響いた、何か覚えるのある感覚に、一瞬と目を丸くとして)
これは確か、随分と前に……ぬっ?
(記憶をたどる間に、黒フードの姿が倒れて落ちる。
それに合わせて、歩は早く、駆けるように近づいていって)
うぉっと、これは、死体か。
ちょっと横を失礼するのであるよ。
(先に仕留められていた死体の傍らをすり抜けると、迅鯨の傍らへと。
滑り込むようにして、目の前へとしゃがむ)
シュンジン、であったかな。
と、確認している余裕は無さそうであるな。
(視線の先、脇腹の辺りに血の跡。
見たところ新しく、最近出来た傷が原因と見て取れる。
状況から考えるに、そう浅いモノ、という訳でもなさそうだ)
治療系は、苦手なのだがな。
といっても、長く時間は掛けられそうもないし……アレは余り使いたくないのだが。
贅沢も言ってられぬな。
(ため息一つ漏らせば、脇腹の側に移動すると、怪我の辺りに向けて片手を伸ばす)
汝が痛みは我が痛み、汝が傷は我が傷。
喰らい、取り込み、噛み砕き、我は傷付き、汝を癒さん。
(赤黒い煙が立ち込めると、コートの血に濡れた部分を包み込むように広がっていく)
■蘆 迅鯨 > 迅鯨の眼前に姿を現したのは、かつて忍び込んだ男子寮で出会った、魔王を名乗る青年。
「……よォ。久しぶり、だな……。へへ。カッコ悪ィとこ見せちまった」
その青年――ギルゲイオスの姿、そして声に気付けば、迅鯨もそのように返す。
言葉の調子こそ普段通りの軽いものだが、掠れるような声からは消耗していることが伝わるかもしれない。
そして彼が迅鯨の脇腹付近に手を伸ばし、何やら呪文らしきものを詠唱するのを聞くと、
やがて赤黒の煙がコートを血の染み込んだ箇所を覆うと同時に、脇腹の傷が少しずつ塞がっていくような感覚を抱く。
「傷が……?こりゃ一体……何なんだ?」
感謝の言葉を述べるより先に、これが何なのか、彼に問うてみる。
■ギルゲイオス > 色々と聞きたい事はあるが、質問は後か……サク・リファイズ
(間を置くように一呼吸の後、詠唱に応じて、術式を完成。
これから自分に起こることが分かっている為に、奥歯を噛みしめそれに耐える。
傷に纏わりついた赤黒い煙は、一瞬と発光。
黒と紅い煙の二つに分かれると、前者は迅鯨に残ったまま、後者は魔王の脇腹――怪我を負っているのとまったく同じ場所に纏わりついて)
っ゛!!! ったぁっ!!!
(苦悶の声を上げると共に、全く同じ場所、大きさ、深さの傷が此方に刻まれ。
代わりに、迅鯨にあった筈の傷が、綺麗さっぱりと消え失せる。
単純な表現を用いれば、傷の肩代わり、といった所か。
比較的短時間で相手を回復できるのは利点だが、術者が同じ傷を負うのが盛大な欠点と言える)
何かと聞かれれば、まぁ見た通り、であるよ。
(足元を崩すように地面に尻もちをつけば、血のにじみ始めた脇腹を片手で押さえた)
ま、我は人間と比べれば、丈夫なのでな。
コレぐらいで死にはせぬが……痛いモノは痛いのである。
■蘆 迅鯨 > 「……なるほどな」
迅鯨は立ち上がると、先程まで迅鯨が負っていた脇腹の傷と同じ箇所に生じたギルゲイオスの傷を見て、
彼が使用した術式の効果を察する。
「ありがとよ。おかげで助かった。少なくとも病院には行かなくてすんだからな」
ここで初めて感謝の言葉を述べた後、回復したことを改めてアピールするためか、
迅鯨はギルゲイオスに向かい、にか、と大きく微笑んだ後。
「それにしたって……お前、何でこんなトコに来てンだ?」
自身のことは棚に上げつつ、彼がこの場所を訪れた目的についても尋ねてみる。
■ギルゲイオス > (尻でずりずりと移動すると、ビルの壁に背中を預け。
一息と吐き出せば、見上げ、そして視線を相手へと戻す)
気にするのは、病院云々の話か。
まぁ、ダダ漏れテレパシーの関係、なのだろうがな。
少しは、我の心配をしてもバチは当たらぬと思うのだがな。
(くくっと、喉を小さな笑みで鳴らし。
怪我のある辺りを軽くと撫でる。
もう一つ欠点を挙げるなら、魔術的方法で治療できない事、だろうか。
自然治癒や医療技術であれば問題はない、異能については不明)
強いて言えば、特に用事はない。
落第街はまだ分からぬ事が多いのでな、行動範囲を広げる為にぶらついていたところ、迷い込んだと言う感じであるよ。
完全に偶然であるが故に、我に出会ったお主は随分と運が良かった、と言った所かな。
(肩を微かに竦めた後に、頭を横に倒す)
そういうお主は?
或いは、この死体と関係があるのかな?
(ちょいちょいと、立てた右手の親指で、仏さんを示した)
■蘆 迅鯨 > 「そうだな。すまねェ」
小さく笑みつつも、自らの肉体から転移させた傷を撫でているギルゲイオスの姿を見れば、
軽く俯いてそう伝えつつ。
「ふゥん。用事もねェのにこんな所をぶらつくたァ、案外趣味が合うかもしんねェな」
彼が今この落第街を訪れていた理由を聞き、表情は再び明るくなる。
しかし地に転がる元少女、現死体と迅鯨の関係について問われれば、
適当な言葉ではぐらかすわけにもいかなくなり。
「なァに、簡単な話だよ。ここに来たらあいつが襲ってきたモンだからな。聞き出せること粗方聞きだしてそのまま殺った。そンだけだ」
眼前の魔王に対し、今に至る事情の簡潔な説明を試みる。
――『星の子ら』<シュテルン・ライヒ>に関する情報は伏せた上で。
■ギルゲイオス > 冗談だ、そこまで気にする必要はない。
我が勝手にやったことだからな――とはいえ、痛いのも確かなのでな、ちょっとしたお返しと言った所か。
(口の端を軽くと上げれば、かおを横に振って。
双眸を閉じると、術式で痛覚を遮断。
怪我そのものに治療を施す訳ではないので、コレぐらいであれば許容範囲らしい)
余り近寄るべき場所ではないのは、分かっているのだがな。
とはいえ、表で手に入らないモノが出回っている事も多いのでな。
危険な場所を把握しておく、という意味でも、無意味ではないさ。
――何故そこで喜ばしげなのだ。
(一瞬とばかし、目を丸くとして。
壁に背中を預けるようにしたまま、足腰に力を込めると。
ゆっくりと、立ち上がる)
なるほど。
まぁ、あそこの死体は、どうも我の知り合いではないよう、であるしな。
場所も場所故に、これといって咎める気もせぬよ。
とはいえ、次にまた助けが現れるとも限らぬのでな、注意はしておくべき、であろうな。
(死体を一瞥した後に、興味を失ったように視線を戻した。
これといって特に、話へと深入りする心算もないようだ)
■蘆 迅鯨 > 「へへ。俺もこの辺りはよく通うからな。俺ちゃんには学生街よか、こっちの空気のが似合うぜ」
完全に普段通りの明るい笑顔を取り戻した迅鯨はそう語る。
迅鯨にとって落第街は娯楽目的だけでなく、
学生街や異邦人街では購入できない武器などの調達のためにも欠かせない場所だ。
「……ああ。……そう、だよな」
次にこのような状況になった時、同じように助けられるとは限らない。
その言葉にまた少々俯き加減になりつつ、そう返す。
心中の声を周囲に発してしまう異能の関係上、
迅鯨は戦闘行為においても不利な状況に置かれることが多い。
今回の襲撃者との戦いも、ぎりぎりの所といえる状況であった。
ギルゲイオスが偶然この場所を訪れることがなければ、
迅鯨は死の淵を彷徨うか、あるいは命を落としていたかもしれないのだ。
「それで、ギルはこれからどうするんだ?その……傷、とかよ……」
再び顔を上げると、彼にこれからの目的を問うてみる。
■ギルゲイオス > 平和な表よりも、危険が裏が好ましいというのも、中々に酔狂であるな。
特に、お主のダダ漏れテレパシーの性質上、このでの駆け引きには向かぬと思うのだがな。
ま、刺激が欲しいお年頃、というのも分かるのであるが。
(一応の釘は刺しておくが、楽しげに語る様子からして、早々簡単に止めれるものでもないのだろ。
ウィンク一つ返した後に、懐を漁ると紅い紙箱を取り出して。
そこから一本の紙巻、口の端に咥えた)
あやつがお主を意図的に狙ったのか、たまたまかは分からぬがな。
少なくとも、ほとぼりが冷めるまでは、余りこの辺には近づかぬ方がよいだろうな。
仲間が居る可能性も、否定できぬし。
(指先に小さな火種を灯すと、煙草の先端に近づけて。
煙をゆっくりと吸い込んだ後、空へと向かって吐き出した)
ん、ぁあ……中々高度な術式なのでな、魔力の消費も激しいし、怪我のせいで体力も失っている。
これ以上ブラつくのも、流石と危険であるしな。
といっても、街まで帰るのも少々と骨が折れる。
なるべく近場で、一晩過ごせる場所があれば、教えてもらえるとありがたいのだが。
口ぶりからして、落第街には詳しい様であるしな。
(言葉に合わせて、口の端に咥えた煙草が上下に揺れて。
自分はさっぱり分からぬとばかりに、肩を竦めた)
■蘆 迅鯨 > ギルゲイオスが紙巻きを咥えるのを視認すれば、
迅鯨もまたコートの内側から煙草の箱と安物のライターを取り出し、火を点ける。
「仲間ねェ。あいつもそんな事話してたな。気をつけることにしとくぜ」
今は死体となっている襲撃者を尋問し得た情報の中に、それは在った。
襲撃者の数人の仲間――『星の子ら』に属している少女たちの名前である。
「……まァ、どのみち俺ちゃんにはケリを付けなきゃならねェ相手がいるンだがな」
煙草を右手の指の間に挟むとその口から白い煙を吐き出し、呟く。
常世島で暗躍する『星の子ら』から『大将』と称される、
迅鯨の因縁の相手――河内丸・マリー・グラーザー。
彼女と決着を付けねばならぬ時も、いずれ訪れるであろう。
「一晩過ごせる場所、ね。そンならこっから西のほうに宿があったはずだぜ。つっても割とボロいけどな。道がわかんねェってなら俺もついてくぜ」
一夜を明かせそうな場所について尋ねられれば、迅鯨も以前泊まった経験のある安宿を勧め、念のために同行も提案する。
■ギルゲイオス > おや、煙草を吸うのか。
此方の世界では、まだ駄目と設定されている歳に見えるのだがな。
なんなら、我のも一本持っていくか?
(冗談めかした物言いと共に、肩が微かに上下へと揺れ。
蓋をあけたままにした紙箱を、差し出す)
特に、人の多い表の街であれば、ヘタに手出しも出来ぬだろうしな。
深夜に出回る、何てことデモしない限り、ひとまずは安全、だとは思うのだが。
(思案気に顎を撫でた後、紙巻を指で挟み。
ゆっくりとまた、紫煙を吐き出す)
ふぅむ……ま、焦り過ぎぬ事だな。
それなりに自衛の力は持っている様だが、決定的につよさを持っている――という風にも見えぬ。
ケリをつけるにしても、機をみて、勝てる状況を見定めるべき、だろうな。
(言葉を口にしながら、眉が僅かに動いた。
どうも口ぶりからして、あの死体も、全くの無関係という訳ではなさそうだ。
情報を吐かせた、なんてのもそれが恐らく理由なのだろう)
西の方か、……と言っても、道には詳しくなくてな。
迷う可能性もあるし、加えて言えば我が居ればお主が奴らの仲間に襲われる可能性も、多少は下がるだろう。
という訳で、道案内お願いするのである。
あ、一応ちゃんと歩けるのでな、その辺は気にせずとも良いぞ。
(伸びた灰を地面に落とせば、軽く数度と足踏みの仕草。
若干グラ食いているようにも見えるが、生まれたての小鹿という程ではない)
■蘆 迅鯨 > 「おう、もらうぜ」
先程まで吸っていた煙草の火を足で踏み消すと、
まったく悪びれる様子もなく差し出された紙箱から煙草を一本取り出し、火を点ける。
迅鯨は実際、煙草を吸うことが許されている年齢ではない。
だが落第街の環境であれば、煙草を入手することも難しくはないだろう。
ギルゲイオスのものと同じ紙巻き煙草を吸いながら、彼の言葉にゆっくりと耳を傾けた後。
「……だな。少なくとも、あいつは……俺が真っ向から戦って勝てる相手じゃねェ」
真剣な表情で言葉を紡いだ。
迅鯨の異能は、まずそのものが戦闘に向くものではない。
その上、ギルゲイオスは未だ知り得ていないだろう迅鯨の『隠し玉』も、
いざという時の決定打とするにはやや弱かった。
対して、襲撃者らの異能は多かれ少なかれ戦闘行為への適性を持っている。
状況判断は今後の戦いにおいても欠かせないものとなるであろう。
「んじゃ案内するぜ。あー無理しなくて良いからな。俺ちゃんもそのへんはギルに合わせとくつもりだからよ」
案内を頼まれれば、目的とする宿の方へ体を向けた後、
彼のほうへ顔を向け、にっこりとまた微笑んだ。