2016/03/01 のログ
ご案内:「スーパー銭湯「たそがれ」」に朝宮 小春さんが現れました。
ご案内:「スーパー銭湯「たそがれ」」に四季夢子さんが現れました。
朝宮 小春 > 「………ふんふん…♪」

単純な物だな、と自分でも思う。
少し疲れているのか、足を伸ばしてお風呂に入りたいな、という希望をただ叶えに来ただけなのだけれど、こうやって普段と違う場所に来ると気分も変わるというもので。

お買い物でも、お食事でも、新しい場所は楽しいものなのだ。

「さて、……それじゃあゆっくりと入るとしましょうか。」

……ただ、眼鏡を取ると目の前があまり良く見えなくなってしまうのが難点だ。
タオルを抱えて壁伝いに歩けども、少しおぼつかない足取りになるのは仕方ない。
だから、入り口に最も近いロッカーを選んだのだけれど。

そのまま、からり、と戸を開けば………もわん、とした独特の湿気に目を瞬かせて。
……おー、なんて声をあげながら周囲を見回し、足元を気にせずに一歩二歩と、前に進み出る。

その行先に、丁寧にも石鹸が置いてあるのはお約束である。

四季夢子 > 怒号が響いていた。
叫喚されてしかして共感の出来ない幾重もの声は、言葉の体裁を為さず音として私の耳朶を踏み拉く。
全くどうしてこんな事になってしまったのやらと、建物の管理人に後を任せて外へ出て、
夕闇の迫る空を見上げると箒星が真っ直ぐに光を曳いて行った。

三度目はありませんように、と三度願う前に光は消えて、そんなものかと鼻で笑った。

「いや本当……三度目の正直って奴を願いたいわこれ。」

何があったのかと云うと、端的に言えば"自宅のお風呂が使えなくなった。"であり、
詳らかにするならば、剣呑な異能を持った何処かの誰かが水道管を盛大に壊し、
付近の建物の水道が数日使えなくなった……と言った所で、
そんなこんなで私の足は割合新しく出来た「たそがれ」へと向いた。

「……あのー、大丈夫ですか?」

料金を支払い、商店街の銭湯とは比べるべくも無く真新しく広々とした脱衣所を経て、
いざゆかんと戸を開けた所で目に映るなんだか具合の悪そうな人。
だって壁づたいに蹌踉と歩いているのだもの。
面倒ごとは御免だけど、気にもなるから後ろから声をかけてみるわ?

朝宮 小春 > 背後から声をかけられれば、振り向いて微笑む。
気を遣う人もいてくれて、穏やかな気分になるというものだ。

「ありがとうございます……。 少しだけ目が悪くて。
でも、大丈夫ですよ。」

振り向いて微笑むのはどこかで見た顔。
いつも眼鏡をつけているから少し印象が違うけれども、穏やかな表情はいつものまま。

……相手は、気がついていないのか、丁寧な言葉のままだけれど。
浴室は広いし、声が反響するから少し違って聞こえるのも仕方ないか。

「……それにしても広いですね、新しく出来たんですかね?」

言いながら歩いて、くるりと周囲を見回し……。

「ぁ、ひゃ、んっ!?」

ずるん、べちゃんっ!!
その場で思い切り転んで、どすん、っとお尻から着地する。

腰を抑えて、ううぅうう、ぅう、と呻くのは、間違いなくいつもの生物教師。

四季夢子 > 「なんだ、朝宮先生かぁ……こんな所で遇うなんて、珍し……い、筈なんですけど、前にも同じような事あったような……。」

前にも自宅の御風呂が使えない時に、銭湯に赴いて朝宮先生と遭遇した事があったな、と黄色いアヒルが刺繍されたタオルを手にした指が頤に添う。

「ま、いっか。悪い事でも無いなら同じような事って歓迎されるべきだもの。そうそう此処って最近でき――」

あっけらと表情を崩し、タオルを首にぱしんとかけた所で、それが契機であるかのように面前で空転する朝宮先生。
鈍い音を立ててタイルに激突する御尻。揺れる建物……は、無いけれど、女性らしさの象徴は良く揺れていた。

つい、自分を見て溜息。

「そーいえば朝宮先生。前もなんだか滑っていたような……私ですよ私、夢子です。
この距離で判んないってどんだけ悪いんですか。」

大丈夫ですか?と一応手を差し伸べておこうっと。

朝宮 小春 > 「………ぅうう、いったぁ………」

呻きながら立ち上がる。 よく転ぶのは不注意の証拠。
基本的に何かに興味を持つと、他のことを忘れがちな証拠。

思い切りお尻を打ち付けてしまえば、タオルなんてすっかり忘れて。

「……あ、ら、夢子さん?
あは、あはは、恥ずかしいところを見られてしまったわね。
……忘れてちょうだい?」

ちょっと無理なお願いをしながら、差し出された手を掴んで立ち上がる。
いたた、とお尻を抑えてぺろ、と舌を出し。

「………最近出来たばかりなのね。
………の割に人がいないのは、多分、オープンセールが終わったばかりってところかしら。」

話をころんだことからそらそうとしつつも、手は離さない。
転んだら怖いし。

四季夢子 > 「あさみやせんせいなら だいじょうぶですよー」

痛がる先生に励ましの言葉。
何処と無く抑揚もへったくれもない語調な事と、先生の体型の因果関係は調査中である。

「ともあれ、別に転ぶくらい恥ずかしくも無いんじゃない?
裸ですっ転ぶって事を加味すれば別かもしれませんけど、ここ女湯ですし。」

男湯で裸で転ぶ自体先ず有り得ないのだけど、それは一先ずとして私は手を引き……引けなかった。

「………ええ、最近出来たとかなんとか。こーゆーのって大体週末にかけて混むものでしょうし
案外昼間とかのが繁盛するんじゃないかしら……所で先生は今日はどうしたんです?」

ぐ、と手を再度引くけど存外力強く握られていて叶わない。
お風呂でも壊れたんですか?等々話題を転がしながら、それならと掛け湯の方まで引っ張っていこう。ぐいぐい。

朝宮 小春 > 「………夢子さん?」

流石に抑揚のない声には気がついた。もしかしてあれか、ちょっと尊敬を失ってしまったのか。
ただ、次の言葉にすぐに元気を取り戻す。

「そうよね、………まあ、それでも見られるのは恥ずかしいわよ。
夢子さんに見られるのは、その、二度目だし。
普段はこんなに転ぶようなことはないのよ? 本当よ?」

相手の言葉に、ちょっとだけ必死に言い訳をしながら、ぎゅ、と手を握る。
掛け湯に引っ張ってもらえれば、連れて行ってもらうとしよう。

正直、メガネをつけていないと足元もおぼつかないのか、どことなく不安げで。

「………ごめんなさいね、最初から誘えばよかったかな。」

なんて、苦笑交じりに。 お湯をさあ、っと身体にかければ、艶っぽい肢体が濡れ。

四季夢子 > 「それを言ったら私だって朝宮先生に見られるの二度目ですけど……転んだ事は無いですけどね。」

羨むような体躯を持って何を言うのか。と羨まれる事のない体躯の私は言外に咎める様子。
掛け湯まで引っ張っていって、湯を自分にばっしゃーんとかけると、少し熱くてうぉうと声が漏れた。

「謝る事でもないですってば。でもそんなに目が悪いならコンタクトレンズとかにしないんですか?」

その合間、面と向かって会話をしていても朝宮先生の目線は何処か定まらないように視得て、
流石の私も案ずるとゆーもので、ついついとからかうように指を3本立てて目の前で揺らしてみたり。

「何本に見えます――なんて。酔っ払い扱いまで行くとやりすぎかしら。」

朝宮 小春 > 「…………ま、まあ、転ぶことも、あるじゃない?
 特に今回は石鹸が落ちていたのが原因なわけだし。」

恥ずかしそうに指をつんつん、とつつきあわせてぼそぼそと呟き。
体格については何も気にすることもない。
……やっぱり、ちゃんと口にしないと伝わらないらしい。

「うーん………それも考えたのだけれど。
私って、外さずに寝てしまいそうじゃない?

こういうのって、外し忘れると目に悪いって聞くし………。」

自分の特徴をしっかり理解しながら、目の前の指をゆっくり数えて。

「……ろっぽん?」

とってもダメな人だった。

四季夢子 > 「石鹸に気付かないのなんて朝宮先生くらいですってば……。」

ついでに3本が6本に見えるのも朝宮先生くらいだと思った。
なんだか叱られた幼児みたいな所作でしょげる朝宮先生に、大仰に項垂れてみせる私が居た。

「それなら目に良い食べ物でも日常的に食べるとか。ええと、ブルーベリー?」

ともあれこうしていても始まらないのだから、私は先生の手を取って御風呂へと促す。
スーパー銭湯と呼ばれるものは、スーパーな銭湯なのだからスーパーじゃない銭湯とは比べるべくも無い色々が有る。
こうして入口から広々とした浴室全体を見遣ると、湯気の合間に様々な御風呂が在る事だって知れた。
幾つかはよくありそうなもので、幾つかはちょっと入るのに勇気が入るようなもの。

                      犠牲者
――そして私の面前には、私の誘導を必要とする誰かさんが居る。
ささやかな悪戯心なんてのも、若者の特権よね。

「お風呂上りにそういうのを摂るのもいいかも?
というわけで、はい御風呂に到着したわ?」

楕円形の浴槽に満ちる薄紫色の湯。
傍の看板には「体の芯まで暖まる」と謳われたジェル湯の文字。
きっと餡かけ蕎麦とかが中々冷めない事に着想を得たのかもしれないけれど、
率先して入る勇気は無いものだから、先に生きると書いて先生の朝宮先生に任せてしまうの。
後ろに回って背中、押してあげようっと。

朝宮 小春 > 「そ、そんなことは無いわ?
ちょっと視力が悪いだけだから、仕方ないじゃない。」

注意力不足、もあることは自分でも気がついているが、口にはしないことにする。
ううう、気をつけないと、なんて自分の中で拳を握るけれど。

「………そうねえ、そういうものを食べようとはしているんだけれど、中々効果が出ないのよね。」

それ以上に液晶画面や文書を読んでいることが多いのだから仕方ないのだけれど。
それでも、本人的には前よりは気を遣っているつもり。

誘導されながらお風呂の前にたどり着けば、ありがとう、なんて言いながらお湯をそっと覗き込んで。
これは何の湯かしら、なんて調べようとするのだけれど……軽く背中を押されて、そのまま。

どぷんっ、と中に転がり込んでしまう。
先に生きるとは書くけれど、生き急ぐわけではないのよ。
お湯とも違うぬるりとした感覚に、じたばたと暴れて、……ぶはぁ、っと顔を出す教師。
はふ、はふ、っと必死に呼吸をしながら、その髪の毛や頬にぬるりとした薄紫のジェルが流れ落ち、胸の谷間に落ちていった。

「……こ、これ、何なのかしら……?」

明らかに混乱しながら、ぬるぬるとする顔をゴシゴシ擦る。

四季夢子 > 湯気を立ち上がらせながらぼごぼごと泡立つ水面は、宛ら坊主地獄か何かのように映る。
色が赤色だったらもっと雰囲気が出たに違いないのだけど、入ろうと思う人は減るに違いなかった。

「あ"っ」

いけない、与太事思考を抱えていたらつい力が入って朝宮先生は頭からお湯の中に突っ込んでいた。
粘る湯なんてものに頭から突っ込んだら窒息してしまうのでは、と慌てて引き上げようとするのだけど、
存外粘り気は其処まででも無かったらしい事に先ずは安堵の溜息。

「……えっと、体がよく温まるようにお湯が粘るみたいです。湯加減は如何ですか?」

素肌にぬめりを帯びた朝宮先生の様子は何処か真新しい鞣革を想起させ、
綺麗だなと思いはするけど己は浴槽に入る事は無く、縁に座り込んで猫みたいに笑って加減を問うの。

朝宮 小春 > ごほ、ごほっ、とちょっとだけ咳き込んで、………ぬるつくお湯にうぅう、と唸りながら手で身体を撫でる。
艶々と光る肌は、やっていることや仕草とは裏腹に、匂い立つような大人の気配。

「………温まるは温まると思うけれど、別に顔からはいらなくても良かったかしら。
……背中を押すんじゃないの。」

手を伸ばして、こつん、とその頭にチョップを一つ。
全くもう、と言いながら、そんなに怒らない辺りがこの人らしさか。

「………………でも、ちょっとだけ、やっぱり奇妙な感じ。
ヌルヌルするから、少し違和感というか………。 夢子さんは入らないの?」

お湯を掬って顔を洗う度に、白い肌を紫色のジェルが流れ落ちて。

その度に微妙な表情を見せる。 やっぱり微妙らしい。

四季夢子 > 「うーん……なんか凄い敗北感を感じる……。」

べちょ、と頭に手刀がそぐわない音を立てるのを聴きながらの渋い顔。
対する朝宮先生は微妙そうな顔だったから、この湯がどういう物かは良く知れた。

「うーん案外こういうのが心地よい異邦人さんとか居るのかも……え、私?
私は、ほら……これはいいかなあって……あ、次、次いきませんか!?」

微妙なら次に行きましょう!と口角に泡飛ばさんばかりに声を上げて、
直ぐ隣にある専用の掛け湯を指差し促すっ。
必要ならば手も引くつもりでさあさあと手を差し出して話題と場を転がそうと試みるわ!

朝宮 小春 > 「………ふっふっふ。」

夢子さんの心がよくわかる。 伊達に教師を続けているわけではない。
この湯がちょっと新しいものだから、気になっていたに違いないのだ。
だけど最初は怖いものだから、先に入って欲しかった。
……でも、恥ずかしいからそうは言えなかった。 そうに違いない。

「……まあまあ、遠慮はしないで?」

そっとその手を握れば、くい、っと引っ張って中に引きずり込んであげましょう。
ヌルヌルはするけれど、それだけの話。 ちゃんと専用のかけ湯があるなら安心だから。

引っ張った上で、今度は顔から入らないように、身体でぎゅっと受け止めてあげることにしましょう。
ぱふ、っというより、にゅるん、っとなってしまうことだけは仕方ないけれど。

四季夢子 > 何故かしら
脳裏に浮かぶ
泥田坊

「え"、ちょ朝宮先――」

不敵に笑い手を伸ばした朝宮先生を見て、何故か酷くどうでも良いものが心裡に浮かんだ。
田んぼから手を突き出している姿が印象的な妖怪で、昔何かの本で読んだ気が――あ、これ走馬灯?

気付いた時にはもう遅く力強く捕まれた手を引こうとするも、ぬめりの助け空しくしゃがみ込む姿勢も禍して、
私は顔から坊主地獄に――……。

「むごっ」

……とは行かず、柔らかく暖かく、それでいてぬめる何かに受け止められてくぐもる声を上げた。
呼吸は苦しくて、じたばたとして口を開け、ともすれば少し噛み付いてしまったかも。

「……ぅうわっ。……死ぬかと思った……もー……朝宮先生って案外やんちゃするのね。」

抱すくめられたまま顔を上げ、間近でそれはもう地獄にいそうな怨霊にも負けないくらいの、
精一杯の怨ずるような眼差しと云う奴を向けるのだ。
顔から落ちた訳じゃあ無いから、船幽霊のような御面相は避けれただけまだましだけれども。

朝宮 小春 > 「恥ずかしがらなくてもいいのに。 私は一緒に入るのも気にならなぁっ…!?」

胸にかぶりと噛みつかれて、びっくん、っと体が跳ねる。
ちょ、っと、ちょっと。 胸から相手の顔を引き離しながら、落ち着かせるように頭をなでて。

「あら、こんなお湯に頭から突っ込んでおいて、そんなことを言うの?
……それに、恥ずかしがらなくてもいいじゃない。
本当は気になっていたんでしょう。 言ってくれれば一緒に入るのに。」

あ、とっても都合よく解釈をしているらしい。
にこにこという笑顔で、その眼差しにも気がついていない。
そういえば目がとっても悪かった。


よーしよし、と頭を撫でながら、温かいお湯の中で向い合う。
視力が悪いせいか、距離は大分近いのだけれど、気になっていないようだ。
むしろ、表情を確かめようとすると、顔が更に近づいてくるのはどうにもならない。

四季夢子 > 「別に恥ずかしくは無いんですけど……あと昔から良く言うじゃないですか。それはそれ、これはこれ。って」

多分古人は言って無い言葉をさも当然とばかりに言い繕う合間に、
頭を撫でられて段々と船幽霊の仲間にされて行き、私の頬は風船のように膨らむ一方だ。
鼻先が触れ合いそうになるまでに顔が近付いたなら、これ幸いと額をごつんとぶつけて距離を取ってやるんだから。

「……ま、でも確かに暖かい……のはお湯だから当然として、ちょっと奇妙な感じですね、これ。
すっごいぬるぬるしますし……。」

浴槽自体もぬるぬるとし、下手に立ち上がろうものなら転倒する事は必定って奴。
動くのも半分固体のようなものだから抵抗があるし、正直微妙と言わざるを得なかった。

「ご意見カードみたいなのあったら一寸文句を連ねたいかも……次にいきませんか?」

行き場の無いやるせなさは私の指先に集って、指先は朝宮先生の脇腹をつつく。
当然、ぬるぬるした。

朝宮 小春 > あう、っと声をあげて、こつん、とぶつけられた額を押さえる。痛い。

「そうよねえ、……奇妙な感じだけれど、そういう意味では家にいたら絶対に感じない感覚だから、お得………なのかしらねぇ。」

苦笑交じりに笑いながら、ポジティブな意見を述べる。
これだけ前向きなのだから、……怒らないのだろう。

「こういうお風呂は、きっと動きまわったりせずに、じいっとしてサウナ代わりに使うんじゃないかしら。
………ああいや、もちろん出るけれどもね。」

次に行こう、なんて言われれば立ち上がろうとするんだけれど。

「んぅっ!? ………ちょ、っと。 ぬるぬるしてなおさら擽ったいのだから、やめなさいね。
立ち上がってる最中だったら、本当、転んでたのだから。」

めっ、と夢子さんに指導をしつつ立ち上がり。
身体を紫色の液体がゆっくりと流れ落ちる。 基本的に見た目だけはとっても淫蕩であったけれど。
当の本人はのんびりと桶を手探りで探していた。

専用の掛け湯を身体にかければ、さあ、次はどこに行きましょうか。なんてのんびり声をかけて手を握る。

一人でなんで来ていたのだろう。 それは彼女にも分からない。

四季夢子 > 「思いつきで作ってみよう!的な悪ノリを感じるの私だけかしら……。」

サウナ的に使うならサウナに入れば良い話じゃなかろうかと、苦笑に苦笑を返して反じて立ち上がる。
立ち上がった朝宮先生の姿は……文字通り艶めかしく視得て、また脇腹でもつついてやろうかと思うのだけど、
機先を制されてしまったものだから大人しく上がることにした。

「立ち上がる最中にはしませんよーだ。……それにしても朝宮先生って、その、立派ですけど、
何か秘訣とかあったりするんですか?」

幾度と掛け湯を用いてぬめりを落とし、体型話を挟みもし、濡れ髪を簡潔にアップに纏めて手を繋ぐ。
傍から観れば、私が年甲斐も無く保護者に甘えている風に見えるのでしょうけど、
生憎と他の人は居ないのだから好都合と言えたかも。

「えっと……無難なのにしましょ。あ、これとかどうかしら?電気風呂ですって。」

ぺたんぺたんと足取り二つの行く先は、一見して普通の四角い浴槽で、
傍には電気風呂を記された看板が。……ただ、何故か奥の壁には古式ゆかしい操作レバーが目を惹いて。

朝宮 小春 > 「……遊び心が無くなるのはダメなんだけれど、ちょっとね。」

苦笑交じりに、少しだけ同意する。トンデモ風呂に入る担当は私では無い気がする。
ああ、そういえばチャレンジ企画とかあったし、そっちでやればいいんじゃなかろうか。
私はそれを進行して………、少しだけ思考が空に飛んで、すぐに戻る。

「……? ………そんなことは無いわ。 まだまだ人間としても成長途中だし、日々勉強することばかり………」

立派の言葉の意味をしっかり勘違いして謙遜する教師。
ずっとこの調子なのだろう。 周りに人がいないために、声をひそめることもなく、普通に話して。

「………身体つき? ……ぁ、あ、ええと、そうね。
特に何もしていないのだけれど、………………家系、なのかしら、ねぇ……?」

とっても恥ずかしそうな、それでいてとっても困った顔でぼそぼそと呟く。
あえて言われると恥ずかしいのか、手でそっと隠して。 隠す方が逆に恥ずかしくなるのだけれど。

「……ああ、ええ、見た目普通だし、入ってみましょうか。」

レバーなんて目に入るわけもなく。 目に入ってもぼやけてしまって何なのか分かるわけもなく。
先にざぷんと入る。 ……お湯も普通だし、普通のお風呂だった。

「……? 普通のお風呂にしか思えないけれど、それでもいい気持ちかも。」

四季夢子 > 「あ、いえ……立派っていうのは身体つき。ええ、そう、そっち。そっちの方。
朝宮先生が立派じゃないって訳じゃないんだけど、胸とか御尻とか一寸凄いなあって。」

頬を朱に染める朝宮先生の事をついじろじろと視てしまうのは、多分以前の私からしたら気安に過ぎる。
ただ手で隠すのにも入らないような隠し方をされると逆になんだか、此方まで恥ずかしくなってしまって目を逸らした。

序に遊び心の塊としか思えないレバーからも目を逸らしたいけれど、朝宮先生が率先して入ってしまうと嫌が応にも気にかかる。
とりあえず、私も後を追ってお風呂に身を沈めるのだけど変哲も無い普通の御風呂としか感じなかった。

「……えーと、多分。なんだけど……このレバーを動かすと電気がかかるんじゃないかなあって……。」

先生の肩を叩いてレバーを示す。良く見ると無・弱・中・強。の4段階式なのが判ったけれど、
朝宮先生じゃあ余程近付かないと判らないかも。

朝宮 小春 > じろじろと見られていることは、なんとなく分かったものだから。
恥ずかしくなってぎゅ、っと腕を強く抱くと、そこからこぼれそうになる。
お互いに恥ずかしくなってしまう空気を打破するかのように、お風呂の中にざぶざぶと入りこむのだけれど。

「……普通のお風呂よねぇ?
………え? ……ああ、レバーで調整できるのね。
ええと、……動かせばいいのね?」

そんなもの読むはずも無ければ、あまり深く考えることもしない。

がちゃちゃちゃんっ! と、なんか一気に引き下ろした音がして。

「ひきゃんっ!?」

一定の間隔で、ぱちんっ、ぱちんっ、と音が鳴って。
貼り付けるタイプのマッサージ機のような刺激が全身に襲いかかる。

びくんっ、と体が跳ねてシニヨンが解け、髪がはらりと流れ落ちて。
当然のように夢子も巻き込んでいく。

四季夢子 > 「多分入る人の好みに応じて調節できるようにしてあるんだとおもももももも!?」

肩を竦めて鼻白むように笑いかけて言葉が弾けた。
湯に浸かる部分全てにかかる刺激はそれに足るもので、私の体はロボットダンスのように奇妙に動く。

「だああっ!」

動いて、懸命に動いてレバーをがちゃん!と元の位置へ。
すると電気はぴたりと止まって御風呂は穏やかな凪のようになる。
私は穏やかならざりき息をぜえぜえと上げて朝宮先生へと向き直った。

「……朝宮先生……説明書とか読まないタイプ?」

未だ言葉の根が合わないのは電撃の残滓に他ならない。
危うく一寸、漏らしてしまいかねない刺激だったんですもの。

朝宮 小春 > 「んひっ、ちょ、これ、あぶなっ……!」

びり、びり、びりっ、と断続的に来るお風呂。
絶対電気風呂って本当はこんなものではないと思う。悪乗りで作ったようにしか見えないそれを夢子さんが止めれば、ざぷん、っとその場に崩れ落ちるように一度沈んで。

「……………ごめんなさい」

顔を少しだけ持ち上げて、反省の弁を述べつつ両手を合わせる。
だって見えなかったのだもの、とは流石に言わない。

「……ちょ、っといろいろ、面白い物がありすぎて疲れてしまうわね。
……さ、サウナでもいかない? ここのサウナはハーブの香りがするそうだから。
ゆっくり休憩がてら、ね?」

話を強引に、………これ以上叱責されると教師としてのリスペクトを失いかねない。
強引に次の場所に話題を持って行きながら、手を差し伸べる。

………

連れてって。

四季夢子 > 「……この御風呂は色んな意味で危ないわ……その、デリケートな所に結構直に来るというか……。」

太腿を擦り合わせるようにしながら、流石に言葉が澱んで目線が泳ぐ。
そんなものだから、朝宮先生の提案にはあっさりと飛び付くのでした。

「あ、それ素敵ね。うん、そうしましょう、普通が一番よね……。」

ざばりと立ち上がってさっさと浴槽から出て、それから振り向くと手を差し出す先生の姿。

「………。」

浴槽に入り、朝宮先生の手を握って、引率するように再度浴槽から出る私の姿。
またもやぺたりぺたりと湯気の中を歩き、戸にハーブサウナと記された所へと至る。

「……まあ、よもやそっち系のハーブじゃないでしょうし。」

戸を開けると鼻にするりと抜ける爽やかな香りを感じた。
多分ミント系か何かだろうと、普通な事に気を良くして鼻を鳴らし
壁と一体型の木製の長椅子にアヒル柄のタオルを敷いて座り込むのでした。

「なんていうか……お客が少ない理由が判ったようなそうでもないような。」

朝宮 小春 > 「……そうね、なんとなく、わかるかも。」

身体を抑えながら、はー、っと溜息をついて。
そっと手を握ってもらえば、サウナまで丁寧に連れて行ってもらう。
ありがとうね、なんて、小さく呟きながら部屋にたどり着けば、夢子の言葉に少しだけ苦笑をして。

「……そうねえ、ちょっと挑戦的に過ぎたかも。
もしかしたら、普通の大浴場に人が集まってしまっているのかもね?」

だから誰もいなかったんじゃないかしら、なんて予想をしながら、こちらも白いタオルを敷いて座り込む。
むわりとした熱気の中、汗をふう、っと拭って静かに隣。
視線を送れば、確かに歳相応……な身体つきの夢子。

うん、この島だといろんな人が多いから、一概に比較はできないけれども。

「…気にしてるの?」

つんつん、とこっちも脇腹をつついてやりながら、お話。
こんな場所でしかできないトークだけれども。

四季夢子 > 「好奇心は猫を殺す。なぁんて言葉があるけど、いっそ一思いに殺せーってくらいの感じかも。」

行儀悪く足をぶらぶらと揺らしながら言葉は揺れて、じんわりと静かに暖まる好ましい感覚に追従するように汗が流れた。

「はわっ……え、ちょ……何、どうしたの先生。」

不意に脇をつつかれて、言外に色々含んだ言葉を向けられると頓狂に声が弾んで、青い瞳が朝宮先生に瞬いて。
彼女の目線は私の胸に向かっていると知ると、自分で己の胸を摘んでみた。

「むー……そりゃあ、私だって御年頃ですもの。気にもするし、やっぱりいいなあって。
身長だってもうちょっと欲しいし、お尻の肉だってもうちょっとあるほうがいいでしょうし……。
牛乳とか毎日飲んでるんだけどなぁ……。」

摘んでみて、がっくり項垂れた。宛らボクシングの試合終盤に、ぎりぎりコーナーに帰って来た選手みたいな感じ。

朝宮 小春 > ………聞いては見たものの、良いアドバイスは思いつかない。
元々、そういう感覚とは縁の遠い世界で生きてきたのだから、当然といえば当然だけれど。

「………そればかりは、なかなか自分の力だけではどうにもならないことよね。
健康的な生活をして、今後の成長を待っていくのが一番だと思うけれど。

………でも、そうねぇ。」

少しだけ隣によれば、もう一度、ぽん、と頭をなでてやって。

「……全然、話として繋がってはいないけれど。
私は可愛いと思うけどね。

こんな妹がいたらよかったなぁ、っていうくらい。」

隣で微笑みかける。その言葉はゆったりと、少し今までよりもスローに。
本音だもの、仕方ない。

四季夢子 > 「そーゆー魔法とか何か凄く都合の良さそうな技術とか、ありそうで無いのよね……。
成長期、まだ終わってない事を祈っておこうかな……鰯の頭もなんとかって言うし。」

湿度が十分にある筈のサウナ内に響く無味乾燥な笑い。
ただ、そのまま項垂れていると頭を撫でられたものだから、
その脈絡の薄さにおや?と顔を上げる。

「あー先生ったらそーゆー事言う。そういうの持ってる側の傲慢って取られても知らないんだから。
大体、姉より大きい妹だって居る筈だし……ほんともう、引っ張ってちぎってやろうかしら。」

私には姉も妹も、兄も弟も居ない。
一人っ子だ。
それだけに、お父さんもお母さんも私の事を随分と気にかけて、可愛がってくれていたのを良く憶えている。
憶えてしまっているから、不機嫌そうにしかめっ面になって朝宮先生が隣に寄るのを幸いにと、
無遠慮に胸を掴んで引っ張る事で感情を隠そうとした。

朝宮 小春 > 「ありそうなんだけれどもね……まあ、そうね。まだまだこれから。」

ぽんぽん、と慰めるようにする。こっちの言葉はちょっと軽かった。

「……だって、本当にそう思うもの。
持っているとか持っていないじゃなくて、ちゃあんとお互い違うところがあって、
……それをお互いがいいな、と思っているなら、いいなあって……

……んひぅ…っ!?」

ぎゅ、っと胸を掴んで引っ張られて、流石にちょっと痛かった。
ぽんぽん、とその手首を叩いてギブアップを示す。

……ふにゅん、と指が完全にめり込むくらいには柔らかいだろうけれど。

「………直接的に虐めると、本当に痛いんだから。」

少しだけ涙目だ。そっと手で隠して。

四季夢子 > 「ふーんだ。朝宮先生のそういう優しい所。いいなって思うし人気があるのも知っているけど、
私のこと無理に褒めなくったっていいんだから。」

ギブアップには素直に応じて手を離してあげるけど、両の手はまるで威嚇する犬みたいにわきわきと宙を掴む動き。
痛いのだってきちんと承知の上でやってますよーだ。なんて努めて可愛らしくあっかんべえって舌を見せもしちゃおう。

「……でも、そうね。朝宮先生みたいなお姉さんが居たら良かったなって、思わないと言えば嘘にもなるかも。
先生には妹さんとかいたの?」

話題の方向を先生の事に向け、これまた努めてわざとらしく小首の一つも傾いでみせた。

朝宮 小春 > 「………そうねぇ、私には妹がいるのだけれど。」

素直に信じてもらえそうにはなかったので、ちょっとだけ苦笑をしつつ。
……胸はがっちりガードするけどね。

「…私とおんなじ顔でねぇ。 それでいて本当に科学者になっちゃうの。
ほら、変わり者が多いって言うじゃない。 それをそのまま形にしたよう。

………ただ、ちょっとだけ困ったことに。
努力をしても結果が出ない場合は、努力をしていないのと同じって決めちゃうところがあってね。
最後に会った時まで、他人扱いされちゃったのよねぇ。」

苦笑交じりに肩を竦めて、不甲斐ない姉だから、と溜息一つ。

「……じゃあ、妹ね。 こうやって一度可愛がってみたかったのよ。」

楽しげに笑いながら、ぎゅ、っと抱きしめて頭をなでちゃう。
持っている人の暴力が容赦無く襲うけれど、それも気にせずによーしよし。

四季夢子 > 妹が居ると切り出す朝宮先生に、ああやっぱりと相槌を返す。
先生の雰囲気的に姉が居る風には思えなかったんだもの。

「……って双子だったんだ。それはー……一寸やりづらそうね。
しかも変わり者で成果主義って……。」

ただ、先生が詳らかにした程の妹さんだとは流石に予想が及ばなかったものだから、
肩を落とす先生になんて言えばいいのか迷ってしまって、どうしようかと目が泳ぐのだけど、
存外気にしていなかったのか、抱しめられると今度は手が宙を泳ぐようになった。

「うわっ、ちょ先生ったら……!これ、どちらかっていうと赤ん坊とか子供扱いのような……。」

否応無しに頬に伝わる、持つ側の柔らかさとサウナ内で汗を流していたからか余計に伝わる朝宮先生そのもの。
流石の私も芝居がかった表情なんて出来なくってのぼせた様に真っ赤な顔になってしまうのは已む無しとしたかった。
跳ね除ける事をしないのは已む無しと……何故ならないのかは、室内に篭るハーブミストに紛れてしまったのかも。

朝宮 小春 > 「…いいえ、三つ子。 同じ顔が三人よ? やりづらいったらありゃしない。」

軽い言葉は少し砕けて、裸で触れ合っているからこその言葉の崩れ。
穏やかに微笑みながら、頬を頭に擦りつけて。

「………ちょっとだけ、可愛がるには蒸し暑いけどね。」

クスクスと笑いながら、そんな言葉を追加して。
はねのけないならそれをいいことに、存分に可愛がってしまいましょう。

良い子の妹ができたことを喜びながら、存分に。

のぼせてフラフラになってしまうのだけれど、それはまた後の話。

四季夢子 > 「うわあ……それならまだ一人っ子の私の方がマシね……お父さんとお母さんに感謝しないと。」

熱に釣られてついついと己の事を口走り、蒸し暑さに負けて朝宮先生の腕を叩いて降参を告げるまで今暫くはこのままとなって。
暫くの後は二人仲良く休憩処でダウンする事にもなってしまったのでした。

ご案内:「スーパー銭湯「たそがれ」」から朝宮 小春さんが去りました。
ご案内:「スーパー銭湯「たそがれ」」から四季夢子さんが去りました。