2016/05/14 のログ
ご案内:「高級住宅」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 学生・教員居住区。
その区画の中に設けられた高級住宅……この住宅の主であり
先の戦いで再会を果たしたアルベールと向かい合い座り食事を取っていた。
フランス出身のアルベールは、それなりの家で生まれ育ちであった。
だがその異能等の才能もだが経済的にも豊かであったことから
女性の侍従一人を従えてこの島にやってきてこの場所に専用の邸宅を構えて通学をしていた。
二年前に消息を絶つまでは。
それから二年という月日が経ったものの、無事に復学したこともあり
再びこの家に戻ってきた。
戦いの傷も大方癒えたようだが、右目にはまだ痛ましく眼帯が残っていた。
■五代 基一郎 > 「どうも」
と一言。
アルベールの侍従が料理の皿を持って来れば一言返して
料理にナイフとフォークを入れる。
侍従は無言でキッチンに戻りまた調理を続ける。
黙々と、食べていた。
本来快気祝いか何かのかであろう日であろうに、当の本人をさしおいて
食事を口に入れていた。
実際アルベールのところの侍従が作る食事は流石一人で学生一人の生活を支えていただけあって言うに及ばず美味い。
自然と箸……ではなく食器は進む。
それをアルベールは、時折食事に口を運ぶものの……戸惑いを隠せない表情で
もっと深く言うならば”有り得ないものを見るような顔”をしていた。
■五代 基一郎>「やっぱり、気になる……か」
と、ようやく食うに満足したのか食器を置いて口を拭い
グラスを口に運んだ。ついたひと息は重かった。
■アルベール>「それは……」
なんとも言いようのない、言い出し方を探すアルベールの言葉には沈黙があった。
■五代 基一郎 > 「食事をしないと体が維持できなくなっている。以前は水さえあれば生命活動に支障はなかったんだが……」
その言葉を聞き、疑問が解けたというより聞かされたくなかった事実を置かれ
受け入れるか受け入れざるべきか一瞬躊躇うように口を動かした。
アルベールの記憶の中……生徒会時代にいた目の前の男はそも食事など取らなかったし
人間らしく振舞っている様子はなかった。そこにいた存在であり、そうある絶対的な力がそこにあったはずだった。
だが今目の前にいる男は、言ってしまえばどこにでもいるくたびれた男でしかなかった。
■アルベール>「それでは異能を失ったというのも」
■五代 基一郎>「正確には失っている状態のように思えるが、どちらにせよ同じだな。今の俺に以前のような異能と呼ばれた力はない。」
体組織に伝導している変った部分等は続いているが、と加えて水を飲む。
異能を手にして以来捨てて忘れ去っていた……こうした食事を楽しみとすることが受けられるのは一種の喜びだが
そのためとするなら異能の喪失は大きすぎる対価だったと思わざる負えない。
■五代 基一郎>「生徒会を下りたのはそれだけが理由じゃない。いやそれも十分な理由だけどさ……
異能を失ったあたりの記憶の前後がはっきりしないんだ。
丸々抜けている上に枝葉のようにあるはずの関連することが思い出せない。だいぶ曖昧で困っている。」
続けられた言葉には、いくつか思うところはあったが
それでも何か言葉に出すということをアルベールには出来なかった。
二年以上の歳月、席を開けてしまったことを呪う他ないのかとも思えた。
かといって自分が何ができるという確信はなかったが……
■五代 基一郎 > 「誰と、どういう存在と戦って敗北したが故に異能を失った……までは共通なんだが」
それより先の”誰”と”どういう存在”が時たま入れ替わるのだ。
昨日までアレだと思っていた存在ではなく、別の存在ではなかったか。
そうだったはずだ、と記憶が時折改竄されるようなものを異能を失った時から感じていた。
自分のこと……しかも特定の事柄の事だからこそ他人に話さなければわからない話であるが故に、一部の人間以外には口を閉じていた。
いうなれば自分は狂いつつあるのだろうし、正気を保障できない以上なんともならないのだ。
外的健診からわかるわけでもない。異能を失ったが故にそういった類の防御が出来ないのか……
今では失った時の事柄で覚えていることの方が少ない。
■アルベール>「”塔”の、”塔”の探索はどうなったのですか」
■五代 基一郎>「”塔”の探索は続けているが、十分な成果はないな。
物理的にこの島で建造されていたり、というわけではないことまでは確証はもてた。
恐らく別の次元か空間にあると思われるが、今では限界だな。」
それこそアルベールの、と思わなくもないが以前もアルベールに探ってもらった覚えはある。
アルベールの”波動”で感知ができないのなら別の方法を何がしか見つけて探るしかない……程度にはお手上げだ。
■五代 基一郎>「今はある程度の役職の仕事をしつつ、塔の探索と当時に消えた仲間たちの探索といったところだな。
それ以外やることはないし、出来ることもない。
まぁ俺の異能の件は問題ないさ。確信ではないけれど……さ。」
ここまで何かしないということは相手も考えがあるのだろうし、そう死ぬわけでもないからと
誰への慰めにもならない言葉を自身の口から出すしか今はできなかった。
■五代 基一郎 > 「アルベールは目だな。まず体を慣らしてからとしようか。復学したんだし、学生生活に戻ることを第一に考えればいい。」
そう言われてもアルベールからすれば不服の残ることしかない。
かつてとは違う物言いや、その変り方まで。
しかしそう言われればそう聞くしかないのだ。
それ以上に今の自分にできることはない。
■アルベール>「わかりました……しかしご無理などされぬよう。いつでもお力になります故」
ありがたいが、力になってもらうような要件……今の所はないなと
軽く息を吐いて少し。料理が冷めているのでは、と食事を促した。
その後は特に会話もないまま食事の席を終えてアルベール宅を後にした。
自分でも未だに飲みこめない事柄を、他人が飲みこめるはずもないだろうなと思いながら
まだ若干冷える夜の舗装された道を黒猫と共に帰って行った……
ご案内:「高級住宅」から五代 基一郎さんが去りました。