2016/08/09 のログ
ご案内:「Free2」に高峰 司さんが現れました。
ご案内:「Free2」から高峰 司さんが去りました。
ご案内:「常世病院外」に高峰 司さんが現れました。
■高峰 司 > 病院外、少しだけ離れたところ。
そこを高峰司はぶらぶらと歩いていた。
一人での散歩と言うのは、昔から行ってきた気分転換でもある。
特にここらはあまり見たことが無い場所だったので、攻撃性のない刺激が多いという意味では気分転換に向いている場所だった。
「……『例え本人が最強でなくとも、最強を従えれば最強に至る事が出来る』、か」
その言葉を、実行に移してきたつもりであったが。
多種多様な手札、単一のエースに依存せず強力な召喚獣を貪欲に集め、尚且つエースと呼べるイフリートとも契約し。
最近では、蕎麦屋を名乗る戦乙女とも契約している。戦力的には、十分頂に手が届いたと、思っていたのに。
「笑わせる」
その実、何もかもが足りていない。
■高峰 司 > 己を蝕むウイルスには手も足も出ず。
板挟みに苦しむ親友を助ける事は叶わず。
倒れ伏したその親友の妹を治す事も出来ない。
戦いのみならず、自分を守るに足る十分な戦力を揃えたつもりでいたのに、その実、殆ど何も守れていない。
他人はおろか、自分までも。何一つ、守れていない。
そしてそれは……。
「アタシの不手際だな、こりゃ……クソが、世の中舐めてたって事かよ」
召喚獣の不足ではなく、それを使役する己の不足だ。
召喚獣たちは、求められた役割を契約通りこなしている。一部手が付けられないじゃじゃ馬もいるが、殆どはしっかりと自分の能力で出来る範囲の事をしてくれている。
なら何故不足が発生するのか……『召喚者であり契約者である高峰司の視野が狭かった』からに他ならない。
有り体に言ってしまえば、殆どが想定外だったのだ。
これだけいれば何とかなるという慢心すらあった。それを、打ち砕かれていた。
■高峰 司 > 「コイツは今回に限った事じゃねぇ……今後にも関わるアタシの手落ちだ」
そもそも。
伊都波凛霞を『召喚獣(テゴマ)』ではなく『親友』と定めた時点で、考えておくべきだったのだ。
『自分の周辺は変化しつつある。新たな出来事が発生する可能性は大いにある』と言う事を。
今まで自分一人で行動し、自分一人を守れればそれでよかった。自分以外の他者は利用し利用される関係でしかなく、それ故に後腐れも無く契約の範囲を越えてああだこうだと口を出す事も手を出す事もない関係性だった。
だが、彼女は……伊都波凛霞は違う。
彼女は自分にとって不可分の特別となり、自分にとって初めての『守り守られるべき他者』となった。
その時点で……高峰司の世界が広がった時点で、今まで通りじゃダメだと気付いておくべきだったのに。
「なら……どうする」
自問する。
だからと言って、この現状を解決する召喚獣がぽんぽん見つかるはずなんてありはしない。
そもそも秩序のない世界をめぐって、その中で弱っていた力ある存在に手を貸す代わりに契約を結んできたのが高峰司だ。
一定以上の秩序が保たれているこの学園で、手を出せる存在は非常に少ない。
■高峰 司 > 「(考えろ……今のアタシの不足を補えて且つ、アタシの手の届く可能性のある場所にいる存在。アタシが、本当の意味でやるべきことをやるのに必要な存在を)」
悪魔はダメだ。
小悪魔クラスでは特に今までと変わらず、上位の悪魔は対価の支払いに『魂』を要求してくる。
魔法陣を描けば大体呼び出せるのが悪魔だが、だからと言ってアレを飼いならそうとしてはいけない。
奴らは読んで字の如く『悪』い『魔』物なのだから。
うっかり願いを提示すれば、その反動で自分が死ぬことだって普通にあり得る。
願いのために契約をし、その対価で願いを奪われる……その矛盾すら愉悦するのが悪魔である。
なら、神か。
それも無理だ。低級の神格は大したことが無く、上位の神格は契約する隙すらない。
そもそも神と言うのは中々にクソッタレの畜生野郎共が多い。なぞかけ勝負で負けたからと言って逆ギレし、暗殺者を差し向ける北欧の大神みたいに。
強大な神格を分霊化する事で弱体化し、機能を制限する代わりに契約で縛ることを可能にする秘術が高峰にもあるが、それとて容易に行えるものではない。
今の司に可能な事と言えば、精々既に分霊化した神に声を掛ける、事、くら、い……。
「……!」
いた。
自分が手を出せて、且つ条件次第で可能性のある神格が。
■高峰 司 > だが、その神は。
自分が知るその神は……『幽閉されている』。
「(クソ、手に負えねぇっつってほったらかしてくるんじゃなかったか……いや、今更か)」
その神の所在地は『高峰家屋敷』。
かつて、まだ高峰と言う家が才気に溢れていたころ。高峰の召喚術師が、ある神を分霊化して呼び出し、契約を結んだ。
高峰の召喚契約は個人間契約。よってその契約は先に条件づけておかない限り世代を跨ぐことはなく、その個人が死ねば契約は終了する。
だが、高峰はその道理を、何とかして捻じ曲げようとした。
神との契約を惜しんだかつての高峰は、その神を無理矢理捕らえ、数多ある魔術礼装でガチガチに縛り付けたのだ。
故に、その神は高峰に恨み心頭のはず。高峰を外れ、高峰に弓を引こうとしている司になら、可能性はゼロではない。
「(けど、そりゃ現状無理だ)」
確かに神格、しかも上位の一柱と言う事でかなりの力を誇るその神だが、そもそもの接触が無理だ。
高峰家から出奔した司が、高峰家に今一度足を向ける必要があるのだから。
■高峰 司 > そこで思い出す。
そう言えば誰か……自分の家族が来ているとか言っていなかったか?
そう、確か自分の弟と名乗る人間が来ているとかなんとか。
「一応古い知り合いもなんかいたし……クソ、思ったよりここ安全じゃねーな」
由良だったか。
かつて高峰に居た、よくわからないファッションセンスの元素変換術師もこの学園に来ていたのを確認している。と言うか喧嘩吹っ掛けられた。
そして、弟。数多おり、最早粗製乱造と言わずにはいられない自分の兄弟姉妹達。
才の枯れ果てた高峰の、悪足掻きの象徴共。
「……いい加減、後回しにしてらんねーのかもな」
今一度自分は、向き合うべき時が来ているのかもしれない。
己が実家、己が怨敵、己が目標……ルーンの名門、高峰家に。
■高峰 司 > 「けど、まずはその前に、アイツだな」
だが、その為に必須の戦力であり、欠かせない友である伊都波凛霞が現状一番参っている。
自分もウイルスで大概神経が擦り減っているが、彼女はそれ以上だろう。
だから、今の最優先は彼女だ。自分に出来る事が、そばにいてやる程度なのは本当に口惜しいが。
「……帰るか」
少なくとも、今夜は近くに居てやろう。
凛霞の病室に配置するルーンと、その配置について考えながら、ゆっくりと病院へと戻って行った。
ご案内:「常世病院外」から高峰 司さんが去りました。