2016/09/12 のログ
■マリア > それを貴女が踏み抜く瞬間まで,罠の存在には気づくことができなかった。
だが,強化された聴覚は何らかの機構が動く音と,それから地面の下の空洞の存在をマリアに知らせる。
「…………ッ!!」
それに気づいた瞬間の衝撃は,全身の毛が逆立つほど。
咄嗟に強化された脚力で駆け寄り,クローデットをその場から押し出すように突き飛ばす。
その急加速よりも,転びもせず,舌も噛まないよう優しく突き飛ばした急制動の方が,マリアの肉体に負担を掛けただろう。
「………あ…れ……?」
完璧な動作と,そして自己犠牲の精神。
壊れている,ということに気付けなかったのが,マリアの唯一の失敗だった。
■クローデット > 急速に接近する気配と、とん、という…暴力というには優し過ぎる衝撃。
防御術式すら、ほとんど発動しなかったほどの。
先ほどまでクローデットがいた場所には、壊れた罠に足をかけきょとんとしているマリアの図。
「…壊れていると思ったので、何も申し上げずに自分で踏みましたの。
ご心配をおかけして申しわけありません。お身体、大丈夫ですか?」
くすりと、おかしそうに微笑みながらマリアにそう問いかけると…
自分は罠の上にしゃがんで、探査魔術を駆使して細かい解析をしにかかった。
(…なるほど…)
メモパッドを取り出すと、罠の機構と、故障部分を念写する。
「…この罠の修理は、本隊の皆様にお任せ致しましょうか。
今回は幸い壊れておりましたけれど、下手に直して引っかかる方がいらっしゃったら申しわけありませんし」
花のほころぶような笑みを浮かべながらそう言うと、遺跡地図の中に罠の場所を書き込んだ。
■マリア > クローデットの言葉に,マリアは長く長く息を吐いた。
安堵と,それから……頬を染めているのは,先走った恥ずかしさもあるのだろう。
「………そうでしたか,すみません。
ルナン様が不用意なことをするはずがないとは,分かっていたのですが……。」
期待に応えようとしているのか,それともクローデットを“友人”として守ろうとしているのか,
もしこの落とし穴が故障していなければ,身代わりになって死んでいたかもしれない。
「えぇ,その方が良さそうです…私も,ルナン様が踏むまでは気が付きませんでしたし。」
深呼吸をしてから,次の曲がり角を曲がる。
さて,何があるやら。 [1d15→7=7]駆除
■マリア > 駆除7.
この部屋は蒸し暑く、そこかしこにルインワームの卵がある。
どうやらここで孵化と繁殖をしているらしい。君たちが更に調べるならこの部屋が特殊な空調を操る仕掛けがあって、それがうまく機能していないともわかるだろう。
これもまた異常発生の原因の一つかもしれない。見回りが来ないうちに退散したほうが良いだろう。
(バイト代ボーナス特に無し)
■マリア > なんか、とっても、気持ち悪い光景が広がっている気がする。
「うわ………。」
眉を顰めて,後ずさりした。
■クローデット > 「………」
羽根扇子を広げて顔の下半分を隠してはいるが、整った眉がひそめられている様子から、その下の表情は察してあまりあるだろう。
「ここは「彼ら」の繁殖部屋のようですわね…
幼虫の姿は見えませんから、養育は別の場所でしょう。
………それにしても、この環境は一際人の身には劣悪ですわね」
それでも、冷静に分析するクローデット。
そして、医療用と思しき薄手の手袋を手にはめると、壁に手を伸ばす。
…部屋の異常状態の調査をするつもりのようだ。
■マリア > こんな状況でも即座に調査を開始する貴女を見て,マリアも慌てて壁に触れ,音や風の流れに意識を向ける。
正直,あまり気持ちのいいものではないが,手袋など用意していない。
「…ここは空気が,流れていないですね。」
酷い臭いで嗅覚はあてにならず,触覚や聴覚だけが頼りだった。
だからこそ,分かるのはその程度である。
■クローデット > たっぷりした有機物の臭いは、お世辞にも愉快なものとは言えない。
しかし、それが滞留しているということは、マリアが言うような事実を示している。
「…どうやら、空調を操る仕掛けが仕込まれているようですが、それが機能していないようですわね。
かなり特殊な機構です…どう手を付ければ復旧させられるのか、あたくしの知識では見当がつきませんわ」
探査術式でそれを探り当てたクローデットだが、考古学は専門ではない。
落とし穴とはわけが違う特殊な機構に、素直に「お手上げ」を表明した。
「…場所と機構の故障のみを記録して、ここは一旦お暇しませんこと?
侵入者が繁殖部屋に入っているのが見つかってしまった場合、収拾がつくとは思えませんし」
マリアにそう声をかけると、先がけて歩き出す。
…もっとも、クローデット自身は、「収拾がつくか怪しい」事態を楽しみにしている節が、なくもないのだが。 [1d15→9=9]駆除
■クローデット > 駆除9.
この部屋にいるルインワームはどうやら遠距離から酸を吐きかけることができるようだ。
数は3匹程度だが、あまり距離を離していると君たちに酸を吐きかけてくるだろう。
またそれが床や壁面に付着したのなら遺跡が傷んでしまう。工夫して被害を防いで欲しい。
(バイト代ボーナス-250円、なお酸を防いで倒した場合はボーナスなし)
■クローデット > (………)
通路の先に、ルインワームが三体。
その姿を認めて、急に息を潜めるクローデット。
…というのも、そのルインワーム達は、アリで言う蟻酸のようなものを吐き出す機構が発達しているのが見て取れたからだ。
先に姿を見せては、酸を吐かれて遺跡を傷めさせてしまいかねない。
クローデットがポシェットから取り出したのは、マリアには見覚えのあるガラス玉のようなもの。
それを、音を立てないように慎重に床に下ろすが…
わずかに、コト、という音が立ってしまった。
遺跡の壁や床を護るように物理結界が展開されたのと、ルインワーム達がその音に気付いてクローデットとマリアのいる方に頭を向けたのは…ほぼ、同時。
■マリア > マリアは貴女に先を行かせたことを,後悔した。
それは貴女を信用していないからではなく,貴女よりも優れている自負があるからでもなく,
ただ,貴女を危険から遠ざけたかったから。
強化された五感がルインワームの動きを感じ取り,
そして一度見たことのある貴女のアイテムはその結果を思い出させる。
貴女が自分自身ではなくこの遺跡を守ろうとしているのは明白だった。
3体のルインワームから酸が放たれる。
落とし穴とは違う,液体は広範囲に拡散して飛翔し,突き飛ばすくらいでは避けられない。
盾になろうにもすべてを受け止めるのは,不可能だろう。
「……クローデット!!」
その名を呼んだときには,すべてが終わっていた。
その瞬間に,貴女はマリアがいたはずの場所に立っているだろう…そして貴女が居たはずの場所に立つマリアは,酸をまともに浴びて悲痛な声を上げる。
魔力の放出も術式の構成もなく,一切の魔術が介在しない状況で“事象”のみが出力される。
それは紛れもない“異能”の発動だった。
■クローデット > 名前を呼ばれたと思った時には、自分は壁の陰、ルインワーム達の死角に放り込まれていた。
(…何が、起こったというの!?)
クローデットは、戦闘仕様であれば物理攻撃はもちろん、魔術も異能も防御する術式を装備している。
それを貫通するとすれば…
(因果への干渉…!)
はっきりと、苛立ちをその瞳に宿して立ち上がる。
「…我が敵に、永久の冷たき眠りを…」
詠唱しながら、悲痛な声を上げるマリアの前に立つ。
怪物の吐く酸は生物的特性であり、魔術でも異能でもない。
つまりは、物理障壁で無効化出来た。
「『氷の檻(カージュ・ドゥ・グラス)』!」
そう叫ぶと、2人の前には、ルインワームを閉じ込めた氷塊が3つ出来上がった。
「…少しお待ち下さいね、シュピリシルド様」
その声は、女性らしい柔らかさを失ったわけではないけれど。
自分への苛立ちか、相手への苛立ちか。その奥に冷たい響きがあったのは間違いなかった。
■マリア > 強酸といえど,人間を瞬時に液化させるようなファンタジックなものではない。
服の繊維を破壊し,肌に重度の火傷を生じさせる程度のものだ。
体中の神経をも破壊するだろうその苦痛がどれほどのものなのかは想像したくもないが…
「………すみません,出過ぎた真似を……お怪我は,ありません?」
瞬く間に,ルインワームは無力化されていた。
…貴女ならきっと,自分の助けなんて無くても対処できたのだろう。
そう思うと申し訳なくて,情けなくて,弱弱しい声を出した。
■クローデット > 「…あたくしの方こそ、咄嗟に反応出来ずに申しわけありません。
あたくしは、この通り無傷ですわ」
実際、マリアに庇われなくともあの程度の酸はクローデットの脅威では無かった。
表情こそ出ていないが、みすみす庇われ、その上ここまで深手を負わせた自分の至らなさへの屈辱感が、声がほのかに帯びた辛さ(からさ)に表れている。
クローデットは、重度の火傷を負うマリアの傍に寄り添うように座り込むと、その手をかざした。
「傍らの弱き者に癒しを与えん…『治癒(ゲリゾン)』」
白い光がクローデットの手に灯る。
魔術増幅術式の補助も得た、シンプルながらもそれなりに強力な治癒魔術だ。
…もっとも、服までは元通りにはならないが。
■マリア > 「良かった……。」
貴女の無事を確認して,マリアは安堵の笑みを浮かべた。
その声が帯びる感情を読み取れないくらいに鈍感であれば,貴女を救った満足感だけが残ったのだろうが…
「………さっきから私,何だか先走ってばかりですね…。」
ボロボロになりところどころに肌が露出しているワンピース。
……その損傷を気に留めることはない。
貴女の治癒魔法は痛みをまるで嘘のように溶かしていき,やがて酷い火傷の痕さえ消えてしまう。
「……ごめんなさい,迷惑かけてばかりで,本当に…。」
■クローデット > 「…あたくしも、出来ること全てを開示しておりませんから…
その点、シュピリシルド様には余計な心配をかけてしまったかもしれません。
…ですから、良いのです」
そう言って、まだいつもの表情は無いけれども、優しい声で首を横に振る。
委員会の仕事仲間ですらない「異邦人(ヨソモノ)」に力を開示する義理は無い。
…けれども、お互いの力への知識の無さが、要所要所で遺跡調査にロスを生じさせているのは、事実だった。
「ケダモノの特性くらいであれば、あたくしは何ともなりませんから。
………シュピリシルド様のお召し物、随分傷んでしまいましたわね」
そう言うと…ポシェットから、明らかに容量オーバーの青いケープを引っ張り出す。
「一応、物理防御の術式がかかっておりますの。
ひとまず、お召しになって」
そう言ってケープを差し出すクローデットの口元には、ようやく笑みが戻ってきていた。
■マリア > 「お互い様です……私のこの“身代わり”の力だって,お話ししておりませんでしたから。
けれど本当に,ルナン様はお強いのですね……私なんか必要無さそうじゃないですか。」
痛みが失せれば,表情には笑みが戻る。
だが一方で,あまりにも強く,あまりにも遠くに居るように感じられる貴女との,隔意を感じ始めていた。
「構いませんわ…もともと,汚れても構わないのを選んできましたから。」
言いつつも差し出されたケープを受け取って,明らかに困惑の色を浮かべる。
本当に,足手まといになってばかりだと…自分の軽挙妄動を反省し,
「ありがとうございます…ルナン様,何から何まで……。」
それを着て,もう一度,深々と頭を下げた。
意外とというか、普通に似合っている。
■クローデット > 「そうですわね…お互い様でしょうか。
………先ほどの通り、あたくし一人では限界がございますので」
(………非常に、不本意ですが)
心の声は表に出さず、マリアの表情に笑みが戻ったのを見てこちらも穏やかに笑み返す。
「そうですか…それでしたら不幸中の幸いですわね。
…それでも…「レディ」たるもの、そのような肌のさらし方をするものではありませんから」
相手が汚れても構わないものを選んできたと聞けば、安心したように柔らかく笑みかけるも、際どいコースに会話のキャッチボールを投げるのは忘れなかった。
苛立ちを覚えた件の、発散のつもりだろうか。
「………いいえ、構いませんわ。
綺麗なものにお召し替えになった際に、返しに来て下さいますか?」
「手入れが少々特殊ですので、お洗濯の必要もございませんから」と付け足して。
「あげる」つもりはないらしいが…その現金さがマリアには気が楽か、それとも、「返しに来て」が意味するところに動揺するか。
「…ところで、これからどう致しましょうか?
帰りの準備が整うまでには、もう少々時間があるはずですけれど」
そう、マリアを気遣うように首を傾げながら、その表情を伺った。
■マリア > 「……いえ,その…………。」
一人では限界がある,という言葉に嘘はないだろう。
だが,この程度の遺跡ではその限界の外へ出るほどの事態は起こり得まい。
貴女の真意までは汲み取れなかったマリアは,結果として自分に仕事を与えるための,貴女の気遣いだったと思うことにした。
というよりも,そう思いたかったのかも知れない。
「あ,あぁ…!そうですね,私としたことがつい。
普段はこんなことなど,ないはずなのですが…。」
自分の正体を知っている貴女の前では,どう振る舞うべきか難しかった。
あのような醜態をさらしてなお,努めて少女として振る舞い続けるべきかどうか。
「………分かりました。必ず,お返しに……参りますので。」
纏った服からは優しい花の香り。それを返しに行くということは,相手の領域へ乗り込むことに他ならない。
女の子の家に行く口実ができた,と能天気に笑えるような男ならよかったのだろうが,
マリアにとってそれは,大きな大きな不安を抱かずにはいられない約束。
「あ,えっと……戻りながらもう少し探索いたしましょうか。
今度は私が先に行きます……その,危なそうだったら,助けて下さい。」 [1d15→7=7]修復
■マリア > 修復7.
偶然触れた宝玉のはまった台座はこの遺跡の過去を映し出すホログラムのようだ。
この遺跡の屋上に古代人たちが集まり『門』に酷似した空間を開く様子が映し出される。古代人達はこの『門』を通って他世界へ移ったのだろうか、それとも……。謎は深まるばかりである。
(バイト代ボーナス特に無し)
■マリア > 宝玉に触れたことは,魔術に秀でたクローデットからしてみれば不用意この上ない動作だったかもしれない。
それがトラップでなかったことは幸運だった。
「……この,切れ目…………。」
マリアは『門』を通ってこの世界に来た。だとすれば,見覚えがあるのも自然なことだろう。
それはマリアが異邦人であることの何よりの証拠だ。
■クローデット > 「先ほどの大怪我で、あまりそちらに意識が向かなかったのかもしれませんけれど。
「レディ」たるもの、「武装」としての身だしなみを著しく損なうようなことがあってはなりませんわ」
戸惑うように対応するマリアに対して、花の綻ぶような笑みを向ける。
マリアが「少女」としての仮面を脱がないなら、正体を知った上でも「少女」として遇すように心がけるのがクローデットだった。
それは、「相手の意思を尊重する」建前が半分、「相手がねじれに悩む様子を見て楽しみたい」本音が半分。
「ええ、「よろしくお願い致します」」
その口調には、特に不自然な抑揚はない。
けれど、不安を抱くマリアにとって、その念押しは心穏やかに聞けるものではないだろう。
アロマを兼用した初歩の魔法薬である防虫剤の匂いは、まとっても薬臭さを感じさせず、寧ろ女性の装いにほのかな彩りを添えるものだった。
そして、一連のクローデットの言動に動揺したと思われるマリアが不用意に触れた宝玉は、罠ではなかったが…
「………。」
『門』と酷似した空間の裂け目が開く様子が映し出されるホログラム。
『門』として完成度の高いもののようには見えないが…それでも、機能は十分に果たしているようだった。
何か、貪欲さすら感じさせるほど厳しい知性の光を宿す瞳で、そのホログラムを見つめるクローデット。
■マリア > 「……武装としての身だしなみ…ですか。
わかりました,ルナン様の言葉,肝に銘じておきます。」
仮面を脱ぐべきかどうか,マリアは迷っていた。
だが実際には,この仮面をかぶり続ける必要はない…脱ぐ勇気がないだけだ。
貴女の本音に気付いていれば,勇気もでるのだろうが……。
……いずれにしても,貴女と出会う日,マリアはいつも,期待と不安が混ぜこぜになって不安がやや色濃く出るような,
そんな心持で貴女を待ち,貴女とふれあい,貴女と話しているに違いない。
「……ルナン,様?」
そんな貴女が,自分と同じホログラムを見るその目は,自分と話しているときの目とはまた違う輝きを湛えていた。
マリアにとってそれは,一切の介入を許されない,決して触れてはならない領域であるようにさえ思えた。
だからマリアは,貴女を待つ。
もうじき,外に戻る時間になる。だがマリアは,貴女がこっちを見てくれるまで,静かに待つだろう。
■クローデット > 「あたくしで良ければ指南致しますから、興味を持たれたら呼んで下さいな」
くすりと、どこか艶めいた笑みを浮かべるクローデット。
「少女」の迷いには感づいた上で、あえて誘導はしないでいる。
そもそも、クローデットにはマリアを誘導するほどの義理はないし。
「少女」が自分と接するときの複雑な心持ちに、クローデットはどの程度気付いているのだろうか。
「………失礼致しました。
あたくし、『門』のことを少々研究しておりまして…それで、興味深かったものですから」
マリアに声をかけられれば、伏し目がちに笑みながらも、その瞳の奥にきついくらいの知性の光を潜ませて、そう答える。
「…出来るだけ映像を解析して、可能ならば「写して」参りますので…少しだけ、お待ち下さい」
そう言うと、クローデットは宝玉を細かく調べ始める。
もっとも、彼女が一定の成果を得るまで、それほど時間はかからないだろうが。
■マリア > 貴女の調査が終わるまで,マリアは静かに待っていた。
門の研究…それは,自分にとっても故郷へ帰れるきっかけになるかもしれない研究だ。
だが,故郷に帰る意思が無い以上,それは何の意味ももたなかった。
「ルナン様に指南していただけるなんて,光栄です。
……でも,ルナン様のお手を煩わせるようなまねはできませんよ。」
程なく,調査は終わるだろう。
貴女の調査が終われば,マリアは来た道を,貴女を守りながら戻ろうとするだろう。
来た時と同じように,必要以上に警戒をしながら。
■クローデット > 仕組みは完全には理解出来なかったが…とりあえず、映像だけは写せた。
後は、これをどう理論的に読み解くか、だ。
「…シュピリシルド様、お待たせ致しました。
それでは、戻りましょうか」
そう言って、宝玉から離れてマリアの近くを歩き出すクローデット。
「あら、そんなに気負われなくても構いませんのに…
だって、シュピリシルド様」
くすりと笑んで、マリアを追い越し際、マリアの耳元に口を寄せる。
「あたくしのこと、ファーストネームで呼んで下さったじゃありませんか」
囁きに反応してマリアがクローデットの方を見れば、そこには深く艶めいた笑みを浮かべた唇があることだろう。
寄せられた顔の近くから漂う香りはほんのわずかで…甘いが、それは落ち着くような薬草の爽やかさも伴っていた。
淑やかながらも重さの無い足取りで、「護られる必要はもう無い」と言わんばかりにマリアを追い越すと、クローデットは遺跡を出て行った。
■マリア > そう,守って,行くつもりだったのだ。
けれどそんな目論見は貴女の一言で容易く崩壊してしまう。
男女の間で交わされる会話だとすれば,ドキリとさせられるようなセリフだろう。
あの瞬間,思わず声に出して叫んでしまった貴女のファーストネーム。
そこに深い意味は無いのかもしれない。ただ,確かに,自然に口から出たのは“クローデット”という貴女の名だったのだ。
「……あ,あああ,えっと,あれはその,咄嗟のことでしたし…!」
そう,何を言っても言い訳でしかないのはわかっている。それでも何かを言わなくてはいけない気がした。
貴女の笑みは全てを見透かしているようで……それでいて一切を認めてくれているようで……
……マリアに“絶対に敵わない”と改めて痛感させるに十分なものだった。
その場にしばらく呆然と立ち尽くし…貴女の背をしばらく見つめた後,マリアもまた,急いで遺跡を出るのだった。
■クローデット > なお、報告をメールでやりとり出来る関係で、報告書はクローデットが一人で仕上げたという。
発見した事柄を記した地図や、読み解けた範囲での遺物の機構・構造の記述の画像ファイル。
そして、同行者マリアと、同行者たる「女子生徒」のルインワーム討伐実績。
それらを丁寧に記述したものがアルスマグナのメールアドレスに送られ…そして、2人分の労働の対価が支払われたことだろう。
【累計バイト代ボーナス +210円】
ご案内:「海底遺跡郡・朱夏の遺跡(過去回想)」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「海底遺跡郡・朱夏の遺跡(過去回想)」からマリアさんが去りました。