2016/10/28 のログ
ご案内:「ゲームセンター」に因幡幸子さんが現れました。
■因幡幸子 > 大きさにして人間の数倍。蛙にも似た頭部が特徴的なカーキ色の巨人が足裏に仕込まれたモーターの車輪を駆動させ、夕焼けに照らされる市街地を駆けて行く。
片手で重機でも使わなければ持ち上がらないだろう、鉄骨のようなブレードをひょいと持ち上げてみせる、そういう機体だ。
そのコクピット内で視線を横に逸らすと武装の使い方を記すホロモニタが呼応するようにポップアップし、女性の声が滑らかにその文言を読み上げる。
私は成る程、と感心し関心してメインモニタに注力した。
アラートが鳴ったからだ。
■因幡幸子 > 「いやあ~本格的ですね。……何が本格なのかは判りませんし解りませんが、きっとこういうのがリアルって言うんですかんげぶぇっ!?」
――なんとなく暇だったから学校帰りにゲームセンターへ寄ってみる。
そんな至極真っ当で可愛らしい非行行為に勤しんでいた所、私の瞳がカプセル型筐体に入り込んで遊ぶタイプの奴を視止めたからさあ大変。
物珍しさから早速遊んでみようと入り込み如何にもな主人公機っぽい奴だとか、ヒロインが乗ってそうな奴を避けてパワーのありそうなまるっこい奴をセレクトし
初心者特有のレバガチャプレイを颯爽とエンジョイしていると乱入者を示すアラートが鳴るではないですか!
おっとこれが所謂初心者狩りですか……等々世の儚さに感じ入る間も無く、自機の周囲に敵の砲弾が着弾しコクピットもとい筐体が激しく揺れて舌を噛みそうになる。
「踏み込みが甘い!とか言って切り払ったりする機能は無いんですかねこれ!」
敵の砲弾を受けて建物の倒壊する轟音が鳴り響いて非常に喧しい。尚砲弾、と言っても所謂ビーム的なものだったのか粒子状の光の残滓が舞い上がる塵芥と混ざっていやに幻想的でした。
とは言えあんなもん実際に当たったら幻想的もへったくれも無く、ついでに装甲とかも意味無いんじゃあなかろうかと思うんですが、これはゲームなので当たっても設定されたHPが減るだけです。
今見ると確り当たっていたのか普通に減っていました。BooBoo!当たり判定甘くないですかね!
■因幡幸子 > 「ていうかこっちの武器、剣とマシンガンしかないんですけどバランスどーなってるんです!」
ホロモニタを見ると私の機体の武器はブレードメイスとか言う剣と鈍器を足したような奴とマシンガンくらいしかない。
おまけにおまけに濃霧のような塵芥を抜け会敵した相手の機体は私と同じタイプじゃあないですか。
尤も色はカーキ色じゃなくて真っ黒で、肩にやたらめったら巨大な大砲めいたものがくっついていたりするんですが。
あ、これプレイを続けてカスタマイズとか出来る系のお財布搾り取りゲームだ。
そう気付いた時には時既に遅し。そういえば筐体の横になんか登録云々の機械があったなあ……等々の走馬灯が盛大に上映される中
大砲からカッ飛んできた七色ビームが課金パワーを誇示するかのような威力でHPをゴリっと削って行きました。
ちゅどーん。
■因幡幸子 > 「……と、言う訳でやっぱり可愛い私にはこーゆー奴のが良いと思うんですよねー。」
はい、と言うわけで筐体から脱出した私は耳を萎れさせてUFOキャッチャーの前に居ました。
他にも何やら私の世界より大分進んでいると思しきゲーム群はあったんですが
今は見知ったモノが恋しい気分……等々のセンチメンタルでメランコリックな感情はあんまり無かった。
牧歌的に景品でも根こそぎ奪ってやりたかっただけでした。
ただ景品の中に先程のロボット対戦モノの人形があると柳眉もひん曲がろうってもんですけど。1プレイ300円だってのに流行ってるみたいですね。
他の景品はぬいぐるみだとかやたらめったらデカいお菓子の箱だとか腕時計だとか携帯ゲーム機だとかetcetc...
「高そうな奴は大体重りが入ってるのがセオリーですからね。此処は堅実にお菓子から攻めますか……。」
チョコレート菓子が詰まっているだろう六角柱状の箱に狙いをつけてアームを操作。
蓋の隙間に上手くぶちこんで引っ張らんとするのですがなんということでしょう、アームの爪先が太くて入りません!
アーム状、じゃなくて嗚呼無常。私の100円は悲しみに包まれてお亡くなりになりました。
「……いやいや、アームが太いって事はぬいぐるみが狙い目って事ですよ!」
でもめげないんです、れっつ2回目。
■因幡幸子 > うぃーん
うぃーんうぃーん
がしっ。
「おっ」
やる気が微塵も感じられないアームがぬいぐるみ群に突撃し、存外やる気があったのか何かを掴み上げて私のお目目が数度瞬く。
白い紐、いや棒?ロープ?あれは一体……と期待が篭りしかして次にはずっこけそうになってガラス壁に額をごんとぶつけて少し痛い。
「……イカのぬいぐるみって需要あるんですかね……?」
アームが掴んだのはイカのぬいぐるみの足部分。ずるりと水揚げ宜しく引きずり出された大きさにして20cm程の本体は私の耳のように真っ白で
つぶらな瞳が可愛いといえば可愛いのかもしれない。受け取り口から取り上げて訝しげに眺める私の姿は宛ら名品を鑑定する人に見えなくもなかった。
うーん、いい仕事してますねえ。
■因幡幸子 > 結局この後も何度かUFOキャッチャーに興じ、イカの他にタコやクラゲのぬいぐるみを手に入れる事になりました。
此処は寿司屋の生簀か何かか。そう呟くも応える者は居るわきゃなくて、その内に店内のBGMに耳をやられて脱出する事にもなったのです。
「あ~……ていうか散財している場合でもないんですよね。何かアルバイトでも探さないと……なんかこう、私向けのがあればいいんですけどね。
楽に稼げる奴が一番なんですけど……。」
少なくともプロゲーマーは無理だな…と唸りながら帰る秋の午後。帰りに求人誌でもかっさらって行きましょうかね!
ご案内:「ゲームセンター」から因幡幸子さんが去りました。