2017/02/19 のログ
ご案内:「美澄 蘭のアパート」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 「…だから、多分確率物理学の単位は落としたと思う。
1年生のときの貯金もあるから、それ1つ落としたくらいじゃ留年はしないけど…」
ベッドの上に仰向けになって、携帯端末を使って通話をしている蘭。
通話の相手は…
『…そう…難しいのに頑張ってたから、ショックよね。
…引きずらないようにね。まだ他の講義もあるわけだから』
蘭と似た声を持つ女性。彼女の母だった。
■美澄 蘭 > 「…うん…今日もこれから図書館に勉強しに行って、帰りに買い出しして来ようかと思って」
「よいしょ」と小さく声を出しながら、身体を起こす蘭。
『………こういうとき、傍にいれたら良いのに、って思うわ』
通話の向こう側で、母が苦笑いを浮かべているのが声から想像出来た。
「…お母さん、「相談は同じ年頃の子と出来るのが本当は理想よね」って言ってなかった?」
不可解そうに眉を寄せる蘭。
■美澄 蘭 > 『ああ、それはもちろんそうよ。
頼ってもらえたら嬉しくはあるけど…ほら、子どもの頃の感覚って、いつまでも覚えていられないでしょう?
出来るだけ、沿った対応してあげたいけど…限界はあるな、って。
そうでなくても、これからの蘭の人生で、一番長く一緒に過ごすのは同年代の子達でしょうから、人の繋がりはあった方がいいでしょう?』
「………。…じゃあ、どうして?」
蘭からすれば、自らの母ほど「年頃の少女」の感覚を自分のものを引き受けている大人はいない…というか、端から見ていると引き離せずに苦労している印象しかないのだが。
とりあえず、先を促した。
『ほら…一人暮らしだと身の回りの些細なこと、いちいち自分でやらないといけないでしょう?どんなときでも。
そういうのがしんどいときに、支えてあげられたらいいな、って思って』
「………ありがとう。その気持ちだけで、すごく嬉しい」
恋心は恋心として、生活は生活として別にある。
そのことを改めて教えてくれる母はやはり大人なんだな、と思う蘭。
やや目を伏せがちにして、静かに礼を返した。
■美澄 蘭 > 『母親だもの、当たり前でしょう?』
そう言って、野の花のように朗らかに笑う母、雪音だったが…ふと、何かを思い出したように
『ああ…そういえば。
もう話聞いたかもしれないけど、来年度から私も検査とか受けようと思ってるのね』
と切り出した。
「ああ、おじいちゃんもあの研究所はそれなりに信じてくれたみたいね。
異邦の話で研究員さんと楽しんでるって聞いてるわ」
蘭も頷く。
■美澄 蘭 > 『そうそう…それでね、お父さんも晃も普段は本土(こっち)で仕事があるから、そっちにずっと住むわけにはいかないんだけど、ある程度まとまった日数そっちに滞在することが増えるだろうから、家族が寝泊まりする個室がある部屋に蘭が引っ越してきたら経済的には楽だね、って話になってるのよ。
蘭さえ良ければ、協力してくれると嬉しいんだけど…』
「あー…まあ、私はいいけど…
引っ越し、1人だとちょっとしんどいかなぁ」
複雑な表情を浮かべながらも、了承する蘭。
悩みで生活のバランスやらを崩してから立て直している最中なので、親が関わる話を突っぱねる通りもなかった。
『引っ越しもそうだけど、物件探しも1人だと大変だろうから、皆が入れ替わりで色々サポートしに行くからね』
「………本当に、ありがとう」
ぽつりと零す蘭に、通話の向こう側で雪音が快活に笑った。
『何言ってるの…子どもをサポートするのは、大人として当然のことでしょ。
蘭が「離陸」するまで、きちんと見てるからね』
「巣立ち」ではなく、「離陸」。
社会で生きていく上での軌道に乗ることを、蘭の家族はかなり意識していた。
■美澄 蘭 > 「…私、頑張るから」
「ありがとう」はもう言った。謝る場面でもない。
だから、蘭は今後に向けての決意を応えにした。
『そうそう…まだ難しい講義の試験残ってるんでしょ?
せめて、悔いがないようにね』
朗らかでいて、優しさを感じさせる口調で励ます母。
「うん…そのつもり。
それじゃあ、私出るから…来年度に向けた話は、またテストが落ち着いた頃にね」
『ええ…それじゃあ、頑張ってらっしゃい』
通話口で送り出してくれる母の声を聞いてから、蘭は通話を切る。
そして、ブリーフケースやらを手に取って、外に出て行った。
ご案内:「美澄 蘭のアパート」から美澄 蘭さんが去りました。