2017/08/09 のログ
クローデット > クローデットは、労力を使う側だったのもあって軽く腹ごしらえをしてから解呪に赴いたわけだけれど…青年が”獣”の姿に変ずる少し前から食べ物を口にしていないとすれば、ちょっとした断食だろう。
思いきりかじりつく様子を微笑ましく見ながら、クローデットは紅茶を軽く啜り…それから、シリアルに牛乳をかけたものと、ジャムとバターを塗ったバゲットを二切れほど。

青年がある程度空腹を満たすまで、クローデットは口を開かず、静かに朝食を摂っていた。

ヴィルヘルム > その外見に似合わず,青年は決して小食ではなかった。
そして“怪物”の姿をしていた数週間の間,青年は簡素な食事しかとっていない。
だからきっと,貴女が想像している以上に,青年はよく食べた。
言葉を交わすことはなくても,こうして一緒に食事をしているのが嬉しくて,青年の表情は明るかった。

「…………。」

紅茶を啜れば,幸せそうな溜息。

クローデット > 「…お口に合ったようで、何よりです。
あまり手の込んだものではございませんから、嗜好というよりは、文化の問題かもしれませんけれど」

質素なラインナップながらよく食べ、幸せそうに溜息を吐く青年の様子を見て、くすりと笑みを零す。
この島の文化圏とは、真っ向から対立するだろう朝食のあり方だったから。

「………食後にもう一杯、何か飲まれますか?」

最初は、普通に何か話を切り出そうかと思ったのだが…話すべきことはあまりにも多岐に渡るし、朝という時間に相応しくない、重い話も多い。
だから、会話の時間を求めるかどうかを確認するかのように、飲み物を薦めるに留めた。

ヴィルヘルム > 「この島に来てからは,なかなか朝から準備するのが大変だったから…
 …こんなにちゃんと朝食を食べたのは,久しぶりかも…。」

青年の故郷はと言えば,どちらかと言えばクローデットの文化圏に近い朝食を常としていた。
だから違和感も無かったし,それこそ,どこか懐かしいとさえ感じられた。

「……うん,それじゃ,紅茶をもう一杯もらっても,いいかな?」

貴女の意図を察したわけではないだろうが,青年はそう答える。

クローデット > 「…ヴィルヘルムはしばらく苦労されていましたから、尚更でしょうね」

そう言って、苦笑いを浮かべる。過去の自分の所業に、やはり責任を感じるのだ。

「…ええ、承りました」

それから、再度紅茶の準備をする…二杯目ということで、比較的簡素な手順だ。

「はい、どうぞ」

そして、再度青年のティーカップと、自分のそれに紅茶を注ぐ。

「…今日は、これからどうなさいます?」

自分のティーカップに口を付けながら、世間話のように切り出す。
…実際のところ、真面目に考えれば意外と込み入った話にもなってしまうのだが。

ヴィルヘルム > 「…あ………。」

貴女の表情から,その心情を察した。そして青年は少し考え込んで…

「クローデットの所為じゃない…って言っても,納得できないだろうし…
 …その,えっと…その分,また遊びに来ても良い,かな?」

…貴女の罪の意識を軽くするのと同時に,自分の一番望んでいることを伝える。
注がれた紅茶を,少しだけ啜って…

「…まだ,すぐに表に行くわけにもいかないし…。
 クローデットにお願いできるなら,落第街の家に戻って,片付けたり準備したり……するくらいかな。」

…青年は,自分の立ち位置をある程度正確に理解しているようだった。

クローデット > 「………構いませんけれど、人の弱みにつけ込むおつもりがないのでしたら、もう少し別の仰るようをなさるべきですわね」

来訪自体は穏やかに了承しつつも、刺すべき釘は刺す。
最終的には自分が納得するかどうかなので仕方がないが、もう少し理屈で説明し、誘導することを覚えた方が良い。

「………そうですか。
転移術式ならば、使い切りの護符がございますので、いくつか差し上げますわ」

青年の理解が早くて助かった。口元を綻ばせて、また紅茶を啜る。

ヴィルヘルム > 「ごめんなさい,…そういうつもりは無かったんだけれど…。」

青年は貴女の言葉に,素直に反応した。
実際,理屈で説明するようなことは,苦手としていたから。

「…何だろう,ごっちゃになっちゃったけれど,
 クローデットにはもう“加害者”だなんて思ってほしくなくて…
 …それとは別に,僕が…また,遊びに来たいって,思ってるから。」

青年はその発言に至った経緯を,きちんと説明しようとした。
といっても理屈としては稚拙だったが,少なくとも誠意は伝わるだろう。

「…ありがとう。僕が魔法を覚えれば,そんな面倒なことしてもらわなくても,大丈夫なんだけれど。」

それよりも,表に出るための手筈を整えるのが先かもしれない。
と言ってもこれは,クローデットの都合もあるのですぐにとはいかないが。

クローデット > 青年が素直に謝罪すると、優しい笑みを作った。

「…せめて、相手が説得「されてくれる」言い訳の作り方くらいは、お考えになった方が良いでしょうね。
誰も…自分が悪かったなどと、本当は思いたくないのですから」

「お気持ちは、有難く受け取りますけれど」と、さらりと付け足して紅茶を飲む。
青年の最低限の目標は、無事達成されたらしい。…いや、既に理解はしていたのだが。

「そもそもが、島で捕われることを望まない、わたしの保身のためですから。ヴィルヘルムがお気になさる必要はございませんわ。
転移魔術は、長距離を望まなければ難易度の割に便利ですけれど」

穏やかにそう言って…ティーカップを一度置く。
そこには、少しばかり意地の悪い、「魔女」の微笑が浮かんでいた。

「…卒業研究は、まだデータの取得中ですので…今ならば、比較的時間はございます。
近いうちに…改めて、あなたが「ヴィルヘルム」として表に出るための、「打ち合わせ」を致しましょうか?」

「ヴィルヘルムが望むなら、ですけれど」と…「魔女」の意地悪さは纏わせつつも、楽しげに笑んだ。

ヴィルヘルム > 「…何ていうか,難しいんだね。
 でも,少しだけ分かるような気がするし……うん。」

この青年の最大の美点は,その愚直なまでの素直さだろう。
けれどそれだけでは生きていけないのも事実で,青年自身もそれは感ずるところだった。

「気にするよ……それに,もしクローデットが捕まったりなんかしたら…!!」

瞬時,感情が爆発的に膨れ上がって……青年は自分でそれを落ち着かせようと,紅茶を啜った。
素直で愚直な青年であるだけに,危うさを感じるだろう。クローデットが捕らわれれば,形振り構わず,助けに飛び込むだろうという。
青年は小さく,息を吐いて…

「今日じゃなくても,少しずつ教えて貰えると,嬉しいかな……。」

そう言って笑う表情には,もう膨れ上がった感情の色は無い。

「…うん,この島で生きていくにしても,外に出るにしても,
 表で生きていくための勉強も,練習も,しないといけないと思うし…お願いしても,いいかな?」

クローデット > 青年の愚直さに、クローデットが母か姉かのごとき微笑を浮かべる。
それだけでないしたたかさを身につけて欲しいとも思うし…一方で、それを失わないで欲しいとも思った。だが…

「………。」

「捕われる」という言葉に過剰とも思える反応を示しかける青年に、驚いたように目を見開く。
先日、「罪を償う」と話した時は、ここまで強烈な反応をしなかったはずだ。「優しい怪物」の仮面を、脱いだからだろうか。

…「罪を償う」ことを選んで、この青年を破滅に追い込んでしまったら、そのとき、自分は…?

…しかし、青年が感情を落ち着かせて、通常の会話に戻れば、クローデットも、一度目を閉じて、平常心を取り戻す。

「ふふふ…社会勉強に白魔術に、転移魔術に「打ち合わせ」。
忙しくなりそうですわね?」

そう言って、楽しげに笑みを零した。

ヴィルヘルム > 青年の思考は単純であった。

貴女が貴女の意志で,罪を償おうとするのなら,青年にできることは多くない。
だが,貴女の意志によらず“捕らわれる”のなら,全てを賭してでも貴女を救うだろう。

しかし,いずれにせよ罪を償うにはそれを“罰する”立場の存在が不可欠である。
青年は,冷静さを回復したが,貴女を罰する存在に対して自分が寛容で居られるとは,思えなかった。

……それを,貴女が望まないとしても。

「……クローデットの卒業研究の邪魔だけは,しないように気を付けるよ。」

既に邪魔をしてしまっているのではないかという心配もあったが,
クローデットなら,それを隠さずに伝えてくれるだろう。そういう信頼もあった。

クローデット > 「ふふふ…それでは、今月中にどれか1つは目処をつけなければなりませんわね。
「打ち合わせ」が、優先順位と難易度の兼ね合いで一番望ましいでしょうか?」

そう言って、楽しげに笑う。
そして、再度の招待なり、訪問なりの相談をして、転移魔術の護符を渡して…クローデットは、青年を送り出すのだろう。

クローデットは、青年の前近代的な単純さを…「罪を償う」「罰し、罰される」ことへの考え方を、まだそこまで理解出来ていなかった。
そこまで掘り下げた話は、まだしていないし。

もし知ったとき、クローデットは、どのように青年と…自分の将来と、向き合うことになるのだろうか。

しかし、それはまた、別の話なのである。

ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。
ご案内:「クローデットの私宅」からヴィルヘルムさんが去りました。