2015/06/14 のログ
■岡部 吹雪 > 忙しなく立ちとしゃがみを繰り返す両者。
格闘ゲームとは制空権の奪い合いである。
ただそこに攻撃を振っているだけに見えようが、プレイヤーが認識するのは絵ではない。
発生速度や判定の強さ。硬直の足し引き。
彼は数式で殴り合っているようなものなのだ。
フェルパーの牽制で距離が開く。
ハイエナはショートソードをくるりと回す挑発モーションを見せると
間髪入れずそれをキャンセル! 岡部はコマンドを入れ込んだ。
瞬時にフェルパーの背面から現れたハイエナは、不意に斬撃を見舞う!
■桜井 雄二 > (攻撃と攻撃の繰り返し)
(闘争と闘争のぶつかり合い)
(生命と生命の奔流がそこにある)
(入れたものはワンコイン、賭けたものはプライドそのもの)
(フェルパーが背中から切り裂かれて一歩前へ踏み込む)
(その瞬間、桜井はレバガチャを始める)
(バックスタブダメージはともかく、隙を軽減するためである)
(コンボが繋がらないほどの最小の隙によろめきを軽減した後)
(絶妙な位置でフェルパーの立ちPがハイエナに刺さった)
(そのままコンボを入力していく)
(立ちPを数度、屈Pで浮かす、跳躍して追いつく、空中コンボ)
(そこからの空中コンボの〆に使う、普段なら隙の多い技)
(“雪童”でコンボを完遂する)
(桜井がニヤリと笑う、これならバックスタブダメージにも負けない火力が出る)
ご案内:「ゲームセンターアンファンス」から岡部 吹雪さんが去りました。
ご案内:「ゲームセンターアンファンス」に岡部 吹雪さんが現れました。
■岡部 吹雪 > 「いいねェ、そうこなくっちゃよ!」
壁に打ち据えられ体力バーは残り4割。手痛い反撃には相違ないが、それはそれ。これはこれ。
ダメージの蓄積によってモニター下部のゲージが点灯。
受身で着地の隙を消すと同時、画面が暗転しハイエナは姿を大きく変える。
その名に相応しい、異形の獣に。
牽制の性能ではリーチの差もあり押され気味だったものが、醜悪な爪を得たことにより逆転。
体力差を感じさせない程に、ハイエナはラッシュをかける!
低空ダッシュからの鋭い飛び込み!
ガードの上から着実に体力を削る猛攻!
攻撃後の隙をキャンセルし裏回りしもう一撃!
着地に合わせて下段下段中段下段!
全てを防ぎ切る桜井の動体視力に息を巻くが、岡部はそこで終わる大人じゃない。
大人げないタイプの大人だ。
投げを仕込むがフェルパーの投げ抜け。
仕切り直しとばかりに互いに硬直は0からのスタート。
無敵技で切り返すか、それとも距離を取るか。
はたまた堅実にガードを固めるか。
岡部の選択は、先程のように暴れると踏んでの一点読み!
ガード不能のコマンド投げにより、画面が暗転しおどろおどろしい闇へと染まる!
大振りに振り被った爪がフェルパーに触れれば、勝利演出が確定する……!
■桜井 雄二 > …………!
(ハイエナの能力、完全獣化を前に押されるばかり)
(ガードの上から体力は削り取られていく)
(一発でも攻撃を食らえば取り返しがつかない)
(その覚悟でガードを重ねていく)
(投げぬけの直後の一瞬の攻防)
(その瞬間、桜井はコマンドを叩きつけるように入力していた)
(下、下、全ボタン同時押し)
(瞬間、フェルパーが剣を天へ向けて掲げた)
(能力解放)
(ゲージを消費して最強形態へと短時間変化するその技)
(一瞬の無敵時間でガード不能の爪をすり抜ける)
岡部先生ぇ!!(叫びながら複雑なコマンドを入力する)
(勝つにはこの瞬間しかない)
(相手のモーションに割り込むようにフェルパーの剣が白の極光を集める)
(そして獣化したハイエナに振り下ろす刃と共に輝きを叩きつけた)
(コンボカウントが上がり、自分の超必殺ゲージが空になる)
(そして)
………!(桜井は右手を振り上げた)
(戦いに勝ったのは、桜井のフェルパーだ)
■岡部 吹雪 > 歓声。ただ歓声あるのみである。
強さは理屈ではない。彼らを焦がして止まない衝動なのだ。
桜井は自らの強さを証明し、ギャラリーは証人となったのだ。
「強くなったじゃねえか……桜井。」
誰に聞こえることもなくぽつりと言い残すと、岡部は、敗者は立ち去った。
その表情は満ち足りているが、しかし、しかし彼は諦めてはいない。
次こそ勝つのは俺自身だと、強き決意を胸に秘めて。
■岡部 吹雪 > なお、翌日また普通に負けた。
ご案内:「ゲームセンターアンファンス」から岡部 吹雪さんが去りました。
ご案内:「ゲームセンターアンファンス」から桜井 雄二さんが去りました。
ご案内:「女子寮/自室」に焔誼玖杜さんが現れました。
■焔誼玖杜 > 「…………」
【ゆっくりと目を開く。
そこは暗い、けれどすでに馴染みを覚えた寮の自室。
背中から伝わる程よい反発からすると、自分はベッドに寝かされているのだろう。
起きようとはまるで思わなかった。いや、全身が軋むように痛み、寝ているだけでも辛いため、起き上がれなかったというべきか。
少女はぼんやりと、自身の記憶を辿る。
たしか明け方に路地裏へと向かい、そこで随分ときわどい、命を削り合う様なやりとりをした。
その際にイチかバチかの切り札を用いて気を失ったのだが……生きているという事は、無事逃げ延びたのだろう。
……それか、あの相手を焼き殺したのか】
『目が覚めたか』
【そんな少女へ、低く、高く、唸る様な、歌う様な、男の様な、女の様な……声がかけられる。
その、何度聞いても一定の認識を得られない奇妙な声の主は、少女の平たい胸の上に乗っていた。
それは火の玉だった。
それは獣の四肢を生やした炎だった。
それは角を生やし濃く赤い瞳を持った炎だった。
それは炎の体を持った、獣だった。
……ただし、手のひらサイズのスケールだったが】
■焔誼玖杜 > 『気分はどうだ』
「……痛い、重い」
【炎の獣へ無感動に視線を向け、少女は短く答える。
獣の重さはさほどでもないのだが、胸の上に乗られていれば一言言いたくもなるのだろう。
『それはそうだろう』と、獣は苦言を無視し、痛みにだけ答えた】
『なにがあったかは、理解しているな?』
【問う獣に、少女は「わかってる」とだけ答えた。
連続した魔術行使による精神的疲労、つまり無気力感。
切り札である神格の一部顕現を行ったための、精神力、つまり心の摩耗……無感動感。
今の少女は、何をしようという気力もわかず、生き延びた事にも喜びを覚えることはない。
これが少女の持つ魔術、能力による代償だ。
無気力感は、疲労である。暫くすれば回復するだろう。
だが、摩耗した心は……そう簡単には元に戻らない。
回復するには長い時間をかけた治療か、摩耗した心を揺り動かすような出来事を経験していくしかないだろう】
■焔誼玖杜 > 「あなたが運んでくれたの?」
【それはただの事実確認。
自分がどうやって自室へと戻ってきたのか、その確認だ。
獣は『ロビーまではな』と、答えた。
獣は召喚された直後は、二メートルほどの大きさが在り、玖杜を大きな顎で銜えて襲撃者から逃走した。
それからしばらくは路地裏で玖杜の目覚めを待っていたのだが、目覚める様子がなかったため、日が昇ると同時に寮へと運んだのだ。
突然現れた異形の獣に女子寮は騒然となったものの、今の小さな姿に変化した獣に淡々と説明をされ、数人の生徒によって自室へと送り届けられた】
「……そう」
『後で礼を言っておけ。それが人間の礼儀だろう』
【獣の言葉に頷くと、少女はこみ上げてくる空腹感に、眉をしかめた。
玖杜の魔術も能力も、精神的な代償を支払うものだ。
しかし、その効果……肉体の限界を発揮させる暗示魔術によって損耗した筋組織を回復させるには、当然多量のエネルギーが必要になる。
となれば、明け方から夜までずっと眠り続けていたのだから、空腹を覚えて当然だった】
■焔誼玖杜 > 『腹が減ったか』
【獣の言葉に少女は答えない。
だが、どうしたものかと考えてはいた。
空腹はまだ耐えられないほどではない。人間一日食事を抜いたところで、とりあえずは問題ないのだ。
けれど、体を回復させるには十分な栄養を補給しなければならない。
ならやはり、何か食べる必要があるのだろうが……この体を引き摺ってまで食事をしようという気力は、わかなかった。
食堂に行くにしても、買いに行くとしても……動くのが億劫で仕方ない。
どころか、体中痛くて起き上がる事さえためらわれるのだ。
空腹感がいくら強くても、なかなか行動に移す気にはなれなかった】
■焔誼玖杜 > 「…………」
『食事くらいは取れ。回復までが長引くぞ』
【獣のまるで親の様な小言には何も答えず、少女は瞼を閉じる。
なにか食べたい気持ちは強かったが、一先ず動く気になれるまで寝ていよう。
幸い空腹を感じる以上に疲労が濃かったため、瞼を閉じればまもなく、眠りに落ちることが出来たのだった】
ご案内:「女子寮/自室」から焔誼玖杜さんが去りました。