2015/07/08 のログ
ご案内:「常世港・第三埠頭」に緋群ハバキさんが現れました。
緋群ハバキ > 太陽の光は燦々と。テスト期間の終わり際、慌ただしい学生達の雰囲気もこの常世港第三埠頭には無縁なものであった。
数人の釣り客が竿を手に、陽光に照り返しで煌めく水平線をぼんやりと見つめる光景。

その中に、少年の姿があった。
多機能ベストに日除け帽を被り、釣り竿の先のウキを見つめ太公望を決め込む姿の唯一の異彩は赤々と靡くマフラー。

「うーむー……」

脇に置いた缶コーヒーを一口啜り、微動だにしないウキに渋い顔を向けている。

ご案内:「常世港・第三埠頭」に久喜棗さんが現れました。
緋群ハバキ > 缶コーヒーの脇に存在するバケツの中身は、来た時に汲んだ海水が在るのみ。
いつからこうしているのか余人に知れるものではないが、つまるところ――

「うぅぅーん……」

坊主なのであった。
唸り声は弱々しく。そもそも何故彼は釣りに興じているというのか……?

久喜棗 > 燦々と降り注ぐ太陽を麦わら帽で防ぎ、手には釣り竿
いつものごとく釣りに興じようと埠頭にやって来た棗は、視界に以前見たことのあるたなびくマフラーを見る
マフラーの彼の近くまで歩いてゆき隣に場所取り声をかける

「どうじゃお隣さん、今日は釣れておるか?」

空っぽのバケツを覗きながらそんなことを尋ねる

緋群ハバキ > 「おぉう? おー、棗ちゃんさんだ」

片手を上げて挨拶を向けるのは以前図書館で出会った小さな鬼。
人懐こそうな笑みが今は少し力ない。

「全然。ほんとに釣れんのかなここ……棗ちゃんさんも釣り? 好きなの?」

がさがさと脇に置いたコンビニ袋から缶コーヒーを棗へと差し出し、問いかける。

久喜棗 > 「ちゃんさん…? 敬称は一つにせい、ややこしい」

ツッコみながらバケツの中身と少年の表情から返事を聞く前にだいたいを察する
釣れていないのだろう

「そうか、ここはそこそこ良い釣りスポットなのだがなぁ
 まぁだが釣れるか釣れないかなどしょせん運の要素が強い、あまり気にするでないよ」

言いながら自分の釣り針に餌を仕掛け、竿をしならせ海へと飛ばす
針は着水し、ウキがプカリと浮かび上がる

「うむ。年寄りの暇つぶしとしては最高だからのう
 とはいえこの島に来てからはそこそこ忙しいので頻度は減ったがな…お主はもう試験はよいのか?」

こんなところで釣りなどしてるぐらいだ、もう彼のテストは終わったのだろう
そんなことを思いながらハバキへと尋ねる

緋群ハバキ > 「だって年上じゃない? ちゃんだけだとなんかしっくり来なくて……」

肩を竦めながら自身も一旦針先を回収。ふやけてしまった餌を捨て、タッパーに入った練り餌を着けて。
そっとテトラポットの傍に着水させると、ぼんやりとその様を眺める作業を再開する。

「年寄りには見えないんだけどねぇ……
 んー。諦めるものは諦めて取れるものは取る! それが俺のやり方さ……!!」

爽やかに言い切って歯を光らせる。
つまり、ダメなものはもう諦めたらしい。

久喜棗 > 「そうか…いやお主がそう呼びたいなら止めはせぬが
 ……ならばむしろちゃんがいらぬのではないかのう」

ハバキの横に並んで魚を待つ
常世島の海の透明度はあまり無く、よほど海面まで魚が上がってこないと魚影は確認できない
そのためいるかどうかもわからぬまま魚を待つのが常であった

「人を外見で判断してはいけぬぞハバキよ
 お主こそその見た目で忍者ではないのだろう?」

本心では完全にニンジャだと思ってはいるが、それは口に出さず

「まぁ…そのやり方で行けるなら問題はないのじゃろうが」

学園の単位システムは割と自由だ
必須の単位というのも少なく、何だったなら学業以外の単位でも進級できてしまう
なので取れるものだけ取るというやり方でも、一応は大丈夫なのだろう
そう納得する

「そろそろ海開きだのう…」

ハバキに言うという風でもなく、水面を眺めながら呟く
ウキは未だに魚が来ることを知らせずにプカプカと浮いていた

緋群ハバキ > 「さんオンリーにはマイクロボディ……」

なんだか失礼な事をのたまいつつ、アタリを期待して時折竿を動かす。
昼を過ぎたこの時間帯、魚の活性は落ち丘釣りに適しているとは言い難いが、こうやって糸を垂れている時間の方が長いのが釣りというものである。

「ぇエ゛ッ゛!? 
 ……あ、は、はいそうです。人は中身。見かけじゃない。忍者じゃない」

上擦った声で返す辺り、やはり忍者の疑惑は濃い。
だがあくまでも本人は否定するのであった。

「海開きかぁ……一緒に行く相手も居ないしなぁ
 砂浜で真夏のアバンチュールも期待できないし……
 燦々と照りつける太陽……白い砂浜……鮮やかな水着……眩しい白い肌……」

トリップするようにぶつぶつと青少年の願望を垂れ流しながら、コーヒーを一口。

久喜棗 > 「身体の事は関係なかろう身体の事は
 それならばお主の事も=サンづけで呼んでやろうか?
 えぇ、ハバキ=サンよ」

笑顔を少し強張らせながらそう応える

「しかしお主も、忍者でないのならいい加減マフラーぐらい外せばよかろうに
 そろそろ夏だ、いい加減暑いじゃろうそのような格好では」

ハバキのマフラーを指差しそう指摘する

「アバンチュールなど期待せずとも、男友達でも誘って海に向かえばよかろう
 それに海で相手探しをすることも出来るかも知れぬしな…
 そもそもお主、誰かコナをかけたりしておらんのか?」

言いながら竿を離し、地面に固定させる
長期戦覚悟の放置の構えだ

緋群ハバキ > 「アイエエ……やめてください……アイエエエ……」

サイバーパンクな情けない悲鳴を上げながら、冗談めかして首を横に振る。
マフラーについて言及されれば、あー、とため息のようなものを口から漏らして空を仰ぎ。

「正義の味方ってさ、やっぱ赤マフラー着けてないとダメな気がするじゃん?
 という訳で俺は正義の味方なのです。多分
 あと意外と暑くないよ。通気性抜群だしな!!」

あいかわらす爽やかに笑うが、首元汗だくにして言っても全く説得力が無い。
視線を海の方へとやって、棗のそれに合わせない辺りその自覚はあるのかも知れないが。

「男友達……雄くんとかかー。
 アウトドアな遊びするタイプなんだろうか彼は……
 っていうか、意外とその手の話題食いついてくるね棗ちゃんさん。コナかける相手なんていないよ!」

久喜棗 > 「ふむ…お主、正義の味方だったのか?
 てっきりただのコスプレ好きなのかと思っておったよ
 あと通気性が良いにしては妙に汗が…まぁよいか」

笑顔に反して汗だくの姿を見てどうにもやせ我慢しているように思えてならない
これ以上ツッコんでは可哀想だろう、と話題を止める

「他人の恋路に興味が無かったり、ちょっかいを出さなかったりする女など存在せん!」

珍しく語気を強めてそう断言する

「まぁ、それはともかくとしても。せっかく歩いてゆける距離に海があるのだ
 誰と行くかはともかく行かねば損というものじゃろう
 それに彼女がほしいなら自分から攻めてゆかねば
 相手が居ないからという理由で引いておったらいつまでも相手など出来ぬぞ?」

自分も大して経験が無いのを棚に上げ、少女は少年へとうとうと恋愛論を語っていく

緋群ハバキ > 「そ、正義の味方の事務員です。
 コスプレ好きでもあるけどな!!」

汗だくなのは何もマフラーが暑いだけではないのかもしれない。
ともあれ、話題の転換にはほっと一息をつく。露骨に。
隠し事が苦手な性格の少年であった。

「えっそんなに……?
 いやまぁ、そりゃあ、そうなんですけど……」

普段の雰囲気とは一味違う、若者に青春の貴重さを説く棗の姿に腰が引けつつ。
自身も竿立てに竿を預け、真面目な態度で話を聞く。
何しろ自分よりも遥かに長い時を生きている者からの箴言なのだ、正座もしようというものであった。

「攻めの態度……む、難しい事を仰る! 結構彼女募集中言うてるのに!!
 でも言われてる事は至極真っ当に正論なので反論も出来な――、あ」

と、ふと思い出したかのように一本指を立てて。

「棗ちゃんさん、年上の女性としてお伺いしたいんだけど。
 ……年下の、常日頃顔合わせてる男から海行こうって誘われるのってどう思う? 不気味だったりしない……?」

久喜棗 > 「事務員…?」

と、ハバキの言葉を反芻して疑問の表情を浮かべる
何処かの委員会にでも属しているのだろうか、もしかしたら図書館で会った時に聞いたかもしれないが

「うむ、下世話な話だがな
 だが下世話な話程首を突っ込みたくなってしまうのが女の習性というものよ」

威張るような話ではないことを堂々と主張する

「彼女募集中って、それではまるで誰でも良いから来てくれと言わんばかりではないか
 よくて冗談か、ヘタしたら軽蔑の目を向けられてしまうぞ?」

呆れた目をハバキへと向ける

「冗談でなく本当に彼女がほしいのならば…
 ちゃんと彼女にしたいとおもった者に対して好意を隠さず、その人自身を見てやることじゃ
 極論を言えばそれだけで良い、あとはその者がお主を好きになるかどうかは別の話じゃがな」

ハバキの問いに対してうーん、としばらく悩んで

「そこは、本当に相手次第だからのう…
 お主が誰を誘いたいのかは知らぬが、きちんと関係を築けておるのならあまり問題ないのではないかな
 逆にほとんど関係がない者を誘っても笑顔でスルーされるだけじゃろうな」

緋群ハバキ > 「ああ、一応公安委員会なんだけどね。下っ端のペーペーです。
 まぁ入って半年で事務方ならそんなもんだとは思うけど」

軽くそう言って、呆れた目に視線を逸らす。
実際普段の奇行も相まって白い目で見られる事に慣れて久しい。
そんな言動の彼の戦果は推して知るべし、である。

「好意を隠さず、その人自身をかー。いいこというなあ……!
 ……まぁ、実際の所色恋沙汰ってよく分かんないんだけどねぇ。
 憧れはするけど実感が持てないというか……この歳になるまで、女子とまともに接触を持っていなかったというか……
 お、おのれ……おのれ三重県の山奥……」

頬を掻きながら恥ずかしげに己の経験不足を語っていたが、よくよく考えれば思春期を過ごす少年としてその生活は如何なものなのか?と過去の思い出を振り返りブルーになるハバキ。
実際、誰かを好きになった思い出は、皆無であった。

「でーすーよーね。
 いやまぁ、よく面倒見てもらってるしたまに褒められたりもするから嫌われてはないと思うんだけどさー。
 模擬戦で怪我させちゃった後も普通に接して貰ってるし。こっちが気不味くなる位に……」

久喜棗 > 「ああ、なるほどのう
 それでこの前蒼狗と一緒におったのだな」

合点がいった、といった表情を見せる

「まぁ……知ったふうに言っておいてなんだが
 儂もそう経験豊富というわけではないからのう
 せいぜいが一般論じゃ
 儂も駆け引きなどは知らぬ」

少し気まずそうに視線を外す
その後ハバキの言葉に興味深そうに頷き

「ふむ…実際、相手がお主のことをどう思ってるか、それは別としてだ
 結局そんなものは相手の心の中にある、そういった異能者でなければわからんことよ
 お主はその者のことをどう思っておる?
 それが一番肝心なことじゃな
 少なからず気持ちがあるなら、後は実行に移すだけではないかな
 結果は保証できぬが、別に失敗したって死ぬわけではない」

嬉しそうに笑みをたたえながらそう無責任に後押しする

緋群ハバキ > 「そゆ事。まぁ、狛江先輩とは部署は違うしあんま喋った事は無かったんだけど」

竿を引き上げ、いつの間にか餌が無くなっていた針先にため息を漏らしつつ、先だっての邂逅についての言葉に答える。
組織が巨大になれば、先輩後輩であっても直接顔を合わせる機会は乏しくなる。
実際、図書館でも機会が無ければすれ違って居たのかも知れない。

「いやいや、長生きしてる人の一般論ってのはそれだけで含蓄があるんじゃないかなぁ。
 亀の甲より年の功とか言うし……って」

ひだまりのような笑みでそう言われては、こちらも笑顔を返す他ない。
自身が件の先輩をどう思っているか。己に問いかけて明確な応えが出る訳ではないが。

「……そうだね。先ずは自分がどう思ってるか、か……
 何かの形でお返し出来ねーかな、って常々思っては居るんだけど」

尊敬、という言葉に間違いは無い。

「あと先輩の水着見たいし」

そして下心もやはり間違いは無いのであった。

久喜棗 > 「蒼狗は確か…特雑と言っておったかな
 結局説明を聞いてもどのような部署なのかはわからぬかったが…」

ハバキが竿を引き上げたのを見て自分の竿を見る
ウキは未だにアタリを知らせず静かな水面の上でプカプカと漂っていた

「まぁ、確かに歳はとっておるがな
 だが長年ド田舎に引きこもっておったからのう…
 儂の知識はどちらかと言うと食べられる山菜やきのことか、そういった方向に偏っておるのでな」

照れ隠しに頬をかきながらそう答える
目の前の少年は山奥で育ったと言っていたが棗は文字通り山で育った
世間知らずさでは負けてはいないだろう
島に来るまでスマホすら持っていなかったぐらいだ

「そうか…まぁそうだのう…」

しばらくあごに指を付け考える仕草をする

「関係が深ければその先輩とやらに水着をプレゼントするという手も使えるのだが
 これは一歩間違えればセクハラとも受け取られる諸刃の剣だからのう
 まぁしかし、海に誘うぐらいなら大丈夫ではないかな?
 いづれにせよ、これ以上は先輩とやらに直接聞いてみなければわからぬのう」

緋群ハバキ > 「あー。山暮らしだとその辺詳しくなるよね……」

しかし、そんな棗が何故常世島を訪れ現代文明と交わる事を決意したのか。
疑問は浮かぶが、突っ込んで聞く話でもない。
訳アリの人間も、人間以外もこの島には多いのだ。

伸縮式の竿を仕舞い、こりゃダメだなぁとバケツの水を打ち水代わりに埠頭のコンクリートへと撒く。
今日は引き上げ時のようだ。

「水着のプレゼント……その手が――!!
 この間の模擬戦と俺の観察眼で概算数値は既に把握している、ならば身体のサイズに合った水着を調達することも可能――!!

 ……あ、はい。セクハラですね。はい。
 アドバイスを参考に直接聞いてみる事とします……」

殊勝にそう返し、辺りの荷物を纏めて立ち上がる。時刻は既におやつの時間であった。

「魚の代わりに貴重な箴言を得られたのでよかった。んじゃまたね、棗ちゃんさんー」

久喜棗 > 「あとはそうだのう…狩りの仕方ぐらいか?
 現代人にはあまり必要のない知識ばかりよ」

自分も竿を引き上げる
どうやらこの時間は魚が居ないのかもしれない
ハバキに続いて引き上げの準備を始める

「結局…儂の方も釣れぬかったな」

竿をしまいハバキの方へ視線を向ける

「セクハラになるかどうかはお主の切り出し方次第だ
 上手くやればむしろお主の好感度も上がるだろう
 一番大切なことは相手の話をよく聞くことだ
 ま、お主の成功を祈っておるよ……では頑張れよ若者よ」

去っていくハバキを見送った後自分も帰ることにした

ご案内:「常世港・第三埠頭」から久喜棗さんが去りました。
ご案内:「常世港・第三埠頭」から緋群ハバキさんが去りました。