2015/08/19 のログ
ご案内:「◆速度Free(合法)3」に秋尾 鬨堂さんが現れました。
秋尾 鬨堂 > 歓楽区――
物部レーシングサーキット。

ここは、島内A級レースの開催地としての設備を備えつつも、
手続きさえ取れば一般学生にも広く開放されたサーキットである。

秋尾 鬨堂 > 本日はAUTOガレージTOKI主催の走行会。
一口ランチ二食分程度の参加費で、サーキットを走れるお得なプランである。

見れば、カートから競技専用車両、もちろん公道走行可能なクルマも多数。
それぞれ走行可能ゾーンと時間帯などで区切られ、和やかに時速200km/hを超えた草レースが開催されている。

秋尾 鬨堂 > サーキットには、大まかに分けて外回りをぐるっと一周するトラックと、その内側に備えられた分岐路/カーブが続くエリアがある。
マフラーからの大音量を響かせて飛ばしまくる競技車たちは、今日は外回りだ。
内側のテクニカルコースでは、レーシングカートが走る。
簡易かつ軽量、操作の覚えやすいカートは子供にも大人気。

秋尾は…そこにいた。
カートに乗って。
「そうそう、上手いネ 曲がる時は荷重、そうかかる力。自分の体の向きとか、タイヤにかかる力とか。意識するとイイ」
運転のレクチャーをしている。

ご案内:「◆速度Free(合法)3」に奥野清明 銀貨さんが現れました。
奥野清明 銀貨 > そうここは歓楽区、レーシングサーキット。
趣向を凝らし、整備されたコースを数々のマシンが唸りを上げて走り出す。
はずなのだが……。

外側のトラックに何故か馬が群れていた。四頭の黒い馬。
毛並みはつややかなベルベットにも似て、どの馬も精悍な肢体を持つ。
なぜ馬が?コンクリで固められたこのワイディングロードにおいて走ったら馬のひづめやばいのでは?
そんな疑問をよそに、そのうちの一頭に乗った少年が悠然とレーシングカートたちを眺める。
鞍も馬具も着けずに堂々とした姿勢で乗るその学生こそ銀貨だった。

サーキットの整備員たちもこれには苦笑い。

秋尾 鬨堂 > 「王子様、かな…?」
カートの運転席。視点は地の底のように低く、その低さゆえ感じるスピードは時速の二倍。
見上げるには、少々馬上は高すぎる。
だから。
「ドゥーイッ」
過剰なアクション!ハンドルを片手に、一瞬の逆立ち!
そして、倒立前転じみた動きの後。
カートゆえパイプフレームしかないボンネットに…膝立ち!

「真似しちゃあ、いけないヨ」
唖然とする周囲のちびっこドライバーたちをよそに、馬上の少年へにこやかに手を振った。

奥野清明 銀貨 > 馬たちはマシンから響く大音量にも、傍らを走りぬける際に響くタイヤと地面がこすれる音にも動じずただ鼻息を荒くたてて足踏みするだけである。
不思議とそのひづめはコンクリートにも負けず、傷つかない。
その理由は銀貨が異能で呼び出した四頭の《軍勢》だからである。
ある種の魔法生物と同じ馬たちは同じく異能をもってしか傷つけられない。

秋尾の、掛け声と共に走るカートの上で見せたパフォーマンス。
当然銀貨もそれを眺めていた。無表情に近い整ったその相貌が、秋尾の行いによって一瞬目を見開かせる。
本当にごくごく親しいものだけが分かる表情の差異。

それも1秒に満たない間だけ、すぐにくすりと目を細めた。
その笑顔さえも彼を知る人には珍しいと思えるものだ。

両足でまたがった馬の腹を軽く蹴ると、四頭の馬たちはするすると走り出す。
秋尾たちが走るコースに悠然と混じると、なんと同じ速度を維持し始めた。
どういう仕掛けか分からないが、馬に乗る銀貨には負担も加速による疲労も見られない。実に涼しげな態度で馬たちを操っている。

振られた手に応えるように徐々に秋尾の乗るカートに近づくと
マシンの唸りに負けぬようなしっかりとした声で挨拶をした。

「こんにちは、秋尾先生。今日は子供たちへの免許指導ですか?」

秋尾 鬨堂 > カートはだいたい15馬力程度。
車重の違い、馬力≠馬が走る際の最大出力という点はあれど。
馬の走りではない。
その様子は、彼の力によるものだろう。
周囲のカートは、新たなチャレンジャーに奮起して、競り合うもの。
優雅な馬に心奪われ、後ろからついていく子供。
反応は様々だが、良い刺激であることは見て取れる。

「正解。レーシングライセンスさえあれば、あの子たちはここ以外のサーキットでも走れるからネ」
依然、後ろ手でハンドルを操作しながら、ボンネット上で答える。
ハンドル備え付けのレバーでアクセル/ブレーキが行える仕様とはいえ、曲芸であることには変わりない。
「キミは?王子様。」
誰か、という問いかけではない。
そもそも、王子様という呼び方がなんだか恣意的で、
有り体に言えば面白がっている。
機械工学の講義では、馬に乗るタイミングはない。

「カートの運転、というわけでは―なさそうだ、ネ」
その四頭は、どこまでも加速していけそうな余裕で。
対して、カートも徐々に―ドライバー講習の速度を超え始めている。

奥野清明 銀貨 > 「その『王子様』という呼ばれ方、少し気恥ずかしいですね」

そう苦笑して返すものの気分を害した様子は無く、依然として涼しげな顔で並走する。
ミルクティー色の短い髪が風になぶられるも、それすら様になるような馬上の姿である。
追いつき追い抜こうとする、あまたのチャレンジャーたちを気にする様子も無く
抜かれようと追いつかれようとただ秋尾との並びを維持するだけ。

「あの子たちも走り方を知るのは貴重な体験でしょう。きっと良い思い出になります。

 僕ですか……、なんとなく『風』を感じたくなって。
 ただ吹かれるようなそんな生易しいものではなく、自分から向かっていくようなそんな風が知りたかった。

 ここに来ればなんとなく、あなたがいてその『風』を教えてくださるんじゃないかな、と思いまして」

後ろからついてくる子供たちのカートに気を遣いながらそれでもスピードは落とさない。
秋尾の曲芸運転に対抗するならこちらは曲芸乗馬もさながらの姿。
それでも四頭の黒い馬たちはひるむことなくその逞しい足でサーキットを駆ける。
どこまでも秋尾の速さに乗るように――。

秋尾 鬨堂 > 「そう言うなよ。ボクだって昔は『王子様』だったんだぜ」
冗談めかした言葉は、しかし真実味がある。
王子様ではなくなったから、馬を降りてクルマに乗ったのか?
もし聞かれれば、そうだよと真顔で言いかねない。

「風を追い越して、その向こう側へ…駆け抜けたいと思うのは、皆同じサ」
だから、少年のその思いは、漠然とした言葉越しにも伝わる。
返答の合間を縫い、グングンと『踏まれる』アクセル。
4頭と一台が、サーキットの中で他の車輌を置き去りにしていく。


『ドーソン!今回は俺の勝ちだ…』
外周トラックを走る、BM・Z4が、ライバルをインベタで抜き去った瞬間。
『何ぃ?!』
更にその内側に、信じられない速度で飛ばす…馬!
そして、カート!

「見せてやろうじゃないか。今日、この場を吹き千切る…風を!」
それは、外周のドライバーにも。
カートの子供たちにも。
サーキットの外では決して見ることはないであろう…
カートと、馬の限界を超えた速度域でのレース!
合法かつ奇想!
速度FREE!