2016/05/21 のログ
ご案内:「メンタルクリニック 自由館」にルギウスさんが現れました。
■ルギウス > 学生通りに面した教会風の建物。
中身は空間が弄られており(多分、違法)存在しない中庭が見える。
もっと目を凝らせば、中庭の奥に鬱蒼とした森が広がり洋館の屋根が見えるかもしれない。
なお、乱入はご自由に。
■ルギウス > 適度に薄暗い室内には来客に備えて紅茶とブラウニーが用意されている。
ご丁寧に生チョコたっぷりの見た目の割りにかなり重いブラウニーである。
ご案内:「メンタルクリニック 自由館」に高峰 司さんが現れました。
■高峰 司 > 「……高峰司、きましたけど」
呼び出しに応じて、一応敬語。一応。本当に一応。
形式だけの礼をして、歩を進める。
「で、アタシに何か?」
早速敬語が崩れているのは置いとくとしても……もしかしたら、油断なく背後にシルフを隠していることに気付くかもしれない。
大気と同化させ、かなり存在を薄くしているが。
■ルギウス > 「まずは、席にどうぞ。
ダージリンとアッサムのブレンドですが、このブラウニーにはよく合いますよ」
着席を促して、自分は紅茶を淹れる。
実に堂に入った動作であり、普段から手馴れている事を示すには十分に過ぎる。
■高峰 司 > 「お構いなく」
そっけなく。紅茶にも手は付けない。
「(これならウンディーネの方が良かったか……?)」
座りながらついついそんな事を考える。
ウンディーネは水の精霊。紅茶の中に毒があるかなどを看破するのは簡単だ。
先程の事もあり、警戒心が跳ね上がっているのであった。
■ルギウス > 「紅茶とケーキには何も仕込んでいませんよ。『我が神に誓って』」
宣言してから自分の分を美味しそうに一口。
切り取ったブラウニーからはチョコとちょっぴりラムの香り。
「彼女の事でお忙しいでしょうから手短にした方がいいですかねぇ?
それともご実家のお話をするべきでしょうか」
■高峰 司 > 「生憎、宗教はアテにしないタチでな」
あっさり崩れる敬語。
普通に警戒しながら話を聞こうとして……その内容に、目を見開いた。
「な、オマエ……!」
がた、と立ち上がり、シルフを実体化。
『事と次第では即座に殺す』
そんな目で、ルギウスを睨み付ける。
■ルギウス > 「その向こう見ずな若さは大変に好ましいですねぇ」
表情は笑顔のままで一切変化がない。
講義中であっても、ケーキを食べていた時も、今も。
「まぁ、私を殺せるものならば殺していただきたいくらいですが……それはそれで舞台の都合がよろしくない。
貴女が薄々感じているように、私は“何が起こったのか”知っています。
ここから先は、貴女の流儀に則って……『ビジネス』といきませんかぁ?」
■高峰 司 > 「…………」
信用できない。
心がそう訴えかける。当然だ、信用できる要素が無い。
が、その上で。
「(勝てるか、っつーと……クソ、無理か。イフリートで可能性があるかないか、か?)」
いや、もしくは切り札のイフリートでさえも。
それに……もしかしたら、手掛かりになるかもしれないのだ。
可能性を追うためにも、ここは乗るべきだ。
「……話を聞こうじゃねーか」
あくまで強気に。ここで弱気を見せたら、きっと呑まれてしまう。
■ルギウス > 「私は 貴女が欲しい情報 を喋りましょう。
対価は 貴女がその情報 に相応しいと思うもの」
紅茶冷めますよ なんて声をかける。
「まずは、そうですねぇ。
信用を得る意味合いもかねて これをお渡ししましょう。
ロックははずして居ますのでご自由に」
テーブルに置かれたのは一台の携帯電話。
画面は拭かれているが、他は血に塗れていたのか黒いものがこびりついている。
■高峰 司 > 「…………」
沈黙。
いざという時のためにシルフを送還し、いつでもイフリートを呼べる準備をする。
その上で。
「……誰のだ、これ?」
言いながら、携帯電話を手に取り、その中身……データを検める。
■ルギウス > 「あーなんと言いましたかねぇ、名前は失念してしまいました。
まぁ些事ですよ。“舞台から降りた人”の名前なんて」
データは年齢相応のアプリなどが入っていた。
写真データの中に、司の知り合いが犯されている様子が撮られているものがあるだろう。
「ああ、それがオリジナルです」
■高峰 司 > 「……!コイツぁ、どういうことだ……!?」
この写真がオリジナル。つまり、知り合い……凛霞を犯していた犯人。
が、舞台から降りたという。この携帯電話の状態を見るに、始末されたのだろう。
だが、誰が?
凛霞と言うありえそうな筋は、実は一番あり得ない。何故なら、あのお人よしがいくらなんでも殺しに走るはずがないからだ。
そして、もう一つピースがある。
「(エオローのルーンストーン……悲劇は防がず、助けを事後に呼ぶ程度のアミュレット)」
そう、司自身が手渡したエオローのルーンストーン。
アレは事後に最低限助けを呼ぶだけのものだが……効果が発揮されれば、誰かが助けには来る。
今回は自分ではなかった。では。
「……誰かが、アイツの代わりにクズ共を始末したってのか」
そう結論付けて、問い掛ける。
■ルギウス > 「始末したのは私です。
正体を隠して復讐してはどうかと提案したのですが断られてしまいましてねぇ」
指を鳴らすとルギウスの影から、黒い球体に口だけがついたモノが姿を見せた。
飢えているのか、ガチガチと歯を鳴らしている。
「放置していてもややこしくなるだけですので、彼は永遠には舞台から降りていただきました」
本当は復讐を断った凛霞に対する嫌がらせだが。
■ルギウス > 「さて、そろそろビジネスを始めましょうか。
召喚師である貴女なら悪魔との取引なんて簡単でしょう?」
ねぇ? と同意を求めるように首を傾げる。
■高峰 司 > 「……なら、それをアタシに見せてどーすんだ?」
言いつつ、内心ひとつ安心する。
少なくとも、その時点で凛霞は堕ちてはいなかったのだ。復讐を断る、いつものお人よしだった。
安堵している事に違和感を覚える前に、疑問を整理する。
あの化け物みたいなもので始末したのは確実だ。
だが、それを自分に教える意味とは……?
「……いいぜ。その契約、乗ってやる」
だが、ここまで見抜いているのだ……契約と言うからには、意味が無ければ破棄するだけの事。
何かしら意味のある情報があるはずだ、と一歩踏み込む。
■ルギウス > 「……手札を一枚オープンにしただけですよ。
貴女と私とでは、そもそもの手札の量が違うんです」
一つを見られたからといって、影響はないと言い切っている。
別の言い方をすれば舐めてかかっているのだ。
司に自分が負ける要素が何一つない と決めてかかっている。
何に裏打ちされた自信なのかは、知る由もないだろうが。
「では、貴女は何が知りたいですか?
その情報に見合う対価とともに質問を」
背もたれにもたれかかり、どこからか細葉巻を取り出して吸っている。
表情は変わらず笑顔。
安心させるそれではなく、新しい玩具にワクワクしている子供のそれだろうか。
■高峰 司 > 「ぐ……!」
確かに。
現状、司はルギウスの掌の上だ。
相手の目的も分からず、故に駆け引きが出来ない。一方的に相手の情報を受容するだけの存在になっている。
ここで引き返すのが利口なのだろう。当然ともいえる。
■■■■■一人が釈迦になるだけ、大した損失でもない。
妹?どうだっていい、アレの能力に見るところは無い。別を探せばいいだけだ。
だから、■■■■■だからと言って、わざわざ危険に足を踏み入れる必要はないのだ。
瞬間。
最早見慣れてしまった笑顔が頭に浮かんでしまった。
「……伊都波凛霞の様子が明確におかしくなった。アイツのアイデンティティである『妹の前で姉を張り通す』を放棄したらしい。
何があった、何が原因だ、誰がやった……!教えろ、全て!」
噛み付くかのように。
危険な相手との、危険な契約に足を踏み入れた。
■ルギウス > 「対価は?
貴女が心から渇望するその情報について。
貴女は私に何を差し出すのです?
命?魂?体?
それとも魔術師としての知識?
大切なご友人?
憎くて仕方のないご家族?」
司の流儀に則って。
司の流儀を乗っ取った。
「さぁ、対価の提示を!!」
■高峰 司 > 対価。
そう、それだ。当然だが、この相手はタダで情報をくれるわけではない。そも契約とはそう言う物、見合う対価で以て履行するのが当然だ。
だが、相手の目的が分からない。
だから。
バン!と音を立てて、持ち歩いていた一つの礼装を机に置く。
ルーン文字で記された、マジックスクロールだ。
「……ルーンガンド、その術式構成だ。ガンドにルーン乗せるのは一応アタシのオリジナル、術式としては希少なはず。これで、足りるか?」
魔術師にとって、自分の研究成果とは時に命より大切な物。
だが、それを売り飛ばす事にした。秘匿すべき術式を売り飛ばしてでも、この情報が欲しかったから。
■ルギウス > 「……それを私に売るということは、貴女はもう魔術師ではいられない。
秘儀を他者に漏らすというのはそういうことです。
高峰を離れてなお魔術師であった今までのご自身を私に払う……」
笑みが濃くなった気がした。
「二言は、ありませんねぇ?」
■高峰 司 > 「……!」
ぐら、と揺れる。
高峰司はルーン魔術師だ。高峰を離れてなお、そうだった。
当然、事実上ルーンが使えなくなると言うことではない。今まで通り、ルーンを使うことは可能だ。
だが、要するにルギウスはこう言いたいのだ。
『お前は今、魔術師としての在り方そのものを売り飛ばそうとしているのだ』と。
魔術師として生き、魔術師として思考し、魔術師として研鑽を重ねた人生。
その根幹の一つを売り飛ばす。自己のアイデンティティを質入れしたようなものだ。
割りに合うはずもない。他人の情報と、自分のアイデンティティ。普通なら後者を優先する。
の、はずなのに。
「ねぇよ。……持って行け」
売り飛ばした。
『高峰司』が編み出した秘儀を。
ルーン魔術師としての矜持とも呼べるものを。
他人のために、売り飛ばしてしまった。
■ルギウス > 「いいでしょう。『司さん』。ビジネスは成立しました」
魔人は取引が成立した事を高らかに宣言する。
「さて、どこから説明したものでしょうかねぇ。
まずはあの姉妹の歪な関係からでしょうねぇ。
何をどうやっても勝てない最も身近な身内に焦がれる妹と、常に上位を勝ち取り続けていた姉。
狭い輪ですよねぇ……狭いからこそ歪でも機能する。
機能してしまう。
ゆえに、外からの刺激には脆かったんです。とてもね。
上位の姉であり続ける為に意地を張る。
いやぁご立派だ。 ただねぇ、意地というのは張り続けるのは無理なんですよぉ。
庇護対象が明確な方は、そこを突かれると簡単に崩れてしまう」
■高峰 司 > 「……だろーな。アイツは、妹をダシにされりゃあ、何だってしかねないタイプだ」
何より大事なものがある奴は、そこを突かれると弱い。
実際、司は相手の大事なものが失われそうな時、それを守る事で契約を成立させたことが何度かある。
だが……問題は、その『大事な物』に対しての変貌だ。
つまり……それは切っ掛け、もしくは根源的な原因であっても、直接の原因ではないのだろう。
■ルギウス > 「そして、その時に 気がつかされてしまったんですよ。
妹を下に見ていたという自分に。
妹を守っている完璧お姉ちゃん という幻想に。
要するに、折れたんですよ彼女は。
犯されて人の尊厳を奪われ、最後の支えもポッキリ折れた」
面白そうに笑いを堪えている。
折れたその時が楽しくてたまらない といった風情だ。
「貴女、心根が折れた方がどうするかわかりますか?」
■高峰 司 > 「……!」
分かってしまった。
分かるはずもない利害の外、理外にある理屈が……理解、出来てしまった。
つまり、単純な話。
『アイデンティティを崩された』のだ。
『妹のために姉を張り続ける』と言うアイデンティティを、『それは妹を見下しているに過ぎない』と言い換えて。
あの鋼の意思を、反転させた。
そして……折れた人間がどうなるかなんて、召喚術師の司が、高峰の司が、一番よく分かっている。
「折れた奴は……安易な救いに縋る。その時たまたま優しい声を掛けてくれた奴、その時適当にでも自分を肯定してくれた奴、その時救いの道を用意してくれた奴。そう言う奴に、何も考えず縋り付いて……依存する」
その『縋る先』に自分を置こうとしていたのだ。
そうなってしまった人間の末路など、考えるべくもなかった。
■ルギウス > 「ご理解が早くて助かります。
……さて、ここでその方の名前を出してもいいのですが……」
言い渋っている。
言い渋る事を楽しんでいる。
■高峰 司 > 「言え」
端的に口にする。
それには根拠があった。
「アタシは言ったな、『何があった、何が原因だ、誰がやった……教えろ、全て』と。
オマエはその契約を是とし、ルーンガンドの術式を受け取った。ならば、誰がやったかと言う情報は当然契約内容に含まれてる。
……アタシは払った。ならテメェも契約を履行しろ」
強い意志。
決して退かないという不退転の決意を視線に乗せ、契約の履行を迫る。
■ルギウス > 「いえ、今の貴女に名前を教えたらすっ飛んで行きかねませんのでねぇ?
私は舞台を見たいのです。若い方たちが必死に刻む舞台を。
貴女が短気を起こして事件にすれば、バッドエンドへ一直線―――いえ、私はそれでもいいのですがね?
そうすると、リビドーさん辺りの機嫌がそらもう悪くなりまして」
言外に頭を冷やせと言っている。
煽りながら頭を冷やせとか難易度高い。
「まぁ、この場のゲームではそういう取り決めでしたしねぇ。
お教えしましょう『烏丸秀』
学生地区のマンションに住む18歳、男性」
■高峰 司 > 「……」
深呼吸。確かに、らしくもなく平静さを欠いていた。
何とか心を落ち着け、それでも警戒は忘れずに、話を続ける。
「学生地区マンション、烏丸秀だな。
……ソイツは、要するに何かでいつも以上に弱ってたアイツに、アイツの抱えてた矛盾を突き付けて……で、甘い言葉の一つでもかけたってか」
合理的だ、と思う。
上げて落とす、その逆。
下げて、上げる。相手の心の退路をなくし、その上で自分がその退路に成り代わる。
司だって使おうとしていた手だ。屈服ではなく同意を重視したが故に、悠長に過ぎたのだが。
そして、一発で堕とした、と言うことは。
「そのクソ野郎は……完全に屈服させる気か」
伊都波凛霞に、彼女の個性を見ていない。
見ているのかもしれないが、それは壊す前提。そのままの姿ではなく、自分のおもちゃとして見ているのだろう。
……なんでかそれが、無性にイラついた。
■ルギウス > 「その質問の答えはサービスしておきます。
答えはおそらくNO。明るくなったのでしょう?
もう完全に堕ちていますよ」
ああ、これからが楽しみだ という感想を隠しもしない。
「溝を無くし、器を保全し、中を満たしなおしなさい。
烏丸さんはとても弱いが狡猾な方です。
功を焦らず、静かに大胆に動く事ですねぇ」
■高峰 司 > 「……ただブチ殺すだけじゃ、駄目か」
そこまで依存しきっているなら、原因を排除してもそれだけでは意味がない。
本人の内面が既にガランドウになってしまっているのだ。始末してしまえば、依存する先が消えて、更に壊れるだけだろう。
つまり、烏丸なる男への依存心をなくすために、空洞になった心を埋めてやらなければならない。
ルーン魔術、などと言った力ではだめだ。もっと純粋に、人として。
「クソ……!」
歯噛みする。
高峰司は、打算を以て近づいた身。一定の距離を置き続けてきた存在。
妹ならば可能だろう。彼女の根幹にある存在だ。
だが、自分では?出来るのか?足りるのか?
……No、だろう。
距離を置き続けてきた自分が、そもそもなぜ助けようとしているのか自覚すら出来ていない自分が、いきなり何が出来る……?
道は開かれた。だというのに。
その場で、司は迷子になっていた。
■ルギウス > 「司さん、何を迷っているのかは手に取るようにわかるのですが。
そろそろ紅茶が冷め切ってしまいます」
考えるなら他所でやれとでも言いたげな態度である。
「考えるなら他所でやってください」
言い切った。
「魔術師でなくなった貴女にできることなんて限られてるでしょうに。
悩むだけ時間の無駄です」
■高峰 司 > 「……わかった」
踵を返す。最早ここに用はない。
足取りはおぼつかず。言いながら、動きながらも迷い続けているが、それでもその場を後にする。
「アタシは一体……どうしちまったんだ」
事此処に至って。
伊都波凛霞と言う少女のアイデンティティを取り戻そうとしているはずの高峰司が、自己のアイデンティティを見失ってしまっていた。
ご案内:「メンタルクリニック 自由館」から高峰 司さんが去りました。
■ルギウス > 「くくくく……あぁ楽しい。
やはり生の舞台は素晴らしい!!」
感極まったように両手を広げる。
「誰も彼もが欲に動いて織り成す舞台のなんと素晴らしいことでしょう!!
さぁさぁ誰のエゴが勝つんでしょうねぇ、楽しみですねぇ。
ああ、もうしばらくは目が離せませんねぇ……」
ご案内:「メンタルクリニック 自由館」からルギウスさんが去りました。