2016/09/13 のログ
ご案内:「演習施設」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「……こんなもん、かな。」

一通りの設定を終え、その姿を変えたグラウンドを見渡す七生。
散々自身の異能について悩み続けた気分転換にと、
空いている午後の時間を丸々使って運転免許の取得に向けて何かしよう、と思った次第。

「……うんうん、こんなもんだろ。
 実際の教習所にサーキットコースが付いてるか知らないけどさ。」

多分ついてないよな、とひとりごちる。
教習所通いするお金と時間が無いので、演習施設で代用の許可は一応相談のうえで得ている。

ご案内:「演習施設」に霧依さんが現れました。
霧依 > そんなに鋭く無い音を響かせながらやってくるフルフェイスヘルメット。
メッシュ入りのライダースーツを着込んだ女が、ゆっくりとバイクを止めて。

「……ふぅ。少しだけ涼しくなってきた、と思ったけれど。
 やっぱり止めると暑いものだね。」

かぽ、っとヘルメットを外せば少しだけ吐息をついて。
旅人の女は、未だにこの学園にとどまっている。正直、ひとところにとどまる期間としては、かなり長い方になる。

「………僕が教えるくらいなら、ほかの人の方がいいとは思うけれど。」

それでも、一言最初に言った。物事を人に教えるのが、苦手だ。

東雲七生 > あとは教えてくれる人を待つだけ──と。

「あ、来た来た。」

エンジン音に振り返って、待ち人の姿を確認すると大きく手を振る。
バイクに乗る事が分かっている知り合い、となると七生には霧依くらいしか思いつかなかったのだ。

「そう、かな?
 ごめんね、急に頼んだりしてさ。霧依以外にバイクに乗る人思いつかなかったから。」

あはは、と苦笑しつつ。
お礼はするからさ、と軽く片目を瞑ってウインク紛いのことをしてみたり。

霧依 > 「僕はただただ、自転車の代わりのように乗っているだけだからね。」

相手の言葉に少しだけ苦笑を浮かべて、まあ、それでもいいけれど、と相変わらずのふわふわとした浮雲めいた言葉。
自分の所有しているバイクで練習となると、それはそれで大丈夫かな、と考えるけれど。……まあ、頓着はしない。

「…それで、君のように体を使うことが好きな人が、どうしてなんだろう。
 珍しいね。」

なんて、相手に尋ねてしまいながら、さて、と首をかしげる。

「……何から教えるべきなんだろうね。」

東雲七生 > 「それだけ馴染んでる人の方が良いでしょ。
 なんて、一応さわりだけってつもりだし、最悪原付をどうにか工面してくるから……」

工面すべきなのは資金面なのだけど。
軽く肩を竦めながら、続く問いに小さく息を吐く。

「ほら、もう高2も半分だし、もうちょっと将来の事を考えようと思ってさ?
 バイク乗れれば大人っぽ……んん、この島を出た後も何かと便利だと思って。」

走った方が早い事もあるけど、いくら七生でも体力は無尽蔵では無い。
島の中の移動手段は足で良いとして、島より広い場所となるとちょっとだけ自信が無い。
……ということにしておきたかった。断じて身長が伸びる見込みがないから他の要素で大人っぽさを見出したいわけではない。

「んーと……とりあえず、格好から?
 ジャージにTシャツで大丈夫かな?霧依みたいな恰好が良いの?」

ライダースーツなんて見慣れない姿にきょとんとしつつ。
体育の授業の延長、みたいな姿で小首を傾げる。

霧依 > 「そうだね、まずは原付から慣れるといいんじゃないかな。
 ………さわり、かあ。そうだなあ、自転車に近いは近いんだろうね。
 漕がなくてもいいってだけで。」

さわりに何を教えればいいのか、と少しだけ考える仕草を見せて。

「……なるほどね。
 いいんじゃあないかな。この島の外は外で、とっても、とっても広いから。」

相手の言葉に少しだけ笑って、頷く。
彼女は恰好をつけることに関しては好意的だ。

彼女自身の生き方がそういう生き方、だと言ってもいい。

「ん、転ぶ可能性があるなら、最初は長袖の方がいいだろうね。
 ただ、今日は乗る乗らない、じゃあないだろうからいいんじゃないかな。

 これは乗っていると風が強く当たって寒いから、ほどほどの防寒と、あとは丈夫なんだ。」

東雲七生 > 「そもそも俺、自転車も乗ったこと無いんだけどさ。」

少なくとも、覚えてる限りは。
そう呟いて自分の頬を軽く掻く。なので、自転車みたい、と言われてもどういう感覚かパッと思いつかない。

「うん、でしょう?
 だからバイクくらいは載れる様になっとこうかなって!」

にぱっ、と満面に笑みを湛えて頷く。
ちゃんと伝わってくれた事に感謝しつつ、

「乗れるなら乗りたいけど、霧依の後ろにだろうね。
 一応転んでも大丈夫なように調節したけど、本格的に練習するときは長袖にするよ。」

なるほどなあ、と霧依の言葉に頷きながら、じっとライダースーツを見つめる。
ちょっと格好いいな、と憧れる様な眼差し。

霧依 > ………

「まずは自転車に乗ろう?」

妥当なことを言った。彼女は元来妥当なことを口にはしない。
当たり前のことを言うのではなく、人と違う風景を見たいからだ。

……そんな彼女に、至極もっともなことを言わせてしまう。

「………バイクは危ないからね。
 そうだね、一度後ろに乗るくらいで満足しておこうか。

 簡単そうに見えるけど、危ないんだ。
 何より、自分が怪我するだけじゃあなくて。
 周りの車も危ないから。」

相手をゆったりと諭すような言葉をかけて、微笑む。

東雲七生 > 「………えっ。」

自転車に乗れないとバイクも乗れないの。
そう言いたげな目が霧依の表情を窺うように向けられる。
感覚的に近しくとも、危なさなどは別物だろうから問題ないだろう、と踏んでいたのだが。

「……自転車乗れなきゃ、だめ?
 うぅ……だったら仕方ない、か……。」

一応、行動に出る前に出来る限りの練習はするつもりだけど、と小さく肩を落とす。
自分の考えの浅さに割と本気で凹んでいるようだ。

霧依 > 「そうだね。理由はいくつかあるけど。
 例えば………。
 まず、自分の力で動かしたものとの「違い」を肌で感じられるから、危険に敏感になるんだ。
 速すぎる、遅すぎる………そういう感覚を身に着けずに、一番楽な乗り物に乗ってしまうと、どうなるのか僕には分からないけれど。

 当然、身体の使い方もそうだけれども………

 あとは、手順を踏まないのならきっとたくさん転ぶんじゃないかな。
 転んでもいい、っていうのなら別だろうけれど。」

相手の言葉に、苦笑をしながら、穏やかに言葉を重ねる。
批判も批難もしないけれども、変わらず諭すような言葉。

東雲七生 > 「ふんふん……」

諭すような言葉に素直に頷きながら、それらを頭に叩き込む。
まずは自転車かあ、と小さく呟いたりしつつ、何処から調達しようかと。

「いや、転ぶのは覚悟してるけどさ。
 ……うーん、やっぱり思ってたよりもずっとずっと難しいんだなあ。」

バイクって、と。
霧依が乗って来たそれを見て、溜息混じりに。

「霧依はどうやって乗り方覚えたのさ?」

霧依 > 「覚悟っていうのは、これの意味だよ。」

小さく笑って指で丸を作って見せる。バイクはお金がかかるから、と小さく笑う。

「転ぶだけならいいんだ。怪我は次第に治るから。
 でも、壊れてしまったら練習もできなくなってしまう。
 壊れないとしても、……傷だらけになってしまうからね。」

そういう意味で、知り合いのバイクで練習は大変だと思うなあ、なんてつぶやく。
いざという時、本当に困ってしまうだろうから。

「…? ああ、そりゃあ昔の男かな。 あの人はバイクと煙草が好きだったから。」

あっさり笑って、そんなことを言う。
どこまでが本当でどこまでが嘘か分からない。

東雲七生 > 「これって……ああ……」

そっちの方もさっぱり考えてなかった。
とことん自分の考えの浅さに恥ずかしさすら覚えてくる。

「それなら、ううん……ちゃんと教習所行った方が良いのかな。
 何をするにもお金が要るんだな……いや、仕方ないけどさ。」

バイクを買うにしても、教習に通うにしても。
しばらくはバイト三昧だなあ、と溜息混じりに呟いて。

「……煙草とバイクかぁ。
 やっぱり大人っぽさには欠かせないかな……。」

ううむ、と小さく唸りながら思案する。
段々と本音が漏れ始めている事にも気づかないほど。

霧依 > 「そうだね。教えてもらうにしても、それこそ原付くらいは自前で用意しないと難しいかもしれない。
 まずは古い自転車で、左右のバランスを取ることを体で覚えた方がいいかもね。
 先輩なら、すぐに覚えてしまいそうだけれど。」

何をするにもお金がいる、には肩を竦めて。そういう世の中だから、としか答えない。
収入については、秘密、とだけしか言わない女の収入源は、謎である。

「タバコはやめておいた方がいいかもね。
今は、嫌いな人の方が多いから。 吸っていると敬遠されるかもしれないよ。
バイクは悪くないと思うけれど、………ここから先、いつか役に立つことはあるだろうしね。」

本音については、しらっと聞き入れてしまう。

東雲七生 > 「古い自転車かあ……中古の自転車屋さんってあったかな。
 今度探してみなきゃ。

 ふふん、バランス感覚には自信あるからね。」

自慢げに胸を逸らしつつ、それから改めて演習施設の可変性を利用した教習コースを見遣る。
せっかく作ったの無駄になりそうだなあ、と呟いて。

「え?そうなの?
 ……タバコは駄目かあ。
 あとは何か無いかな、大人っぽく見られるにはさ。」

うーん、と唸ってからはた、と我に返る。
なしなし、今の無し、と慌てて手を振って否定するも、時すでに遅し。

霧依 > 「この学園や駅で、放置自転車の一つや二つ、おいてあるんじゃないかな。
古いものは捨てられると聞いたから、それをもらってきてしまうとか。

……バランス感覚という意味なら、きっと大丈夫だろうね。
かといって、僕も自信があったけど転んだから、なかなか。

その時は大怪我をしたっけな。」

なんて、軽く言葉を紡いで。
手順を飛ばしてやりたいことに走ってしまう気持ちは、よくわかる。

「そうだな、まずは服装じゃないかな。
 何でもいい、じゃあなくて、ちゃんと落ち着いて見える物を選ぶんだ。
 こだわりがあればあるほど、年上に見える……かもしれない。」

先輩では厳しいかも、とは口にしなかった。

東雲七生 > 「なるほど!
 中古屋に行くより、そういう不法投棄の処分場に行った方が良いかな。
 壊れてるものでも、幾つか無事な部分を寄せ集めれば何とかなるかもしれないし。

 怪我かあ……怪我なあ……。
 治るのは早い方だと思うから、よっぽど大きな怪我をしなければ良いやって思うけど……。」

流石に即死級の事故を起こせば死んでしまう訳だけれど。
手順は大事、と心に刻みながら小さく決意を固める。
まず、自転車に乗ろう、と。

「服装かあ……服装。
 大人っぽい服装……スーツとか?」

ナチュラルに返されるからついついそのまま続けてしまう。
再び我に返ると、だーかーらー!と顔を赤らめて地団太を踏んだ。

霧依 > 「問題は、他人さ。
 自分で崖にぶつかるならいいけれど、こういう場合は他人の物やら、他人そのものにぶつかることがあるんだ。
 そうなると、自分だけは無事で他人が大怪我、ってことがあるから。」

あくまでも自分が良ければ、という言葉に首を横に振って、もう一度諭す。

「何かを使うということは、それ相応の責任が生じるから。
 なかなか難しいことかもしれないけれど、それは覚えておいた方が、いいかもしれないね。」

んん、と少しだけ悩む仕草をする。

「どうだろうね。
 そこまで行くと、逆に釣り合わないかもしれない。

 例えばシャツ1枚ではなくて、ちょっと暑くても上着をつかったり。
 ハーフパンツではなくて、ちょっとだけキツくてもすっとしたものを着こなしたり。」

地団太を踏む前で、はて、と首をかしげながら言葉を返す。

東雲七生 > 「ああ……。」

なるほど、と頷く。
確かに、自分一人だけが怪我をする訳じゃない場合もあるのだろう。
自分がどれだけ考え無しだったのか思い知った顔で、やっぱり座学とかって大事なんだなと呟く。
もっとよく調べて知る必要がありそうだ、と。

「うん、肝に銘じておくよ。
 基本的にどんな時でも、自分の身一つでやって来てたから、その辺の感覚は中々身に着かなさそうだけど。」

ちょっとずつやっていくしかないな、と肩を竦める。
卒業までに果たしてバイクまでたどり着けるのだろうか。

「シャツの上に上着は解るし、暑いのは我慢……まあこれから涼しくなるからいいけど!
 問題はズボンかあ……これでも結構腿とか尻周りとかガッチリしちゃってさ、あんまりキツいと動けなくなっちゃうかも。」

あるいは避けちゃうかもね、と地団太踏むのを止めて自分の尻を軽く叩く。

霧依 > 「身に着けるのが大人ってやつさ。
 僕は大人にはなりたくはないけれど、流石にそういうわけにはいかないし。」

相手のことを考えていなかった辺り、先輩はまだまだ、きっと大人には遠いのだろう、と当たりをつける。
恰好のいいものに憧れたりするのも、きっとその一環。

理解をしながら、うん、と頷く。

「だから、動きやすいものにすると、今度は子供に見えるっていう悪循環さ。
 そこは上手くバランスを取らなきゃいけないね。

 難しいんだよね、身長とか。
 なかなか自分に合うものが無かったり、さ。」

相手が身体を異常に鍛えていることは、よく知っている。
それでも、と、アドバイスを穏やかに送ってあげて。

東雲七生 > 「そう考えると、大人って結構不便かも。」

小さく肩を落としながら、それでも必要以上の子供扱いも受けたくない七生。
せめて年相応に見て貰える、くらいに目標を下げようかと思案し始める。
そんなことを考えるの自体、子供っぽいということにはまだまだ気付く様子は無い。

「ううう、難しい。
 動き易いのは、実際動くからどうしても必要になるし……。
 動き易くてかつ大人びて見える……か。

 身長とかって。身長とか、って。
 良いよなあ霧依は、まだ。でっかいからさ。」

むすっとした顔で口を尖らせた。
少なくとも自分より上背のある相手に身長に関して言われたくは無い。そんなお年頃。

霧依 > 「そういうものさ。どうせ大人になるんだから、僕なんかは焦る必要はないと思うけどね。」

相手の言葉に、力の抜けた声でそんな言葉を返す。
彼女は大人なのか、それとも不思議なだけなのかは分からないけれど。

「どっちも取ろうとしない方がいいよ。
 運動するときは運動するとき。
 それ以外はそれ以外。
 きっちりメリハリをつけて分けられる人の方が、きっと大人なんだと思うよ。

 ああ、そりゃあもちろん。
 僕はまあ、まだある方なんだけどね。
 ただ、そんなに選べるほどには無いんだ。 大きな店にいかないと。」

 高すぎるんだ、と手で身長を指し示す。
 後は、こっちもあるからね、と胸をぽんと叩いて笑い。

東雲七生 > 「なれるのかな、大人に……。」

ふぅ、と溜息を吐きつつ呟く姿はどう見ても中学生程度。
現在高校生で、あとほんの数年で成人するようには到底見えない。
現に新学期になっても時たま新入生と間違われるのだ。

「メリハリ……なるほどなあ。
 時と場合によって服装を変えるのか……そうか。
 とりあえず、今度自転車と一緒に服も探してみようっと。


 男物でも問題無さそうな気がするけど、霧依なら。
 フリーサイズとか、あるじゃん。そういうのじゃダメなの?」

仕草に釣られる様に叩かれた胸へと目を向けて。
何度か見ている水着姿を思い出して、顔を赤らめて目を逸らした。小さく、『知ってる』と口を動かして。

霧依 > 「僕には、分からないね。
 自分が大人になれるのか、なっているのかもわからないんだから。」

からりと笑って、腕を開く。
相手の言葉を知っているが、それをさらりと冗談で受け止めて。

「………おや、僕だって時には可愛い服を選びたくなるものさ。 嘘だけど。

 昔は、結構苦労したものだよ。
 自分で「可愛く見せよう」と思った服を着ると、所作までかわいらしくなるものさ。
 同じように、「何でもいいや」と妥協してしまったら、所作も粗が見えてしまうもの。

 人間は衣装で心が作られるものだからね。

 まあ、僕くらいになると、実際なんでもいいや、になってしまうけれど。」

東雲七生 > 「大人でしょ、少なくとも。俺よりはよっぽど。」

んもう、と拗ねたように頬膨らませる。
実際年齢も経験も、自分なんかよりよっぽど豊富だろう、と。

「ふーーーん?
 良いんじゃないの?たまには可愛い服とか。
 ほら、もうすぐ学園祭だし?メイドとか着てみれば良いんじゃない?
 案外モテるかもよ。」

何でも良いなら、何でもいいんじゃないのかと。
もしかしたら過去に着た事があるのかもしれないけれど、半分は七生の怖いもの見たさもあり。

「そのぴっちりしたスーツも、探すのに苦労したの?」

霧依 > 「どうかな、旅人なんてよっぽどまともな大人はやらないよ。
 逆に、この年になってもふらふらしているんだから。」

豊富なだけが大人じゃない、と首を柔らかく横に振って。
相手の言葉には、少しだけ唸って。

「……僕がそういうのを望んでいないことはわかるんじゃないかな。
 いや、ただ単に今更着るのは恥ずかしいからってだけだけれど。

 恥ずかしいから、嫌だよ?」

なんて、ぺろ、と舌を出して言ってしまう。
裸体をさらすのも、きわどい水着もOKだが、メイド服はNG。
彼女の価値観はなかなかに複雑怪奇。

「……ん、そうだね。確かにちょっと苦労したかも。
 知り合いのライダーさんに都合をつけてもらったんだ。
 採寸にまで出向いたよ。」

東雲七生 > 「まともかどうかはともかくとして。
 子供でもあんまり旅人なんてしてないけど。」

むぐぅ、と不満げに口を尖らせる。
霧依が大人でないなら、自分は子供ですら無いのではと。

「えっ。
 恥ずかしい……?恥ずかしいって?
 羞恥心とか、あったの……?」

嘘でしょ、って言いたげに顔で目を瞠る。
流石にそこまで言ったら失礼かも、と自重はしたものの充分に失礼だろう。
だが純粋な驚きでもあった。

「そうなんだ!完全に特注じゃんか。
 わざわざ採寸まで……」

見た訳ではないけれど、その時の光景が脳裏を過った気がして。
何度目か分からない赤面を隠すように、視線をバイクへと向ける。

霧依 > 「だから、大人でも子供でもないのさ。こんな大人もいないし、こんな子供もいない。」

柔らかく呟きながら、口笛を吹くように。

「さあ、どうだろう。
 人間だもの、恥ずかしいと思うことだってあるさ。

 それが、普通の人と同じか、それとも自分の思う羞恥を貫くか。
 それだけのこと。」

相手が失礼であっても、怒りやしない。
だって、普通じゃないことくらいはよくわかっているのだから。

「そりゃあそうさ。
 ちょっとお金はかかってしまったけれどもね。」

店長とねんごろの仲だからね、なんて事実を告げようと考え、少しだけ思いとどまる。

東雲七生 > 「……なるほど、霧依は霧依なわけか。」

そうやって嘯く姿が大人っぽいんだけど、と苦笑しつつ。

「そう聞くと何だか無理やりにでもメイド服を着せたくなるよな。
 ……しないけど。」

そこまでするな理由が何も無い。
ただ七生自身が見たいというだけで行動出来る様な男では無いのだ。

「あー、やっぱりそれなりな額はするんだ。
 ううん、俺も作って貰えるかな……。」

伏せられた事実など露知らず、真面目な表情で考え込む。
そも、どういう風な服なのかと霧依の着ているライダースーツを観察する様に見つめたまま。

霧依 > 「そういうことだね。

 まあ、僕に何かをさせるのは難しいとは思うよ。
 ずいぶん昔から、僕は自分のやりたいことしかやっていないから。」

からりと笑う。
いつだって、彼女は自分のやりたいことだけやっている。
そういう女。

「作ってもらうなら、……まあ、それは調べておかないといけないね。
 ……いや、普通のスーツで問題ないならそれが一番だから、伸びる素材のスーツを買うのがいいんじゃないかな。」

と、視線を感じながら相手に言葉を返す。

東雲七生 > 「だから、しないってば。
 それとも俺が頼み込んだら着てくれる?」

くすっと笑いながら首を傾げる。
そこまでさせる義理は七生に無いし、そこまでする義理は霧依に無い。
それが分かっているから冗談めかして訊ねるだけで。

「延びる素材かぁ……霧依のはそうじゃないの?
 そういうスーツを意識して見ること自体そう無かったから、もっとよく見てみたいけど……。」

横目でバイクを見て。
それから視線を霧依に戻して。

「ね、後ろ乗せてちょっと走ってみてよ。」

霧依 > 「頼むだけじゃあ無理かもね。
 僕は気まぐれだから、着たくなったら着るかもしれない。」

自由人は相変わらずの答えを告げて、肩を竦める。
メイド服はあんまり着る気は無いようだ。

「少しは伸びるけど、大きく伸びるタイプではないね。
 ……見たいなら、後で貸そうか?

 乗る分には構わないけれど、僕はあんまりうまくないよ。」

ヘルメットをかぶって、よいしょ、とバイクにまたがり。

東雲七生 > 「だろうね、知ってた。」

くすくす笑いながら肩を竦める。
頼むだけ、って事は他にも何かしたら着てくれるんだろうか。
そんな事を考えるも、具体的に何をしたらいいのか思いつかない。

「え、見て良い? じゃあ、後で貸して。
 
 上手い下手とかじゃなくて、ううん……
 あ、じゃあ。何だかんだ口実付けて引っ付きたいから乗せて、は?」

自分で言って少し恥ずかしかったのか頬を赤らめつつ。
自転車にも乗ったことが無い七生は、物珍しそうにどこに乗れば良いんだろうとバイクを観察する。
荷台だろうか、と。

霧依 > 「……ま、どちらも構いやしないよ。
 僕でよいならだけれど。 後ろに乗って、腰に手を回して。
 絶対に離れないようにしていいけれど、あんまり強いと痛いからね。」

相手の言葉を受け止めながら、後ろをぽんぽん、と叩いて。
相手が乗るというのなら、いつだって止めやしない。
ただ、無謀ではないから、しっかりと手をまわすようにだけ、伝えて。

東雲七生 > 「……さらりと流された。」

やっぱりこの女の羞恥の基準が分からない。
溜息吐きつつ、そんな事を思いながら促された通りに霧依の後ろに着くようにバイクに跨る。
乗ったことのある乗り物と言えば、電車くらい。
しかし電車とは何もかもが違うすわり心地に戸惑いつつ、おずおずと霧依の腰に腕を回した。

「……今更だけど、なんか恥ずかしいね?」

初めて乗るバイクに対する緊張か、異性の身体に抱き着いているという体勢に対する緊張か。
珍しく自分で心臓の鼓動が分かるほどになっていた。

霧依 > 「そりゃあね。バイクの後ろに乗るんだから、普通じゃないか。
 くっつかないと乗れないし、それが目当てと言われても、よくあることだよ。

 逆に、後ろに乗りなよ、ということも多いからね。」

さらりと笑って、そんなことを言う。
彼女が、自分らしいと思えなくなったら、それはきっと恥ずかしいことなのだろう。
だから、今は恥ずかしくない。

「……そうかな? 恥ずかしい、なんて思っていると振り落とされるから、しっかりとね。」

恥ずかしがるだろうな、とは理解している。だからこそ、すぐにエンジンをかけて走り出して。
風が強く体に当たるが、気にせずにコースを回り始める。

何かしていた方が、意識せずに済むだろう、という配慮をしつつ。

東雲七生 > 「よくあること、なんだ……。」

なるほどバイクに乗るのが大人っぽく見える訳だ、と。
何だか妙な納得の仕方をしつつ、やっぱり自分は自転車から始めるべきだなと再認識する。

「だって後ろからってあんまり経験したこと無いし……ッ!?」

初めはゆっくりと、しかしすぐに速度を上げるバイクに驚く七生。
確かに意識は他所へ向いたが、その代りに、

「ひゃぁ!?
 ちょ、霧依!すごいよ!座ってるだけなのに、凄い動く!
 早いよ!俺が本気で走った方が早い気もするけど、何もしてないのに!早い!すごいはやい!」

エンジン音と風切音にも負けないくらいに騒がしくなった。

霧依 > 喜ぶ相手を後ろで理解しながら、速度はそこまであげないけれど。
カーブを曲がって、ストレートで速度を上げ。斜面を登って降りて。
一通りの動きを実演し、見せ、感じさせる。

……一周した段階で、少しだけ速度を緩めて。

「こんなところかな、どうだった?
 ………自分の足で走らない感覚は、初めて経験すると不思議な気分になるよね。」

声をかける。速度を上げたままだと、まともにしゃべることもできない。

東雲七生 > 何を以ても初めての体験ばかりですっかり興奮しきった様子ではしゃぐ七生。
大型の獣に乗る事は幾らかあったものの、ゆっくり移動するのが主だったのでそれなりに速度が出るバイクは予想以上だったのだろう。

「すっごいよ!思ってたよりずっとすごい!
 全然脚を動かしてないのに、どんどん動いてくんだから!」

速度が落ち、感想を求められれば霧依の腰に回していた腕を解いて身振り手振りで感動を伝えようとする。
そもそも相手は振り向けないので殆ど意味の無い動作だけれど、それほど感動しているのだろう。

霧依 > ……きゅ、っと止まれば、一周回って元の位置。
はしゃぐ姿に少しだけ微笑みながら、ヘルメットを取って。

「これで山のふもとまで行って。山は自分の足で上るんだ。
 そういう旅も悪くないものだよね。

 ……これを自分で乗りこなせるようになれば、それはそれで、きっとずっと気持ちいいから。
 大人になって、自分でバイクを手に入れられるようになるといいよね。」

応援するよ、と言葉を漏らして微笑みかけて。

東雲七生 > 「これは確かに、自分で走らないであんな速さで移動出来たら便利だよなあ!
 よし、まずは自転車から──ぷわっ!」

ブレーキが掛かって車体が止まれば、慣性で七生の体だけが前に流れる。
すっかり両手を離していた身体は、そのまま霧依の背にぶつかり、
咄嗟に何かに掴まろうと求めた手は、事もあろうに霧依の豊かな胸を掴むかもしれない。

「あ、うあ、……え、えっと!
 そ、そうだね!……手に入れられたら、良いな。うん…」

霧依 > 「ほら、両手を離したら危ないって言ったよね。」

くすくすと笑いながら、それをそのままに。
ほら、ここまでだよ、と告げる。
掴まれた程度で焦る女でもなければ、それを嫌がるわけでもない。
ある意味で触りがいのない、とも言えるか。

「……やってみたらわかっただろうけれど、結構に早いから。
本当に必要かどうかはゆっくり考えて。

まずは自転車でどれだけやれるか試したりしてね。

今日は、このくらいかな。」

何も教えていないだろうけれど、と口にしながら、今日の教えはここまでになるのだろう。

東雲七生 > 「ご、ごめんなさい……。」

両手の感触が頭から抜け切らないまま、慌ててバイクを下りる。
変化の無い態度の霧依に対して、面と向かって顔を見れないほどに朱くなった自分の顔を伏せる様に立って。

「う、うん。早かった。
 とりあえず自転車に乗れる様に頑張るよ。
 バイクそのものが必要かどうかは兎も角、免許は取りたいし。

 は、はい!ありがとうございました!
 ……て、授業のノリであいさつしちゃった。」

今日は、ってことは次があるの、と首を傾げながら。
少しだけ顔を上げ、前髪の陰からちらりと表情を窺う。

霧依 > 「免許が欲しいなら、ちゃんと教習所に行った方が、僕はいいと思うけどね。
 100歩譲ったとしても、学科試験は教えられないし。」

表情を伺えど。 彼女は相も変わらずひょうひょうとしたもの。
手をひらりと揺らせば、ヘルメットをかぽりとかぶってしまう。 相手が恥ずかしがっていることは想像ができたから、こちらからはあまり見ない。
相手を少年だと認識しているから、必要以上に弄らない。

「聞きたいことがあるなら、いつでも聞くよ。
 分からないことがあるなら、僕のわかる範囲なら教えるから。」

なんて、風に吹く雲か、葉のように。

ご案内:「演習施設」から霧依さんが去りました。
東雲七生 > 「う、うぐ……行くし、ちゃんと!」

先ずは何はともあれ自転車の調達と資金繰りだ。
バイトの日程を増やそう、などと色々考えつつヘルメットをした姿にはやはり憧れの念を抱く。
しかし恥ずかしさから顔を上げられず、何だか不格好な体勢で。

「じゃあ、うん。遠慮なく色々教えて貰う!
 サンキュー霧依、やっぱ相談して良かったわ。」

まだ耳まで赤いままだけど、礼はしっかりしておこう、と顔を上げて満面の笑みを浮かべる七生だった。

ご案内:「演習施設」から東雲七生さんが去りました。