2016/10/22 のログ
セシル > 「…あ、あっ!」

セシルは基本的に速さと技術で勝負する、純粋な人間である。
半龍人たる鋼に力づくで…しかもこの距離と空間では、まともな抵抗など出来るわけなく、剣を奪われて正面の2人に投げられる。
正面の2人もそれは予想外だったらしく、わたわたとやや危なっかしく受け取る。
何とか、テーブルの上と剣は無事だった。

『暇っていうか、普通の精神があったら息抜き欲しいよね?』
『たまにその辺突っ切って無茶してる人達はいるけど…そういう人達だけで回るほど委員会も楽じゃないから』

「暇」の定義については、そんな風に。
実際、委員会所属者と一口にいっても働きはまちまちだ。ここにいる3人は、「学業との両立組の中ではまあまあ頑張ってる方」なのだが。
(そのため、3人揃う休日は奇跡的に少なかった。近日にあったのはまさに「奇跡」だし、セシルの「女装」も、一日に詰め込んだ強行日程である)

「………そういうものか…。
しかし、慣れた格好と言っても、前の学校の制服では風紀委員の制服と大差ないぞ?

………それにしても、その変なあだ名、長いにもほどがないか」

雑な言及もいちいち会話に乗せながら、最後に「変なあだ名」にツッコミを入れるセシル。
…この場で一番ツッコミを受けることを必要としているのは、他ならぬセシル自身のはずだが。

『………!』

凄まれれば、ぐっと唇を噛み締める2人組の一方。…「知っている」のだろう、恐らく。
もう一方も、少し姿勢を正して…

『…確かに、「既に起こった」ことは、どうしようもないね。何も言えないよ。
………でも…これから、何かあった時に…「誰か」を頼ることそれ自体は、否定しないで欲しいんだ。そういう…怪我の治療を受ける、とかね。
………それは、「私達」じゃなくてもいいから』

と、先ほどまでのテンションが嘘のような、零れるような真摯さを、声に乗せる。
事務方とはいえ、彼女達も風紀委員なのだ。そういった「影」に、思うところがないわけではないのである。

「………。」

セシルも、何か言いたげにしていたが…先ほどの真摯な言葉に下手な付け足しはできないと感じてか、押し黙る。…が、ツッコミに対する、乱雑な言葉遣いだが刺はない口調に、「あれ?」という感じで目を瞬かせると、

「………確かに、甘いものと塩気のあるものを混ぜるわけにはいかんな…」

と、雑なたとえなりに納得がいった様子で頷いた。

龍宮 鋼 >  
(無事剣を奪いとってやっとすっきりした。
 見ていて落ち着く格好になった彼女に満足そうな顔。)

――まぁ、普通ならそうだわな。

(普通ならば。
 一人、普通ではない風紀委員を知っている。
 非番であろうがなかろうが、風紀委員として不良学生の補導に異常なほど執着を見せる風紀委員を、一人。)

なんでも良いっつうの。
俺だっていつもこんな格好だしな。
つーか俺ァオマエの名前知らねェんだよ。

(デザインに多少違いはあるが、大抵黒のパンツとTシャツに黒のジャケットだ。
 色気もクソもない、動きやすさしか考えていない服装である。
 そうしてその長い呼び名で呼んだ理由はそれである。
 半目で言い放つ。)

ッハ。
どっかの誰かのお陰で、問題は自分で何とかしねェと解決しねェってわかったからな。
大体こんな悪ガキ、どこの誰が――ッチ、相手にするってんだ。

(そんな真摯さも一笑に付す。
 後半の言葉は、途中まで言ったところで少し黙る。
 何かを思い出したような顔だったが、舌打ちをしてそう続けて。)

――そう言うことを言ってんじゃねェよ。
オマエアレか、天然か。

(そうこうしている間に注文したステーキが届いた。
 ナイフとフォークで切ろうとするが、うまくいかない。
 左手に持ったフォークに力が入らず、上手く肉を押さえられないのだ。)

セシル > 「………意外と、こだわるんだな?」

剣を奪って「フェミニンな服装のモデル様の女性」となったセシルを見て満足げな表情を浮かべる鋼に、一言。
先ほどの喩え話の件と良い、女物のファッションには見た目以上に通じているのではないかと思ってしまいそうだ。

『………まあ、そもそもこの島の「普通」ってなんだろうねってところはなくもないけどね』

女子2人組の一方がそんな会話で応じる。
…「普通ではない風紀委員」とその過去について、全く無知でもないのだろうが…彼女達がそこに触れることはない。ファミレスで、触れられるないようでもないし。

「いや、あまり格式張った格好だとどうしても威圧される層がいるからな…

………ああ、以前会ったときは名乗るどころじゃなかったからな。セシル・ラフフェザーだ。好きに読んでくれて構わん」

服装に困っている所以は、「気安い感じのアウターがない」ことに端を発するものだった。そう言って溜息を吐く。
…が、「名前を知らない」と聞いて得心したように頷いて…鋼の方を向き直って名乗った。

『『え』』

「どこの誰が相手にするんだ」という趣旨の…途中で詰まってしまったが…鋼の言葉に、女子2人が詰まる。そして…

『確か、ラフフェザーさんが振る舞いとか服装とか気にしだしたのって、龍宮さんと戦闘した後…』
「それは言わんでいい!」

片方の口が滑りかけたところで、セシルが「いつもの声で」遮った。
なるほど、「威圧感」の違いを気にするほどの落差が地声との間にあるわけだが…怒鳴ったその顔は赤かった。ファンデーションの類はそこまで施されていないらしい。

「………それと、「天然」とは何だ。
誰だって大なり小なり人とのふれあいを考えて立ち居振る舞いや言葉を考えるだろう。
天真爛漫など幼子にしか許されんことだ」

その赤い顔のまま、吐き捨てる。
この世界の俗語に未だに疎いだけなのかもしれないが、ここまでくるといっそ見事である。
…が、鋼がステーキを切るのに難渋しているのを見ると。

「………切り分けるだけは手伝うか?」

と、申し出た。

龍宮 鋼 >  
こだわるとかどうとかじゃねーよ。
違和感すげーんだよ芸人がニュースキャスターやってるみてーで気が散ってしゃあねェんだよ!

(なんだか微妙にかみ合っていない彼女との会話。
 思わず大声を出してしまう。
 周囲からの注目を集めるが、その視線には一定数「わかる」と言った視線が含まれていたりする。
 普通についての言葉には、答えない。
 無視していると言う風ではなく、同意を含んだ肯定の無言。)

なら適当にパンツとジャケットでいいだろうが。
縮こまるほどなら女らしい格好する必要ねーぞ。
つーかオマエ遊ばれてたからな、わかってるか。

(どうにもわかっていなさそうだ。
 眉間の皺を深くし、そこに指先を当ててそれを指摘する。
 ついでに正面の二人をじろっと睨んでおいた。
 名前を聞いたら「りょーかい」と短く答えた。)

…………は。
――お、俺にそんな趣味ねェぞ。

(何故かこちらも動揺する。
 引く、と言ったようなものではなく、単純に困ると言うような顔と態度だ。)

その発言がもう既に天然だよ……。

(しかしその発言にとても複雑な顔をして、右手で顔を覆う。
 軍人か武人のような態度とか微妙に堅苦しい喋り方とか、そういうものとは正反対と言うかギャップがあると言うか。
 つまりは、なんだこのかわいいいきもの。)

……頼むわ。

(もう色々面倒くさくなって、顔を覆ったまま鉄板を彼女の方に押しやった。)

セシル > 「………そういうものか」

自分の服装を改めて見回しながら。
多分、いや間違いなく鋼の真意は伝わってないが、「そういうものだ」と思うことにはするようだ。

「………まあ、結果的にだがこの声で話すことにも大分慣れたからな。
今後は男物かそれに近いもので何か探してみるとしよう。

………流石に自覚はしていたよ。一人では抜け出す術が思いつかなかったんだ。
私が無理だと思う領域には踏み込まんように気はつけてくれたし、彼女達は責めないでくれるか?」

じろりと女子2人を睨む鋼に対し、苦笑混じりにそんなことを。
なお、女子2人は睨まれて気まずそうな顔をしつつもセシルの「今後は男物で」の言葉に『もったいない…』と呟いていたとか何とか。

「…趣味?何の話だ?」

鋼の動揺が分からない、といった風で眉を寄せる。

セシルにとって、困っている存在、追い詰められた存在は手を差し伸べられるべきもので、そういった存在から敬遠されるのは良くないとか、きっかけはその程度の話なのだ。
言葉を遮ったのは、合わない格好をするきっかけの話になったのが恥ずかしかっただけだし。

セシルは、まだ恋心を抱いたことがない。
この辺も、鋼のセシルに対する「天然」評価に拍車をかけているだろう。

「………?」
『ラフフェザーさん、後で説明してあげるからね。色々と』

顔を手で覆う鋼。その様子を見て不思議そうに鋼と女子2人の間で視線を行き来させるセシルに対して、女子の片方がそんな風に。

「…?ああ」

顔を覆ったままの鋼の様子に怪訝そうにしながらも、鉄板を押しつけられれば、ざくざくとステーキを細切れにしていく。「一般的な女子にとっては」やや大きめの一口大、男性ならばまあ問題無く、くらいだろうか。

「…このくらいの大きさで構わんか?」

全体をカットしたところで、鉄板をすっと鋼の方に差し出した。

龍宮 鋼 >  
そう言うもんだ。
――オマエは極端だな。
ったく、今度俺が見繕ってやるよ。

別に責めやしねーけどな。

(そもそも責める理由もない。
 彼女は別に友人ではないし、彼女がおもちゃにされても関係ないのだけれど。
 むしろ彼女の方が流され過ぎな気もする。)

――わからねーなら、いい。

(ひら、と手を振って。
 年は自身より上に見えるのに、そう言うことには疎いらしい。
 なんともアンバランスだな、と言う印象が新たに生まれた。)

おう、悪ィ。

(その切り分けられた肉を三つほどまとめてフォークで突き刺し、口の中に放り込む。
 そのままもっしゃもっしゃと豪快に咀嚼。
 口の中に肉を頬張ったまま立ち上がり、近くにいる店員にドリンクバーを注文。
 その脚でコーラを持って戻ってくる。
 再び椅子に座り、そのコーラで口の中の肉を流し込んだ。
 豪快である。)

セシル > 「そうか…
まあ、幼い頃から剣の稽古や狩りの付き合いばかりだったし、バランスが良いわけはないな」

極端だと指摘されて、そんな風に言って苦笑する。
…が、「見繕ってやる」と言われれば驚いたように目を瞬かせ。

「…いいのか?私としては有難い話だが…」

と、真顔で尋ねてくる。なお、「責めやしない」の言葉には、安堵の息をこぼした。

セシルには、別に自分の「女性性」自体を否定する気はさほどない。あるという実感も乏しいが。
…なので、「普段と違う格好をする」だけならば、そこまで抵抗をしなかったのである。
(セシルが嫌がる「手足の露出」を避けた服選びをし、化粧も軽くに留めた女子2人の手腕もあるが)

「………そうか」

動揺していたかと思えば、さらっと流す鋼に、怪訝な顔のセシル。
なお、女子2人は(これ説明したら怒らせるやつだね)(そうだね)と2人でアイコンタクトをとっていたとか。

「おお、豪快だな。もう少し大きく切っても良かったか?」

鋼の豪快な食べっぷりには、好ましそうに晴れ晴れとした笑みを向けた。

龍宮 鋼 >  
そりゃなんとも素晴らしい青春を送ってきたもんだな。

(その言葉には、やや皮肉染みた言葉を。
 なんせこちらは幼い頃は血反吐を吐いていたのだ。
 彼女に悪気はないとわかっているが、そう言う言葉も吐きたくなる。)

オマエにゃ借りもあるしな。
連絡先教えとくわ。

(言って肉を貪りつつスマホを取り出して操作する。
 そうして画面に自身の連絡先を表示させ、彼女の前に置いた。)

オマエはアレだな、思ったより箱入り娘なんだな。

(しみじみと。
 実際はともかく、なんとなく大事に育てられてきたようなイメージがある。)

別にこのぐらいでいーよ。
つーかオマエは食わねーのかよ。

(目の前の二人はパフェを食べているし、自身は肉を食べている。
 しかし彼女はコーヒーしか飲んでいない。
 なんか注文しろよ、と言いたげにフォークでメニューを示し、もりもり食ってガブガブ飲む。)

セシル > 「………そうだな」

鋼の境遇を思えば、恵まれていることを否定するわけにもいかなくて。
その笑みを、少しだけ陰らせた。

「連絡先………あー………」

困ったように女子2人を見るセシル。片割れが、『はい』と適当なメモパッドを取り出し、セシルの前に差し出した。

「…その手の端末を、私は私用では所有していないんだ。
機械の類には不慣れでな…近いうちに何とかしよう」

「すまん」と言って、困ったように笑う。
鋼が頓着しないならば、テーブルに置いてあるペンを使ってメモパッドに連絡先をメモし…スマホの類を入手し次第、折り返し連絡をするのだろう。

「…箱入り…まあ、全くの間違いではないな。
元の世界では庶民、というわけでもないし」

「箱に入れて差し出す相手もろくにいないのにな」と笑って。

「そうか…なら良いが。

私は、甘いものに不慣れでな…軽めのアイスクリームを………あ。」

コーヒーカップの陰に隠れていた、小さめのアイスクリームのグラス。
大分話し込んでしまっていたせいで、丸いアイスの頂点が溶けたクリームに沈みつつあった。

龍宮 鋼 >  
――俺が言っといてなんだけどな。
そいつは侮辱だ。
次そんな顔したらブン殴る。

(もし、その辺のヤツがその表情を向けてきたら、問答無用で殴りかかっていただろう。
 そう言うつもりで言ったのではないし、そう言う感情を向けられるのも好きではない。
 そんな時は自慢するもんだ、と。)

――マジかよ。
アレなら紹介するぞ。
金かからねーヤツとか、ロック掛かった無線ラン繋ぎ放題のヤツとか。

(犯罪である。
 彼女らが風紀委員だと言う事はしっかり理解したうえでの言葉だ。
 ニヤリ、と笑っていることからわかる?通り、冗談なのだが。)

貴族様かい。
――つーかメシは食わねェのかメシは。

(溶けかけのアイスを見て、渋い顔。
 甘いものは嫌いと言うわけではないが、腹が膨れないだろうと思う。)

セシル > 「………すまん、気をつけよう」

指摘されれば、そう言って素直に軽く頭を下げた。
「恵まれた」者だからこそ、素直に頭を下げるのだろうが…。

「………いや、提案は有難いが遠慮しておこう」

「無線ラン」とか何のことやらなのだが、流石に、「何かまずい」と判断する程度の能力はあった。苦笑混じりに断る。

「田舎の武門だ。中央の話はそこまで詳しくはなかったぞ。

食事は…私達は済ませた後なんだ。外で飲み物と甘いものでも楽しみながら「指南」を受けようかというところだった。
…まあ、結果的に今に至るがな」

そう言って笑いながら、溶けかけのアイスのスプーンに手を伸ばした。
無事な分は「すくおう」という、涙ぐましい道徳精神である。

セシルの「恵まれた」生い立ちは、セシルが生まれた性別と異なった服装に親しんでいること、恋愛事情に疎いことの原因でもある。
…だが、それらは話すと長くなる上、そうそう曝け出して良いものでもないだろうと判断して、多くは語らない。

龍宮 鋼 >  
別に構いやしねェけどよ。

(過ぎてしまえば別に気にはしない。
 どうでもいいと言うように、肉を喰らう。)

ッハ、だろうな。
ケータイでもスマホでも、買ったら連絡くれ。

(とりあえず服を見繕うのはそれからだ。
 彼女の都合が付くまで、気長に待つ事にしよう。)

平民からすりゃ一緒だ、んなもん。
――あぁ、なるほど。
悪ィな、俺だけこんなん食っててよ。

(フォークで突き刺した肉を振って見せて。
 そこで突然出入り口の方から「龍宮鋼ェ!」と言う野太い叫び声。
 そちらを見れば、十人ほどのガラの悪い男達の姿。)

――ったく、人気者は辛ェぜ。
ご指名掛かったんで、行くわ。
じゃあな。

(そういって肉を詰め込み、彼女らの分の伝票を持って立ち上がる。
 そのまま男達へ「迷惑んなる、表でろ」と言えば、以外に男達は素直に従った。
 店員に大きい紙幣を三枚ほど渡し、お釣りも貰わずファミレスの外へ。
 彼女らが座っていたテーブル席のすぐ外を、男達に囲まれて路地へと入って――)

ご案内:「休日の「ニルヤカナヤ」」から龍宮 鋼さんが去りました。
セシル > 相手が怒りを収めたようなので、胸の内で安堵しながら。

「ああ…間違いなく連絡しよう」

連絡先をメモすれば、そう言って朗らかに笑う。
フェミニンな格好とは、いささかミスマッチな表情の作り方だった。

「…そうかもしれんな…。
いや、貴殿には貴殿の都合があるだろう、気にするな」

強いて言えばデザートの甘い香りが台無しだろうが、「風紀委員」という立場から考えればそれどころではない状況なわけで。
この辺、女子2人も弁えているといえば弁えている。
…と、そこに響く野太い声。

『『「!?」』』

出入り口の方に、ガラの悪い男達の集団。

「いや、人気者とかそういう話では…」

セシルがついて立ち上がるが…その腰に剣がないという違和感に一瞬固まったところで、自分達の伝票をかすめ取られる。
そのまま、まとめて支払うと釣りも受け取らずに男達と店を出て…そして、セシル達のすぐ外を通って路地に消えていく鋼。

セシル > しばし、黙りこくる三人。

『………ラフフェザーさんがああいうこと考えたの、ちょっと分かっちゃったかも』

女子の一人が、そう零す。

「…そのままには、させておきたくないと思うだろう?」

残っていたアイスを食べきってしまうと、ブラックのコーヒー並に苦みの強い苦笑いで、コーヒーカップを持ち上げるセシル。

『ほんとね………でも、どうしたらいいんだろ』

鋼が立ち去った今、見た目は女子三人の平和なお茶会。
…しかし、鋼がいた時よりよほど、彼女達の空気は重さを増していた。

ご案内:「休日の「ニルヤカナヤ」」からセシルさんが去りました。