2017/02/17 のログ
龍宮 鋼 >  
(家族を、殺した。
 その言葉を聞いて、今度はこちらが硬直する。
 その硬直が解ければ、真っ先に取るのは泣きそうな表情。
 身体の震えは、痛みからのものではなくなった。)

――だったら、尚更だ。
それなら、尚更、ほっとけねェ。

(缶を投げ捨て、両手で彼女の襟を掴む。
 知っている。
 家族を傷付け、そのせいで壊れてしまった少女を知っている。
 そんな少女を見ていられなくて、少女から逃げ出した者を知っている。)

だったらなんだ。
家族殺しちまったんなら、その分テメェが幸せにならなきゃ嘘だろうが!
そうじゃなけりゃ、浮かばれねェ!!

(痛みなど頭の中から吹き飛んだ。
 彼女を思い切り引き寄せ、今にも泣き出しそうな顔で叫ぶ。
 二度も逃げ出せない。
 また逃げてしまったら、あの少女に合わせる顔がないのだから。)

東瀬 夏希 > 「幸せになっていいものか!私はな、吸血鬼に魅了され、その吸血鬼のために、家族を殺したのだ!家族をそいつに売り渡したも同義だ!
魅了されていた?だからと言って、家族を売り渡したのは私だ!どうしてと問い掛ける母を、やめろと懇願する父を、痛いと泣く妹を!この手で刺し殺したのだ!」

同じく両手で掴み返し、全てを吐き出すように叫ぶ。
魅了の魔術で、真祖の吸血鬼に魅了され。
言われるままに、自分の家族を皆殺しにした。
「気を引きたかったから」。そんな理由で夏希は、自分の家族を全て殺ささせられたのだ。

「抗えなかった!私が、私が『それでも家族は殺せない』と言えていれば!魅了如きに屈しなければ!私は、家族を殺さない道もあったはずなのだ!
なのに殺した!私は、魅了如きに負けて家族を売ったのだ!そんな罪深い、あさましい女に、救いなどあってたまるか!!!」

龍宮 鋼 >  
過ぎたことァどうだっていいんだよ!
テメェがそうやって罪の意識なんてクソ下らねェモンに苛まれてりゃ親は戻ってくんのかよ!!
今そういう風にぐちぐち小せェ事で悩んでりゃ妹は戻ってくんのか!!

(我ながら無茶苦茶なことを言っていると思う。
 それでも戻ってこないのだ。
 彼女が殺したという母親も父親も妹も、自身の腹の消えない傷も、無かった事にはならないのだ。
 過ぎた事を嘆いていても、戻れない。)

だったら前向くしかねェだろうがよ!
テメェがテメェを弱いと思ってグダグダやってんなら、強くなりゃいいだろうが!
強くなって同じ事やらねェようになるのがテメェが殺しちまった家族に対する贖罪じゃねェのかよ!!

東瀬 夏希 > 「分かっている!みんな戻ってこない!みんな、みんなもう私に笑いかけてはくれないんだ!
だからと言って前など向けるか!私に出来るのは、異端の存在による嘆きを出来るだけ減らすために異端を狩ることと、私を魅了した吸血鬼に復讐することだけだ!
そうやって、この一生を贖罪に使い潰すことしか出来ないんだ!」

貯めこんできたものを吐き出していく。
辛さも、苦しさも、全て自分の罪への断罪なのだと受け止めてきた。
そして、「司祭様」は言った。世の中には、異端に涙を流す無辜の民が数多いるのだと。
ならば、それらすべてを狩り尽くす。そして、その果てに「私を殺して見せなよ」とのたまったあの吸血鬼を断罪する。
それが、東瀬夏希の全て。
聖職者ではなく巡礼者。そして、復讐者。
自分の手の汚れを濯がんと手を汚し続ける少女が、異端より誰より嫌っていたのは、自分自身だったのだ。

龍宮 鋼 >  
テメェ――マジで言ってんのか……!

(震える。
 怒りで手が震える。
 彼女に対する怒りではなく、彼女の悲劇的な過去に対するものでもなく。
 彼女をそこまで追い詰めた誰かに対する怒り。)

だったら、尚更――救われねェと嘘だろう……!
誰だ。
テメェにそんな、――そんな無駄な事吹き込んだヤツァ、どこのどいつだ!

(復讐は良い。
 復讐なんて無意味な事とのたまう奴等はいるが、それは前を向くのに必要な事だ。
 問題は異端を狩るという方。
 そんなことをしてもどうにもならない。
 異端などどうしたってなくならないし、ならばいつまでたっても前を向けない。
 誰かがいる。
 心に傷を負った彼女を利用しようとする誰かが、彼女の後ろにいる。)

東瀬 夏希 > 「これは、私が決めた道だ!私と同じ嘆きを繰り返さないための、私の贖罪だ!
無駄であるものか!流される涙が減るのなら、私と同じ嘆きを抱える者が減るのなら、その救いには少しでも価値があるはずだ……!」

そう。これは夏希が自発的に決めた道。
【ちょっと誘導されてそう思うのが絶対に正しいと思い込まされてしまっただけで】東瀬夏希が自分で決めた巡礼だ。

「だから、私は武器を取る。異端の生み出す嘆きを少しでも減らすために!それが果てのない巡礼でも構わない、この身に救いなどあるはずがない。
それでも、この穢れた手で救いがもたらせるのならば、私は神の刃となって異端を狩り尽くす!そのための殉教ですら、私には上等な末路なのだからな……!」

東瀬夏希は迷わない。迷う余地がない。迷う余裕がない。
ただ前に進むしかできない。自分の前にはその道しかないと信じ、その果てに自分が死ぬことを無意識に願っているのだから。
もし、今の夏希が救われるとしたら……それは果てなき死の巡礼の後、力尽きて倒れた瞬間に訪れるのかもしれない。

龍宮 鋼 >  
そう……かよ。

(最早言葉は通じないらしい。
 彼女の襟から右手を離し、いまだ掴んだままの左手に力を込める。
 そのまま彼女の身体を左腕一本で持ち上げて。
 拳を作った右手を岩のように固く握り締めて。)

――だったら、気が変わった。
そのクッソみてェにくだらねェ性根、叩き直してやる。

(その拳を、彼女の顔へと走らせる。
 反撃の事など一切考えていない。
 ただ彼女の顔へ拳を叩き込む事だけを考えた一撃。
 頭はそれほど良いわけではない。
 説き伏せるほどの言葉を持つわけでもない。
 ただの暴力しか持たない、憧れの姿とは程遠い、ただの乱暴者だ。)

おォらァ!!!

(それでも、本気で助けたいから。
 その拳に込めた思いだけは、正義の味方でありたかった。)

東瀬 夏希 > 「ぐっ…!」

片手で持ち上げられ、咄嗟に右手でゲオルギウスを探すが……

「(間に合わん……!)」

手がゲオルギウスに触れる前に殴り飛ばされ、吹き飛ばされる。
竜種の力での攻撃は、強烈であったが……

「やはり、こうなるか。ならば殺し合うしか無かろう!」

首をひねることで多少なり軽減。そして、新たな武器をゲート魔術で呼び出す。

「貴様とは殴り合いで決着をつけてやる……好きだろう、そういうの?」

非常に、非常に珍しく軽口のようなものを口にしながら、手にした……否、両手に装備したのは、白銀のガントレット。
表面にはAnti Heresy Holy Weapon Series Assault typeⅡ「Beowulf」……『対異端法化兵装強襲型弐式「ベオウルフ」』の文字。
通常、Anti Heresy Holy Weapon Seriesは異端特攻の基本性能に加え最低二つの固有性能を有するが、このベオウルフは単一の固有性能しか持たない。
その名も「勇士たるは王の務め(ノブレス・オブリージュ)」。その効果は「使用者の身体能力強化」。
だが、それだけと侮るなかれ。このベオウルフ、装備すれば女子供でさえビル一つを解体しうるパワーとスタミナを使用者にもたらすのだ。
それを、元々怪力を誇る夏希が振るえば……強靭な異端ですら殴り潰すに足る凶器となり得る。
余りのパワーに他の武器を持てなくなる(持てば握り潰してしまう)と言う欠点はあるものの、それを補って余りある単純明快な強さが、このガントレットの売りである。

「はあああああああああ!!!」

雄叫びをあげながら、強化された身体能力で一気に間合いを詰め……その凶器と化した拳を打ち込まんと突きを放つ!

龍宮 鋼 >  
(無言で髪を掻き上げる。
 右目から上が鋼の甲殻で仮面のように覆われ、同時に全身を甲冑のような甲殻で覆う。
 切られた箇所の出血は止まり、腰を落として右手を引く。)

――。

(問いかけには無言。
 今にも苦虫を噛み潰したような顔で、彼女の突進に合わせて一歩踏み込む。
 同時に、手甲のような甲殻に覆われた右拳を突き出した。
 足元の砂の重量を乗せた拳を、彼女の拳へ合わせるように。
 重い金属がぶつかる――それは最早自動車同士が正面衝突したような破砕音を発し、自身の身体は後ろへと弾き飛ばされた。)

――そんな力持ってんなら。
それで人助けすりゃァいじゃねェか。

(膝は付かない。
 両の脚で踏ん張り、もう一度腰を落とす。)

東瀬 夏希 > 「何を言っている、しているさ……異端狩りと言う名の人助けをな」

自身も後ろに飛ばされつつ、こちらは受け身を取って即座に立ち上がりダメージを流す。
そして、揺るがぬ……揺らぐことを知らないだけの信念と共に拳を矢継ぎ早に打ち出していく。

「司祭様は、世に異端が蔓延るが故に、嘆きが消えぬのだと教えてくださった!私と同じように涙を流す者が、この世には数多いるのだと!
だからこそ私は剣を取ったのだ!それで異端を狩ることで、異端に虐げられる人々がいなくなるようにと!
祝福無き異端の生きるべき場所などありはしない!貴様も、異端ならばここで果てろ!」

ベオウルフの一撃を堪えたのは見事という他ないが、ベオウルフは使用者のスタミナも補強する。
防御力自体は上げないのでクリティカルな攻撃を受ければ話は別だが、殴り合うだけならばベオウルフの強化分自分が粘り勝つ。
その目算の下、殴って殴って殴りまくる!

龍宮 鋼 >  
(次々に繰り出される拳を両手で捌く。
 こちらも龍化により身体能力が向上しているが、その真価はむしろ動体視力の強化にあった。
 自分以外がスローモーションになった感覚の中、拳を的確に避け、受け、払い、流す。
 それでもその威力はそうやすやすと受け流せるものではないが、化勁を併用する事でダメージを最小限に抑えていく。)

――じゃあ聞くがな。
テメェに家族を殺された異端はどうなる。

(彼女等が異端と呼ぶものにも家族はいる。
 家族を殺され彼女のように復讐者となったものもいるかもしれない。
 その矛盾はどう解決するのだと。
 繰り出された拳を流し、拳戟の合間を縫って右の拳を繰り出した。)

テメェのやってる事ァ、不幸なヤツを増やしてるだけだってことに気付かねェのか!
目ェ覚ませ!!

(突き出した拳は、透勁と呼ぶ内部破壊の拳。
 ガードを突き抜け、魔力で殴る無属性の魔術攻撃。)

東瀬 夏希 > 「(コイツ、ベオウルフの連撃を流すのか……!)」

ミスに気付く。夏希も最低限の格闘術は修めているが、基本は武器性能を活かすことを前提にした戦い方だ。実際、今もベオウルフの単純かつ有用な戦術……ごり押しを選択した。
だが、目の前の相手は古流に通じる。あの体内の力の流れを活用する動きは、大陸の拳法か、それを元に発展した空手か。
ならば、単純な拳闘のステージにあがるのではなく、例えば二丁拳銃型の「サンティアゴ」を使うなり、遠距離からの斬撃を飛ばせる「ジークフリード」を使うなりすればよかったのだ。
冷静な判断は、間合いを切れと言っている。
ここで間合いを切り、改めて遠距離戦に持ち込めばそれでいいのだ。
だが……

「は、そんなもの、ソイツの犯した罪に比べれば!一帯を支配し領民としながら搾取しかしない吸血鬼、女を攫って犯した後食い散らかす鬼、夜な夜な隣人たちを食い殺していく人狼!私の知る異端は、そのような連中ばかりだ!どいつもこいつも、表面上例え穏やかにしていても、本性を表せば畜生にも劣る外道ばかりだ!
異端を狩るごとに、私は再確認させられた。異端には、狩られるべき者しかいないのだと!!」

そう、東瀬夏希が討伐してきた異端は、本当の外道ばかりだった。
そう言った異端のみを、あてがわれてきた。
そうして、異端の悪行を目にし続けることで、夏希は完全に信じるに至ったのだ。
異端を狩ることは、間違いなく正義の行いなのだと。
その思いをぶつけてやるためにも、下がれない。下がれば、何か負けた気がする。
ひたすらに踏みとどまり、連撃を浴びせるが……。

「が、はっ……!」

放たれた拳に、思わず膝をつく。
ダメージが内部に浸透する。一部の古流にみられる技法に、恐らくは魔力を付与したもの。

「(ベオウルフの性能に、溺れたかっ……!)」

防御力自体は上がらない。多少のダメージはスタミナで何とかできるが、それだけ。
だというのに、圧倒的攻撃力におぼれ、判断を誤ったのだ。

龍宮 鋼 >  
(膝をついた彼女を見下ろす。
 大陸の拳法を元にした動きではあるが、その殆どは我流のものだ。
 文字通り血反吐を吐きながら身に着けたもの。
 発勁と名付けてはいるが、本流のそれではない外道の技法。)

テメェが見たモンが世界の全てか。
そうじゃねェだろう。

(司祭様とか言うヤツがそういった連中を当てているのだろう。
 証拠はどこにも無い。
 どこにも無いが、彼女の異常なまでの異端への憎悪を見る限り、そうとしか思えない。)

どう見てもゲームに出てくる魔王みてーな格好してんのに、キッチリセンセーやってるヤツもいる。
俺みてェなどうしようもねェ不良も、どうにかこの街で偏見なく生きていけねェかって悩んでる違うヤツもいる。
力もねェし馬鹿でうるせェし正義の味方になりきれねェって分かってんのに、それでもヒーローやってるヤツもいる。
かと思えば、どうしようもねェクズの寄せ集めみてェなヤツも山ほどいる。
そんなもん――

(拳を彼女の額へ当てる。
 それ自体には何の威力も無い。)

――人間だって同じだろうが!

(しかし、地面を右足で踏み付ければ。
 化勁で散々砂浜へ流した彼女の力のお陰で密度の上がった地面の重量が乗った、必殺の一撃に変わる。)

東瀬 夏希 > 「くっ……」

立ち上がろうとするも、膝に力が入らない。ベオウルフの強化も、内部への深刻なダメージを補うことはできない。

「(立て!立て立て立て!立つんだ!そうしないと……!)」

ここで屈すれば、相手の言葉を認めたことになってしまいそうで。
自分の歩んできた道が、間違いだったと認めてしまうことになりそうで。
それが怖くて、必死に立とうとするのに……体は、言うことを聞かない。

「う、あああああああ!!!」

立てないながらも、言葉を否定したくて必死に拳を振り上げる、が。

「あ”っ……」

間に合わず、地の力を乗せた攻撃をその身で受けてしまう。
ばた、と後ろに倒れ込む夏希。完全に力が抜けてしまい、ベオウルフの強化も活かすことができない。

「…………なら、もし本当にそうだとしたら」

今にも泣き出しそうな声で、何とか言葉を絞り出す。
夏希にとって避け得ぬ問いを。

「私の今までは、一体何だったというのだ…………!」

全てを喪い。復讐を誓い。
その過程で、異端を滅ぼしその分の人を救おうとした。
自らを痛めつけながら、果てを目指して続けてきた茨の巡礼。
それは、無意味だったのかと。単なる間違いだったとでも言うのかと。
震える声で、問い掛ける。

龍宮 鋼 >  
(彼女が倒れたのを見て、武装を解く。
 辺りの砂浜に、鋼の甲殻が散らばっていく。
 煙草を咥え、火を付けた。)

完全に無駄っつー訳じゃねェだろうがよ。
オマエが今までぶちのめしてきたヤツァ、クソみてェな奴等だったんだろうしな。

(そこは間違いないだろう。
 そうでなければここまで歪んだ思想を持つ事も無かったはずだ。
 少なくともその行為は無駄じゃなかったはずだ。)

――不良ってのはよ。
大抵のヤツァ周りに迷惑掛けてばっかだし、そのせいで弾かれる事多いんだわ。
自業自得っちゃァそれまでだけどな。

(改めて彼女の隣に腰を下ろす。
 煙草の煙を吐き出しつつ、海を見ながら語る。)

そうやって馬鹿にされんのが嫌で突っ張って、もっと迷惑掛けて。
そんな事してたら、沈んでくばっかじゃねェか。
――だからそう言うヤツ集めて、落第街のクソ共からまともな奴等を守ることにした。

(そこで彼女に視線を落とし。)

――オマエもやんねェか。

東瀬 夏希 > 「…………」

黙って言葉を聞いている。
体は動かず、どこか思考も胡乱だ。
だが……きっと、彼女は間違っていないのだろう、とは思った。
異端にも、滅ぼすべきものだけではなく、単にそこに生きて、純粋に生を謳歌するだけのものもいるのだろう、と。
しかし。

「……すぐには、答えられない。
私は、異端審問教会所属の異端狩りだ。その立場を簡単に捨てることはできないし、私はまだ知らないことが多すぎる」

そう、まだもう一つの視点を与えられただけに過ぎない。
世の中は、Aが正しいからBは間違いだとか、Aが間違いだからBは正しいとか、そんな風に簡単なものではないのだ。
そんな当然のことすら分からずに生きてきたのだから、お笑い種ではあるのだが。

「異端への憎悪は消えまい。私は間違いなく、異端に人生を狂わされたのだからな。だが、それを堪えてでも……先に、広く世を見てみたい。そうしないと……また、視野狭窄に陥ってしまいそうだ」

Aが違うと言われ、ではBに簡単に飛びついていては今までと変わらない。
CをDをEをFを。もっとたくさんの視点を知り、その上で、どれを信じるか選ばなくてはならない。
ゆえに保留。今はまだ、自分の先を決めるには、自分は未熟過ぎると痛感したからこそ。

龍宮 鋼 > ――そうかい。

(笑う。
 今はそれで良い。
 見えなかったものが見えたのなら、それだけで良い。)

良いじゃねェか、狂わされたってよ。
いっぺん何かに狂わされりゃ、それで苦しんでるヤツの気持ちが分かるだろ。
俺達ァそう言うヤツの味方だ。

(鋼の両翼は、そう言うはみ出しモノの集まりだ。
 救われぬ者に救いの手を。
 それを理念として掲げるはみ出しモノの組織だ。)

俺達ァオマエの味方だ。
オマエがどう言う選択するにせよ、それだけは忘れんな。

(言って立ち上がる。
 いろんなものを見て、その上で自身らの理念に賛同してくれるのなら、喜んで迎え入れよう。
 そうでないのなら、全力で応援しよう。)

――なんか困った事あったら俺達に言え。
「鋼の両翼」が助けてやる。

(じゃあな、と残して去っていく。
 異端審問教会と言う名前をしっかりと覚えて。)

ご案内:「浜辺」から龍宮 鋼さんが去りました。
東瀬 夏希 > 「鋼の両翼、か。覚えておこう」

横たわりながら口にする。
鋼の両翼。あぶれ者たちを守る鋼の信念を宿した組織。
もしかしたら、頼る場面も出るかもしれない。敵対するかもしれない。
だが、その名前を覚えておいて損はないだろう。
倒れたまま鋼を見送って……そして、笑う。

「はは……負けたのに不快ではないというのも、新鮮なものだな」

ショックは大きかった。信じていたものの矛盾を突き付けられて、思考が整理できていない部分も大いにある。
だが……それでも、この負けは意味のある負けであったのだと、そう直感していた。


―――それからしばらくして。
体力が回復したのでゆっくりと立ち上がり、ゲート魔術で武器を自室に送り返す。

「さて、鍛え直さないとな」

鋼ともう一度やり合うかは別にして、本当に倒すべき相手とまみえた時に、今のままでは不安が残るのは間違いない。
帰って、しばらく安静にした後は、もう一度しっかり鍛え直そう。
そう心に決めて、その場を後にした。

ご案内:「浜辺」から東瀬 夏希さんが去りました。