2017/03/02 のログ
ご案内:「クローデットの私宅・22歳の誕生日」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 実際に「体調不良」が発生したことで、委員会に申し出た「緊急事態」は嘘にならなかった。
しかし、度々クローデットが起こす「体調不良」と、それにもかかわらずクローデットが魔術的な検査は要らないと突き返し続けているので、委員会本部は不審に思っているかもしれない。

それでも、(渋々ながら)科学的な検査は受けることを決めて、実際に受けて…この日は、念のため家で安静にしていることになったのだ。
検査結果は間もなく出るだろうが、「科学的な」範囲においては、出てくるのはせいぜい過負荷くらいだろう。クローデットは、「その範囲においては」あまり心配をしていない。

クローデット > ただ、何度も倒れているせいか、噂はじわじわと広まっているらしい。
つい先ほども、かつての「玩具」が容態を心配してわざわざやって来たし(「相談の約束までには何とかする」と声で伝えて退散願ったが)…「彼」にまで伝わっていることは、耳聡い「裏」の連中が知らない道理はない。
自分一人の穴で傾くほど公安委員会が頼りない存在などとは思っていないが、このせいで連中が増長するかもしれないと思うと、いい気分ではなかった。

再び頭が重くなる感覚になるのを…深呼吸を1つして、何とか抑える。

クローデット > 『お嬢様?お加減はいかがですか?』

寝室をノックする音と、それに伴って聞こえてくるハウスキーパーの声。
ハウスキーパーは、クローデットが彼女の眼前で倒れて以来、休みでも極力様子を見てくれている。
『好きでしていることですから』と彼女は笑うが、曲がりなりにも雇用主という立場にある者として、どこかで埋め合わせはしなければとクローデットは思っていた。

「…ええ、今は何とか落ち着いています…何か?」

ドアの向こうのハウスキーパーに返事をすると、

『気分が落ち着くハーブティーをお持ちしたので、良ければご一緒に、と思いまして。
こちらにお持ち致しますか?』

という話だった。
「良ければご一緒に」も何も、元から自分のためにと思ってくれていたに違いない。
クローデットの唇から、邪気のない微笑が漏れた。

「ありがとうございます…今はそこまで状態が悪くありませんので、リビングまで降りますわ。
室内着のままでも構いませんか?」

『ええ、もちろん。ここはお嬢様が私宅として借りている家ですから』

クローデットの、ややフランクに過ぎる要望にも、ハウスキーパーは気分を損ねた様子もなく請け負った。

クローデット > リビングで、くつろいだ姿勢で。女性が二人、ハーブティーを楽しむ。
親子に準ずる年齢差だし、対等な関係かというとそうでもないのだが。

『お誕生日のディナー、残念です。腕によりをかけようと思っていたのですが…』

抑制気味ながらも、残念そうにハウスキーパーが呟く。

「…こちらこそ、ジュリエットの楽しみを駄目にしてしまって、申し訳ありません」

淑やかに、伏し目がちに微笑むクローデット。
それなりに長い付き合いで…彼女がクローデット以上にイベント時の「食」に重きを置くことを知っているのだ。

『…いえ、お嬢様のお加減が第一ですから。
出過ぎたことを、申し訳ありません』

慌てて頭を下げるハウスキーパーのジュリエットに対して、クローデットは柔らかい微笑を口元に湛えて、首を横に振った。

「いいえ…ジュリエットがあたくしを気遣って下さることは、とても嬉しく思っておりますのよ。
…早く調子を戻して、ジュリエットに快気祝いのお食事を用意して頂きたいものです」

そう言って、花の綻ぶような笑みを零すクローデットの様子は、平素より優しくすら、映ったかもしれない。
…その影にあるものに、ジュリエットとしては、言い知れぬ不安も覚えたが…顔には、出さなかった。

クローデット > そうして、ティータイムを終え、「誕生日」には(フランス人の二人にとっては)ささやか過ぎる夕食の後、それぞれの部屋で寝に入る二人。
クローデットも、消耗分すぐに寝に入れるかと思っていたのだが…

《………》

言葉にならない、「思念」のようなものの重さを感じて、目を開けた。

クローデット > 《クローデット》
《あなたは、私の味方でいてくれる?》

《私が見たいものを、見せてくれる?》

「………」

頭の中に響く声。それに操られるかのようにゆっくりと起き上がるクローデット。
手を伸ばすのは…久しく使っていなかった、変身薬の瓶。

その日の夜中、クローデットは数時間、私宅から姿を消した。

ご案内:「クローデットの私宅・22歳の誕生日」からクローデットさんが去りました。