2018/01/06 のログ
ご案内:「女子寮の一室」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
ご案内:「女子寮の一室」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 「さ、どうぞ。今お茶を淹れるから、適当に座って待っててちょうだい。
 座布団の一つも無くて申し訳ないけど。」

年末の大掃除が終わった後、部屋に戻ろうとした彼女に声を掛け、少し話をしないかと誘ったのが数分前の出来事。
そして今は彼女を自分の部屋に通し、こちらはお茶の準備のために隣のキッチンに立っている。

部屋の作りは同じ寮生である彼女の部屋とそう差異はないはずだ。
内装はフローリングの床にカーペット、隅にはベッドや机、そして中央に小さな座卓が一つ。

室内は片付いている、というより、あまり物が置かれていなかった。
最低限の家具は揃えられているが、他に目につく物と言えば、学校の勉強に使うものや図書館貸出の本が幾つか。
後は窓際に置かれた観葉植物の鉢植えぐらいで、17歳の少女の部屋としては少々殺風景だった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「えっと、お邪魔します」

暮れの大掃除が終わった後、なんとなく気まずく手部屋に戻ろうとしたところ、お茶に誘われた。
初めこそ戸惑ったが、少しうれしいと思う気持ちがあったというのも生じ来なところ。
結果的にそのまま彼女の部屋に上がり込む形になった。

「いえ、気を遣わないでください。私の部屋だって似たようなものですし」

そういって部屋の中を見渡す。初めて抱いた印象は簡素とかそういうのではなく、
どことなく自身の部屋に似ているな。というもの。
実際、自分の部屋も本の代わりにトレーニング用のマットと銃の手入れをするための道具があるくらいなのだ。

「本、好きなんですか?」

そして何か話題を探したとき、真っ先に思いついたのは本だった。
似たような部屋、その中でハッキリと自身の部屋と違うのはやはり本だった>

鈴ヶ森 綾 > 「えぇ、それなりに。この島は図書館の蔵書が充実しててとても気に入ってるわ。
 あなたはどうかしら。本はお好き?」

引き出しから急須や茶筒を取り出す傍ら、隣室からの声にそう応える。
お湯はポットのものを使ったので然程時間も掛からずお茶の準備は終わり、部屋へと戻ってくる。

「お待ちどおさま。こんな物しかなかったけれど、良ければどうぞ。」

そう言って湯気が立つ湯呑みと共に盆に乗せて持ってきたのは、小皿に盛られたお茶請けの最中。
その二つを相手の前に並べ、対面に座ろうとしたところではたと何かに気づいたような顔をする。

「…あぁ、緑茶はそのままで大丈夫?日本以外では砂糖やミルクを入れて飲むらしいけど。」

自分にはいまひとつ馴染みがない習慣、そんなニュアンスを滲ませた口調で尋ねる。
必要なら持ってくると言うように、座る動作を中断させて再度立ち上がるとキッチンに戻ろうとして。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうなんですね。確かにこの島の図書館は本がたくさんあって、勉強の役に立ちました。
 あまり文学とかは読まないですね、読む習慣がなくて」

確かにこの島の蔵書の数には最初は驚いた。自国の本を扱っているのは当たり前として、
時折故郷の方の本を見かけることすらあった。
もっとも、言語を学ぶ上で役に立ったのは言うまでもない。
今となっては製品化された魔法や科学技術で言語の壁を感じないが、
そういったものに頼らずに言語を学ぼうとしたとき、本はとても有用だった。

「ありがとうございます。
 えっ?この国では入れないんですか?
 ……じゃあ、なしでお願いします」

お茶漬けの最中が出されると目を輝かせる。
この国は甘味に限らず料理がおいしい。
故郷は料理が不味いことで某島国と肩を並べているという不名誉な部分が在る。

そして緑茶に砂糖を入れるかと聞かれると、驚いた表情。
自身の中では緑茶には砂糖はつきものだと思っていたのだ。
そして最初は砂糖をお願いしようかと考えていたが、
本物の味というものが砂糖を入れない味だとしたら、
それを体験してみるのもいいと思って、砂糖を断る。>

鈴ヶ森 綾 > 「あら、勿体無い。ここの図書館は単に冊数が多いだけじゃなくて、
 他所ではあまりお目に掛からないような種類の本もあって、中々楽しいわよ。
 お金がかからないって言うのも魅力的ね。」

それなりに、と言っていたが、図書館の魅力を語る口調には少々熱が篭もっている。
その様子からは、先程の言葉以上に執心している様子が伝わる事だろう。

「あらそお?ならこのままで…いただきましょうか。」

相手の言葉に足を止め、忙しない動きにようやく一区切りをつけてこちらも卓につく。
湯呑みを両手で包むように持ち、まずは冷えた指先を温める。
そのまま口元へ運んで一口、音を立てず茶を啜る。
口に広がる良い香りとほのかな苦味、そして暖かさに少し表情を緩ませた。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「お目に掛からない本、確かに冊数が多い図書館はほかにもありますけど、
 ここの図書館はカバーしている分野がとても広いなっていうのは感じましたね。
 おかげで能力も魔術も飛躍的に向上しましたし」

軍隊に居た頃にここで学ぶことが出来たら、きっとより兵士として技術に磨きをかけられただろう。
そう思うのは確かである。
そして彼女が図書館について話をする様子を見て、少し笑みがこぼれる。
普段はとても落ち着いているように見える彼女が、わかるほどに口数が多くなっている。
その様子に本当に本が好きなんだろうと笑みがこぼれてしまった。

「じゃあ私も……」

故郷をはじめとして、国外でも緑茶を飲むことはあった。
しかし砂糖の入っていないものは初めて飲んだ。
ペットボトルなどで市販されているものには大抵砂糖が入っていたのが原因だが、
本物の緑茶は甘くないとうのは、正直なところカルチャーショックだ。
そして彼女に続く形で緑茶を口にする。

「……コーヒーとは違った苦みですね。
 慣れるのにはちょっと時間がかかるかもですけど、美味しいです」

飲んで真っ先に感じたのは苦みと香り。
苦いといっても、コーヒーとは全くベクトルの違う苦みは、
初めてコーヒーを飲んだ時のことを思い出すようだった>

鈴ヶ森 綾 > 「そうね。土地柄、というより場所柄かしらね。魔術に異能、異世界に関する本まで。
 たんなる娯楽や知識欲を満たすだけでは終わらない、実用的な…あら、どうかしたかしら?」

話をしている内に、彼女が笑みを零している事に気づいて不思議そうに小さく首を傾げる。

「…どうかしら?」

彼女がお茶を飲む様子を、些か不躾だが注視してしまう。
その反応が好意的なものであると分かると、満足そうにもう一口お茶に口をつける。

「一息ついたところで本題…の前に、一つ言っておくことがあったわ。
 さっきの外での事だけど…随分と危なっかしいことをしている自覚はあるのかしら?
 私が人間でなく、悪意に満ちた存在で、正体に感づいた貴方を捨て置けないと考えたら…。」

そこで一旦言葉を区切ると、手を付けずにいた最中を一つ手にし、それに両手の指をかけて軽く力を込める。
最中はいとも簡単に二つに割れ、砕けた皮の一部がパラパラと皿の上に溢れる。
その断面を相手に見せつけるように向け、直後に自分の口の中へ放り込んだ。

「こんな風になっていたのは、貴方だったかもしれない。
 気づかせてしまったのは私の落ち度だけど、知らぬふり、気づかぬふりをするのも時には必要な事だったんじゃないかしら。」

外での掃除の最中、質問をはぐらかそうとする自分にしつこく食い下がってきたあの時、
そういう考えがまったく浮かばなかったと言えば嘘になる。
最も、結局彼女に対してなんら危害を加えることはしていないのだが。
だが一つ何かが違っていれば、そういう結末もあり得ただろう。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「え?いや、それなり、なんて言って、本当はすごく本のことが好きなんだなぁって」

首をかしげて不思議そうにする彼女に、どうしてニコニコしていたのか、その理由を話す。

「小さい頃に初めてコーヒーを飲んだ時を思い出しました。
 でも、コーヒーより飲みやすいかもしれませんね」

前々から砂糖入りではあるが緑茶を飲んでいたからか、そこまで抵抗はなかった。
感覚的にはミルク入りで飲んでいたコーヒーを、初めてブラックで飲んだ感じだろうか。

「えっと、なんて言ったらいいんですかね。癖とでもいうんでしょうか。
 違和感があれば確認、報告、指示の待機。
 綾さんが危険な存在かはまだ分からないです、さっきの段階では。そして今でも。
 もし綾さんが危険な存在で、私のことを消そうとするなら、それで消されるなら、
 まぁ、運が悪かったのかなって」

彼女が最中を半分に割る様子を見て、少し笑う。
あの時の彼女なら、そういう選択をした可能性も十二分にあっただろう。

「あ、いや、別に生きることに執着がないわけじゃないんですよ?
 でもほら、避けられないことってあるじゃないですか。最善を尽くしていても。
 私の場合、正しいことを確認するっていうのが最善なんです。
 もちろん回避できる危険は回避しますけど、それは一時しのぎですから。
 それに言ってなかったかもしれませんけど私、これでも兵士ですよ?
 もし殺されたって、『弾が偶然私に当たった』くらいの意味しか持ちませんから」

言い訳のようにも聞こえるかもしれない。
しかしこれが本心だ。どれだけ本能が嫌がっても、最善を選択し、優先行動をとる。
事実、外で手を掛けられた時、咄嗟に逃げることもできただろう。
それでも正体を問うた。末端として確認し、報告する。
ルールに従うように訓練されたその姿勢に嘘はない>