2018/01/07 のログ
■鈴ヶ森 綾 > 「…そうね。さっきのは少し控えめに言い過ぎたかもしれないわ。
読書は数少ない趣味の一つで、大好きよ。」
その理由を聞いて、あぁ、と納得したように小さく頷き、相手につられるように笑みを零し、
先程の言葉を訂正して言い直した。
「確かに…コーヒーと比べると酸味も無いし、ずっと飲みやすいと思うわ。
それにしても…砂糖入り緑茶、美味しいのかしら。」
自分が初めてコーヒーを口にしたのが何時だったかは覚えていないが、
中々刺激的な味で戸惑った事は薄っすら覚えている。
それを踏まえてみるに、彼女の反応はそれ程に激的なものではない。
しかしそうなると、逆に彼女が普段飲んでいた砂糖入り緑茶というもの少しばかり興味が湧いてくるのだった。
「運…自分の命も、運の一言で片付けてしまえるのね。私には今ひとつ共感できないけれど、
少しあなたの事を理解できた気がするわ。
まぁ、忠告はしたわ。活かすも殺すも後はあなた次第。
それにしても……あなた、兵士だったのね。」
前々から大荷物を抱えている姿は目にしていたが、その中身について深く気にしたことは無かった。
マジマジとその顔を見つめてみるが、小柄な身体も相まって兵士というイメージとはあまり結びつかない。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「なんとなく、綾さんの見た目は読書が好きな女の子って感じがして、雰囲気にぴったりです」
お互いに笑いあうが、果たして見た目や雰囲気がぴったりというのはことばの選び方としてどうなのだろう。
ステレオタイプな目線で相手を見ているということにもなるが、あまり細かいことは気にしない。
「うーん、もしかしたら本場の人の中には『邪道だ!』っていう人もいるかもしれませんね。
私としては砂糖を入れるのは当たり前だと思っていた節もあったので。」
正直なところ、食文化というのは国を跨ぐと行き先の国に合うようアレンジされるのが大抵である。
最も、自身の国の料理はマズすぎてアレンジどころか国の外に出ていかないという悲しい面もあるが。
「別にすべてを運で片付けるわけじゃないですよ?
あくまで可能性や確率の話です。
一つの結果に対して、その原因てたくさんあるじゃないですか。必ずしも一対一じゃない。
自分でどうにかできる原因なら何とかしますが、
それ以外の要素はどうにかしようとしたって後悔するだけです。
必要のない後悔を抱えて生きるのって、無駄だと思いません?
大丈夫ですよ、綾さんが人間じゃないことは秘密にしておきますから。
私がその事実を知ったうえでどうするか、これは私が管理できる原因になりますからね」
そういいつつお茶漬けを食していく。
命の処遇について話をしているというのに、その表情はニコニコと楽しそうだ。
「みんなそう言うんですよ。
まぁ、自分でも兵士っぽさみたいなのはかんじないんですけどね?」
ちょっとふざけた様子で答える。
確かに普段の自分は背も小さいし、特別筋肉があるようにも見えない。
まして能力を使うまで獣人であることなんて、他人が知る由なんてないだろう>
■鈴ヶ森 綾 > 「それで正解よ。意識してそういう風に作っているんだもの。
でも…こちらの方が、あなたには見慣れているんじゃないかしら。
これだと、どう見えるかしら?」
今時珍しい、オールドスタイルとでも呼ぶべき姿。
彼女がそこにステレオタイプそのままな印象を抱いたとすれば、それは満足する反応と言えた。
髪を結んでいたゴムを外して三つ編みを解く。
解けた髪は癖もつかずに綺麗に分かれ、公園で出会った時のストレートヘアに戻る。
前に垂れた部分を背中側に押しのけ、眼鏡を外して術を解除すればガラリと雰囲気が変わって見えるはずだ。
「…軍人というのは、そういう思考が不可欠なものなのかしら。
でも確かに、自分が最善と信じる事をするというのは、きっと正しい事なんでしょうね。」
お茶とお菓子を楽しみながらの会話とも思えない内容だが、こちらも別に不愉快そうな様子は無い。
むしろ相手以上に楽しんでいるような節すらあって。
「ほんとうに、ね。腕なんか、私より細いんじゃないかしら。
…そういえば、あの時は耳が生えていたけれど、兵士として戦う時もああなるのかしら。」
おどけた様子の彼女の言葉にくすりと笑みを漏らす。
そういえば、と公園での彼女の姿を思い出す。
自分の頭の上、彼女の獣耳が生えていた辺りを撫でるような仕草を取って。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あ、そうですね。私はそっちの姿の方が見慣れています。
どっちの姿が本物とか、そう言うのはあるんですかね?
もちろん答えられる範囲でで構いませんけど」
不意に彼女が髪を解いて眼鏡を外した姿を見せると、そこには見慣れた姿があった。
単純に慣れているせいもあるだろうが、こちらの姿の方が安心できるというのが正直なところ。
「組織としての効率を極限まで求められますから。
私が正しいと信じているというより、そう教え込まれたっていうのが正しいですかね。
ある意味ここに来るまで私にとっては軍隊が世界のすべてでしたから」
訓練といえば聞こえはいいが、実際は洗脳に近いかもしれない。
お互い純粋な人間ではないからなのか、殺伐としたないようなのに楽しそうである。
「獣人は筋肉繊維の密度と骨の強度が人間の数倍あるんです。
だから同じ太さでも比にならない馬力なんですよ?
ええ、能力を使っても魔術を使っても出てきます。
獣人としての身体能力を使う時にも出ますね。
逆に言えば耳が出ていないときは人間と何ら変わらないので、
ある意味私も綾さんと似たような状態ですけど」
頭を撫でてくる彼女に説明しつつ、魔術を使ってみる。
すると耳がと尻尾が出てくるが、接触が手だな上に髪の毛越しであるため、
魔術の効果そのものはうっすらとしか出てこない。
「そう言えば、さっき本題がどうとか言ってませんでしたっけ?」>
■鈴ヶ森 綾 > 「正直に言うと、どちらも本物とは言えないわ。
見た目でなく本質的な事を言うなら、今の姿だけれど。
……見たい?本当の姿。」
テーブルに肘をつき、絡めた両手の指に顎を乗せた姿勢で、反応を試すような問いを投げかける。
とは言え、あくまでほんのお遊び。
相手がどう答えたとしても、こちらの返す言葉は決まっているのだが。
「…ここに来て、あなたは少しは変わったのかしら?」
兵士という組織の一部である事を求められる存在と、妖怪という際立った個の存在。
二人の立ち位置は対極に位置するようだが、それがかえって興味を惹かれる、という事なのだろうか。
こんな質問が自分の口から出る理由を胸中でつらつらと考えてしまう。
「うーん、良い手触り…ああ、そうだったわね。また忘れない内に、本題に入りましょうか。
外での話の続き。不躾けな疑いを向けたお詫び代わりに、私が何者かという質問に答えてあげる。
妖怪、という存在は知ってるかしら?」
頭から飛び出してきた耳を前回制止されたのも忘れ、あるいは意に介さず撫で擦っていた、
先程の続きを促す言葉に一旦手を引っ込め話を再開させる。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「……可能であれば。それが組織の末端としての性ですから。
変わろうと意識はしていますが、なんとも。
従うべき上官がいなくなっても、一人で兵隊ごっこをしています」
彼女がこちらの顎を指で持ち上げるようにしてくる。
この行為自体は何度目だろうか。
少なくとも、このようにされたとき、彼女はどこか弄ぶような感じだ。
そして変わったかという問いには、否定的に答えた。
結局、この島に来てからの行動はすべて軍隊を理由に取られてきたから。
「妖怪。この国の怪異というか、異形というか。
古くから畏怖の対象とされているもの、程度の知識しかありませんね」
耳を出して見せたのは良いものの、どうやら彼女はこれを相当に気に入ったらしい。
根元でなければ別段触られても問題はないのでおとなしくはしているが、
これからは気を付けなければなるまい。
そして自身の正体について話す彼女が妖怪という単語を持ち出すと一度真剣な表情になる>
■鈴ヶ森 綾 > 「…ふふ、ごめんなさい。見せてあげたいところだけど、ここでは少し狭くて窮屈になりそうだから。
また今度、機会があれば見せてあげるわ。」
そう言って、からかうような人の悪い笑みを浮かべる。
それでも完全に遊んだだけというわけでもなく、その言葉には僅かながら真実も含まれていて。
「……一人でこの島に来ても、何も変わらなかったのね。なら、もっと大きな変化が必要なのかもしれないわね。」
答えを探すような短い沈黙。
顎に触れさせていた指が頬へと移り、そこを一撫でして離れる。
「ええ、概ねその通り、この国に古くから存在する怪異。
長く生きた虫や動植物が神通力を得たり、物が霊魂を宿したりしたものをそう呼ぶの。
性質は様々…人を驚かすのが好きな悪戯者だったり、幸福をもたらす守り神のような存在だったり。
…あるいは、人を襲って喰らうものだったり。」
自分がそのいずれに属するかあえて口にはしないが、
このように正体を隠す事それ自体が、言外に自身の事を語っている。
少なくとも、相手がそう受け取ったとしてもなんら不思議はない。
「私もそう。本来はほんの一年にも満たない、春に生まれて冬には寿命を迎える、
そんな生き物がなんの因果か、十数年生き続けた成れの果て。」
昔を思い起こしているのか、ここではないどこか遠くを見るような目つきで言葉を続ける。
卓の上に置かれた手の指が落ち着き無く動き続けているのは、無意識の行動なのだろうか。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そんなに大きいとなると、広い場所でも見られないようにするのが大変そうですね」
てっきり何かぞっとするような脅しや冗談を言われるのかと思いきや、
案外間抜けな理由を聞かされて笑ってしまう。
それと同時に、彼女の本当の姿を目にするとき、受け入れると言うか、
拒否してしまうことが無いかと内心不安に思ってしまった。
「そうですね。この島に来て2年が過ぎましたけど、相変わらずです。
でもちょっとずつでも変わることが出来るなら、それでいいかなとも思うんですよ」
少し考え込むような彼女に、あくまで明るく答える。
気づけばお茶漬けも緑茶も容器を残して空になっていた。
「妖怪ですか、なら私も似たようなものですね。
私はまだ軍隊に居たから怪異とか、そう言う扱いは受けませんでしたけど。
居場所がなければきっと同じだったと思います。
……あまり考えちゃだめですよ。いつもみたいに優し笑ってください。
どうにもできないことをどうにかしようとしても、後悔するだけですから」
遠くを見つめるようにして言葉を口にする彼女は、
見ている側がつらくなるような表情だった。
ちょっとの間沈黙が続くが、空気を変えるために彼女に抱き着く。
そして魔術を使って、彼女の気持ちを落ち着かせようとした。
今の自分には、これくらいしかできることが無いのだ>
■鈴ヶ森 綾 > 「その時のために、どこか適当な場所を探しておいてもらおうかしら。
2年…あら、私より随分先輩だったのね。じゃあラウラ先輩が変われるよう、私も何か協力しましょうか。」
相手がそう応じるなら、こちらも努めて明るく振る舞おう。
「似たもの…そう、なのかしらね。私も居場所があったら、もっと違う自分になっていたのかしら。
…もしそうなら、少し興味が湧くわ。」
別に、今の自分が疎ましいわけではない。
わけではないが、どこか心の奥に引っかかりを覚える事があるのも事実だ。
それは特にこの季節が訪れると強くなる。
だがその原因を探ろうとしても、いつも靄がかかったように思考がまとまらないのだ。
ならば、今は彼女の言うように笑っていようか。
「…私は、別にあなたの事を信用しているわけではないわ。…けれど、信用したいとも思っている。
だからこんな事を話してしまったのだと思う。」
彼女に抱きしめられていると不安や焦燥といった感情が徐々に薄れていく。
これなのだろうか、彼女を信用しようと決めた理由は。
その考えに釈然としないものを覚えるが、今は深く考えずに彼女の優しさに甘えてしまおう。
強張った身体から意識的に力を抜き、相手に少しもたれるようにして肩口に顔を埋める。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうですね。見られても問題なさそうな場所は決まって狭いですからね。
路地裏や落第街は妙な噂が一人歩きしますし。
ふふ、ならまずは一緒に服を買いに行きたいですね。
どうでしょうか。違う自分が必ずしも理想とは言えませんし。
……もし、私のことを信用に値すると思ってくれるなら、
私がしばらくの間居場所になります」
信用したい。そう言われると、より一層強く抱きしめる。
居場所があっても、そこから出られない閉塞感というのはなかなか酷なものがある。
何が一番いいのかは、誰にも分からないことだ。
そして魔術を使わないと人を癒すことが出来ない自分に、少しだけ無力感を覚えてしまった。
それでも、魔術による効果でも、彼女が少しでも楽になるなら躊躇う理由はない。
身体を預けられればしっかりと受け止めて、無意識のうちに彼女の黒髪を撫でる>
■鈴ヶ森 綾 > 「となると…山の方かしら。二人で探しに行ったら、ちょっとしたハイキングになりそうね。
えぇ、そうね。
あなたに似合いそうな服を探してお店を回るのも、きっととても楽しいわ。」
その青写真は、どちらも想像するだけで気持ちを明るくしてくれる。
きっと本を読むのと同等か、それ以上に楽しい事だろう。
「居場所………じゃあ、暫くの間、そうさせてもらおうかしら…。」
より強く抱きしめられると、それに伴ってどこか安らいだ気持ちが湧き上がってくる。
多分これは、魔術だとかそういうものは関係の無い現象だ。
彼女が自分に無力感を覚えている事に気づけていれば、それを言葉にして伝えただろうが、
今は自分の気持に整理をつけるので手一杯だった。
髪を撫でられるのは、抱きしめてもらっているのとはまた別種の心地よさがある。
その行為に何か応えようとして、こちらからも彼女の身体に腕を回し、少し力を込めた。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「山、そうですね、私は行ったことが無いので本当にハイキングになりそうです。
やりたいことが増える一方ですね」
今まで誰か出かけたことなんて、数えるほどしかなかったからか彼女との会話には胸が弾む。
「はい、ぴったりの場所が見つかるまで。
見つかってからも、必要であれば」
彼女の話を聞く限り、きっと本当の姿は後ろめたいものなのかもしれない。
だからはぐらかして、弄ぶような雰囲気を醸し出しているのかもしれない。
でも、きっと彼女だけではないはずだ。
なら、知らないままでも仲良くしていければそれでいいではないか。そう思った。
「ふふ、私の前ではたくさん甘えてください。
こんなのでも、故郷では聖母なんて言われていたんですから」
彼女が応えるように腕を回してくると、そのままの体勢で囁く。
聖母といっても、機関銃をふりまわす聖母だし、
その貧相な見た目に対する皮肉が多々含まれたあだ名ではあるが。
それでも、彼女の癒しになるのであれば聖母を演じるくらい苦ではない>
■鈴ヶ森 綾 > 「…まぁ、そちらは暫く先。もう少し暖かい季節になったらにしましょうか。」
誰かと出かけるという行為、それ自体は然程珍しい事ではなかったが、
きっと今感じている期待は、彼女と同様のものだ。
「…見つかるかしら。あぁ、それは今考える事ではないわね…。
とにかく、ありがとう。もう大丈夫。
落ち着いたわ。」
抱きしめられたままそんな言葉をかけられると、どこまでも際限なく彼女に甘えてしまいそうだ。
少々名残惜しいが埋めていた顔を持ち上げ、絡めていた腕を解く。
その際相手に見せた顔が少し紅潮しているのは、どうにも隠しようがなかった。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうですね、私は大丈夫でも、綾さんが大変そうです」
雪国の出身としてはこの島の冬はどうということはないが、
寒いのは苦手だといっていた彼女にとっては大変だろう。
「ええ、ゆっくり考えていきましょう?
ふふ、落ち付きました?」
一度離れてお互い顔を見合わせると、不思議と笑みがこぼれた。
彼女の顔が紅潮しているのと同様、
今の自分も頬をうっすらと紅色に染まってしまっているだろうと、頬の熱からわかる。
そして一度離れると、寮が同じであることを良いことに、
彼女の好きな本やこの国の事、自身の故郷のことを話して、談笑を延々と続けていった。>
ご案内:「女子寮の一室」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。
ご案内:「女子寮の一室」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。