2015/11/26 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」に美澄 蘭さんが現れました。
ご案内:「クローデットの私宅」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
クローデット > クローデットが、私宅のパソコンで何やら調べ物をしている。

「………山陽に…山陰?」

どうやら、『東洋思想概論』の小テストに出てくる地名が分からなかったらしい。

クローデット > どうやら、日本列島中国地方の、中国山地を隔てた南北を分ける表現のようだった。

「なるほど…そういうことですか」

大まかな概要は掴めた。あとは資料やまとめたノートを見ながらより「適切な」回答を仕上げるだけだ。

「…あとは…河陽に河陰、ですわね…」

読み方はカヨウとカインで良いのかしら、などと呟きながらこちらもかたかたと上手い具合にキーボードに打ち込んでいく。
この島ならではの翻訳システムと、日本語入力を可能にしたパソコンあっての技だ。

「………」

九州地方の、凄く狭い範囲の地名くらいしか出てきませんでした。

クローデット > 念のため国語辞典や漢和辞典のようなもの確認してみるが…河陰で「かわなみ」と読む姓が存在することが分かった程度だった。

「………成績には関わらないようですが、メールで質問をさせていただきましょう。
分からないままにしておくのは居心地が悪いですから」

歪んだ思想を持つに至ってしまったクローデットだが、魔術師としての実力は、若年を考慮すれば驚異的と言える程度には本物だった。
それを可能にしているのは、「分からないことをそのままにしておかない」、純粋な知的探究心である。

そうと決まれば、資料で連絡先を確認し、メールを作成しだす。

クローデット > こなれた調子で文書を作成して、送信ボタンを押す。

「…小テストに取りかかるのは、お返事を待って…ですわね。
今は講義内容の復習と………ああ、そうでした」

青く美しい瞳に剣呑な光を宿し、口の端をきゅっと上げて笑う。

「その前に、『あの子達』の様子を見に行くとしましょう。
…もうすぐ、「餌」の時間ですから」

そう言って、私宅の奥の方にある小部屋に向かう。

クローデット > 日の差さないその小部屋は、魔具や、その材料の見本市の様相を呈していた。
ずらりと並んだ護符、アクセサリー、宝石のようなもの、何やら怪しげな物体が入った小瓶…。
以前獅南に見せたスライムが入った瓶が、大小共に複数ある。

そんな部屋の奥に…魚などを飼うような水槽がいくつか、設置されていた。

クローデット > その水槽の中を泳いでいるのは…妖精の羽根のような胸びれを持った、魚達だ。
全長30㎝ほどだろうか。銀色の身体が、わずかな光源を反射して七色の光沢を帯びて美しい。

奇妙なのは、その水槽には酸素を供給するための器具がないどころか、水すら張られていないところだ。

クローデット > 「うふふ…順調に育っているようで何よりですわ。
もう少ししたら、水槽を大きいものに替えてやらなければなりませんわね…そうなると、「魔具庫」では手狭かしら」

楽しそうにそんなことを呟きながら、部屋にある怪しげな物体が入った瓶の1つを手に取る。
中に入っているのは…飴玉のような、紫色の球体だ。

クローデット > 瓶の蓋を開け、素手でその球体を取ると…水槽の蓋に開いた5㎝ほどの穴から、水槽の中へ2、3個落とす。
それを、全ての水槽に向けて行っていく。
水槽の中の「空間」を泳ぐ魚達は、ダイレクトに口で受け止めたり、あるいは水槽の底に落ちたものに食いついたりしながら、その「餌」を飲み込んでいった。

クローデット > 餌に食いつく魚達に、慈しみの眼差しを向けるクローデット。

「一般的な『ヒト』が触れて問題のないお前は、大きくなったらリビングへ…
あたくしが触れる分には問題のないお前は、大きくなったらあたくしの寝室に水槽を移しましょうね」

水槽のラベルを見、柔らかく指を指しながらそう笑みかける。

「…うふふ、もちろん、「来るべき時まで」ここから出せないお前達も、とっても愛しく思っていましてよ?」

指を指さなかった魚の水槽に、艶のある笑みを浮かべる。

実際のところ、「表には出せない」魚達ほど、クローデットの「戦力」としては重要な意味を持っている。
それでも、クローデットとしては、傍にいる時間に差が出来てしまうことに、密かな罪悪感を覚えていた。
その程度には、クローデットはこの魚達を「愛して」いた。

錬金術で生み出した、「指定したものだけ」を斬ることの出来る鰭を持った、空間を泳ぐ魚達。
光を反射すると七色に見える銀色の鱗の美しさも合わせての、クローデットの自信作だ。

クローデット > (素晴らしい「材料」を提供して下さった「彼」に、感謝しなくてはなりませんわね)

無邪気に空間を泳ぐ魚達を見て、以前救った白髪の少年を思い出しながら満足げに微笑むクローデット。
今でこそ、他者に積極的に危害を加えることのないこの魚達は…魔術式による命令を与えることで、クローデットに忠実な生きる「刃」となる。
そして、「ヨソモノ(異邦人)」や「バケモノ(異能者)」を切り刻んでくれるのだ。

クローデット > ひとしきり、魚達を愛でた後。

「…さて、学業に戻りましょうか」

と、勉強部屋へ戻ろうとしたところ。

『お嬢様、こちらですか?』

と、落ち着いた女性の声と共に、魔具庫となっている部屋の扉がノックされた。

クローデット > 「お帰りなさい、ジュリエット。
今日はあなたはお休みということになっているはずですが…何か用事でもありまして?」

そう言って扉を開けると、そこにはパッケージされた茶葉の袋を手にした黒髪の女性…クローデットのハウスキーパー、ジュリエットがいた。

『いえ…大したことではないのですが。
先日教えていただいたというお茶の専門店で茶葉を買ってきましたので、お嬢様も一緒にいかがかと思いまして』

落ち着き払った様子でそう答える女性に、クローデットはくすくすと笑って

「お休みの時くらい、あたくしに構わずとも良いのですよ、ジュリエット。
…もし私的に付き合いを望む、ということでしたら…「仕事」と同様の上下関係を維持することもないでしょう?」

と言う。ジュリエットはそこでようやっと笑みを零して、

『敬愛する旦那様のご令嬢にして、立派な魔術師。
その上で、ハウスキーパーの休日に配慮してくれるお嬢様だからこそ…私が敬意を払いたいんですよ』

と、幾分明るい声音で返した。

クローデット > 「ああ、そうでした…あなたは不肖の父に命を救われたのでしたね」

「敬愛する旦那様」という言葉にやや眉をひそめつつも、それを咎められない程度には重い事情を思い出し、苦言を飲み込む。
その様子に、わずかばかり、ジュリエットは瞳を陰らせたように見えた。
その様子を見てとって、クローデットの視線が冷える。

「………あなたがあたくしと父の和解を望むのは勝手ですけれど、父以外の誰もそれを望んでいないことだけは忘れないようになさいな。
…無論、あたくしを含めてですよ」

『………心得ています』

そう答えるジュリエットの声は、幾分沈んでいた。

クローデット > 落胆の表出を最小限に抑えようと努力したジュリエットの様子を見て、クローデットも流石に良心が咎めたようだった。

「…折角のお休みに、あなたにとっては辛いことを言ってしまいましたわね。
申しわけありません、ジュリエット」

『…いいえ…お嬢様が悪いのでは、ありませんから』

表情を、気持ちを落ち着かせるように深い息を吐き出しながらそう言うジュリエット。

「…そんなに自分を責めないで下さいな、ジュリエット。
あたくし達の『家族』の問題に、あなたが必要以上に悩まされることなど無いのですから」

「クローデットが悪いのではない」という言葉に複数の意味が含まれていたことに、クローデットは考えが及ばなかった。それは、クローデットにとって「考えてはいけない」ことだったのだ。
だから、自責の念とだけ理解して、ジュリエットを励ました。

ジュリエットは、しばし何と返そうか考えていたが…

『………ありがとうございます、お嬢様』

励ます言葉だけを受け取り、それへの礼を返した。

クローデット > 《ああ、御館様(ディアーヌ)の影響の何と恐ろしいこと!
これだけ私を気遣えるお嬢様が、「敵」と看做した相手に何と残酷であることか…

私は、「家」から離れた機会にお嬢様の考え方を軟化させるお手伝いをするようにと、旦那様に頼まれていたのに…とても、上手くやれそうにない》

そんなことを考えるジュリエットの瞳が、哀しげに動揺する。
それを見たクローデットは、ジュリエットが先ほどの件をまだ引きずっているのだとしか、解釈しなかった。
…そのため、ジュリエットの気分を変えることを試みようとして、努めて楽しげな声を出した。

「そういえば、その茶葉ですけれど…キャッスルトン茶園のオータムナルですか?
ストレートにとても良いですわね」

そして、花の綻ぶような、華と柔らかさを備えた微笑を向ける。
そこで、ジュリエットも、やっと我に返った。

『ええ…きっとお嬢様にもご満足頂けるかと』

そして、控えめな笑みを零した。

クローデット > その控えめさがかえっておかしいのか、くすくすと笑い出すクローデット。

「あたくしより、あなた自身の方がよほど紅茶に煩いではありませんか…
ですから、信頼しているのですよ、ジュリエット。

…ああ、そうでした」

ふと、思い出したように。

「休みの日にも構っていただけるのは有難いですけれど…仕事の時よりは言葉を崩して下さいな。
仕事と、プライベートは分けて然るべきでしょう?あなたの方が年長者ですし…ここには、父も母もいないのですから」

クローデットの方は、「ハウスキーパーの仕事をする日」のジュリエットに対してより、口調を柔らかくするよう心がけていた。

『…これでも、幾分砕いているつもりですが』

控えめ気味の笑みを浮かべたままのジュリエットに対して

「もう少しくらいは砕けるでしょう?」

と、楽しそうに圧力をかけるクローデット。
ジュリエットは、

『…お嬢様は、厳しいことを仰るわ』

そう言って、困ったように…それでも、今までで一番大きく笑った。

クローデット > 今までで一番大きく笑ったジュリエットを見て、クローデットは驚いたように目を大きく瞬かせる。
それでも、口元には楽しげな笑みが宿ったまま。

「…あなた、普段は随分と表情を抑えていらっしゃるのね」

『そうでもありませんよ…お嬢様の方が、普段は言わないようなことを仰っただけです』

そう、涼しげに言うジュリエットの口元は笑んだままだ。
それでも、クローデットは動じる様子はない。
ジュリエットと同様の、涼しげな笑みで返した。

「仕事相手に言うことと、プライベートで「同志」に言うことは違って当然だと思いませんか?」

『そうですね』

そうして、お互い楽しそうに笑った。

クローデット > 『それでは、少し待って下さいね。
とびきりのオータムナルを淹れますから』

大分砕けた口調でそう言って、キッチンに向かうジュリエット。

「ええ、楽しみにしていますわ」

品のある優しげな笑みで、リビングに向かったクローデット。

《私に出来ることなんて、たかがしれているでしょう。
それでも…お嬢様を、少しだけでも、日常(こちら)側に繋ぎ止めるくらいは》

そんなことを考えながら、ジュリエットは紅茶の支度に入ったのだった。

ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。