2016/08/09 のログ
ご案内:「異邦人街安アパートの一室」に五代 基一郎さんが現れました。
五代 基一郎 > 夢を見るようになった。

夢という、就寝という休息の中で行われる思考の整理の結果か……
それとも何がしかに今まで封じられていたものが崩れてきた結果か。
文明の機器故に寝苦しさとは無縁になった睡眠時間。

深く、ゆっくりと意識は沈み
広がるように意識は広がっていく。

この前より鮮明に……この前よりリアルに。
自分が見ていることを理解できる程度の現実感を持った、過去に起きた出来事を
一人称の視点で再び、眺めているからか…今の視点で、今の精神でそれらを見ることが叶う。





■サマエル>「そいつを塔に近づけるな!ヤツの狙いは塔だ!」



巨大な、中型のビル建築物程度の巨大さを持つ怪鳥。
複数の翼を持つ、霊鳥のような怪鳥の姿こそ真の姿。
サマエルの巨体が、嵐吹きすさぶ世界を羽ばたく。

ここは常世島であるはずなのに、時相がずれているため外界とのまた違う次元の軸の世界であった。
五次元の世界か、その理屈を塔の管理者に問うても説明ははぐらかされたが……
非常に中東の一地域に近い内観の世界。

サマエルはその巨体を持って”我々”の敵たる者の従者に戦いを挑む。
その巨体に、またサマエルを模しているのか近き者か。
機械で出来た巨大な翼を持つロボットに雷撃を解き放ち、吼える。

五代 基一郎 > 砂漠の砂から噴きだすように、間欠泉の如く砂が舞い上がり
そこから複数の、巨体が現れる。

鎖付きの鉄球を振り回すそれらは敵が導入してきたロボットの兵士…
アンドロイドの兵隊だ。それらが一斉に襲い掛かる。
目的は自分のみ。

故にこの時まで、つい先程までいた自警団をと組んでいた仲間らは
バラバラに引き離された。

迫りくるアンドロイド兵に向かって駆けながら衝撃破を放つ。
相手からの攻撃をいなしながら、その体を割るように蒼い炎を走らせながら。
黒猫から黒豹の姿へと戻ったエイジャックスと共に走り駆け抜けながら戦っていく。
何度か戦ってきたのもある。何度か戦いの場で見かけ、戦った経験もあり
数を用意できる、異能という超常の力に対して何がしかの体制を持たせてある……些か面倒な手合いであっても
人ではないためか、戦いの慣れもあって纏めてではあるものの、確実に破壊し
燃やして行く。

■エイジャックス>「この島にいつから入り込んでいた……数が多すぎる」

それでも戦わなければならない。
我々の敵であり、世界を掌握せんとする者達と戦う我々が、ここで負けるわけにはいかない。
超常の力と、その源でもある塔を渡すわけにはいかないのだ。

「そろそろ出てきたらどうだ。こんな手合い、いくら用意しても無駄だぞ。」

まだ今と違い、声に幼さが残る。
体もまだ小さいが故か視点が低い。
それでも戦うべき相手はそこにいると、鋭く見据えている力を思い出す。

五代 基一郎 > 風が吹く。
砂を纏めて流すように。
空気が変わる。共振のようにわかる。
自分と同じ異能を持ち…いや、与えられながら自分とはまったく逆の世界に渡った者のに力を感じる。

黒い外套のような大型のローブ
流れる黒い髪。痩躯に長身か……
その”女”のシルエットは視界の悪くなりつつあるこの世界でも
はっきりと捉えることが出来た。

■黒い女>「遅かったな。もう”三年”過ぎてしまった。お前ならば答えをもう少し早く出せると思っていたが
      それでもやはりお前も人の子か」

「”何”を言っている。気でも狂っているのかと聞くまでもないな。」

拳を弱く固め構える。そうだ、おかしい。島に来てからこの時はまだ一年過ぎた程度だ。
なのに三年とは、まるで今の時間から語りかけているようだ。

■黒い女>「その通りだ。何もかも狂ってしまった。夜の世界の”私”がこうして再び現れて後継者となったのも。
      全ては大変容が起きてからのこと。世界は変わったのだ。
      我々が特別だと思っていたのは遥か昔の世界でのこと。
      今では人々の多くが人が忘れていた力を、持ちえなかったものを
      この世界に本来からしていなかった者がいる。
      世界はもうとうに崩れていたのだ。」

「それがお前が首魁となり、世界を力で掌握しようとしている理由か。
 そのために塔を、俺を狙うのか。」

世界再生の名の下に人々を集め、世界に力を振るい、その力により
世界を掌握せしめんとする……掲げるは世界征服かと
目の前の首魁たる女に問う。力で世界を統べる。
今の世界に対して、暴力で訴え力を持たない弱い人々を虐げる……
程度はどうあれ、そういった連中を許らず。
そのために戦ってきたからこそ、問う。ならばお前を倒すまでだという答えを含み。

■黒い女>「それは結果的にそうなるだけだ。正義か悪か、そういった次元の話ではない。
      世界は変容し、時代は変わった。旧来の社会システム、概念すらも変容し
      力ある者は悩み、苦しみ、力無き者もまた然り。
      正義か悪か、ではなく世界は渾沌に呑まれたのだ。
      だからこそ私はここにいる。変容した世界で、変容してしまったからこそ戸惑い迷う者達を導くために蘇ったのだ。
      元来我々は世界から追いやられ、夜の世界に進むしかなかったからこそ導ける。
      旧来の世界から弾かれた者達の導となる事が出来る。
      だがお前はなんだ。お前が見ているのは旧来の人々ばかり。新たに変容した世界に生まれた者達を見ているのか。」

五代 基一郎 > 「お題目はそれだけか。それだけで俺が手を止めると思ったか。」

旧来の、大変容以前の価値観。日常や社会システムに生きる人々にとって
大変容以降に出現する異邦人や胃能力者は脅威であり、その力を持って思いのままに生きる者達。
そういった者達は世界のどこにでも、ましてやこの常世島にも多く存在していた。
力があるからこそ何をしても許されると、どのような主義を掲げても
熟せられる力を持っているからこそ力を振るって人を傷つける者達。
それらは決して許される存在ではない。
それらに対して、かける情けなど無用のものだ。

だが、今ならわかる。今ならわかってしまう。
どうしても、それが……それはそうであるのだが、それだけの話ではないことを。

■黒い女>「お前はわかっているはずだ。お前が弱き人々と思っている者達。
      それは決して弱い者達ではない。弱い者達だからこそ、力を妬み
      力を求め、そしてどのような残虐なことをも装飾されたお題目を掲げて行う。
      わかっているはずだ。旧来の人々が生み出した者達が、如何に新たに生まれた者達を苦しめているか。
      この島にいればよくわかる。だからこそ私はここに来た。
      そしてお前がここに来た。ここにいる。
      今のお前にはわかるはずだ”コウイチ”」

「わからないな。お前達が人々を苦しめているのは知っている。」

いや、わかる。わかっている。今ならわかる。わかってしまう。
その、異能を……新たな世界に生まれて旧来の世界とは違うが故に
旧来の世界が生みだしている価値観と常識と言う名前のものに
苦しめられ、その旧来の世界の”普通”を求めた者が近くにいるから……
そして、何よりその者を通して見て、自分もまた今の世界にて
どうかして普通に生きれないかと考え始めているから……
わかる。居場所を求めているから、帰る場所を求めているからこそ狂おしく……

■黒い女>「残念だ。」

「言いたいことはそれだけか。」

断罪を、お前をここで倒す。という自身の声を聞きながら
思い出す……次は、そう……やつが呼んだ……
両手を掲げ、世界を喝采するように叫ぶ。
黒い女が呼び寄せる……巨神を。

■黒い女>「ガイアーーーーーーーーッ!!!」

五代 基一郎 > その巨神が、五体の巨神と合体すれば現れる一体の巨神。
対向するように自身もまた叫ぶ。
白き方舟より齎された技術を地球の技術で再生させた……黒鋼の巨神を。

そして、塔の前で戦いが始まり……そして
結果は思い出すまでもない。敗北。

三度閃光が瞬き、巨神を貫けば不動となり
剣の一閃が巨神を貫き砕いた。それでもまだ戦おうとすれば
力ずくでねじ伏せられ……意識と共に力を失っていく。


■黒い女>「お前の力と引き換えに、お前を今一度普通の人間に戻す。
      記憶も徐々にだが奪わせてもらう。お前の原動力である憎悪の記憶を。
      今の私ならそれができるからこそ……お前は見なくてはならない。
      お前が世界を燃やし尽くす前に……一人の人間として、この世界を……大変容後の世界を見ればいい。
      そして答えを見つけるのだ。お前の、世界への答えを。
      世界に、この世界に生きる者達に対してどうしたいのか。
      お前もこの世界に生きる一人の人間として……答えを出してくれ」


意識が、遠のく。
海の漣が聞こえる。最後に覚えているのは……まだ小さかった、自身の手。
波撫でられている……自分の手を覚えている。


そして自身も目覚める。まだ夜中だというのに、一人自宅で目が覚める。
夢の中での自分が意識を取り戻すのと同時にだった。

冷蔵庫から水のボトルを取り出し、コップにも注がずそのままの実ながら思い出す。

その後、聞いた話では病院に運ばれて数日が経過していた。
その経過している時間の中で、12歳の時から変わらなかった体は
10年程の時間を取り戻すように成長し今の姿に至る。
異能らしい異能の殆どは失われ、ただの人間とほぼ変わらなくなった。
残された力らしい力などなく、新たにとなった自分の体のリハビリをと……
するまでもなく、様々な問題が出てきた。
自警団活動、今回の被害からの活動が中止。
メンバーは殆どが行方不明。監督者は死亡、その長でもある自分のこと等……

それらをどうにか整えて、そして……日々過ごして行くうちに消えていく記憶と付き合いながら
今になり、思い出す。

だからこそ思う。ヤツは俺に何をさせたいのか。
何を望んでいるのか……何故、殺さなかったのか……

まだ、それらの答えすらも。
ヤツがいう答えも分からない。

解かるのはただ、過去を……もう帰れないはずの……自分が帰りたいと思っていた場所”日常”の記憶が
もう両親の顔すら思い出せなくなっていること。
そしてそこに入れ替わるように新たな”日常”が生まれつつあることを……

認めたくない、と思いながら再び目をつぶり
意識を手放そうと努める。

明日は…………

ご案内:「異邦人街安アパートの一室」から五代 基一郎さんが去りました。