2016/12/26 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 「………悪くなさそうですわね」

先日図書館で借りた教本を元に、魂や精神を「閉ざす」ための魔術具の試作品を点検して、満足そうに魔術庫の棚に置いたクローデット。
これで、元素魔術の探究のために禁書庫に乗り出すことが出来そうだ。

今年のクリスマスは、ハウスキーパーのジュリエットとともに私宅でゆったりと過ごした。
調子が万全であれば、去年のようにご馳走を食べに出たかったのだが…。

それでも、ジュリエットは「二人で負担にならない範囲」でクリスマスならではの献立を用意してくれた。その気遣いが嬉しかった。

クローデット > クリスマスの献立を楽しみ、二人でお茶とケーキを楽しんで、合間に趣味比率高めだったり実益比率高めだったりの魔術探究を進めた。非常に有意義な休日だった。

(…こんな時の過ごし方が、いつまで許されるのかしら)

そんなことが、ふと頭をよぎる。
「大切な人」の寿命を延ばすために捧げた賢者の石の欠片の効力が、どれほどかは分からないが…小指の先ほどの欠片が、そこまで劇的な効果を上げられるとも思えない。

(…わたしは、ひいおばあ様のために何も出来ていない…)

悲しげに瞳を翳らせながら、クローデットは自分の寝室まで歩いた。

クローデット > 寝室のベッドに腰掛け、サイドテーブルの上に置いてあった書物を手に取る。
古書店街で入手した、白魔術の奥義書だ。

古書好きの人間が聞いたら激怒するだろうことに、クローデットは、精神的な不安を強く感じたときは、この奥義書を抱いて眠っていた。
物理防御術式を記した護符を貼り付けることで保存状態を保っているとはいえ、あまり行儀のいいことではない。

それでも、こうしていれば、聞こえてくる「大切な人」の声が優しくて、クローデットは気持ちよく眠ることが出来た。

クローデット > 眠る前に、奥義書を開き、後ろの方を見る。
そこにあるのは、「奥義」とは違った、「秘義」の項目。

奥義であれば、当然そこに至るために上るべき段階がある。
しかし…「秘義」は少し事情が異なる。

奥義に至るまでの熟達は求められないし、場合によっては奥義以上の効果を発揮しうるが…「代償」を伴うのだ。

クローデット > 白魔術は、神にも悪魔にも頼らない。根源となるのは、「利他」の精神、「祈り」のみ。
「秘義」が「代償」を伴うのは、超常的な何ものかに捧げるためではなく、「自らはどうなっても構わない」という「覚悟」、究極の「自己犠牲」を示すことで「ヒト」の力の枠を瞬間的に超えるためだとされている。

「秘義」に求めるもの次第では、「代償」は、単に命が失われることそのもの以上に酷な結果を行使者に強いる。
それでも、クローデットが手にしている奥義書には、過去にそれらを実際に支払った人々の実績が丹念にまとめられていた。

クローデット > (…カロリーヌ様は、どんな思いで秘義をまとめられたのでしょうか…)

秘義の行使によって、高名な白魔術師が過去に何人も失われている。
中には、カロリーヌの同門もいただろう。秘義を行使して失われた命を、悲しむ声も知っているだろうに…。

(…きっと、そこまで「祈る」ことを、否定したくなかったのでしょうね)

カロリーヌ自身が、奥義書をまとめられるほどの白魔術師なのだから、「秘義」に手を伸ばしたくなってしまう者達の気持ちが、痛いほど分かったのだろう。

クローデット > (…わたしは…ひいおばあ様のために、何が出来るかしら…)

そんなことを考えながら奥義書を閉じ、胸に抱いて横になる。
そうして目を閉じれば、少ししてクローデットの呼吸は規則正しく穏やかなものになった。

「…ひいおばあ様…」

ぽつりと、呟かれた声。
涙が一筋、目から伝った。

ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。