2017/02/27 のログ
クラウディア > 「ぐぬ…むぅ…。」

―――私だって受け流せる技はあるのだけど。
とはいえ、直ぐに切るような札でもないと、今は自身の「異能」を隠す。
その代わりの、言い返せない腹いせとして。

「そぉれッ!」

殴りつけるスピードを、少しだけ早くする。
ガキンとか、そう言った鈍い鉄のような。
おおよそ拳から出たと思えない音が当たりに響く。

「あぁ~…痛いわねえもう。」

結果としては、両者相打ちといったところか。
先の左の掌よりも痛みに震えるそれは、予想外にも直ぐに収まった。
さて、どうするか。
物理はなんとか対処可能、ただしダメージ自体は与えられず。
魔法は強化系でもダメージにはならず。
直接的な攻撃魔法なら行けるのか。
とはいえ、迂闊にこちらから仕掛ければ変に返される。
それを恐れてか警戒してか、おおよそ5mほどの距離を取りながら思案を続ける。

龍宮 鋼 >  
(炎を散らしたとは言え、元より魔力の攻撃に弱い身だ。
 無傷とは行かず、右手に軽度の火傷を負う。
 だがこの程度の怪我など気合と根性でどうとでもなる。
 痺れと痛みの残る右手をブンっと振った。)

――パワーもスピードも同程度、か。
テメェが風紀の犬でなけりゃァ楽しいケンカになったんだがよォ。

(一見化勁がある分自身が有利に見えるが、おそらく彼女も何らかの防御手段を持っているだろう。
 となると耐久力も同程度と見ておいたほうが良さそうだ。
 そうなると魔術の分彼女が有利だろう。
 どうしたものか、とほんの僅かな時間逡巡する。)

――まァいいわ。
随分とおとなしくなったな。
今のうちに地面に転がって腹でも見せといた方が賢いんじゃねーのか。

(が、細かい事は考えない。
 致命の一撃を貰う前に、力の限り彼女の顔をぶん殴る。
 それだけ考え、ズンズンと歩いて距離を詰めていく。)

クラウディア > 「そうねぇ…んー。」

同等なら、魔術が使える分私の方が有利だ―――
なんて甘い考えが出来るほど、クラウディアは楽観的ではない。
全力とまでは行かないまでも、並の人間ならくの字どころか粉砕する膝蹴りを受け止められて。
灰燼に帰すほどの火力は出さずとも火達磨になってもおかしくない焔は、まるでうっとおしい水を払うかのように消されて。
しかも、隠してる力でもない風に簡単に対処された。

自身が化け物な自信も自負もあった。
軽くひねり潰せるだなんて思ってはいなかったけれど。

「これは…遊んでる余裕は無さそうね?」

『腹を見せろ!?脱げ!?脱げって言うのね!しょうがないわねえこんな街中の往来で脱ぐなんて』
大体この辺で入る蹴りをかわしながらの、何時ものおふざけは。
やっている暇は無さそうだ。

「ま、犬にもプライドってのはあるわよ?」

先の突撃を見れば、5mは距離を取ったに入らないだろうと。
そう思い直し、余裕ぶりながら近づいてくるその顔面に拳を叩き込まんと。

「『爆ぜろ』。ボム!超小型バージョンっ!」

炸裂の炎さえ見えない程の、小さな小さな爆弾。
しゅぼっ、と評するべきか。
なんとも情けない音だ。
だが当然、彼女の目的はそれでダメージを与えることではなく。
それによって発生する煙だ。
当然大きさが大きさだ、辺り一帯が煙塗れになるなんてことはなく。
せいぜいが上半身をギリギリ隠せる程度の、小さな小さな煙幕。

「それだけあれば充分ッ!」

その煙の中で自身の初動を隠しながら。
煙の霧の中を拳を構えて突っ切る。
目掛けるは、その余裕に満ちた面だ。

龍宮 鋼 >  
(バケモノの自覚はこちらにもあった。
 初撃だって勁での一撃ではなかったものの、勢いと膂力を存分に乗せた全力の一撃だ。
 それをあっさり受け止められ、ましてや即座に反撃してくるなど。
 そんなヤツは数えるほどしかいなかった。
 だからこそ、化勁や螺旋勁を使う事をためらわなかったのだ。)

遊べよイヌッコロ。
ケンカなんざ、遊んでナンボだろうがよ。

(彼女と違うのは、それすらも楽しいと思えるような根っからの戦闘狂っぷり。
 二人の距離が数歩――距離にして三メートルほどか――縮まったところで、彼女が動く。
 あえて隙だらけで近付く事で相手を動かし、そこへカウンターを叩き込む。
 そんな自身の考えは、)

ッ!?

(煙幕と言う形で逆にこちらがカウンターを受ける。
 攻撃と思っていたところへいきなり煙幕を張られ、一瞬動きが止まる。
 その煙を振り払うように伸びてくる拳。
 それをまともに喰らい、)

――小ざッかしい真似してんじゃねェぞ!!

(その拳の外から自身の拳を振るう。
 彼女の拳が突き刺さる頬と彼女の頬へ叩き込む拳は鋼のような甲殻に覆われている。
 タイミングがつかめず衝撃こそ逃せなかったものの、物理的なダメージは堅牢な防御手段に阻まれて。
 クロスカウンターの要領で、鋼のグローブに包まれた拳を走らせる。)

クラウディア > 「遊びレベルじゃあ済まないわねえ!」

煙の中でも鮮明に見えるような便利な目はしていない。
よって、見えないのはお互い様なのだ。
だが自分に関係ない。
私が今やることは、その面に拳を叩き込むこと。
その余裕に満ちた笑みは見えなくても確かにそこにある。
そこにぶちかませば―――

「ッ…!」

晴れた視界に見えるのは、煙幕をものともせず突っ込んでくる彼女の姿と、文字通りの鉄拳。
この軌道なら、お互いの顔に綺麗に当たるだろう。

それは、まずい。

龍の血こそ流れていれど、身体は生身の人間なのだ。
化け物ではあるけれど、化け物の拳は受け止めることは出来ない。
そのまま脳を揺さぶられでもすれば、そのままタコ殴りされて終わりだ。
それだけは避けないと行けない。

煙が晴れてから拳を交し合うまでの、1秒にも満たない僅かな時間。
その瞬間にクラウディアは一つの選択をした。
そのまま受け止めることが出来ないなら、受け止める事が出来る身体になればいい。
自身の異能では、どこに反らしても対応されそうだと。
もう一つの切り札を晒す。

「『龍化』ァ!」

唱えるが早いか、変わるが早いか。
艶やかな紫色の髪は自身の魔法のような鮮やかな炎の色に。
目の色は一種の高貴感さえ漂わせるような金色の瞳に。

そして、身体は半龍に。

見た目だけで言えばせいぜい、角と尻尾、小ぶりな翼が生えた程度。
だが、身体自体の構造は。

「ぐっ………ッ! 結構、痛いじゃないの?」

その拳を笑ってとまではいかずとも、余裕を持って受け止められるように。
頬に当てられた手を邪魔そうにはき捨てる。

龍宮 鋼 >  
ぐ、ッあ――!!

(顔で受ける拳の威力が想定より重い。
 龍化した彼女と違い、こちらはただ頬と拳を甲殻で覆っただけだ。
 ダメージは防げても衝撃を防ぐには、力が足りない。
 視界がぐらりと歪む。)

――んッだよ、テメェ同属かよ、クッソ……。

(ガクガクと揺れる脚で一歩後退。
 それでも膝は付かないが、この体たらくでは拳を――ガードを上げざるを得なかった。)

ハ、龍宮鋼を舐めんじゃねェ。

(強がりだ。
 明らかに脚は踏ん張りが利かないし、腰も落ちている。
 顔を守るように上げた拳の間からは、血が垂れる口も見えている。
 それでも尚、敵意だけは落とさない。
 細く細く針のように研ぎ澄ませた瞳孔からは、むしろこれまで以上に鋭く研ぎ澄ませた敵意を発して。)

オラ来いよ。
フラ付いた不良一人倒せねェでくの坊でもねェだろうが。

(右拳を開き、掌を上に。
 四本の指を曲げ、掛かって来いと挑発する。)

クラウディア > 「同属、ねぇ…。」

私の一族はほぼ全滅したし、別の種族のところかしら。
いや、今はそれに構ってる暇はないか。

身体能力では大きく上回った。
とはいえ、龍化を持ってしても自己修復機能があるわけではない。
治療スキルはあるけれど、今は使ってる暇は無い。
受けたダメージはそのまま。
龍化したおかげか、脳が震える事は無かった。
多少揺れはした。
痛みは無視出来るほど軽くは無い。
だが、いける。

「貴女みたいな人、嫌いじゃないわよ?」

強がりだ。
10人いれば10人がそう証するだろう。
先とは違い順当にダメージとして通った拳は、そうとう重かったらしい。
それでも敵意を燃やせるのは、並大抵の精神で出来る事ではないだろう。

ぽき、ぽきと。
一足一足詰めるように。
一手一手つめるように。
拳を鳴らしながら、震える彼女に近づいて。

「もう一発!」

挑発に応えるかの如く何度目かの拳を握る。
そのまま、また同じように。
流れるように、その鉄拳を振り下ろした。

龍宮 鋼 >  
(完全な同種と言うわけではないが、龍であるなら同属だ。
 他のやつらはどうか知らないけれど、どうやら自身の種族はその辺の仲間意識が強いやつらだったらしい。
 今はそんな事はどうでも良い。)

ハ。
俺ァ嫌いだね、テメェみてェな正義の味方気取りの連中はな。

(視界が揺れる。
 彼女の顔がよくわからない。
 それでも敵意は絶えず、心も折れない。
 彼女が近付いてくるのをただ待って、怪しい視界と野生の勘と化勁でその拳を捌く。)

――ッ、ソ……!

(勿論全てを捌くなど不可能だ。
 拳を顔の前に上げて被弾面積を小さくする。
 その隙間を縫って放たれる拳は、野生的な勘を持ってしてとにかく触る。
 触りさえすれば化勁で地面へ流す。
 中にはそれでも防げない拳もあったが、頭へのダメージだけは徹底して防ぐ。
 そうすれば、)

――好き勝手ボコスカ殴ってんじゃねェぞ!!

(視界の揺れが収まってくる。
 彼女の姿が彼女の姿のまま見えるようになった瞬間、こちらも龍化して。
 仮面を思わせる角と甲殻が顔の上半分を覆い、丸太のような尾と巨大な翼が背中から生えてくる。
 その金属のような質感の翼で彼女の左右を包み込むように覆い、拳戟の隙間を縫って右拳を放った。
 同時に地面を踏み付けて、極大の質量をその拳に宿らせて。)

クラウディア > 「あら…悲しいわねぇ。」

私も別に正義を語るつもりはないけれど。
まあ、今は余裕も隙もない。
兎に角、片を付ける。

「そー…れぇっとぉ!」

オラオラ、ラッシュ、乱打。
様々な呼び方をされるそれ。
両の拳で上から下から右から左から。
一発一発が人間を挽肉と変わらないレベルにまで変貌させる威力を持つそれを、上がった腕やガードされてない箇所に叩き込む。

「…っと、あら?」

瞬く間に変貌した姿。
なるほど、同じ龍の力を持つ相手だ。
龍化も当然、警戒しておくべきだった。
スキルレベル、と言えばいいのか。
錬度、と言ったほうがいいのか。
それとも、種族差所以の差か。
力の上昇量は、どうやら随分と大きいらしい。
ふらついていたボーナスタイムに決め切れなかったクラウディア。
そしてその反撃は。

「…っぶべっ!?」

龍と化した肉体でも、吹き飛ばすのに充分な威力だった。
殴られた、と気づいたのは自分の身体が宙に舞った後で。
流石にそのタイミングでは自身の異能でも反らしようはなく。

ご案内:「歓楽街の端の端」からクラウディアさんが去りました。
龍宮 鋼 >  
(血反吐を吐き、折れた腕で拳を放ち続けて得た鉄拳――すら超えた、鋼の拳。
 それが軽いものであるはずが無い。
 少なくとも自身はそう自負していたし、それに恥じぬ威力があるとも思っている。)

――ッソが。
調子乗りやがって。

(ブン、と刀の血を払うように右手を振るう。
 打たれた箇所は少なくない。
 骨が折れたりヒビが入っていたりと言う事は無いが、流石に身体中が悲鳴を上げている。
 正直ばったりと倒れこんでしまいたいが、吹き飛ばされた彼女はどうやら気絶してしまっているらしい。
 一度は放置して背を向けたのだが、)

――クッソ!
面倒臭ェなクソが!!

(ずんずんと彼女の元へ歩み寄り、その身体を抱え上げる。
 米俵を担ぐように肩へ乗せ、歓楽街へ向かう。

 歓楽街の手近な風紀委員の詰め所に着けば、彼女をそこへ放り込んで自身は落第街へと戻っていった――)

ご案内:「歓楽街の端の端」から龍宮 鋼さんが去りました。