2017/07/19 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 「………はぁ………。」
夜。卒業発表のための研究、その題材の機械のテスト結果のチェックに区切りをつけ、クローデットは椅子の背もたれに背中を預けて軽くのけぞりながら息を吐いた。
記録された検査結果と動画の照合は、目を酷使するのだ。眉間の辺りを、軽く揉み解す。
獣の姿の青年に「自分達」の話を大まかにとはいえ打ち明けて、弱音を吐露して。
それ以降、クローデットは自分が見る夢のことをかなり素直に受け止められるようになっていた。
結果として、睡眠の状態も徐々に改善しつつあり…卒業発表の準備も、ペースを上げることが出来ている。
この調子なら、予定通り8月を機械の本試験に当てられそうだ。
■クローデット > (…彼は、何をもってしてわたしを「強い」と…そして、自分を「弱い」と仰ったのかしら?)
睡眠の状態が改善して、頭が少しずつ明晰さを取り戻してきて。
「過去」を受け止めることが少しずつ出来るようになってきて、かつてと違った角度で物事を理解することが出来るようになって。
結果的に、クローデットの記憶の蓋は、かなりの勢いで開いた。
■クローデット > 異能に悩む青年とのやりとりで、一瞬考えた「狭間」のこと。
父の友人である教師に零した、父との距離感でひそかに抱え続けた感情のこと。
…獣の姿の青年を助けた、「あの時」のこと。
「………。」
クローデットは、苦悶の表情を浮かべて、自らの手で目元を覆った。
「優しい怪物」の毛並みの感触に、覚えがあった理由。
その時の自分の振る舞い、零した言葉。ほとんどを思い出していた。
自分はとっくに「彼」に弱さを曝け出して、それを受容されていて………その上で、自分はそれをすっかり忘れていたわけで。
何たる失態か、と思う。
■クローデット > (…きっと、「獣」が板についているように見えるのも、その辺りを踏まえての計算が含まれているのでしょうね…)
「人間」の「男」であることをかいま見せた「彼」を、かつて拒絶した。
そして、「優しい怪物」には、弱っていたとはいえ普段覆い隠していた感情を未熟な形で吐露し、親密に振る舞った。
実際、「ヒト」よりは「ケダモノ」の方が、御せる安心感があって、接しやすくはあった。
けれど…
(………彼を一人で立てるようにするためには、早く呪いを解かなくては)
無論、自分を表に「売れば」、各種サポートが受けられるだろうし、その中には呪いを解くことも含まれるだろう。
ただ…現在の彼は、自分を表に「売る」くらいなら、呪いが解けない状態ででも自分との接点を欲しているらしい様子だった。
■クローデット > (…まあ、あの「怪物」を恐れもせず、獲物とも看做さず接することが出来る者は、「裏」では限られているでしょうけれど…それを踏まえても…)
「彼」は、随分と自分の存在に依存…しているように思える。
この島でクローデットが過ごす残り時間を考えると、この状況は、あまりにも望ましくない。
いくら「自分達」から敵視されなくなったとはいえ、自分がこの島を去った後に彼が生きる意味を見出す力を失ってしまっては、命を掬い上げた意味がないのだ。
自分のことは、時間が経った後に振り返ってみて、「ひどい女だった」と笑い飛ばせるくらいになっていて欲しいのだけれど…。
■クローデット > そこまで考えて、クローデットは、はたと、自分より相手の将来を優先して考えている自分を自覚して、目を覆っていた手を離して身体を起こす。
(…もしかすると…)
治癒くらいならさほど問題はないが、白魔術の調子はまだ戻らない。
けれど………条件を、状態を丁寧に整えて、入念に準備をすれば…
彼の呪いを解く、だけなら、上手くやれるかもしれない。
■クローデット > (…とりあえず、白魔術用装備の点検と、補助になる魔法薬の在庫を確認して…
………明日の昼間に、彼に連絡を入れましょう。新月の夜に、相談したいことがあると)
眠りにつく前に、クローデットはクローゼットやら魔術具の保管庫になっている部屋やらで何かを確認した。
そして、次の日…廃屋を根城とする青年が、本来の姿で利用する廃品じみたソファの上に、
『次の新月の夜、相談のためにお伺い致します』
という文面が浮かび上がったメモパッドが、いつの間にか現れていることだろう。
次の新月の夜に、何が起こるのか…それはまだ、誰にも分からない。
ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。