2018/04/06 のログ
ご案内:「農業区」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
ご案内:「農業区」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > バスがエンジン音を響かせて農業区にある停留所を走り去って行く。
そしてそれを、今しがたバスから降りたばかりの二人組が見送る。
周囲は長閑な田園地帯で、遠くまで田畑とあぜ道が続いている。

「…ここから歩きで20分ぐらいね。じゃ、行きましょうか。」

案内所で貰った島の地図でおおよその方向と距離を確認し、それをポケットにしまい込みながら隣の相手に話しかける。
手にした地図を見るために地面に置いていたバッグを拾い上げると、ゆっくりと歩を進める。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「距離的にはそのくらいですね。楽しみです」

よく晴れた天気に広がる田園、時折吹く柔らかい風。
花見をするにはうってつけの環境に胸が躍る。
二人で地図を確認すると道に沿って歩きはじめる。

「気付けばお花見の時期だなんて、あっという間ですね」

寒いところが苦手だといっていた彼女が、こうして問題なく出歩けるようになった。
冬の寒空があっという間に陽気になる様子はこの国らしいと思う>

鈴ヶ森 綾 > 「そうね。案内所で聞いてきたのだけど、川辺の桜と菜の花がいっぺんに見られるそうよ。」

なるべく静かで人気のない綺麗な桜が見えるところ、そんな要望にもきちんと応えてくれるとは、まったく頭が下がる思いだ。
かなり遠く不便な所にあるというのはこの際贅沢は言えない。
むしろ二人でゆっくりと話をするのには良いのかもしれなかった。

「お弁当を作るのに思ったより時間がかかってしまったけど、
 丁度いいタイミングでバスが来てくれて良かったわ。」

空を見上げて目を細める。
時刻は12時を少し過ぎたところ。
気温は上がってきているが暑さは感じない。むしろ春風が心地よい気分に浸らせてくる。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「菜の花って、あの群生する黄色い花ですよね?」

資料で見たことしかない花だ。
今思えば、この国に来てからもずっと訓練ばかりで出かけなかったせいか、
あまりそういう植物などの地域性のあるものを目にしていない気がする。
この島に来て三年目だというのに、知らないことが多いというのは、今まで損をしていた。

逆にそういう初めて目にするものを見るわくわく感を、
静かな場所で彼女と一緒に楽しめるというのは喜ばしいことでもある。

「予想以上に私が料理できなくて……
 結果オーライとはまさにこのことですね」

時間がかかってしまった原因は主に私自身にあったりするのだが、今は気にしない。うん。
長閑な道を歩きながら談笑すれば、20分ほどの道のりもあっという間に終わり、
目的地の近くまで到着することだろう>

鈴ヶ森 綾 > 「ええそうよ。ちなみに、今日のお弁当の食材でもあるわ。見るのと食べるの、今日はまとめて楽しめるわね。」

調理の際はあえて説明しなかったが、ほんの数時間前に彼女に練からしと一緒に混ぜてもらったものがそれだ。

「別にあなただけのせいではないわ。
 私もちゃんとした料理をするのは久しぶりだったから、少し手間取ってしまったもの。」

調理といえばホワイトデーにクッキーは焼いたが、あれとはやはり勝手が違うものだ。
無論、他人に何かを教えるという慣れない事をしたのも手間取った一因ではあるのだが。

「…あれかしらね。」

見れば前方が小高く盛り上がって土手になっているようだ。
登りやすい地点を見つけ、しっかりと地面を踏みしめてそこを上っていくと、
そこには一面の黄色い花と、ピンクの花を付けた木々。そして少し離れた所に水の流れを見ることができた。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「え、菜の花って食べられるんですか!?」

今日のお弁当の食材である。
その言葉を聞くと何か大きな衝撃を受けたような反応。

――後で確認して分かったが、
資料を見ていた時は日本語の学習が不十分だったため説明文をよく読まなかったが、
自身が目にした資料には確かに食用という記載があった。
そもそも「菜」とは食用という意味らしい――

「でもちゃんとお弁当はできましたし、ちょうどいいタイミングで到着しましたし。
 今のところ全てうまくいってますよ!」

そう、あくまでも花見がメイン。
それを引き立てるお弁当は最終的にちゃんとできたのだ。

「わぁあ……!
 綾さん!一面黄色ですよ!桜も満開ですし!」

小高い丘を登った時に見えた景色は、
まるで別な世界化のような壮大さを持っていた。
その景色に感嘆した感情が、自然と声に出てしまう。
まるではしゃぐ子供の様に彼女の方を向くと、どこに座ろうかと手を引いて>

鈴ヶ森 綾 > 「少し苦味のある味だけど、美味しいわよ。
 …そうね。天気も良かったし、道にも迷わなかった。準備万端。やっぱり今日にして良かったわ。」

神社の桜もあれはあれで厳かな空気があって良いものだったが、
何かのために準備をするというのは、本番の喜びを倍増させるものなのかもしれない。

「…………。…あっ、そ、そうね。」

眼下に広がる光景は、簡単には言葉で言い表せない美しさがあった。
感嘆の音を上げる事もできず、惚けたように小さく開いた口もそのままに、暫しその場で立ち尽くす。
彼女に手を引かれてやっと我に返ると少し足早にその隣へ並び、手近な桜の木を目指した。

「この辺りが良いかしらね。シートはラウラが持ってきてくれたのよね?」

自分のバッグには二人分の弁当と水筒、それに大事な食後のデザートが入っている。
野外活動に関しては彼女の得意分野のはずなので、その辺りの事は任せてしまったが…
よもや背中のリュックが空っぽという事はないだろう。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「目の前に広がる花を食材として食べるって、なんていうか楽しみですね!」

もともと住んでいた場所が山岳地帯だったりするせいか、昔を懐かしむような表情が浮かぶ。
とは言っても、今日は別にキャンプや猟ではない。
それでも、目の前に広がる自然を食するというのは、
最近ではめっきり減った習慣というのもあって懐かしかったりする。

「どうかしたんですか?
 じゃあこの辺にしましょうか。はい、シートは私が持ってきました!」

まるで心ここにあらずといった風に立ち尽くす彼女。
ハッとした様子をみて何か考え事かと首をかしげる。
そして場所を決めれば背中に背負った大きなリュックを降ろして中からシートを取り出す。
軍隊にいたころから使っている野戦セットをそのまま背負ってきたわけだが、
無論戦うわけではないのでいらないものは置いてきた。
シートを広げて風で飛ばされないよう四隅を固定すれば、ポンポンと叩いて座る様に促す>