2018/10/13 のログ
ご案内:「女子寮の一室」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 寮の自室に備え付けられた小さなキッチン、その前で忙しなく動き回る。
時折チラチラと壁掛けの時計を見ては現在時刻を気にする。

今日は前々から二人で食事を取ろうと約束していた日。じきに約束の時間となる。
もういつ彼女が部屋を訪れても不思議はない。だと言うのに、色々不手際があって夕食の準備が完了していない。
この事態に際して、自分の命が窮地にさらされているような焦りを覚えてしまう。
とにかく、急がなくてはならない。ボウルに卵を割り入れて溶きほぐしながらその後の工程を頭の中で再確認する。

ご案内:「女子寮の一室」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「とてもマズい……」

女子寮の廊下を走っているのは狐。ではなく獣人だった。
腕時計をちらりと確認すれば、すでに約束の時間を大幅に過ぎてしまっている。
普段なら人間の振りをして走るところだが、なりふりを構っていられない。
そんな判断のもと、獣人化して走っているというわけだ。
廊下を突きあたれば、跳ねるようにして階段を駆け上り、部屋の前に到着する。
軽く呼吸を整えれば衣服のしわや埃を払って、インターホンを押した>

鈴ヶ森 綾 > 「うっ…。」

思わず呻く。完成までもう少しというところでインターホンが鳴った。
溶いた卵と出汁を混ぜた卵液のボウルを一旦置くと、軽く手を拭いてから戸口へと向かう。
鍵のつまみを回して解錠すると扉を開く。
Tシャツにジーンズというラフなスタイル。その上にエプロンを身につけた、飾らない格好で相手を出迎える。

「いらっしゃい。ごめんなさいね、実はまだ準備が終わって無くて…良かったら少し手伝ってもらえるかしら?」

相手を部屋の中へ招き入れて自分は再びキッチンへ。調理へと戻ろうとして、一度顔だけで振り返ってそう打診する。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「すみません!遅刻しました!ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンです!」

鍵が明けられる直前、ドアの向こうに彼女がいると察したうえで報告。
背筋を伸ばし、中指を体側に合わせ、踵をくっつけ、足先を軽く開いた姿勢。
「気を付け」の状態で自身の名前を報告したのは古い癖だろう。

「えっと、もちろんです!」

出迎えてくれた彼女の姿を見ると、何となく状態を察した。
手伝おうかと提案する前に、彼女から手伝ってもらえないかと打診されると、
二つ返事で頷きキッチンへ>

鈴ヶ森 綾 > 「ああ、良いのよ別に。それにしても…随分急いだみたいね?もう少しゆっくりでも平気だったのだけど。」

本人は取り繕ったつもりのようだが、呼吸の乱れや服の乱れ、それに何より耳と尻尾が出たままだ。
相手の頭の上に手を伸ばすと、その耳の先を軽く弾くように指先で触れようとする。

「ありがとう。じゃあ、このお玉の中身をその鍋の中に少しずつ溶かしてちょうだい。」

二つ並んだコンロ、その片側の前に立つように相手を促し、半練り状の茶色い物体が入れられたお玉と箸を渡す。
コンロの上には鍋が置かれていて、その中身は液体で満たされ、豆腐とわかめが入っている。完成前の味噌汁だ。

「私はこっちを片付けるから。」

そう言ってフライパンを用意すると、油を引いて熱したそこへ用意していた卵液を少し注ぎ込む。
卵に火が通って固まりかけるとそれを奥へ寄せ、空いたスペースにまた卵液を注ぐ。
それを繰り返すと綺麗な層のできた巻き卵が作られていく。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ええ、本当は遅れる旨を連絡できればよかったんですけど、
よくよく考えれば私、綾さんの連絡先しらなくて……」

少し申し訳なさそうにすると、彼女の指が耳にふれる。
いつもなら触られることを拒否するところだが、今は気にしない。

「分かりました。これは"味噌汁"ですかね?」

お玉に乗せられた味噌と、湯気の上がるお湯につかる豆腐とわかめを見て尋ねる。
言われた通り箸を使って器用に味噌を溶かしていくかたわら、
隣では彼女が巻き卵を作っていた。

「どれもおいしそうで、食べるのが楽しみですね」

キッチンに広がる香りと、完成していく料理の色どりに気持ちを躍らせながら、彼女の方を向いた>

鈴ヶ森 綾 > 「…あぁ、そういえばそうね。一応携帯は持っているけど、あまり使わないから忘れていたわ。」

後で連絡先を交換しましょ、と付け加え。食事の後に古めかしい携帯電話でアドレス交換のやり取りをする事となる。

「ええ、そうよ。あなたも日本暮らしはそれなりに長いみたいだし、飲んだことはあるわよね?苦手だったりはしないかしら。」

話しながらも手は止めず、程なくしてフライパンの上で成形されたように綺麗なだし巻き卵が完成する。
それを一旦冷ましてから切り分け、お皿の上に並べていく。
さらに別の鍋には既に筑前煮ができあがっており、その中から鶏肉を一つ箸で摘まむと相手の口元へと差し出す。

「はい、これ味見して。あーん。」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「私も普段は身内と連絡を取る以外に使わないので忘れてしまっていて……
ご飯食べたら、連絡先交換しましょう!」

あとから気付いたが、自身の携帯電話には身内以外の連絡先は病院とか、そういう連絡先しか登録されていたかった。

「はい、この島に来てからは日常的に口にします。苦手どころか好きですよ?味噌汁。
日本食は総じておいしいです。納豆とかはちょっとアレですけど……」

お玉の味噌を一通り溶かし終えると、興味深そうに彼女が作業する様子を見学していた。
すると不意に彼女が鶏肉をつまんで、口元に差し出してきた。

「これは……あ、あーん?」

ちょっと戸惑ったようにして、言われた通り口を開ける。
彼女のほうが背が高いので、必然的に見上げることになるのだが、
何とも言えない恥ずかしさがある>

鈴ヶ森 綾 > 「それならひとまずは安心ね。でも使う味噌や具で味がだいぶ変わるから、ラウラの口に合うといいけれど。」

筑前煮の味見は相手に任せ、こちらは味噌汁をお椀にひとすくい。
味噌の量は丁度よかったらしく、程よい味わいに満足そうに一つ頷いた。

「うん…いい具合ね。じゃ、これで完成。」

筑前煮を大皿に移し、だし巻き卵や取り皿、二人分の箸と共にテーブルへと並べる。
さらに味噌汁をお椀によそい、最後にご飯。炊飯器の中身は白米ではなく、幾らかもち米を混ぜて炊いた栗ご飯。

「スーパーで良さそうな栗があったから、栗ご飯にしてみたの。」

ゴロゴロとした大粒の栗が幾つも入ったご飯を茶碗によそい、それでようやく夕ご飯の準備が完了する事となった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ふふ、私にも味噌や具の違いが判るでしょうか」

分かったとしても、わからなかったにしても、彼女の作る料理なら安心して食べられるのだが、
それは言わずに心にとどめておくことにした。

筑前煮の味見として食べさせられた鶏肉は、しっかりと味がしみ込んでいて、問題なさそうであった。
皿に盛り付けるのを手伝って、一通りの料理が食卓に並ぶと、いよいよ主食のご飯。
炊飯器から顔をのぞかせたのは普段食べている白米ではなく、金色の栗が入った栗ご飯だった。

「わぁ……!私、栗ご飯は初めてです!」

栗は好きだ。人間の味覚として好きなのか、狐の味覚が強く出て好きなのかはわからないが。
多分、もともと好きな上に、先ほどまでの獣化が重なって今はとても魅力的に見えるということなのかもしれない。
湯気とともに広がる香りに目を輝かせると、茶わんを並べて席についた>

鈴ヶ森 綾 > 「さて、どうかしら。癖の無さそうな合わせ味噌を使ったから、味に関してはあまり心配はしていないけど…。」

彼女が日常的に赤だしばかり飲んでいるとなると話が違ってくるが。
自分の作った味噌汁の味にどんな反応を示すかを少し楽しみにした。

「あら、初めてだったの。そのまま食べても美味しいけど、ご飯との相性もいいから、楽しみにしてちょうだい。じゃあ、食べましょうか。いただきます。」

共に食卓につくと並べられた料理を前に手を合わせ、おかずから手をつけていく。
久方ぶりに気合を入れて料理したせいか、手前味噌だがなかなかの出来栄えだ。

「ラウラに料理を振る舞うのは花見の時以来だったわね。
 あの時程は間が空いていないから問題ないと思うけど…どこか変な所はないかしら?」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「うーん、普段自分がどんな味噌で味付けされたものを飲んでいるのかわからないので……
とりあえず、食べてみましょう!いただきます!」

手を合わせていただきますと言えば、真っ先に味噌汁。
やさしい味が広がって、飲み下すと身体が暖かくなる感覚に、思わず頬が緩んでしまう。

「ふふふ、全く問題ないです。おいしいですよ」

ニコニコとした表情で感想を言う。そしてお椀を置けば、今度は筑前煮へと箸が伸びる。
根菜類や鶏肉をパクパクと頬張れば、こちらも出汁がよくしみ込んでいておいしい。

相性がいいと言われたご飯も、栗の甘さがアクセントとなって、
ついついしばし無言で味を堪能してしまっていた>

鈴ヶ森 綾 > 彼女の手が真っ先にお椀に伸びる。持ち上げられたお椀が口元へ運ばれるのを思わず手を止めて目で追ってしまう。
ほんの少しの緊張。しかしその緊張は彼女の表情を見てすぐに解消された。

「……そう。それは良かったわ。
 本当はもっと洋風のものを用意しようと思ったのだけど、作り慣れないものはどうもね…。」

それから暫くの間、二人無言の時間が過ぎる。しかし会話がなくても気まずい雰囲気はなく、
むしろゆったりとした空気が漂っていた。
時折鳴る食器に箸が触れる音、机に器が置かれる音だけが印象的に響いた。

「…それにしても、ここ最近は随分涼しくなってきたわね。秋の味覚は良いものだけど、その先を思うと少し憂鬱だわ。」

不意に沈黙を終わらせのは、なんでもない天気の話だった。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「洋風、といっても、ふるさとは高い山に隔絶された土地ですから、皆さんが考える洋風のモノは案外なかったりします。
特に料理は周辺の国とは大きく違いますから、あまり気にしないでください」

そんなことを言って笑えば、また二人で箸を進めていく。
そうやって時間が過ぎて、料理ももう少しで皿からなくなろうかという時。
彼女の切り出した話題に一瞬ドキッとした。

「そうですね、茹だるような暑さだったのに、最近はそんなこともすっかりなくなりました」

正直なところ、この島の気候帯なら獣化せずとも私は苦労しなくて済むだろう。
しかし彼女の場合は種族的に冬は危険な季節だ。
そして、私自身にとっても冬はとても悩ましい季節だ>