2018/10/14 のログ
■鈴ヶ森 綾 > 「確かに、ちょっとフィンランドの料理を調べてみたりもしたのだけど…なんというか…あまり馴染みがないものだったわ。」
ミルク粥のような馴染みのない料理から、そもそも名前だけで作り方がわからないもの。
人に振る舞うにはあまりにも曖昧なイメージしか掴めないものが多かった。
「すっかり秋ね。秋は好き。過ごしやすいし、食べ物は美味しいし。それに…。」
女郎蜘蛛にとっては産卵の季節でもある。もっとも、自分にはその経験はない。
ただの蜘蛛であった頃の事はもう殆ど忘れてしまったが、何か別の事に命を費やしていたような、それだけは朧気に覚えている。
僅かに沈黙した後でふいと視線を相手から外し、カーテンの閉まっていない窓の外を見つめた。
「…あっ、そうそう。実はデザートがあるのよ。ちょっと待っててくれる。」
奇妙な沈黙を生んでしまった事を誤魔化すように手をパンと打ち鳴らすと立ち上がり、冷蔵庫の方へ向かおうとした。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ふふ、フィンランドの料理はまぁ、あまり外から来た人には向かないものが多いですから。
隔絶された土地では食材も調味料も限られますし」
つまるところ、あまりおいしいとは言えない。自分はそんな故郷の料理が好きだが、
あまり人に進めるようなことはしないのだ。
「ええ、秋は好きです。食べ物がおいしいですから。
……その分、狐としての本能は抑えないといけませんけど。
そのあとに来る冬は、生き物にとっては厳しい季節ですね」
冬の前に体重を増やそうとするのは何も狐に限った話ではない。
動物なら皆そうだ。彼女――蜘蛛はどうかはわからないが。
そして冬は狐にとっての繁殖期だ。それは狐の獣人である自身も同じ。
しかし、無論今まで繁殖行為の経験などない。
年齢的にも、立場的にも、そして自身が望まなかったから。
「――?
ああ、えっと、デザートですか!」
彼女が何かを言おうとしたとき、話題を変えるように彼女が冷蔵庫へと向かった>
■鈴ヶ森 綾 > 「…一度、行ってみるのも良いかもしれないわね。」
彼女の故郷に思いを馳せてそんな事を口にした。
もっとも、どこまで本気かはわからないが。
「そういえば、ちょっと気になっていたのだけど。
…ラウラ、少し太ったんじゃないかしら?」
劇的な変化、というわけではないが、うっすらと輪郭がふくよかになったような、そんな気がする。
抱いた印象をオブラートに包むこともなくストレートに相手に叩きつけた。
「お茶の準備もするから、楽にしててちょうだい。」
そう言って再びキッチンに立つと、お湯を沸かしたり食器を片付けたりして準備を進めていく。
そうして10分もしない内にテーブルの上には冷蔵庫から取り出された切り分けられた洋梨のタルト、
そして紅茶の注がれた真新しいティーセットが並んだ。
ティーセットはどう見ても新品で、今日初めて使われるといった具合のものだった。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「え?いや、でもあそこは寒いですし……
……もし行くなら夏場にしましょう?」
彼女の言葉には耳を疑った。
真夏以外は肌寒いくらいなのだから。
「ッ!?
えっと、これはですね。まぁ、はい。確かに太りました……
獣人は冬が来る前に食欲が旺盛になるんです……
今までは厳しく管理された環境にいたので目に見える体重の変化はなかったんですが……」
特に濁されず、ストレートに放たれた言葉は弁明を許してくれそうになかった。
むしろこれを機に体質のあれこれを明かしてしまうのもいいのかもしれない。
そんな風に思った。
「人間の血液が濃いので無論生活のベースは人間なんですが、
本能的な部分だったり、そういうところは狐のそれが色濃く残っていまして……
食欲をはじめとする欲求は環境によって人間以上に狐の色が出ることもあり得ます…」
彼女がお茶を用意する間。簡単に自身の体について軽く説明をしていく>
■鈴ヶ森 綾 > 「ああ、やっぱり。つまり…冬が来る前に、溜め込んでしまったと。」
彼女の変化を見逃さなかった自分の目を少し誇らしく思ったりもするが、
相手にとってはまったくもって嬉しくない事だろう。
「……これ、やめておく?」
相手と自分の前、それぞれ一人前ずつ置かれたタルト、それを指さして。
先日、商店街のイベントで購入したお菓子だ。
ついでにこのティーセットもその際に手に入れたものだが、
これを手にするために摂取したカロリーは合計で1万キロカロリーをゆうに越えていた。
「…太らないって、良いことね。」
目をそらしながらポツリと、小さく呟いた。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ええ、って、なんでちょっと誇らしげな表情をするんですか!」
まるでよくぞ気付いた!みたいな表情の彼女に軽く詰問。
「いえ、それはいただきます」
やめておこうかと気われるが、それは即答で拒否。
どうして目の前においしいものがあるのに食べないのか。
人間の本能にも、狐の本能にも反するではないか。
「……まさか綾さん、変化の術が使えるから太らないなんて、
そんなずるいことありませんよね?」
目をそらして呟く彼女、その言葉を狐の耳は聞き逃さなかった。
地中を動くネズミの足音すら聞き取る聴力は、はっきりと聞き取ったのだ>
■鈴ヶ森 綾 > 「ふっふっふっ、どうしてかしらねぇ。」
詰問を受けると目を閉じて妙に楽しそうに笑みをこぼす。
「あら、いいの?…ほんとに?」
わざとらしくお皿を下げるような素振りを見せるが、相手はきっぱりと即答するとすっと元の位置へと戻す。
それからちょっと間を空けてから、もう一度皿を引っ込めようとする。
「少なくとも、体型が変わるという事はないわね。」
独り言では太らないと言ったくせに、問い詰められるとあえて言い回しを変えた。
この身体は本来人の生気以外の物を食べる必要が無い。
こういった食事はエネルギーを摂取するためのものではないので、必然的にどれだけ食べても太ることはない。
「さぁさぁ、お茶が冷めてしまう前にいただきましょう?」
最後はそんな風に追求をかわす、というより誤魔化してタルトとお茶を口に運ぶのだった。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ああ、またそうやってごまかす!
食べますよ!どうせあとで訓練してプロテイン飲むことになるんです!
ならタルトで代用してもいいじゃないですか!」
必死だ。
「結局、綾さんの本来の姿を見ることなく夏が終わってしまいましたね。
まだ綾さんのこと、知らないことがたくさんあります。
――もっとも、知らないほうが良いこととかもあるんでしょうけど」
体形が変わることはない。
そんな風に言い回しを変えられると、一度落ち着いて夏を振り返った。
綾さんが具体的に何を糧に生きているのかもよくわからない。
また、以前の様に受け止めきれなくなることも、なくはないのかもしれない。
「ねえ綾さん、私たちが出会って一年がたとうとしてますけど、
まだまだお互い知らないことがたくさんある気がします。
それを知ることの是非は置いておいて、
一度お互いのことをちゃんと説明しないといけないかもですね。」
お互いにタルトを食べながら、そんなことを口にした >
■鈴ヶ森 綾 > 「このタルト、砂糖はどれぐらい入ってるのかしらね…。」
しみじみと呟いて一口。洋梨の爽やかな酸味とタルト生地のさっくりとした食感と甘み。絶妙であった。
「うん?…そうね。疑問があるのなら、私には答える準備があるけれど…。
今はもう少しゆっくり、貴方とお茶を楽しんでいたいわ。」
おふざけから少し空気が変わる。居住まいを正し、相づちをうって相手の言葉に耳を傾ける。
相手の提案に対し、今はまだそれに応えるのを先延ばしにしようとしていた。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「もちろん、言いたくないことは言わなくていいです。
じゅんびが 必要ならそれが終わるまで待っています。
ただ何となく、この間みたいに、不意に知ってしまったときに悲しくなるのは嫌なので」
タルトにどれだけの砂糖入っているのか、それを食べているときに知りたくないのと、
感覚的には似ているのかもしれない。
「私も、綾さんに言っておかなきゃいけないこと、いろいろありますから。
だって綾さん、私の能力のことも、異能のことも、獣人のこともよくわからないでしょう?」
だから、改めて自己紹介が必要かなって。
そんな風に笑って話せば、タルトを一口。
五日お互いのことをちゃんと分かり合える日が来ることをを願いながら、
ゆったりとした時間は過ぎていった>
ご案内:「女子寮の一室」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
ご案内:「女子寮の一室」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。