2015/09/25 のログ
ご案内:「ハイアットホテル常世 17階展望レストラン「シャングリ・ラ」」に奥野晴明 銀貨さんが現れました。
ご案内:「ハイアットホテル常世 17階展望レストラン「シャングリ・ラ」」に蓋盛 椎月さんが現れました。
奥野晴明 銀貨 > 時間は夕方17時ごろ。展望フロアでもあるレストランの壁面、一面のガラス窓からは常世島の全貌が見渡せる。
夕焼けに照らされ、徐々に街並みに灯りがともりつつある風景はここでならゆっくりと眺められる。

かねてより約束していた蓋盛との逢瀬にここを選んだのは、この景色を見せたかったからかもしれない。
いつもの学生服姿とはうってかわって、堅苦しくなり過ぎないスリムなジャケットと体の線にフィットしたスラックス、
カジュアルな革靴と銀貨の出で立ちはレストランにあったものを身に着けている。
レストランの入り口で約束した時刻まで蓋盛を待っている。

蓋盛 椎月 > 「やー」

紫に近い赤の、胸元に花模様のフリルの雰囲気のあるドレスワンピースに
黒いボレロを羽織った姿で定刻通りに蓋盛が現れる。
いつもの白衣ではないが、奇妙な蜥蜴のヘアピンはそのままだ。

「こんばんは銀貨くん。
 こういうところってあんまり馴染みがないもので緊張しちゃうねえ」
言葉ほどに緊張している様子もなく、ゆるい調子で挨拶した。

奥野晴明 銀貨 > 華やかに着飾った蓋盛が現れれば笑みが深くなる。軽く会釈し
「こんばんは、蓋盛先生。
 先生ほどの大人ならこういうところ一度や二度は来たことがあるんじゃないかと思っていましたけれど。
 それにそのお洋服とても似合っています、お綺麗ですよ。
 ヘアピンもよいアクセントに見えます」

そういって、ごく自然に手を相手へ差し出す。エスコートするようだ。
受付に立つ従業員に予約と名前を告げると礼儀正しい挨拶とともに席に案内される。
時計塔が目立つ、いちばんきれいな風景が見えるテーブル席。
中にほかの客の姿は見えない、どうやら今日この時間は貸し切りのようだ。
ウェイターが二人のために椅子を引く。

蓋盛 椎月 > 「ふふ、ありがとう。きみも様になっているよ。
 ……しかし、そう言うきみのほうこそ随分こういう場所に
 慣れているように見えるね。
 存分にエスコートしていただこうかな」
うれしそうに目を細めて、手を取って席へとつく。

「いやあ、あたしはズボラなものでね。
 こういう場所、キライじゃないんだけど自発的に誘って行くことはあまりないんだ。
 だからこんな情緒のあるところに連れてきてもらってうれしいよ」
窓の外の夜景をうっとりと眺めた。

奥野晴明 銀貨 > 言われた通り慣れた様子で席に着く。

「ありがとうございます。父の関係でこういった場所にはよく来るので……。
 この店も父の仕事の関係で出資しているものの一つですから、わりと贔屓をしてもらえるんです」

ウェイターが食前酒のシャンパンを持ってくる。銀貨にはミントとレモンを浮かべた炭酸水。

「喜んでいただけたようで何よりです。
 僕も誰かを誘ってきたのは初めてですから……。
 今日はこちらで用意させてもらったコースメニューですけれど先生は食べられないものはありますか?
 ついでに乾杯でもします?」

夜景を眺める蓋盛の顔を微笑しながら眺め、自分のグラスを持ち上げる。

蓋盛 椎月 > 「そういえば、君の御父上は資産家だったか。
 てっきり沢山の女の子を泣かせていたのかと思ったよ。失礼失礼。
 大丈夫だよ、なんでも食べられるのが取り柄さ」
電話帳とか樹の皮とかは無理だけど、といい加減なことを言って。

「それじゃ、君の瞳に乾杯……なんてね」
場所と服装の雰囲気にそぐわない子供っぽい笑い方をして、
持ち上げたグラスを打ち付けた。

奥野晴明 銀貨 > 「まさか、普通の女の子は僕なんか気にもかけませんよ。
 年下の見た目が好きっていう子もいますけど……体のことを話すとばつの悪そうな顔をしてしまいますから。

 電話帳とかはさすがの僕も食べられませんからご安心を。
 ええ、蓋盛先生の美貌に乾杯」

カチンと涼やかな音を立ててグラスを打ち合わせると一口飲む。
『前菜のパルマ産 生ハムとイチジク・モッツァレラチーズの南仏風でございます』
ウェイターが恭しく二人の前に皿を並べる。
慣れた様子でフォークとナイフを取りながら

「そういえば先生、最近はいかがですか?
 以前の≪レコンキスタ≫の調べものといい、ほかのたちばな学級の子たちの様子とか……」

蓋盛 椎月 > 「ふうん、そういうものなのかい。なんだか惜しい話だね。
 見る目がない、とは言わないけどさ……」

確か食器は外側から取るんだっけ? なんて言いながら、
いただきますと手を合わせ、同様にフォークとナイフを取って
料理を口に運び始める。

「近況か。
 学級で今のところ一番大変な智鏡ちゃんは
 少し前に比べればだいぶ落ち着いた感じはあるし……
 ああ、また何人か編入者が加わったね。
 あまり人が来ることはない学級なんだけど、
 去る生徒はもっと少ない、というのがつらいところさ。

 《レコンキスタ》に関しては概要の再確認に終わったね。
 生まれるべくして生まれた思想と組織なんだろうな、っていう。

 ま……つまり平穏そのもの、って感じかな。
 
 あ、そうだ。この間『紅蜻蛉』の二面ボスを倒したよ。
 アーケードのシューティングなんだけど……
 銀貨くんってゲームとかやるっけ?」

そういえば趣味や私生活の話はあまりしていなかったな、と。

奥野晴明 銀貨 > 「蓋盛先生はそんなこと全然ないんですけど
 女の子はたぶん、自分よりもきれいなものとかかわいいものには
 手が出しづらいんだと思いますよ。

 こういってしまうと自意識過剰みたいになっちゃうんで言いたくないんですけど
 ほら、口ではかわいいと言いつつ内面は複雑、あくまで言葉は牽制みたいなことがよくあったので……」

苦みを含んだ言いぐさに多少食事の手も止まる。
近況を聞けばやや和らいだような雰囲気になり

「編入生……そういえば平岡ユキヱという方が最近編入したと聞きましたね。
 もともとは風紀委員でとても気持ちの良い女子生徒だとか。
 異能もさしあたってそれほど危害が周囲に及びにくいものだと思っていたのですが。

 いえ、何にせよ先生の周りが平穏ならばそれに越したことはありません。

 ゲームですか?アーケードには時々面白い噂が流れてないかで行くこともありますけれど遊んだことは全然。
 『紅蜻蛉』、お好きなんですか?

 ゲームは……たちばな学級にいたとき、
 監視付の研究室内のパソコンでMMOをちょっとだけ遊びましたね。
 能力とか外見とか、そういうの関係なく人とつながりが持てて話ができたから
 楽しくて一時はよくチャットだけしていたんですけれど今はさっぱり。
 勉強のほうが忙しくなるとできなくなるものですね」

二人の皿が空になるころにはちょうど良いタイミングでウェイターが次の料理を運んでくる。
スペシャリテ、栗の冷製ポタージュスープだ。

蓋盛 椎月 > 「なるほどねえ。
 あたしはそういう遠慮が全然ないからわかんないなあ。
 おかげでよく鬱陶しがられるんだけどね」
へらと表情を緩めて首筋を掻く。

「『紅蜻蛉』は――好きかって言われると素直に頷き難いな。
 あれ人類にはちょっと早すぎるんだけど、
 意地みたいなものでやってるから……それもまた、愛着といえば愛着なんだけど。
 少なくともオススメできるゲームじゃあないなあ……ははは。

 MMOかー。あたしも昔ちょっとやったんだけど、
 いまいちハマれずにやめちゃったな。
 ゲーム内友達をちゃんと作れないと厳しいのかもしれない。

 でもそうねえ、ゲームは共通言語とも言うし、
 この混沌とした時代でも異なる人々の橋渡しになりそ……
 おっと、職業病が出ちゃったな」

こういう場にそぐわない会話になりそうと思ったのか、小さく首を振って言葉を止める。
運ばれてきたポタージュスープに目を輝かせた。

奥野晴明 銀貨 > 「僕は先生の遠慮がないところ好きですけど。だって気を遣わなくていい」

普通の女の子はだからちょっと苦手なんです、と苦笑して
『紅蜻蛉』の話に興味深そうにへぇと相槌を打ちながら

「人類に早すぎる代物をどうして先生が手を出したかは気になりますね。
 シューティングというゲームジャンル自体がそもそも玄人向けっぽい気がしますけれど。

 ふふ、MMOはどちらかというとゲーム部分が面白くなくてもコミュニケーション面が充実していたら離れづらいみたいです。
 現実でも複雑な人間関係を得ているのに、ゲームまでそういった関係を持とうとするのって不思議ですよね。

 いえ、娯楽って結局そういうものだと思いますよ。
 同じルールの上に立てるならば誰でも問わず遊べるものっていいと僕は思います。

 ポタージュお好きですか?おかわりも頼めますよ」

蓋盛の目の輝かせ方に子供っぽさを感じて笑いながら音を立てずスプーンから一口。

蓋盛 椎月 > 「言われてみればなんでだろうね。
 あたしはマゾゲーマーのつもりはないんだけど……」
食器を置いて、少し考えるそぶり。

「……『紅蜻蛉』みたいな弾幕シューティングって、
 MMOとは対極の、プレイヤー間の干渉がほとんどない孤独なゲームなんだよね。
 それに加えてあの規格外な難易度だ。
 今じゃ身体能力や処理速度に優れるタイプの異邦人や
 知覚強化系の異能者、そしてごく一部のマニアックしか手を出さない。
 ――だからかもしれないな」

答えとしてはやや不足気味な言葉を、銀貨へ返す。

「へえ、いいのかい――
 いや、遠慮しよう。食事にばかり執心してもしょうがないし、
 あたしは少しは恥じらいを知るべきだね」

どこか他人事のようにそう言って、
食事を進める銀貨を満足そうに眺めながら、自身も品のある所作で
ポタージュを口にする。

「おいしいね」

奥野晴明 銀貨 > 「……先生は誰にも邪魔されず静かな修行をするのがお好きなタイプですか?
 それとも、異能者や異邦人と普通の人が対等に渡り合えるからそのゲームがお好きなのですか」

ポタージュの水面をじっと見つめる。
それも少しの間で蓋盛の感嘆に同じようにうなずいて

「お口に合ったようで何よりです。シェフに伝えておきます。

 ……もっと先生のこともお聞きしたいですけれど、この間は僕の話が聞きたいっておっしゃってましたよね。
 つまらない人間ですが、なにかご質問があれば受け付けますよ」

微笑みながら次の皿が来るのを待つ。合間にウェイターがシャンパンのお代わりと水を注ぐ。

蓋盛 椎月 > 「そのどっちも正確じゃないな。間違ってはいないけど」
ゆるゆると首を横に振る。

「クリアされることを拒むようなゲームってさ……
 なんだか、寂しいと思わない?
 だから、あたしが遊ばなきゃいけない……って、ね。
 いや、もちろんあたし以前にあれをクリアした連中はいるわけで……
 なんで、まったくあたしの勝手な考えなんだけどさ」

グラスを口につけて傾ける。

「質問かあ、そう言われるとかえって訊きづらいものだね。
 ……それに、あたしが知りたいことはきみは言葉では答えてくれないだろうし」

苦笑する。それでもあえて尋ねるならば、と。

「どんなふうにすればきみは喜ぶか。
 どんなふうにすればきみは悲しむか――
 そんなことを、あたしは知りたい」

まっすぐに見つめて、囁くように。

奥野晴明 銀貨 > 「――あなたがたちばな学級にいる子供たちを助けるのも同じ理由?
 社会に拒まれている、あるいは自分から周囲を拒んでいるような人々は寂しいから
 手を伸ばさなければならないと」

次の料理は魚料理、オマール海老のフリカッセ。
だが運ばれた料理には目もくれずじっとまっすぐに見つめる蓋盛に同じように
薄い紫の瞳を向けて見つめ返す。

「そんなこと、簡単ですよ。
 今あなたが目の前にいて僕と言葉を交わしていてくださるだけで
 僕は喜び、悲しみに満ちる。

 今この瞬間だけは僕はあなたのもので、あなたは僕のもののような
 そんな勘違いを起こすのです。でもそれはあくまで勘違い。
 僕もあなたも決して誰かのものになったりはしない。

 あるいは、あなたは誰かに所有されたがるかもしれないけれど、その相手は僕ではない。

 蓋盛先生、僕と付き合ってくださいと言ったら付き合ってくださいます?」

ご案内:「ハイアットホテル常世 17階展望レストラン「シャングリ・ラ」」に蓋盛 椎月さんが現れました。
蓋盛 椎月 > 「…………」

最初の問いには、アルカイックな笑みのまま沈黙を通す。
そして続いての問いには。

「銀貨くん。
 きみは、ひと一人が別の誰かひとりの心を独占できるなんてこと、
 あると思う?」

教師が教え子に諭す口調そのままに。

「たとえば、指輪を交換したり、書類を出してみたりといった
 拘束の仕方はあるけど……それだって、絶対じゃない。
 人の心はうつろう。約束は反故にされる。
 あたしやきみが誰かのものになったりはしない、なんて――
 あえて言うまでもなく、当然のことなんだよ。

 どうして、銀貨くんともあろう聡い子が……
 そんなことをわからないの?」

首をこてんと傾げる。
普段見せてるような、子供っぽい邪気を感じさせない笑い方。

「いいじゃない。付き合っちゃおうよ。
 互いを好いている二人が、そうしないなんてさ――
 なんだか、損な話だって、あたしは思うよ?」

奥野晴明 銀貨 > 蓋盛の返事に一層寂しそうな目を向ける。
その邪気のない笑い方に、銀貨の表情は悲しく曇った。

「そうですね、誰か一人を自分の内に留めておくことはひどく難しい。
 そうでなくとも人は誰か一人だけを支えとして生きるわけではない。
 多くの関係性を築き、そのうえで様々な適したペルソナを被りながらふるまう生き物。

 ただ、反故にされるとわかっていてする誓いや約束に意味はあるのですか?
 そんなの、芝居じみたただのままごとか、互いを納得させるための嘘のように思います」

すっかり冷めてしまった料理をウェイターを呼んで下げさせる。
次の皿を持ってこさせるつもりだ。

「……本当はこんなこと言ってもあなたを困らせるだけかなと思って冗談にするつもりでいたんですけど。
 仮にもあなたと僕は教師と生徒でしょう?ああ、でも智鏡ちゃんの例があるか……。
 その点は僕も問題ないですけど……本当に遠慮ないですね、先生。

 ねぇ先生、僕と付き合うってことは僕が失った”母親”の代わりにされるとは思わないんですか?
 ずっとかっこ悪いことだから、一生白状しないつもりでしたけれど……
 僕はあなたに”母親”の面影を見ている。だから好きになったのかもしれない。気持ち悪いでしょう?

 あなたが僕の何を見て好いているのかはわからないのですが……
 先生は弱い人なら誰でも付き合うんじゃないですか。
 僕はそう思われたくなくて、だから一人でも平気だって、もう弱い子供じゃなくてただの大人だって思われたくて
 そのために自立しようって思ったんです。
 それともいまだに僕はあなたに弱い生き物として、見られているのでしょうか?

 ねぇ先生……」

銀貨には珍しく、その端正な顔と表情が揺らぐ。
顔を両手で多い、俯いて机に肘をつく。
はぁと指の隙間からため息がこぼれた。

「それでも僕のこと抱いてくださるっていうんですか」

蓋盛 椎月 > 「そうだよ。一度はやったことあるでしょう、銀貨くんだって。
 ごっこ遊びっていうのは、楽しいんだよ」

皿を持ち去ってしまうウェイターを名残惜しげに目で追う。

「どうしてそれが気持ち悪く見られると思うのか、わからないな……
 人は自分に欠けているものに惹かれるものだよ。

 弱いことが悪いことだとは思わないけど、
 きみはなぜだかいつも寂しそうに見えるよ。
 自分の弱さを放置したまま強くなろうとしても、
 ただ歪になるだけじゃないかな。」

銀貨の悲しむ様子を悲しむように、目を伏せる。

「あたしはきみの考える通り、
 節操も恥も知らない、倫理から外れた女だし、
 きみの夢想するような人間にはなれないけど……
 きみがそう願うなら、いや、」

小さくかぶりを振って、

「あたしはきみを抱きたい」

そう恥じる様子もなく堂々と言った。

奥野晴明 銀貨 > 「でも遊びにはいつか終わりが来る。楽しいのはその遊びの中だけ。
 あなたは一生を遊びに費やすつもりですか」

ウェイターが会話の合間にメインディッシュを運ぶ。牛フィレ肉の網焼き ワサビ風味。
お熱いのでお気を付けくださいと、一言。
ただ手を組んだまま、向かいに座る銀貨は顔を伏せたまま。

「……じゃあ先生が僕を好きになったのも。
 あなたにない何かが僕にあってそれに惹かれたから?

 何かが欠けていたとしても他者にそれを埋めることはできない。
 無理に埋めようとすれば歪が生じる。
 ならばそれを受け入れて生きていくことが最善だと……」

彼女の一切恥じらいのない宣言にようやく顔を上げる。
それはいつものアルカイックスマイルではなく、どこか泣きそうな顔だった。
瞳はうるみ、漏れる吐息は悩ましげで、何か恐ろしいものに取り込まれてしまったような
どうしようもないような子供の表情だった。

「僕、初めてなんです。」

それだけ告げる。自分は食事に手を付けることもなくただ皿を見つめる。
蓋盛にどうぞ遠慮なく食べてくださいと視線で促した。

蓋盛 椎月 > 「そうだよ。あたしはそうするしかないのさ」
そう言ってため息をついたその表情に――
ほんのわずかな間だけ、疲れに似た色が浮かんだ。

「……きみも食べたほうがいい」

すぐにいつもの穏やかな笑みへ戻って、
促されるとおり、肉をフォークで刺してぱくぱくと平らげていく……。

「あたしはこのとおり、教え子を誑し込もうとする悪党だからね。
 だからきみに惹かれたのは――」

自らの口を塞ぐように、ナプキンで口元を拭った。

奥野晴明 銀貨 > 「かわいそうなひと」

そうぽつりとこぼし、やっと顔を上げた。
こちらもいつもと変わらぬ微動だにしない笑みを張り付けた。
促されればフォークとナイフで肉を切り、一口二口食べる。

「わかりました。先生のその遊びに付き合います。
 いえ、どちらかというと僕が混ぜてほしいってお願いするべきなんでしょうね。

 では悪い先生にいろいろ手ほどきしていただきましょう。
 僕だってこんなこと持ちかけている時点で善人ではない。

 ……好きなようにしてくださって構いません。」

デザートと飲み物はいりますか?と丁寧に蓋盛に問いかける。

蓋盛 椎月 > 「かわいそうでしょ?
 もっと哀れんで哀れんで~」
言葉とは裏腹に朗らかな調子でそう言う。

「手ほどきするほど難しい遊びをするつもりもないけどね。
 さしずめ、肉をフォークとナイフで切り分けるようなものさ。
 ……しっかりと、満足行くまで食べなさい」
自分で使った言い回しが気に入ったのか、くつくつと笑い声を漏らす。

「うん、それもいただこう。
 もらえるものはなんだってもらわないとね」

食事は進む――。

奥野晴明 銀貨 > 「寂しい方って哀れまれるのを喜ぶらしいですよ、先生。
 まぁそれは僕にも言えるんですけど」

ふふと蓋盛の様子に微笑んでウェイターにデザートを運ばせる。
『杏仁豆腐のブランマンジェ チアシードとココナッツソルベと共に、でございます』
真っ白な平皿の上にこれまた真っ白のブラマンジェ、ココナッツソルベが盛られ
赤いラズベリーソースがきれいにかけられている。
『食後のお飲み物はいかがなさいますか?
 コーヒー、エスプレッソ、紅茶、ハーブティがございます』
ウェイターに尋ねられれば銀貨は紅茶を頼む。
スプーンでソルベをすくいながら

「……じゃあこの後ここで部屋を取ったら付き合ってくださいます?
 もう少し上の階の眺望もいいんですけれど」

カードゲームでも続きにしましょうかというぐらいに軽い調子で尋ねる。

蓋盛 椎月 > 「そりゃあ寂しいよ。
 遊び相手なんていつだって見つかるわけじゃあないからね」

エスプレッソを飲み物に頼み、
ほーと白と赤のコントラストに感嘆したあと、
目を細めてブラマンジェを味わう。

「うん、わかった。
 わー、こんな風情のある場所で遊ぶなんて久しぶりだなー。
 銀貨くんだいすきー。
 ふふっ、いいよね。なんだか恋人同士みたいで」

心の底から嬉しそうに笑んで、承諾した。

奥野晴明 銀貨 > 淹れたての紅茶とエスプレッソがそえられ、自分のぶんをを飲みながら微笑む。

「それなら付き合う間だけは寂しい思いはさせませんよ。飽きるまでは相手します」

幾分かの空しさが胸をよぎるがあえて押し殺す。
そのあとはただ黙々と食事に集中した。

あらかた食べ終えて一息ついたころ、ナプキンで口元を抑える。
会計はテーブルチェック式なのでウェイターにクレジットカードで支払う。
ついでにそっと耳打ちをして、部屋の用意を頼むとすぐさまかしこまりましたと頭を下げてカウンターへと戻って行った。

「そろそろ行きましょうか。ご満足いただけました?」

椅子を引きながら立ち上がる。再び蓋盛に手を差し出した。

「僕はこういう遊び方しか知りませんから、次の機会には先生の遊び方を教えてくださいね」

蓋盛 椎月 > 「うん、とても満足。
 ごはんも美味しかったし、夜景もきれいだし、
 キマってる銀貨くんにエスコートしてもらったし。
 すごく贅沢させてもらっちゃったな」

差し出されるままに銀貨の手を取って立ち上がる。

「ふふ……。
 あたしじゃ銀貨くんを満足させられる自信は微妙だけどね。
 またいつかね」

ニコ、と、瑕疵のない笑み。

奥野晴明 銀貨 > 「それはよかった」

にこりと微笑んで、受付前に行くと従業員たちが並んで挨拶を済ませる。
おそらく取り仕切り役のウェイターが一人、受付のカウンターから何かを差し出した。
このホテルのスイートルームのカードキーだ。
礼を言って受け取るとそのまま蓋盛を伴ってエレベーターへ乗り込む。
目指すは最上階、何度か来たことはあるので案内は不要だ。

「好きな人と一緒ならどこでだって楽しいものでしょ。
 そういうものじゃないんですか、恋人って」

ゆっくりと閉まるエレベーターの中で蓋盛にそう囁く。

蓋盛 椎月 > 「なるほど、道理だね」
感心したようにぽんと手を叩く。

エレベーターの扉の閉まったあと、
ごく自然な所作で銀貨に歩み寄り、両腕をそっと抱く。
そうして顔を近づけて唇を合わせた。

「愛してるよ、銀貨」

真摯な嘘を耳元に囁き返した。

奥野晴明 銀貨 > やれやれと肩をすくめていたら突然の口づけ。
蓋盛が引いたルージュの色が銀貨の唇に色鮮やかにうつる。
それと同時にささやかれた言葉の空虚さにぶるりと背筋を震わせた。
しいて、無表情のまま彼女を抱きしめ返し肩に頭を乗せてその顔は見せなかった。

「あなたって本当に遠慮がない人ですね。

 愛してます、椎月先生」

その空しさに調子を合わせるべく熱のこもった返事を返す。
きっとこの時も自分の表情は微動だにしない。
本当に、空っぽなごっこ遊びだなぁと思いながら、やがてエレベーターは最上階に到達するだろう。

ご案内:「ハイアットホテル常世 17階展望レストラン「シャングリ・ラ」」から奥野晴明 銀貨さんが去りました。
ご案内:「ハイアットホテル常世 17階展望レストラン「シャングリ・ラ」」から蓋盛 椎月さんが去りました。