2016/06/06 のログ
ご案内:「ゲームセンター【常世】」に八雲咲雪さんが現れました。
八雲咲雪 > タン、タン、タ、タ、タタタン。
タン、タタン、タンタン。
リズムに乗りながら床を蹴る。
踊るような動きで流れる譜面をクリアしていき、得点を重ねる。

タン、タ、タ、タン。

周りの雑音が、咲雪の足音を消し、変わりに大きな音楽が流れ続け。

八雲咲雪 > 判定はA。
割とミスをしていたり、合っていなかったり。
それでも、楽しそうに踊っていた咲雪。

ひらりひらり揺れるスカートを気にせず、もう一度百円をいれ、曲を選択して踊り始める。

タン、タタ、タン、タン。

八雲咲雪 > (~~。~~)

内心で歌いながら踊る。
こういうダンスゲームは得意なわけではない。
ただ、時々やって、体を動かすのが楽しい。

元々体を動かすのは好きだったために、そういうところがあるのだろう。

八雲咲雪 > そして、出る得点。
判定はB。
まぁうまくもなく、下手でもなく、だろうか?

「ふぅ……」

一息つき、台を降りる。
あまり人はいなく、咲雪が降りれば次にやる人は居ない。

(そっちの方がいいんだけど)

無表情で学生鞄からお茶を出し、飲み始める。
二曲連続で動いたせいで、少し喉が渇いた。

ご案内:「ゲームセンター【常世】」に紗衣留アルミさんが現れました。
紗衣留アルミ > 一階からエスカレーターで上がると、そこに広がるのは大型筐体の群れ。
いかにもカップル!カップルがここでは釣れます!的なエリアだった下階と比べるとやっぱりちょっと客層が異なるというか。
「あれ、ちょっと間違えたかな?もう少し下で調査してたほうが、っと、」
不慣れにぐるぐると周りに視線を配り放題にしていたのが悪かった。
続けてエスカレーターを降りた学生にも悪気はなかったのだろうが、
突き飛ばされるような形でアルミがよろけ、
「っと、とと、ごめんね」
その先に咲雪 が居り、
ついでにいうとさっきクレーンゲームで取ったばかりのアイスクリームを抱えていたせいでそれを咲雪 に向けてぶちまけそうになっていた。

八雲咲雪 > (次はなにしよう…。
クレーンゲームでかわいいぬいぐるみ、あったかな……)

一階のクレーンゲームを思い出しながらお茶を飲み干す。
キモカワ系のぬいぐるみを集めていたりするが、本土ではキモカワぬいぐるみはなかなか見ない。
こっちのゲームセンターなら、たまに入荷されている事もあるため、ここに通う理由の一つになっていた。

(ん、よし。さがしにいってみよ)

そう思い、鞄を肩にかけて――

パチャ、と胸あたりにかかる何か。
白いものと、塊と、冷たいものだった。

紗衣留アルミ > 「あ。」
何かが離れていった、喪失感が有った。
大事なものとの別れは時に寂しい。
「どうしてもっとつよく手を繋いでいなかったのかな、とかそういう……
えーと……」
振り向けばそこには、別の出会いを果たした別の人がいるのだ。

………
「ご、ごめんね!ああもうボクとしたことが!
とりあえず(後で)脱いでもらうしかないかな、ちゃんと(クリーニング代は)払うから!
ほんとにゴメンね!」
謝り倒しながらくいくいと咲雪の袖を引っ張ろうとするよくわかんない人物。
多分クリーニング屋に連れて行こうとしているのかもしれない。

八雲咲雪 > 「…………」

胸から垂れていくアイスクリームが、シャツに染みこんでいく。
冷たさからか、ぴくっと体を震わせる。
アイスクリームをとって、拭いて、今日は帰ろう。
シャツも透けてしまうし。

そんなことを考えているあいだに袖を引っ張られ、どこかに連れて行かれそうになる。

「あの。……あの」

最初、引っ張ってくる男性に抵抗せず歩き続けたが一階のクレーンゲームあたりまでくると、少し抵抗してその場に踏みとどまろうとする。

紗衣留アルミ > 「ゴメンね、ああもうボクの体重があと2t位あればあんなチャージングには絶対に屈しないんだけどなぁ、それともか、この手が握力200kg位あればこんな事にはならなかったんだ、
いや、言い訳はよそう!なにもかもがボクの不徳のいたすところ!
この非礼はすみやかにお詫びしないと申し訳が立たない!」
二度、三度と振り返りながら勝手な言い分をペラペラと捲し立てて、

ぐいぐいと歩む足取りは、意外にも一階のクレーンゲームあたりでピタッと止まった。
「え?……この台がどうかした、とか?」
不意に感じた抵抗に立ち止まると振り返りざま、
学ランのポケットからなめらかに投下される硬貨。
5クレジットが挑戦を待つ。
「このクレーンゲームを取れって言うのでしたならば、そしてそれが少しでもお詫びになりますならば、不肖この紗衣留アルミ!
謹んでこの、えーと……なにこれ?」
台に向かい合ったところでちょっと呆けた。なんだろうコレ。

八雲咲雪 > なんと名状すればよいか。
形をしてはいるものの、何に似ている、と聞かれれば名状しがたいなにかのぬいぐるみ。
少なくとも、人や動物の形はしてなかった。

「わたし、このゲームしたいから。
まだ帰れない」

シャツが透けているのもお構いなく。
先ほど帰ろうと思ったのもお構いなく。
あの不定形キモカワぬいぐるみを取ろうと考えていた。

紗衣留アルミ > 「……わかりましたとも。万年雪の溶け落ちるまで待てますとも。」
すすす、とゲーム機から後ずさると、両手の手のひらを上にしてちょっと前に出した。
お縄にかけて欲しいという意味でもないとすれば、鞄を持ちましょーということかもしれない。

「ねえ、キミはこのニギ機ァmighる……はこの時代に居ないや、じゃなくてえーと、
このぬいぐるみ、好きなの?」
エージェントとしての方向で、ちらっと興味が湧いた。
なんだかこの子、ちょっと変わってる感じがする。
「……実物が居たら会ってみたい?ってこの島だと居そうだけど」

八雲咲雪 > 「ん」

自然に、男性に鞄を預ける。
目がぎらぎらしているのは、狩猟の本能か。
そんな本能が現代の人間にあるかどうかはともかく。

五百円をぶちこみ、クレーンを動かし始める。
男性の問いには少しだけ間をあけて

「……このぬいぐるみは、可愛いと思うわ。
でも、実物は会いたくないかも。
実物はきっと、キモイ」

青い瞳をぬいぐるみに向けたまま答えた。
アームがぬいぐるみをもちあげ……ぬいぐるみを拾えず戻る。
と、いうことを五百円分、つまり6回きっちり使い果たす。

「……」

若干、アームを睨みつけながら怒った顔をしている。

紗衣留アルミ > 鞄を両手の肘のあたりにおとして、空いた両手でパラパラとメモをめくる。
「あー、やっぱり実物はダメかー…」
ごめんねニギ機ァmighる、と心の中で未来の同胞に謝っておく。でもキミ、振られ慣れてるじゃん?
いずれ未来に戻った時に伝えようと思いながらペンを走らせた後、
咲雪に視線を戻すとクレーンが仮初の命を失っていた。

「……」
お怒られておられる。と、アルミは思った。
鋭い目線を、クレーンゲームのガラス越しに感じる…気がする。
鞄を片手に持ち帰ると、ごそごそとポケットを漁り、幸いな事に500円玉がもう一枚出会いの時を待っていた。

「もしキミが必要だと感じるなら、どうぞ。」
痛い出費ではあったけれども、いつものインタビュー料とでも思えば、仕方ない。
硬貨がゲーム機に飲み込まれ、クレーンが、もう一度息を吹き返した。

八雲咲雪 > 「……」

無表情で男性のほうを向き、しっかり一礼したあと。
再びクレーンを見直す。
そう、これが最終決戦。
泣こうが喚こうが、最後の戦い。
六回分、集中してアームを動かし――。


「…………」

六回分、負けた。
その場にぺたんと座り込んで、俯いていた。

紗衣留アルミ > なんでも格言で聞いたことがあるような。
「女性は失恋した時がチャンス……とかなんとか」
ニギ機ァmighる、キミがここに居さえすれば大チャンスだというのに…!
仕方ない。友人として出来る限りのことをしよう。
それがボクに出来る数少ないことだ、きっとアイスの死も無駄にならないと思う。

座り込む咲雪の傍へなめらかに膝をつくと、手を差し伸べながら
「……でも付き合ってみるとしたらアリ、とかそういうことは無いかな」
と聞いた。往ねィぬいぐるみの幻影。恋はいつだってリアルの勝利を待っている。

八雲咲雪 > 「…………」

男性の問いに、再びキモカワぬいぐるみを見る。
もしかしたら、そうかもしれない。
なんせ、こんなにかわいいのだから。
ぬいぐるみになればかわいいなら、きっと本物は

「ない」

気持ち悪いだろう。
それは無常にも告げられた宣告だった。
キモカワはぬいぐるみにしか適用されないのだ。

紗衣留アルミ > メモ帳の半ページを満たし、太字で何度もなぞりながら
周りに二、三重に重要マークなんだか召喚陣なんだかわかんない不連続曲線を伴って、
『ない』
その答えは確りと刻まれた。例えアルミが倒れようとも星霜をこえてメッセージは届くだろう。
「……そっか。ありがとね。」

少しだけさみしげに笑ったアルミに100円を突っ込まれたクレーンは、
こんなよくわからない鞘当に付き合ってられないとばかりにぬいぐるみを下界へと叩き落とした。
取り出し口は咲雪の目の前。

たとえ相手がぬいぐるみでも、それはそれ。敗者の述べるリアルに現実など無いのだ。
「……ボクは紗衣留アルミ。HPAの一員で、概ね大体のカップルの応援者。
キミとその子の仲が上手く行くことを祈ってるよ……!!」
さり気なくクリーニング代のことを頭から追い出す都合のいい記憶領域とともに、アルミは歩いて行く。

八雲咲雪 > かたん、と落ちてきたキモカワぬいぐるみ18世。
そっと拾い上げ、男性をみる。
紗衣留アルミ。
その名前をしっかりと胸に刻み、小さく微笑む。

「ありがとう、紗衣留アルミさん。
わたし、八雲咲雪です」

歩き出したアルミへ名を告げる。
聞こえたかどうかは分からないが、ぎゅっと胸にキモカワを抱いて、その背を見送っていた。

紗衣留アルミ > こうして常世の島にまた一つのカップルが生まれた(アルミ主観)
調査を続けるたびに寂寞の念が胸をよぎる、自分のしていることは無意味なのではないか、明後日の方向を探っているのではないか
だがそれでもアルミは歩みを止めない
カップルたちと向き合いその話を聞くことの中にこそ真実があると、そう信じているから

ゲームセンターを出るアルミの周りを、渦を巻く用に風が吹く。
長ランの下のむき出しの太ももが少し冷えたが、咲雪の姿に少しだけ、心だけは暖かだった――

ご案内:「ゲームセンター【常世】」から紗衣留アルミさんが去りました。
八雲咲雪 > 透けたシャツを、愛するキモカワで隠す。
今日からこの子はキモカワぬいぐるみ18世。
まだキモカワぬいぐるみ1世は存命中だが、長生きなのだ、1世は。

咲雪はそっと立ち上がり、キモカワを連れて行く。
寮に帰り、キモカワの置く場所を選ばなければいけない。

寮に帰りながら、ふとおもった。

「バッグ」

咲雪は走り出した。
もう立ち止まれない。
あの人を見つけて、必ず言わなきゃいけない。

「バッグ、返してもらわないと」

今日も咲雪は元気に走っていた。
バッグを取り返すため、あの男の人を追って。

ご案内:「ゲームセンター【常世】」から八雲咲雪さんが去りました。