2016/09/13 のログ
ご案内:「クローデットの寝室」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > クローデットの寝室には、大きな鏡台がある。
クローデットは、メイクアップよりは基礎化粧に時間をかける(陶器めいて瑕疵のない白い肌はその産物である)のだが、それはそれで鏡台に広げるものは増えるのだ。
「…ふふふ」
その鏡台の上の方の引き出しから透明の小さなガラス瓶を取り出して、クローデットは楽しげに笑んだ。
■クローデット > 魔法薬学の初歩訓練でアロマテラピーも嗜むクローデットは、自分で香水を作ることも出来る。
手に取ったガラス瓶から、ほんの少しだけ中の液体を手首につけて、その手首を顔に寄せた。
甘ったるい、花の香りを感じる。
この程度の量では、普通に歩く分には自分で香りを感じることは無いが…香水の香りを自分が普通に歩いていながら感じてしまうのは、纏う量を間違えているのでそんなことはしない。
■クローデット > 普段は、精神を落ち着かせたり頭をすっきりさせるような薬草の香りと花の甘さを調和させるものを調香している。
自分の意志では、初めて挑戦した濃厚な花の香り。失敗作も生み出したりしたが、最終的には良いものが出来上がったと思っている。
催淫作用を含む精油の香りは、オリエンタル(東洋的)だったりエキゾチック(南国的)だったりして、クローデットが好む服装と合わないのだ。おまけに香りも強い。
だから、催淫作用を持つ精油は主成分にしないようにして、代わりに主成分は普通のフローラルな香りにする。
そして、前者と後者の相性をつなぐための精油も混ぜ合わせる。隠し味に、高価なチュベローズの精油も混ぜて濃厚さの演出も忘れない。
そうして出来上がった、「女性の妖艶さ」を品良く演出する香水。
天然素材を使っているので、濃厚な甘さを持ちつつもくどく匂ったりすることはあまりない。
■クローデット > 失敗作のほとんどは破棄してしまったが、一部は「偽装用」に保存してある。
あっちは、使うシチュエーションがシチュエーションだけに多少つけ過ぎて品がなくなっても問題はない。すぐに使い切れるだろうが…
(…せっかく高価な精油を材料に使ったのですから、たまには使いたいものですけれど)
問題は、「本命」の方だ。
天然素材で作った香水なので、時間が経つと変質してしまうのである。
■クローデット > (まあ、あの「玩具」で遊ぶ時に、状況を見て使いましょう。
…順調に、「「男」の出来損ない」への道を進んでいるようですし)
鏡台に映るクローデットの笑みが、艶やかな悪意を帯びる。
クローデットは「ルナン家」という共同体に忠誠を誓っている。
「家」の存続に、自分が結婚して子供を持つことが必要なのも了解しているが…その相手は、「「男」の出来損ない」ではあり得ない。男性として、魅力的な紳士で…「家」を、妻を大切にしてくれる存在でなくてはいけないと強く思っていた。
異能者(バケモノ)や異邦人(ヨソモノ)など、間違ってもあってはならないのだ。
■クローデット > (………本当に、愚かな「男」。
あたくしは、どこかの物語の「男の影を奪う高級娼婦」と違って、安い愛の誓いなど偽りの道具にしておりませんのに)
鏡に映る悪意が、嘲りが濃くなる。
クローデットは、言質として取られうる明確な好意の言葉は、ほとんど具体化していない。
ましてや、愛の言葉など。
非言語的コミュニケーションも、やんわりとしか使っていないが…育ちもあって不慣れなのだろう。
真綿で首を絞めるように、手綱をきつくしていくのは昏い愉悦を伴った。
■クローデット > (…とりあえずは、貸したケープを返しにくる時を楽しみにしていましょう。
服を買ってやると言ったら…あの「男」、どんな顔をするかしら?)
くすくすと、艶やかな悪意の笑みを零して。
クローデットは、香水の小瓶を鏡台の引き出しに戻した。
ご案内:「クローデットの寝室」からクローデットさんが去りました。