2016/09/29 のログ
■櫛鉈 蛟 > 「確かになぁ。俺もある程度は自炊とかすっけど、流石にここまでのは無理かもなぁ」
と、カグラの言葉に相槌を打ってみせる。彼女の言動からして自身ありげだったが、実際に今食べたクッキーは美味い。
彼女が語る言葉には、自身も覚えがあるだけに頷いてみせて。
「確かに、以前の俺は普通に人間を生贄に要求したりしてたが、今は別に人を食う必要もねぇしな。
まぁ、良くも悪くも人の世に染まっているって事になんろうだけどな」
合間にアイスコーヒーをちびり、ちびりと飲みながらそう述べてみせる。
そして、彼女の言葉を聞きながらフと思った。今更の質問かもしれないが。
「そういや、結局お前さんってどういう存在になるんだ?俺は言うまでも無くオロチだけどさ。
ただ、人の記憶や経験に影響されて今のカグラが形作られてるって事は何となく分かるんだが」
彼女自身が語ってくれたように、そうして料理の腕前などが上がっていったのだろうし。
そして、人を食べたほうがエネルギー効率的にはいいのはこちらも同じである。とはいえ。
「まーな。それに俺の場合はもう以前の肉体に戻るのはほぼ無理だし。
この人の姿で過ごしてれば、自然とそっち側に意識も引き摺られてくしな。
それに、この人の世はある程度の法に基づいてるし、それを破ると面倒だしな社会的に。
…ってか、お前さん食うの早いなぁ」
と、最後は感心したようにそちらを見ているだろう。こちらは食べる量はそこそこだがマイペースな速度で。
■迦具楽 >
「んー、私?
私は……なんなんだろう。
自分でもよくわからないのよね」
どういう存在なのかと問われれば、自身でも答えを持っていないために首を傾げる。
最初こそ、玖杜という生ける炎を繋がった巫女から漏れ出た澱。
巫女の降ろす神格の、澱み濁った邪悪とされる部分……だと思っていた。
「自分でわかっているのは、ある神格の欠片を内包している事。
人間を食べて、その魂を自身に蓄積する事。
蓄積された魂によって出力、反映された自我が私な事。
熱エネルギーを原初の澱……言うなれば万能物質に変換して蓄積できる事。
その万能物質によって体が構成されていて、それを使って私が製法を『記録』しているあらゆる物を創造できる事。
そして死んでもその都度最適化されて、再構成される事」
そう坦々と自身の要素を語りながら、去年、崩壊から再構成されたときを思い出し身震いした。
最適化と再構成。
迦具楽を再構成する『なにか』にとって都合の悪い記憶や感情を削除や上書きし、崩壊の際に残ったエネルギーを用いて相応の体と能力を再構築する。
生物的でなく、ある意味で機械的に効率化されていく事に、少なくない疑問と恐怖はあった。
「そして、恐らく何者かによって人為的に生み出されたという事。
私がこうして生まれるように、いつか何処かで、誰かが仕組んでいたという事。
私が自分について知ってる事なんて、これくらいかしらね」
自嘲的に、どこか途方にくれるかのように語る。
そう信じがたい事だったが、迦具楽に起きた現象を考えていくと、どうしても自然発生した『生命』とは異なるように感じられてしまう。
それが迦具楽が知る怪異としての自身の全てであった。
「……まあ、要するに作り物のお人形さんみたいなものよ。
かなーり多機能みたいだけど」
そう冗談めかして言って、クッキーを複数、纏めて飲み込んだ。
「ほら、もっと食べないとほんとに私が全部食べちゃうわよ。
そろそろお土産のケーキも出そうかしら」
そしてテーブルの上から、クッキーの八割ほどが消えている。
隙間を空けてからケーキの箱を乗っければ、ホールのチーズケーキが顔をだした。
「わあ、なかなか美味しそうね。
あ、クシナダは何割くらい食べる?」
一人で全部食べてしまわないように、あらかじめ切り分けておこうというつもりらしい。
手元にはいつの間にかカット用のナイフが握られており、先ほど話に出た能力によるものだとわかるだろう。
■櫛鉈 蛟 > 「そうなのか?まぁ、俺も自分が何者かっつぅのは分かってても、現状はほぼ人間みたいなモンだし。
曖昧になってるっつぅのはあるかなぁ…」
こちらの質問に首を傾げ答える友人に、ふぅむと唸りながらそう独り言のように。
己の正体は、あくまでこの世界、この国の神話でも最大級とされ有名な怪物そのものだが。
ならば、記憶を引き継ぎながらも力をほぼ全て失い、人の姿で生きる今の自分は何なのか?
と、問われたら一言では答えられないかもしれない。
そんな事考えながら、続くカグラの言葉をクッキーを頬張りながら聞いており。
「へぇ、何か俺よりもよっぽど凄い存在なんだなぁ。
で、カグラの話を聞く限りでは、何らかの要因で自然発生した訳じゃあなく…
”人為的に計画的に”生み出された存在って事になるんだろうかねぇ」
自身は人為的に生まれた存在ではない。だから、そこはあくまで推察しか出来ない。
ただ、人為的に作られたのならば必ず目的がある筈だ。
途方に暮れたように語り終え、冗談めかして多機能な人形、と揶揄する姿を眺め。フン、と一息零す。
「面白くねぇな。その人形って所が特に。誰かの意図した操り人形ってのが面白くねぇ。
こうして今、俺と面と向って喋ったり、美味そうに物を食ってる娘が。
出自がどうだろうと、誰かの手の上だろうと。ならいずれ飛び出してやりゃいい。
1から10まで全てが仕組まれて意図された事だとしても。
”何も考えず踊り続ける”のだけはダメだ。それじゃあそれこそただの人形だ。
……あー悪い、何かびみょーに熱くなった」
と、そこまで言ってから苦笑い。コーヒーを喉に流し込んでから頭を掻いた。
サングラス奥の赤い蛇眼を細めながら、
「ま、要するにお前さんが人形という存在だとしても俺は認めねぇってこった。
意志があるなら、自我があるなら過程がどうあれそれは人形じゃなくて生きてるって事なんだから」
と、締め括りつつ。残りのクッキーを一気に平らげてしまおうか。
蛇が得物を丸呑みするかのような豪快な食べっぷりで。
「ん?あーカグラ8割、俺2割程度でいいと思うぜ。さす画に食べる量がどうしても違うし」
と、こちらも気を取り直して友人の言葉にそう答えつつ。
と、いうか何時の間にナイフを。先の説明からおおよその原理の見当は付いているが。
(便利だよなぁ。俺も再生体質以外の力が戻ってれば)
と、思うのは所詮ないモノねだりでしかないか。
■迦具楽 >
「さあ、凄い存在かって言われると、どうなのかしらね。
再構成されるたびに、能力も弱まっていってるし」
能力が弱まる……というよりは、人間に近づいているという方が正確なのだろうが。
その事は、別に改めて付け加える事でもないだろうと結論付けた。
そして、少々熱が入って語る友人には、くすりと笑みを溢す。
「ふうん、そう言うところもあるのね。
そうね、例え作り物でも私は私なんだもの。
どんな意図で目的で作られたにしても、その通りになってやる理由もないし。
まあでも、せめて作られた目的くらいは、知れればいいんだけど」
蓄積された魂を探ってみても、出てくるのは好き勝手な聲ばかり。
こうしてたまに深く潜ってみても――《Error,disconnect》――なにも出てこない。
何をどうすればいいのかわからないというのは、これが結構嫌なものである。
「はーい、それじゃあ遠慮なく八割もらっていくわね。
――んーっ、美味しい!」
そして切り分けた二割を皿にとってクシナダに渡すと、自分は明らかに大きな一口サイズをフォークで切りとって口に入れる。
味には満足そうに笑顔を浮かべ、あっという間にケーキが減っていく。
この調子でこのペースで食べていけば、この大量の菓子群がなくなるまでそう時間も掛からない事だろう。
■櫛鉈 蛟 > 「けど、どう見てもまだまだ力が十分に強い気がするけどな。
再生するっていう体質だけしか残ってない俺に比べたら遥かにマシだと思うが」
(…けど、再構成される度に力が弱まるって事は…いずれ限りなく人に近い存在になるのか?
それがカグラを作ったヤツの目的?わかんねぇな…)
と、思考を巡らせながらも、あれこれ何でも分かる訳ではない。結論は先延ばしだ。
熱くなってる、というのは飄々とした男にはやや珍しく。
「うっせ、なまじ人間としてここ数百年生きてっから変に情が構築されてんだよ、我ながら面倒くさいが。
…ま、昔と今のどちらがいいか?と、聞かれたら…多分今って答えるんだろうけどな」
あまりこういう話をする相手が居ないのもあり、そういう普段言わない本音みたいなのがポロリと出る。
取りあえず、友人として己がこの娘にしてやれる事と言えば、だ。
「まぁ、その目的探しくらいは手伝ってやるから、何か協力して欲しい時は遠慮なく言えよなカグラ」
と、ぶっきらぼうに付け加えつつ、2割の取り分であるケーキを頬張っているかもしれない。
そうして、あぁだこうだ話している間にも、どんどんと彼女がメインで平らげて周囲の食べ物が減っていくのだ。
「あ、カグラ。今から帰るのも面倒だし泊まってっていいか?
寝るのは別に地べたとかでも構わんし」
と、質問などをしながら結局友人の家に今夜は一泊したかもしれない。
何だかんだ、親睦は深められたと思いたい、そんな夜更けであった。
■迦具楽 >
「あはは、それはそうかも。
自分でも便利すぎてずるいなーって思うときあるくらいだし」
特に人間社会で生活するようになってからは、重宝しすぎなくらいである。
実際便利。凄く便利。一家に一人欲しいと言われる程度にはまだまだ便利な能力だった。
「……そうね。
私も同じように聞かれたら、きっと今がいいって答えるわ」
以前の怪異として完全だった自分を、懐かしいとは思っても戻りたいとは思わない。
これまで得た経験や感情、それらに振り回される事はあっても、やはり掛け替えのない大切な物だと感じているのだ。
「……そうやって言ってくれたの、あなたで二人目ね。
あ、次はモンブランにしようかしら」
友人が二割を食べている間に八割のチーズケーキを食べ終え、さらに目に移った次の箱へと手を伸ばす。
その行為が照れ隠しのように見えないのは、その驚異的な食欲がなせる技だろう。
それでも、嬉しそうに緩んでしまう表情は隠せていなかったが。
「泊まるのはいいけど、さすがにお客様を床には寝かせられないわ。
ちゃんと布団も用意するから、ゆっくりしていっていいわよ」
大量のお菓子が消え去って、デザート(?)のプリンを突きながらそんなふうに答える。
そうして親睦を深めつつ甘味を満喫して、なんの警戒もなく自室に泊めて同室で寝る事になるのだが。
万が一の何かが起こるわけもなく、気持ちの良い朝が訪れるのであった。
ご案内:「小さな家/宗教施設郡」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「小さな家/宗教施設郡」から櫛鉈 蛟さんが去りました。