2016/10/03 のログ
ご案内:「落第街のとある区画」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 「………『浄化(ピュリフィカシオン)』」
詠唱の後、柔らかく優しい女性の声がそう唱えると、大規模な浄化の術式が展開される。
その区画の「妖怪もどき」が、一気に浄化された。
「………意外と「協力的」で、助かりますわね」
そう、艶のある微笑とともに、「彼ら」の旅立ちを見送るクローデット。
彼女は、今回の大規模討伐作戦で、間違いなく主力の一人として数えられていた。
…一方で、同行している支援要員の風紀委員が非常に微妙な顔をしている。
■クローデット > 「…ふふふ、公安委員が「彼ら」に情を寄せるのが意外ですか?」
羽根扇子で口元を隠しながらも、支援要員に楽しげに笑みかけるクローデット。
風紀委員は、笑みを向けられて、ぎょっとした後どぎまぎと視線を逸らした。
『…いや、その…それだけ広範囲の術式を連発されると…
この討伐の後、落第街が今まで以上に荒れそうで』
そう弁解する風紀委員に対して、たおやかな笑みを浮かべながらもクローデットは…
「この討伐が失敗すれば、どのみち同じ事になります。
それに、手間取ればまた増え始めてしまいますから…早いに越した事はないでしょう?」
と、ばっさり言い切った。
そして…クローデットの笑みが、更に深まる。
「…それとも、「この期に及んで」委員会の縦割りの方が気になりますか?」
羽根扇子で口元を隠していなければ、意地の悪い笑みともとられたかもしれない、強気な笑顔。
わだかまりはあったらしい風紀委員が、観念したように頭を下げた。
『………いえ、その…失礼しました』
「分かって下されば、それで良いのです」
クローデットの笑みが、いつものたおやかさを取り戻した。
■クローデット > 「…それに、あたくしとて人の子ですから…限界もございますわ」
そう言ってクローデットはポシェットから緑色の液体が入った小瓶を取り出し、その蓋を開けると…一気に飲み干した。魔力を回復する薬だ。
そういったものを欲する程度には、クローデットとて消耗を強いられていた。
そういう、戦いだった。
「…終わるまでにいくつ使う事になるか分かりませんけれど…元が取れる程度の手当は期待してもよろしくて?」
そう言って、風紀委員の方を、艶を含んだ微笑で見つめる。
『…ルナンさんの、討伐実績でしたら…』
しどろもどろで答える風紀委員に対して、
「…あたくしは白魔術師ですから、「浄化」実績と言って下さると嬉しいのですけれど」
と、笑顔ながらも、やんわりと釘を刺した。
■クローデット > 「白魔術師」と言い切るには、クローデットの扱う術式系統はあまりにも多岐にわたる。
…それでも、その中で得意なものを上げろと言われたら、白魔術はそのトップ候補にはなるのだった。
そして…クローデットのなす浄化術式は、確かに美しかった。
広範囲に展開する事もあり、「対象」に「包容」をイメージさせるのだろう。負の感情の塊であるはずのそれらは、クローデットの浄化の術式に、ほとんど抵抗しなかった。
周囲に白い光が淡く満ちる光景は人の目に見ても美しく、その中で、「対象」の持つ負の念が解けて、やがて光とともにあるべきところに還るのである。
公安委員としての働きからすれば信じ難いが、まるで「それら」に本当に心を寄せているかのように、働く術式だった。
クローデットのことを聞き知っている風紀委員達は、「裏」での評判とのギャップに微妙な顔をせざるを得ない状況だった。
ご案内:「落第街のとある区画」に化野千尋さんが現れました。
■化野千尋 > 落第街の隅のアパートに居を構える化野は、いつもと違う街の様子に違和感を感じていた。
喧嘩の喧騒ではなく、どちらかと言うならば落ち着いた、もしくは――沈んだ――様子で。
そんな気味の悪い違和感に、思わずアパートを飛び出していた。
勿論、風紀委員に反省文を書かされた実績だってある。
キャスケットを深く被って、誰だかわからないように軽い変装をして。
「…………!」
違和感の先には、白色の空間が広がっていた。
何らかの術式であることはわかる。恐らく、浄化やそれにあたる術式だろう。
だが、それがどういう原理で行われているのかはわからない。
自分と対局に在るその術式のあり方に、思わず目を奪われた。
そう暫く立ち止まっていれば、風紀委員に声を掛けられる。
「ちょ、ちがいますよ。あだしのは何もしておりません。
あだしのはただ、見に来ただけですのに……! じゃ、邪魔はしないですので!
見せていただくことは可能でしょーか! ていうか見たいんです!」
■クローデット > 化野の声を聞き取ってか、白い空間の創造者…クローデットが、たおやかな微笑でもって振り返る。
「…あら、可愛らしいお客さんがいらっしゃいましたわね」
化野の様子を見て、くすりと優しい笑みを零すクローデット。
そして、見学を懇願されれば、ひとまず風紀委員と化野の方にゆったりと歩み寄って風紀委員を制し(ここで、風紀委員がやはり嫌そうな顔をした)、
「見学、ですか………危険な任務の途中ですので、一般の方を伴うのは気が引けますけれど。
…怪異から、身を守る術はお持ちですか?」
そう、化野に女性らしく柔らかいソプラノで問いかける。
■化野千尋 > 「あっ、えっと、すいませんっ」
なぜだか謝罪が先に出た。
クローデットの穏やかな微笑は綺麗なものではあったが、
なぜだか、どこかぼんやりとした恐怖感も感じていた。
笑顔というのは、何よりも強い防衛機構だとどこかで聞いたような気もした。
後ずさることもできず、固まったままにへら、とぎこちない笑みを返す。
「身を守る……逃げるくらいなら、あだしのにもできるでしょう。
……あ、っと。あだしのです。化野、千尋。
ありがとうございます、……公安! ……委員さん。」
彼女の腕章のことは見ていなかった。
化野の兄曰く、公安に関わるとロクなことがない、という言葉を思い出す。
途中、間抜けたような上ずった声が漏れる。
■クローデット > 固まる化野の様子に、くすくすとおかしそうに笑った。
その様子はどこまでも、自然な笑みに「見える」。
「謝罪の必要は特にはないかと存じますけれど…こうして委員会が大規模に動いているのをご覧になれば、肩に力は入ってしまうかもしれませんわね」
そして、化野が「逃げるくらいなら出来る」と言い、名乗り…そして、公安の腕章を見てうわずった声を出すところにも、クローデットはたおやかな姿勢を崩さなかった。
「そうですわね…よほどの事がなければ、逃げるまでの間お守りするくらいは出来るでしょう。
…申し遅れました、あたくし、公安委員会に所属するクローデット・ルナンと申しますわ。
今日は、風紀委員のお手伝いに来ておりますの」
そう言って、花の綻ぶような瑞々しさと艶を兼ね備えた微笑を、口元に湛える。
…やっぱり、支援要員の風紀委員達は微妙な顔をした。
「…そうですわね…それでは、近くで「浄化」の済んでいないところで、実際に行う事を見て頂きましょう。
…ああ、移動の前のこちらをお持ち下さい。「お守り」です」
そう言って、クローデットはポシェットから護符のようなものを取り出し、化野に差し出す。
魔力感受性が平均以上に備わっていれば、その護符からは、白い空間と似たような気配が感じられるだろう。
もっと感受性、察知能力が高ければ、これで「逃げる」必要すらほとんどなくなることまで分かるかもしれない。
■化野千尋 > 「えっと、ルナンさん、でよろしかったでしょーか。
……公安のひとと、風紀のひとが一緒にいらっしゃるのを見るのは初めてだったもので、驚いてしまって。」
化野は、自分が島に来たのがついこの間だ、ということを身振り手振りも交えて伝える。
そうして、綻ぶ笑顔にまだまだぎこちない笑みを返し、
差し出された護符を頭を下げながら受け取った。
「すいません、これ……大事なものとかじゃないですよね。」
あまり魔術に精通していない化野でも、その護符の気配には思い当たるところがあった。
先刻、自分がなんだなんだと野次馬にきて、呆然とする原因になった"それ"だ。
そうして、また頭を下げて腰を折る。
「お邪魔にはならないようにいたしますので、ええあっと。
どうぞよろしくおねがいします、ルナンさん」
■クローデット > 「ええ、ルナンがファミリーネームになりますわね。
少々、大きなお仕事でして…あたくしにも助力要請が来た次第ですの。
…縦割りはございますけれど、必要な時にまで手を取り合えないほどではありませんのよ?」
ふふふ…と楽しげな笑みを零すクローデットとは裏腹に、風紀委員達は渋い顔をしている。内心、良い気持ちではないに違いない。
…しかし、この作戦にクローデットがいるといないで、話が変わってしまうのは彼らも認めるところだろう。
「ええ…それなりに強力ではありますけれど、一定以上防げば効果が切れてしまう、使い切りのものですから。
化野様に不利益にならないのであれば、そのままお持ち頂いて全く問題ありませんわ」
大事なものでないことを確認する化野に、にっこりとたおやかに笑んで頷く。
使い切りではあるが、もし同程度のものを魔術具屋で求めればそれなりのお値段はするだろう。
…しかし、「化野の不利益にならなければ」というのは、何のつもりで言ったのだろうか。
「ええ…それでは、気をつけて参りましょうね」
化野と…彼女を守るような位置取りをした風紀委員達に向かって、人形めいた所作で首を傾げながら声をかけると…先頭を切って歩き出す。
そうして、区画を2つほどいったところだろうか。
そこには、解け合ってぼやけながらも確かに怨念を持つ、負の思念の黒い塊があちこちで蠢いていた。
■化野千尋 > つか、つか、つか、と進んでいくクローデットの後を追う。
びくびくと肩を縮こまらせながら、委員たちの邪魔にならないように向かう。
渡された護符を大きなリュックサックのポケットに仕舞い、もう一度礼を重ねる。
「そのう、風紀委員さんとルナンさんは仲が悪いのでしょーか」
先程からどうにも微妙な表情続きの風紀委員にこそこそと話掛けながら、
存外にリラックスした様子で暫く歩く。
クローデットの先導で進んだ先。そこには。
「~~っ!!」
自分にも覚えのあるものが、そこに"いた"。
微妙な輪郭を浮かべ、蠢く黒色のそれ。元が何だったのかはわからない。
だが、確かに「そこ」にある。存在している。
「あの、"彼ら"は。……お知り合いではないですよねえ」
■クローデット > 化野に話しかけられて、クローデットに向けるのとはまた違う微妙な表情を浮かべる風紀委員。
『…いや、別にあの人は縦割りに気遣って露骨にでしゃばってこないし、強いんだけどさ…
………何ていうか…こう、分かるだろ?やりづらいんだよ』
ひそひそと化野に返す風紀委員。
人形めいて整った美貌も、崩れないたおやかな物腰も、魔術師としての強さ、そして「事後」までは配慮しない姿勢と結びついた場合、同行する風紀委員達の心証にあまり良い影響を与えないらしい。
無論個人差はあるし、化野に返答している彼にしても、具体的な言葉にできるほどの「知性」というべきものは不足しているらしかった。
…なお、化野と風紀委員のやりとりを、クローデットが認識しているかどうかは定かではない。
「…お気を確かに。「お守り」があるうちは大丈夫ですけれど、なくなれば憑かれないとも限りませんから」
声にならない悲鳴のようなものをあげる化野に、そう穏やかに語りかけるクローデット。
「知り合い…ではございませんわね。そもそも、そういった識別ももはや難しくなってしまっておりますわ。
…ですから、「彼ら」を「あるべき場所」に「還し」て差し上げるのが、今日のあたくし達のお仕事なんです。
…どうか、お気を強く持って、ご覧になって下さいね」
化野に向かって、そう優しく語りかけると…クローデットは、その腕を、何かを抱くように掲げた。
「………汝ら、この世にて寄る辺を失いしもの………」
クローデットの女性らしく甘やかなソプラノが、いっそう優しげに、詠唱の言葉を紡ぎ始める。
蠢く黒が、魔術の気配を察知してか動き方を変えた。
…だが、それらはクローデットはもちろん、化野や、風紀委員達にも襲いかかる様子は見せない。
温かい、「白」の魔力がクローデットから零れ始めていた。
■化野千尋 > 「た、たいへんなのですねえ。」
どうにも公安風紀の内部事情はよくわからない。
風紀委員も固い、お役所のようなイメージがあったため、じんわりと親近感が湧く。
「あ、その――……」
クローデットの言葉に、何か返そうとしても言葉がうまく出てこない。
甘やかなその声も、「お仕事」も、何もかも間違ってなどいない。
が、どうにも言葉にならないような思いが胸に募る。
「…………きれい、ですねえ。
ぜんぜんお守りも、使わなくて大丈夫そうですねえ」
半ば泣きそうな笑顔を無理やり浮かべて、化野は笑う。
何も間違った行動ではないし、クローデットのそれが正しい行いであることもわかる。
だが、否応なく感じてしまう本能的な感情は、それを受け入れようとしなかった。
「彼ら」を「あるべき場所」に「還す」。
「彼ら」と「留まってしまった今世」で「縁」を「繋ぐ」。化野千尋のあり方と対極を為すものであった。
■クローデット > 『流石に、こんな事滅多にないんだけどね…普段はホント、仕事の範囲が違うからさ。
………今度合同で何かやることがあったら…あー、でも他の公安の人も別の意味で嫌だなぁ…』
こそこそと、化野と会話をする風紀委員。
まだ見ぬ「将来の合同作戦」の際の公安側メンバーが「誰ならいいのか」を考えようとして、軽く頭を抱える。
あくまで『支援要員』なだけあって、彼らは割と一般の生徒に近いらしかった。
化野が無理な笑顔を作って零す呟きにも、クローデットは答えない。術式構成に集中しているのだ。
「…大いなる世界の流れに抱かれ、眠り…
優しき場所で、あるべき形での目覚めを待て…
………『浄化(ピュリフィカシオン)』」
術式の名を告げる声が鍵となって、「白」の魔力が、辺り一帯に溢れ出す。
居心地悪そうに蠢いていた黒達は、その魔力に包まれ、落ち着き…
やがて、その「白」の魔力に溶けるように、その姿を消していった。
そうして、術式の名残として、最初に化野が見た「白」の空間が残る。
「…「彼ら」も、協力的で助かりましたわね。
あたくしはまだそこまで数を見ておりませんけれど…力でもって抵抗しようとするものも、それなりにおりますから」
実際のところ、抵抗が少ないのは、クローデットの「退魔」がかなり「癒し」の文脈上に乗っているのが大きい。
…それでも、広範囲に展開すれば魔力の消耗は馬鹿にならないが。
「…こういう事でしたの。ご理解頂けました?」
そして、この区域での「仕事」を終えたクローデットは、優しげな微笑を湛えて化野の方へ振り返った。
■化野千尋 > 「それはもう」
ご理解いたしました、と化野は頭を下げる。
白色一色に包まれるその場と、それに飲まれていく黒色。
圧倒的なまでの「癒し」は、その場に浸透していくように見えた。
そして、抵抗の様子も見られなかった。
化野が、クローデットは一流の術者であるだろうと認識するのも当然のことであった。
「ええと……押しかけてしまってすみません。
あと、これも。きっとまだまだお仕事、あるんですよね。
きっと、ルナンさんがお持ちになっていたほうがよろしいかと。」
と、先刻の護符をポケットから取り出してそっと手渡す。
リュックの中身が、異様に熱を持っていた。彼女の能力は、やはり一級品なのだろう。
「きっと、お邪魔になってしまうでしょうし、
あだしのはこのあたりでお暇させていただこうかと。
一般人がこうやって野次馬しにくるよなものではなかったですよね。
……すみません。興味本位で。」
キャスケットを脱いで頭を下げる。
■クローデット > 「いえ…化野様に何もなくて何よりでした」
頭を下げられれば、にっこりと花のような満面の笑みで答える。
それは、自分に力があり、それによって何かを為す事が出来ると確信する者が持つ、確かな自負をも滲ませていただろう。
「ああ…お気になさらないで下さい。
あたくしは、自分のものは既にございますので…」
と言いかけて、化野のリュックの中身の「異常」を、探査術式で検知する。
「…そうですわね、あたくしが預かった方がよろしいでしょう」
差し出された護符を、受け取った。
「そうですわね…お邪魔、というほどではございませんけれど、危険を伴うのも事実ですから。
…念のため、風紀委員の方のどなたかに、お家の近くまで付き添って頂きましょうか?」
化野が脱帽して頭を下げるのを、穏やかに受け取って。
それから、彼女の帰り路の心配をした。
■化野千尋 > 「いいええ。
なにかあれば、あだしのの責任ではありますので。」
じんわりと伝わる自信と、それに伴う力の強大さ。
それは、化野自信も確りと、疑うことなく感じることができていた。
人のために物事を為せる人間特有のその空気感に、じわじわと化野のコンプレックスが刺激される。
「すみません」
申し訳なさそうに頭を下げて、護符を手渡す。
視線が上を向くことは、暫くなかった。
「あ、それではお願いします。
すみません、風紀委員のひとにもお手間を取らせてしまって。
たいへんもうしわけなく。……それではルナンさん。お気をつけてくださいねえ。」
そう言って、また深々とキャスケット帽を被り直す。
今度は、来たときよりもずっとずっと深々と。表情を伺われないように、と。
■クローデット > 「傍にありながら何も為せずに一般生徒を傷つけさせてしまったとあっては、委員会の名折れですもの。
…それは、化野様の責任とはまた別の問題ですから」
そう言って、首をわずかに横に振ってみせる。
それだけ背負ってみせればみせるほど、相手にとっては重荷になりうることを…クローデットは、どの程度認識しているのだろうか。
「いえ…化野様が悪いのではありませんわ。
恐らく…「路線」の違いでしょう」
護符を受け取り、ポシェットに収めながらも、そう言う。
クローデットは化野のやり方を直接否定したりはしなかった。
そして…化野が送りを希望すれば、さっきから話していた青年が名乗りを上げる。
「…それでは、お気をつけてお帰り下さいね。
あたくし達の「お仕事」も大分終わりが見えてきてはいるのですけれど…まだ、油断はなりませんから」
落第街の黒の気配は、かなり薄まりつつあった。
多くはないし、クローデットほどの技量の持ち主は限られるとはいえ、退魔の技能持ちはそれなりにいる。それに、純粋な破壊も、効率は悪いが効かない事はない。
風紀委員外の人員にまで声をかけて、大量の人員を動員した甲斐はあったという事だろう。
『それじゃあ、化野さん、行く?』
風紀委員の青年が、帽子の上から化野に声をかけた。
■化野千尋 > 「その……ルナンさん。
余計なおせっかいだとは思うのですが、どうか気張りすぎないでくださいね。
たいへんなお仕事だと思いますので、その――……。
お怪我がないよう、あだしのもお祈りしておりますねえ。」
にこり、と口元だけで笑顔を浮かべる。
傍らにいた風紀委員の青年にお手間をかけますねえ、と挨拶ひとつ。
その場からゆっくりと立ち去っていく。
途中、何度か振り返ってお辞儀をしていたのが見えたかもしれない。
ご案内:「落第街のとある区画」から化野千尋さんが去りました。
■クローデット > 「あら…お気遣い、ありがとうございます。
大変ですけれど…力を持つ者として、どうあるかは重要な問題ですし、やり甲斐もございますから」
そう言って、柔らかく笑みを浮かべる。
それから、化野の姿が判別出来なくなる頃まで、一応見送った。
『ルナンさん、向こうの方で大きいのが出て、退魔能力持ちが足りてないらしいです』
残った風紀委員の一人が、無線で連絡を受ける。
…それでもなお、クローデットは平然とあった。
「そうですか…それでは、参りましょう」
そう頷いて、指示された方向へ淑やかに向かうクローデット。
化野に気配りをしてみせ、「彼ら」に情を寄せるのがクローデットならば。
落第街に残る「ヒト」の遺恨を、任務のために切り捨てるのもクローデットなのだ。
そのちぐはぐさ、そしてその魔術の技量の確かさに、個人差はあれど居心地の悪さを感じながら。
風紀委員達は、クローデットに伴って、移動していった。
今後、落第街で「妖怪もどき」の話を聞く事はほとんどなくなるだろう。
ご案内:「落第街のとある区画」からクローデットさんが去りました。