2016/12/21 のログ
ご案内:「休日昼・歓楽街のカラオケボックス」に美澄 蘭さんが現れました。
ご案内:「休日昼・歓楽街のカラオケボックス」にヴィルヘルムさんが現れました。
美澄 蘭 > あまりぱっとしない看板のカラオケボックスに入り、部屋に通される。
「二人」なだけあって、通された部屋はやや手狭で、微妙な圧迫感があった。

「………やっぱり、二人じゃ狭いわね」

少し、複雑そうな声で呟く。
カラオケ自体は、嫌いではない。蘭の場合、低音域の声帯があまり発達していなかったり、声量が弱かったりで歌いこなせるレパートリーは少ないが。

…もっとも、今日はカラオケのために来たのではない。
今日の「連れ」は、そもそもそんな文化に縁も無いだろうし。

蘭の声の調子は…「異性と」「やや手狭な空間にいる」ことへの緊張によるものだ。

「…とりあえず、適当に座って。話は、飲み物が来てからでいいと思うし」

そう、後から入ってくる「連れ」に声をかけた。

ヴィルヘルム > カラオケボックス,と言われてもそんなものは見たことも聞いたことも無い。
ともかく2人で話ができる場所,と言われて付いてきたのだが…

「………………。」

…初めて見る全てのものに興味が向いてしまう。
液晶モニターと,そこに映るPV映像,流れる音楽,間接照明,タンバリン…あ、これは知ってる。

「……あ,あぁ……ここで話をするのかい?」

落ち着かない,あまりにも落ち着かない。
貴女とはまた違う理由ではあるのだが,声には困惑の色が多分に含まれていた。

美澄 蘭 > 「しょうがないじゃない…お互いの家でもなく、話し声が漏れないような場所で、私が入れるような場所って他に心当たりなかったんだもの。
…流石に、今流れてる映像と音は、飲み物が来た後で切るけど」

そう言って、「連れ」である「青年」の様子を伺う。
彼の座る場所を見て、自分の席を決めるつもりらしい。

この姿の「彼」と初めて会った時のように警戒丸出しではないが…それでも、少女は「青年」の表情、声の調子を、つぶさに「観察」しているように思われる。
その表情に、甘さは伺えなかった。

ヴィルヘルム > 青年はと言えば,そんな貴女の様子よりも周囲への興味が勝っている様子である。
つまり,貴女を警戒することはせず,その表情がある意味で無防備に見えるかもしれない。

「あ,いや,そういうつもりじゃなかったんだ。
 ただちょっと慣れてないだけ…僕じゃ場所なんて、思いつきもしないから。」

自分の不用意な発言に少し反省しつつ,壁際にL字型に置いてある椅子の,奥へと進んで腰をおろした。
飲み物が運ばれて来たが,青年は音量を下げることもモニタを消すこともできない。

申し訳なさそうに貴女を見るのみだった。

美澄 蘭 > 恐らく、「マリア」に同じことを尋ねられても、この少女は同じ内容で返事をしただろう。
それでも、そこにあっただろう困ったような笑顔は、「表向きの」性別が異なるだけで、随分薄くなってしまっていた。

「…そう…まあ、こんな機械の類には縁もなかったでしょうし、そこはしょうがないわね」

それでも、いくぶん和らいだ表情で青年にそう言うと…ちょうど、店員がカウンターで頼んだ飲み物を運んできた。

「あ、ありがとうございます」

社交用の笑顔を口元に貼り付けて受け取ると、青年が頼んだものをそっと彼の方に差し出す。
自分は、頼んだウーロン茶のグラスに手を伸ばしてから…

「これでよし、と」

店員が去ったのを見計らって、モニター近くの大きなボタンを押した。
モニターの画面と音が一気に消えた。他の部屋からの音が、微かに聞こえてくる程度の空間が出来上がる。
それから、青年の斜め向かい、入り口に近い方に腰掛けた。

「歌声をそれなりに遮る防音性能だから、私達の話し声なら多分余裕よ。
………さて、どっちから…何から話す?」

青年の方を見る表情には、険しさは伺えない。
ただ、話したいという意図だけがある、という風情だ。

ヴィルヘルム > 空間から音が消え失せる。
そうなればこの部屋は急に静かで薄暗いだけの狭い部屋になる。
貴女の言葉に,少しだけ困ったように,頭を掻いて……。

「…僕は,全部説明しないと帰してはもらえない,かな?」

……わずかに首をかしげる動作には【少女】の面影が残る。
その他所作のところどころには依然として【少女】の形が残っているが,
それは現状の外見と声を覆すほどのものではないだろう。

「気になることを聞いてくれても良いし…こっちから話してもいいけれど。」

美澄 蘭 > 青年の、今の姿からはちぐはぐに映る「少女じみた」しぐさ。
それを見ても、蘭は動じた様子を見せなかった。…寧ろ、何か納得したような安堵感を漂わせて肩の力が抜ける。

「…別に、全部じゃなくていいわよ。話したくないこともあるとは思うしね」

「流石にそこまでデリカシーなくはないつもりよ」と真顔で言って、少しウーロン茶を飲む。
それから…

「…じゃあ、気になることから聞かせてもらおうかしら。

………「マリア」って、本名?」

「マリア」と聞けば、普通は女の名だと思ってしまうが…目の前の「彼」は、異邦人だ、断定は出来ない。
今の服装やら何やらから考えると、ジェンダー観はこちらの世界の延長線上にあると思って良いのだろうが…。

蘭は、「相手が話したくないこと」のことを考慮して、心やら何やらのことに踏み込むのを、一旦おくことにした。

ヴィルヘルム > 貴女の言葉に,どこか安心したような表情。
もとより隠し事をするつもりもさほどないのだが,聞き出したことを貴女がどう扱うのかだけは,気になったから…

「…その前に一つだけ,今日聞いたことは,誰にも話さないでほしい。
 僕がどうなっても構わないけれど,知り合いに,迷惑をかけちゃうと思うから…。」

…そうとだけ,念を押す。
約束してくれれば,何でも話すよ。と肩をすくめて笑った。
けれど,貴女からの答えが返る前に…青年は首を横に振る。

「……本名じゃない。」

そうとだけ言って,貴女を見る。
それ以上は,約束をしてもらってから,ということだろうか。

美澄 蘭 > 念を押されて、不可解そうに蘭が片眉を動かした。

「………どういうこと?」

この姿の「彼」と初めて会った時から、何かあるのだろうとは思っていた。
でなければ、わざわざ隠そうとはしないだろうし。
それでも…「知り合いに迷惑をかけると思う」とは、どういうことなのか。
個人間の秘密で、終わる話ではないのか。

「…わざわざ、「個室」まで用意して聞く話を他人に漏らすつもりなんてなかったけど。

………でも、ごめんなさい。「まだ」約束は出来そうにないわ。
約束出来るまでは、あなたが「知り合いに迷惑がかからない」範囲を超えると思ったら、黙ってもらって構わないし。

………ていうか、そもそもね」

そう言って、蘭は一つ大きな溜息を吐いた。

「曲がりなりにも「異性」なんだから、「何でも話す」なんて安請け合い、するものじゃないわよ。
「知り合い」もいいけど、自分の「心」とか、プライバシーくらいは大事にしたら?」

そう言って、呆れたような表情で青年を見やった。

正直、「何でも話す」と言われて、背徳的な好奇心が全く湧かない蘭ではないのだけれど。
それでも、分別はあるのだ。罪悪感とか、自己嫌悪とかの方が先に立つが。

ヴィルヘルム > 貴女が聞き返してくれば,小さくうなづく。
疑問に思って当然だし,その疑問を見逃すほど貴女が甘くないだろうことも知っている。
貴女の表情を見て,少し考えてから,学生証を取り出して,それをテーブルの上に置いた。

マリア・フォン・シュピリシルド 女

確かにそう書かれている。

「…この島に,僕の事実を知りながら,全部隠してくれた知り合いがいるんだ。
 僕が嘘をついていたってことが知れたら…僕だけじゃなくて,その人にも迷惑がかかる。」

それを堂々と言ってしまうことが,すでに致命的ではあるのだが,
青年は,貴女の表情を見てそれを伝えると決めたらしい。
そこまで言ってから,貴女の言葉に…肩をすくめて,

「……僕は君を騙していたんだし,もっと怒ってもいいと思うけど。
 それに,何でも…って言ったって,話すことなんて殆ど無いからね。」

心,プライバシー,どちらもこの青年からは遠い言葉だった。
その在り方は貴女にとって理解しがたいものだろうが,青年にとって自己とはその程度のものでしかない。

こうして自覚された男性としての自己さえも,この島に来てはじめて見出されたものなのだから。

美澄 蘭 > 「………。」

目の前の青年の学生証。その性別欄を覗いて、蘭が目を丸くし、息を呑む。
意図的に「女」を装っていた、だけではなく…学生証に記載する性別まで、偽り。
普段は、わざわざそんな小さな欄を確認しないというのに。
思わず、こう尋ねた。

「………何で、その人は隠してくれてるの?
…あ、もちろん、答えられたらで構わないんだけど」

それから、慌てて後半の言葉を付け足す。
時折「少女」らしい仕草が垣間見えるものの、青年の言葉遣い、立ち振る舞いは、男性としてそこまでおかしくないように思われた。
それでもなお、偽り続ける事情とは一体…。

そして、青年が肩をすくめていう言葉には、不機嫌そうに眉を寄せて

「…確かに学園を騙してはいるみたいだけど、私は、あなたの普段の服装とかを見て、勝手にあなたを「女」だと思って接してただけよ。
…それに、騙されて喋っちゃって困るようなこと、「マリアさん」に話したような覚えもないし…やましいことがないなら、怒るほどのことじゃないわよ」

「私が馬鹿だっただけ」と、きっぱりと言い切る。
それから…

「…今ぽろっと言ったけど…異性であろうとなかろうと、何でもかんでも話すわけじゃないでしょ?
あなたにだって、自分を守る権利くらいあってしかるべきだわ」

法学畑の家族を持つ人間だからこその語彙かもしれない。そう青年を諭す蘭の瞳は、鋭く、まっすぐに青年に向けられていた。

ヴィルヘルム > 問いかけに対して,小さく首を振る。

「……分からない。」

それが嘘でないことは,貴女にも分かるだろう。
事実として,青年にはこの事実を知るクローデットの真意はいまだに読み解けないのだから。

「その人には僕が女の子の恰好をしてた理由も,ちゃんとは話してないんだ。
 あんまり面白い話じゃないから……ね。」

馬鹿なんかじゃないよ,気づく人なんて殆ど居ないから。
貴女へのフォローなのか,それとも事実の報告なのか,両方かもしれない。
苦笑する青年だが,やはり,貴女の語るまっすぐな言葉には,この青年の理解が及ばない。

「それじゃ,話したくないことは隠すことにするよ。
 ……で,あんまり面白くないけれど,理由は聞いてみたい?」

美澄 蘭 > 「分からない」。
その言葉を聞いて、蘭の眉間に皺が寄る。

「………意図の読めない相手に秘密を握られてるの、怖くない?」

蘭は当然、青年と「その人」の関係など知らない。
ただ、「意図の読めない相手に秘密を握られている」「その秘密を守ることは常世学園の利益に反することである」という状況には、どうにも嫌な感覚しか覚えなかった。

「…他人が自分を許しても、自分で自分を許せないことくらいは、あるでしょう?そういう意味よ」

「馬鹿なんかじゃない」とフォローをされれば、そう言って首を横に振る。
客観的な指標の話ではないらしい。
そして、理由については…

「………別に、そこまで。
前に言ってた、「目の色とかが不吉がられて外に出してもらえなかった」って話と関係あるのかな、とは思わなくもないけど」

と、軽い調子で推論を述べてから、手元のウーロン茶をまた少し飲んだ。

ヴィルヘルム > 貴女の表情や声色とは裏腹に,青年は笑った。
貴女にとっては理解できないことかもしれないが,青年はそれを何とも思っていないようだった。

「怖がっても仕方ないし,ここにいる限り,僕にとってその秘密はもう…
 …あんまり意味が無いから。」

それ以上フォローを重ねることはせずに,手元のオレンジジュースを飲む。
……上のほうは氷で薄まっていたので,ストローでかき混ぜて,もういちど。

「正解。…親からしたら,跡継ぎがそんな“不吉な子供”じゃ困るんだろうね。
 本当は殺されるところだったんだけれど,父の後を継がない“女”として生かされた。
 だから,僕は女の子の恰好をして,女の子として暮らしてきた。」

つまり,この島に居る限りは女装をする必要もないわけで,
だとすれば学生証を女子と詐称するひつようも無いはずだが…

「……つい最近までは,それが普通だと思ってたんだけれどね。」

どうやら,こうして男の恰好をするようになったのも,つい最近のことらしい。

美澄 蘭 > 「………意味がない?」

蘭の眉が、再び不可解そうに動く。
それから…不可解そうな表情のまま、青年の告白を聞いた。

「………。…「跡継ぎになり得ない」ことにするために、女として…ね…。
歪な感じしかしないけど…今こうしてられるなら、生き延びて良かったのかしら」

と、どこか脱力した様子で息を一つつく。
…が、その後の告白。「最近まではそれが普通だと思ってた」を聞いて、びくっと肩をいからせた。

「………そうなの?結構堂に入ってるし、今の話を聞いたらずっとそうしたかったのかとばっかり…」

目を丸くしつつも、「どういう心境の変化?」という言葉は、必死に飲み込んだ。

ヴィルヘルム > (時間があれなので一旦退室、続きはまた後日に!)
ご案内:「休日昼・歓楽街のカラオケボックス」からヴィルヘルムさんが去りました。
ご案内:「休日昼・歓楽街のカラオケボックス」から美澄 蘭さんが去りました。