2016/12/23 のログ
■美澄 蘭 > 「適当なことばっかり…
…ま、頭ごなしに否定されるよりはよっぽどいいけど」
呆れ混じりの口調でそう言いながら、身体を起こす。
青年の謎の信頼はどこから湧いてくるのだろう、と、割と本気で訝りながら。
「デリカシー」を気にした前言もあって、家族の話にはそれ以上踏み込むことをしなかった。
「………別に、知り合いなら踏み込まれなければ気にしないわよ」
真顔で返されれば、そう言いながらうなだれ、深い、深い溜息を吐く。
「…そもそも、「マリアさん」の時と「この間」の時の私の態度の違いに、思うところとかなかったわけ?」
辛うじて顔だけを上げて、じとっとした目つきで青年の顔を見れば、微妙に見上げる格好になった。
■ヴィルヘルム > 「まぁ,実際のところ根拠は無いよ。
でもなんだか,そんな気がしたからね。」
家族の話をそれ以上続けないでいてくれたのは,有難かった。
家族のことを嫌っているわけではないが,少なくとも面白い話ではない。
貴女の溜息には,少しだけ目を泳がせた。
それに貴女が気付くかどうかは別として、だが。
「……いや,ほら,騙してた僕に怒ってるんだと思ってたから。」
申し訳なさそうに頭を掻く。
■美澄 蘭 > 「…必要が出来たら頑張るつもりではいるけど…
絵とかもそんなに得意じゃないし、あんまり自信は無いわ」
複雑な感慨を滲ませながら目を細め、軽い息をつく。
少女のじとっとした視線が、軽く目を泳がせる青年を捉えた。
頭を掻きながら零される、申しわけなさそうな言葉。
「………まあ、全くなかったとは言わないけど。
何か、苦手なのよね。同年代の男の子ににこやかに対応する、みたいなの」
頰杖をついて、もう一つ息をつく。
■ヴィルヘルム > 「この恰好になる前の僕と同じ,かもしれないよ。
やってみたら意外と上手くいくかもね。」
まぁ,やっぱり保証できないけど。なんて言って笑う。
この青年は,外見こそ変わったが確かにあの少女と同じ人物なのだ。
男性らしく振舞おうとしてはいるが,内心には貴女に嫌われること,切り捨てられることを極度に恐れている。
だからこその,僅かな不安が表情に表出していたのだが…それを,仮面の内側に押し込んで,
「あはは,分からないでもないかな…僕には自然なままで良いよ。
でも,気にしすぎなんじゃないかな?マリアだったのも僕だし,今の僕も僕だし……。」
自分でも,よく分からないけれど,と肩をすくめて笑う。
■美澄 蘭 > 「………そんなものかしら」
気のない声で、微妙な表情を浮かべながら。
青年の内心の恐怖に気付く余裕は、この少女にはない。
「………まあ、あなたが「マリアさん」だったのは分かるけど。
………でも、やっぱり男の人だな、って思っちゃったのよね………「あの時」に」
そう言って、視線をすっと横に流す蘭。
その表情は、やっぱり何とも言えない感慨を宿していて。
■ヴィルヘルム > 全てを覆い隠した仮面は…今度こそ本当の姿なんだろうか。
まだ,そうとは言い切れない気がする。
「…まぁ,そう思ってくれたなら,僕としては大成功なんだけどね。」
横目に貴方の表情を見てから,そうとだけ言って立ち上がる。
ぐぐっと背伸びをしてから…
「…まぁ,僕は僕だし,あんまり苦手だって思わないでもらえると,嬉しいかなぁ。
無理そうだったら構わないから,さ。」
「…ちょっとここ狭いし,ほかに聞きたいことが無ければ,出るよ。」
そう言って離れたのは,貴女への配慮だったのだろう。
■美澄 蘭 > 「………その「無邪気さ」も、心配なんだけど」
浮かない表情のまま、ため息をつく蘭。
相変わらず、どこかじとっとした目つきで青年を見上げている。
「…「知り合い」なら、そこまで気にしないつもりではいるけど…
………難しいわね、加減」
そう言って、背もたれに寄りかかって軽い息をついた。
それでも、
「………あ、待って。
ちょっと1つ…あ、2つかしら、気になることがあるんだけど。大丈夫?」
青年が立ち去る様子を見せると、引き止めにかかった。
■ヴィルヘルム > 貴女がじっと見つめてくればたじろぎもするが,
帰ろうとしたところを呼び止められれば,にっこりと笑った。
「もちろん,君に話をするために来たんだからさ。」
そして,もう一度椅子に腰を下ろす。
こうやって話をすること自体は,青年も悪い気はしないらしい。
「で,気になることって何だい?」
■美澄 蘭 > 「………ありがとう、付き合ってくれて。」
にっこりと無邪気に笑いかけられ、かえって視線を逸らす蘭。
頬が、ほんのり色づいているようにも見えるだろうか。
気を取り直すように首をぶんぶんと横に振ってから、改めて青年の方を見て…
「………「マリアさん」じゃない「あなた」のことは、なんて呼んだら良い?」
と、尋ねた。
ご案内:「休日昼・歓楽街のカラオケボックス」にヴィルヘルムさんが現れました。
■ヴィルヘルム > 貴女の言葉や、視線をそらす仕草には……
「…ううん、むしろ、無理させてごめんよ。」
そうとだけ言って、苦笑した。
首を振る貴女の仕草を、少しだけ心配そうに見つめて……
「あぁ、そうか。そうだね。
……僕の本当の名前は、ヴィルヘルム。」
「マリアより長いし、ヴィルとでも呼んでくれたら嬉しいかな?」
■美澄 蘭 > 「…ううん、気にしないで。
自分でも、何とかしたいと思ってるところなの…」
相手の苦笑混じりの謝罪には、そう言ってゆるく首を横に振って答える。
気恥ずかしさによるものか、頬に差す赤みは強くなったようだ。
…それでも、相手の名乗りは、何とか、相手の顔を見て聞いた。
「………ヴィルヘルムさん…そう…ヴィルヘルムさん………」
口の中で、何度か繰り返す。
だが、愛称の提案については、
「…ちょっと、私としては、男の人を愛称で呼ぶのは…ハードル、高いかしら…」
そう言って、困ったように少し目を伏せがちにした。
■ヴィルヘルム > 貴女にも苦手なものがある。
そんな事実さえも、青年にとっては少しだけ意外で……
「……意識すると余計駄目になったりするよ。」
……アドバイスをしようにも、なかなか良い言葉が浮かばない。
貴女が提案をやんわりと断れば、
「君が一番楽な呼び方をしてくれれば良いよ。
無理する必要なんてどこにもないからさ。」
■美澄 蘭 > 「………難しいわね」
「ぁぅ」なんて小さいうめき声を発したりしながら、口元を両手で押さえたりして。
それでも、その手の中で大きく息をつくと、手を口元から離し、
「………それじゃあ…よそよそしい感じがするかもしれないから、ちょっと悪いんだけど…
………お言葉に甘えて、ヴィルヘルムさん、って呼ばせてもらうことにするわ」
そう言いきってから、胸元に手を当て、一つ息をつき…少しだけ、表情はいつもの感じに近づいただろうか。
■ヴィルヘルム > 「深呼吸、深呼吸。」
貴女の意外な一面を見た。
けれど同時に、少しだけ心配にもなって……貴方の表情を覗きこむ。
「じゃ、僕も蘭さんって呼ばせてもらうね。
…………もう、大丈夫かい?」
■美澄 蘭 > 「………ありがとう…もう、大丈夫。
…多分ね」
覗き込む赤い瞳を、やっぱり微妙そうな表情で見返し。
…それでも、目をそらしはしなかった。
「…私のことは、まあけなすようじゃなければ好きに呼んでもらっていいけど…」
一瞬、考えるように視線を外してから、もう一度ヴィルヘルムの方を見つめ。
「………やっぱり、隠しておくメリット、今のヴィルヘルムさんにはないわよね?」
話をしていて深まる、目の前の人物が「男性」だという確信。
それでも、彼は「誰にも言わないで欲しい」のだという。
一体、目の前の青年がどういう風に考えているのか。蘭には見当がつかなかった。
■ヴィルヘルム > 「……そっか、良かった。」
強がりなのは想像できたが、それでも青年は笑って見せた。
視線を外されても、青年は貴女を見つめたまま。
「…………確かに僕には無いかもね。
でも、一つあるとしたら……さっきも言ったけど、知り合いに迷惑を掛けないで済むってところかな?」
その理由に、青年は自分の都合ではなく、他者を持ち出した。
それは青年の本心であったが……
「……蘭さんがどうしても隠しておきたくないって言うなら、僕には止める手段は無いけどね。」
……この青年は、とにかく受身なのだ。
自分の思いや希望を、通そうとしない。
思いも希望も何一つ叶わなかった過去が、彼をそうさせたのだろう。
……貴女がそこまで思い至るかどうかは分からないが。
■美澄 蘭 > 「………。」
どこまでも自分をおいておく姿勢に、蘭の眉間に皺が寄る。
「…まあ、知り合いを大事に思えるのは、いいことだし、無理して暴くつもりはないけど。
………正直ね、隠し続けることは、ヴィルヘルムさんにとってはメリットがないどころか…デメリットが大きいように思えてしょうがないのよ。
ずっと蓋をし続けるのが大変ってのもそうだけど…学園を「マリアさん」として卒業しちゃったら、「ヴィルヘルムさん」の居場所を作るのが、この世界でだって難しくなるかもしれないわ。
…それじゃ、後が大変だもの」
問題がないとは言えないものの、家族に、環境に恵まれた蘭には、目の前の青年の境遇と、それによって彼が至った境地が本当の意味では理解出来ないだろう。
ただ、まっすぐに…真剣に危惧する瞳で、彼を見た。
■ヴィルヘルム > 「…………。」
貴女の表情に、一瞬、青年は不安そうに目を泳がせた。
けれど、続けられた言葉は……
「……僕のこと心配してるのかい?」
……青年にとってそれは、意外な言葉だったのだろう。
他人に心配されたことなど、ほとんど無かった。
しかも、こんなにも真剣な表情で……。
「そうだね……ありがとう。
確かに蘭さんの言う通り、僕にとっては悪いことの方が多いかも知れない。
けれど、僕はやっぱり………。」
青年は悩んだが、やはり答えは変わらなかった。
誰かに切り捨てられることを極度に恐れる青年には、
自分の都合で誰かを切り捨てるような真似はできなかった。
もっともそれが、【知り合い】に与える打撃は少ないだろう。
それでも……
「……もう少し、考えさせてほしい。」
……その選択を取ることは、まだ、できそうになかった。
■美澄 蘭 > 「当たり前でしょう?知り合いなんだし」
「心配してるの?」の問いに、真顔で平然と。
真剣な危惧が、蘭の異性に対する苦手意識をどこかに放り投げていた。
…それでも、青年は、今はそうすることを選べなかった。
「………まあ、無理にとは言わないけどね。
何だったら、その「知り合い」の人と相談したらいいんじゃない?
その人がヴィルヘルムさんのことを気にかけてくれてるなら、最終的な意見はともかくとしても、私の言うことも分かってくれると思うし」
ただ、目の前の青年の気持ちを沈めるのは良くないと思って。
蘭は、軽く口元で笑んでみせた。
■ヴィルヘルム > 「…………ありがとう。」
貴女の真剣な表情を見ながら、
青年は切り捨てられることを恐れていた自分を恥じた。
ぎこちなく笑った今の表情こそが、本当の自分の表情かもしない。
「すぐには無理かも知れないけど……そうだね、相談してみるよ。
蘭さんに心配ばかりかけてられないしね。」
気分が沈むどころか、青年は……笑みを返した。
それから静かに立ち上がって。
「……そろそろ、帰らないといけないね。
送ってく、なんて言ったら蘭さんは怒るかな?」
自然に笑いながら、座っている貴女を見た。
■美澄 蘭 > 「いいのよ…大したことじゃないわ」
今までの無邪気さとも違う、ぎこちない笑顔。
それでも、居心地は悪くなくて、蘭は柔らかく笑み返した。
「ええ…その方がいいと思うわ。
隠し事って、積み重なっちゃうと「重い」し」
そして、ヴィルヘルムが立ち上がるのを見て、端末で時間を確認する。
確かに、いい時間だ。
「…そうね…あんまり遅くまでこの辺りにいたくないし。
………別に、怒りはしないわよ。苦手なのと…家まで知られるのはちょっと、ってだけ。
だから、最寄り駅くらいまでなら、別に良いわよ。
…あ、そうそう」
立ち上がりながら、鞄をごそごそして、何かを差し出す。
「これ。悪いから、新しく買い直したの。」
差し出されたのは、以前公園で会った時に渡されたものと同じラインの、男物のニットの手袋。
服ではなく、青年本人に合わせようと思ったのか。微妙に色が違った。
■美澄 蘭 > そんなやりとりをしながら、二人はカラオケボックスを後にしただろう。
蘭は、ヴィルヘルムの行く道の障害と…先行きの見えない自分自身のことを考えながら、最寄り駅への道を歩いていった。
ご案内:「休日昼・歓楽街のカラオケボックス」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「」にヴィルヘルムさんが現れました。
ご案内:「」にヴィルヘルムさんが現れました。