2017/02/19 のログ
ご案内:「異常存在対策研究所」に異常存在対策研究所さんが現れました。
ご案内:「異常存在対策研究所」に東瀬 夏希さんが現れました。
異常存在対策研究所 > それは常世島の片隅、誰かが何処かからそれを持ち込んだ。
異常存在対策研究所。そういう看板があった。今や廃工場のようにも見える。

しかし、それは表の姿だった。
隠蔽されたその施設は地下に本拠を置き、未だ研究を続けていた。
とは言えそれは、研究とは名ばかりの……
しかし一方でアングラな場所にあっては普遍とも言える、非人道的な研究ばかりであった。

亜人の迫害、異常の排斥。それだけなら可愛いもの。
異常を洗脳し、それを金儲けに使うなどは当然のこと。それも研究費などではなく、ひたすらに私腹を肥やすため。
そういった、昨今にも珍しい腐りきった場所であった。

東瀬 夏希 > 異常存在対策研究所……から、それなりに離れたビルの上。
白銀のライフルを構えて東瀬夏希は片膝をついて立っていた。
その銃身にはAnti Heresy Holy Weapon Series Sniping type「Chastel」……「対異端法化兵装狙撃型『シャステル』」の文字。
固有性能は二つ。祈りを捧げている間、目の前にいる異端の行動を封じ込める「その祈りを妨げるなかれ(プリ・イル・トン)」。
そして……その祈りの長さに応じて弾丸の威力が上がる「真摯な祈りは力なり(プリエ・ロングェ)」。
通常の戦闘ではまあ精々数分を「その祈りを妨げるなかれ」で凌ぎながら祈りを捧げることで威力を上げる程度の運用だが……今回のような「拠点に対する先制奇襲攻撃」を行う場合、十分なチャージを行うことが出来る。
元々がライフルとは言え……1時間もチャージすれば、ロケットランチャー以上の威力となり、着弾時に炸裂する。

「……さて」

風などの条件を再確認。都合よく微風程度であり、風力も安定しているので狙撃難易度はそこまで高くなさそうだ。
今回の仕事は、異端審問教会からの指令であり、異常存在対策研究所と言う施設があり、そこでは異端の売買や洗脳によって犯罪を行わせるなどの行為が行われているとの情報から襲撃指令が下ったのだ。
まあ、そういう仕事なら請け負うか、と判断して出てきたのである。

「悪逆に十字の誉れなく、悪逆に昇天の救いなし。狙い打たせてもらうぞ」

言いながら、引き金を引く。
放たれた銀弾は、若干狙いを逸れたものの施設の中央付近にヒットし……正直夏希は狙撃があまり得意ではないので、これでも頑張った方である……その地点から、大爆発を起こした。

異常存在対策研究所 > 結果的に言えば、その狙撃は実に実に効果があった。
元々ある程度の備えはしていた。が、それはあくまで常識的な話。
……まさか、いきなりロケットランチャー並の威力の魔力砲弾をブチ込まれるとは思わない。

アラートが鳴り響き、貫通された隠蔽結界が機能を停止してその姿を見せる。
それは今までの廃工場ではなく、打ちっぱなしのコンクリートが要塞を思わせる…
否、実際に要塞なのかもしれない、重厚な研究所の姿だった。

まあ今や半壊して、中央付近から煙が吹き出しているわけだが。
中からは研究員たちが命惜しさに逃げ出して、右へ左への大騒ぎとなっている。

東瀬 夏希 > 「……さて」

襲撃には不向きなシャステルをゲート魔術で送還し、今度は二丁拳銃を呼び出す。
銃身にはAnti Heresy Holy Weapon Series Extermination type「Santiago」……「対異端法化兵装殲滅型『サンティアゴ』」の文字。
接近が必須な刀剣型の武器より、こちらの方が無難だという判断だ。

「行くか」

ある程度研究員がいなくなった頃合いを見計らい……研究員の方は、別動隊が始末しているだろう……内部に単独で潜入する。
警備用のシステムその他が残っている可能性もあるので、最大限警戒しながら潜入。
その分歩みは遅いものの、深部に向かって進んでいく。

異常存在対策研究所 > 『い、一体何だお前ら!』

『やめろ、金か!金だな、いくら欲しい…ぎゃっ!!』

そんな断末魔が、外からうっすら聞こえてくる。どうにも救いようのない連中である。
現状はと言えば…夏希は拍子抜けするであろうほどに、警備も薄ければ防御システムも薄い。

時折、洗脳された異形たちが檻に囚われているのが見える。
……中には、見るも無残なほどに痣があるもの、痩せこけて今にも折れそうなほど衰弱したもの…
そして、すでに物言わぬもの。様々な存在が、怯えるような、あるいは虚ろな目で進む夏希を見ていた。

その中で、廊下に何かの書類が落ちている。逃げ出す時に研究員が落としたものだろうか。
表紙には『被検体No.104の詳細と利用価値について』、そして曖昧に笑う誰かの写真が貼られている。

東瀬 夏希 > 「…………」

数日前までの、異端の存在を頑なに認めない夏希であれば、迷わず全員始末していただろう。
だが、東瀬夏希は別の視点を得てしまった。異端と言われる彼らも、一時を生きる命であると教えられてしまった。
よって……銃口は、異端ではなく、それを縛る枷に向けられる。

「すぐには逃げるな。ある程度時間をおいて、静かになってから逃げろ。異端審問教会が待ち構えているぞ」

拘束を外してやりながら、それだけ言って進んでいく。
振り返らない。これが正しいのかもわからない。
だが……それでも、こちらの道を進んでみたかった。

「何をいまさら、と言った所だな」

そうしながら、つかつかと進んでいく。
バレればとがめだてはされるだろうが、最深部への進行を優先したといえばまあ、誤魔化せなくもないだろう。信徒には優しい組織だ。信徒には。
進んでいく途中で、書類を発見。拾い上げる。

「『被検体No.104の詳細と利用価値について』……ふむ?」

写真を見るが、先程までざっと確認した中にこの顔はなかった。
周囲を警戒しつつ、資料に目を通していく。

異常存在対策研究所 > …夏希の背後から、がちゃがちゃという音と、ぺたぺた、ばたばたと遠ざかる音が聞こえた。
よく分からない言語でまくしたてられたり、よく知っている言語でまくしたてられたりもしたが…
何にせよ、『ありがとう』と聞こえてきたのは間違いない。

そのレポートは、比較的新しいものだった。そのせいか、分厚かったりするものではない。
貼られている写真も、いかにも研究員風のものばかりだが……唯一、表紙の写真…
曖昧に笑う、薄く青い髪を持った、少年と青年の中間のような人物だけが、そうではなかった。

【1月2日
 外国の支部から例の被検体が送られてきた。
 数百、あるいは千年以上眠り続けているにも関わらず、その肉体や衣類には一切の劣化がない。
 スキャンしてみたところ、身体の隅々、髪からつま先の爪に至るまで、全てが高密度の魔力結晶で構成されていることが分かった。
 これは現代の科学、魔術、異能のいずれにおいても生成することが不可能なレベルの密度である。

 『これ』を作った奴は一体何者なんだ?】

【1月11日
 自立人形研究支部の奴らから引き渡し要請が来た。こいつをゴーレムだと断じて譲らない。
 だがスキャンした結果、身体の何処にも人造ゴーレムの証である『Emeth』の文字が無い。
 こんな魔力結晶がひとりでに生成されて人間の形を作り、意思を得て動き出して土に埋まったとでも言うのか?
 支部の連中、ゴーレムのこねすぎで脳味噌まで粘土になったんじゃないだろうな。
 とりあえず適当な理由をつけて要請は蹴っておこう。】

……これ以降も、どうでも良さげな記述が続く。ある場所までは。

東瀬 夏希 > 「……はっ」

苦笑する。ありがとう?自分に向けられているとは思えない言葉だ。
とは言え、心地よくもあるのが不思議だった。
周囲に目を配りつつ歩きながら、少しずつ資料を読み進めていく。

「(高密度魔力体……だけならまだしも、それに自我があるというのか?確かに珍しい……)」

構成物質はその生命によってさまざまであるが、魔力だけで出来ているというのは希少だ。そういうのは確かに、ゴーレムである確率が高い。だが、人造ゴーレムはほぼ確実にEmethの文字を刻まれる。と言うより、それがないと起動しないのだ。

「(無論、表に出ていない、もしくは失伝したゴーレムクリエイトの可能性もあるが)」

特に、伝承と言うのは「必要がなければ途絶える」ものである。
日本刀のための玉鋼の鍛造方法が、簡易的で量産の効く新刀の出現により「いくら高級でも手間がかかって効率の悪いものは不要」とされて失伝してしまったように、良いものだから残るというわけでもない。
ゴーレム創生で、Emethを刻む必要がなくてもその分圧倒的な手間がかかるとかならば、そちらが失伝しても全くおかしくないのである。
そんなことを考えながら、ぺらぺらと進めつつ、歩を進めていく。

異常存在対策研究所 > 【2月1日
 こいつの正体は以前掴めないまま、こいつが目覚める兆候を見せ始めた。
 仮にこいつが当初の仮説通り、神の分霊やそれに準ずるものだった場合、常世島が危機に瀕する事になる。
 念のため、魔力発散阻害多重結界の中に拘束し、

 『四肢を切断』することにする。】

【2月2日
 被験体が目覚めた。】

【2月3日
 被験体は大人しい性質で、今のところ我々に危害を加える様子はない。
 しかし後述の特性と切断部位の有用性のため、定期的な四肢切断による拘束措置は続行するものとする。
 驚いたことに、被検体は身体を構成する魔力結晶を、周囲のマナを吸収することで再生できるようだ。
 肉体を削る事にも薄い嫌悪を見せたものの、苦痛を感じている様子も強く拒否する態度もない。
 これほどの密度の魔力結晶を自動生成でき、なおかつ再生するとあれば資金繰りの解決に一役買うかもしれない。
 我々に言わせれば、歩く魔力鉱山といったところか。】



…はっきり言って、人道に反する、などという度の内容ではなかった。
ここの研究者は、あるいは少なくともこのレポートを書いた人間は、被検体を生物扱いすらしていない。
必要があれば破壊し、殺す。金になるなら利用する。
それがこの研究施設の、醜悪な正体だった。

東瀬 夏希 > 「…………」

つかつかつかつか。
自分でも気づかぬ内に歩が速くなる。
湧き出るのは二つの感情。すなわち、怒りと呆れ。

「(外道が……しかも阿呆と来た。
本当に神格であれば、四肢切断程度で御せるわけでもなかろうに。余計なことをしていざ反発されたらどうする気だったのだ)」

相手に対してマウントを取った、と勘違いした阿呆。
そして、マウントを取った以上何をしてもいい、と勘違いした外道だ。
まあ、外で他の使徒に狩られているだろうが。ざまあない。
それでも苛立ちは収まらず、それは足に出てどんどんと奥へ進む速度が速くなっていく。

異常存在対策研究所 > その奥の奥、施設の最深部にそれはあった。
巨大な鋼鉄製の扉。人が二人がかり、いや三人がかりで開けるような巨大さである。

その周囲には研究員が居る。
ここだけは守らねばと思ったのか、いざとなったら扉の向こうに逃げ込めば安全だと思ったのか。
その上には緑色のランプで、【No.104特別収容房】と書いてあった。

『な、何だ貴様!ここをどこだと思っている、関係者以外は立入禁止だぞ!』

そんなことを言って、銃を向ける研究員たち。
その立ち振舞はなかなか堂に入っている。『銃を使い慣れている』のだろう。
…何の用途に使っていたのかなど、今更推測するまでもないが。

東瀬 夏希 > 「異端審問教会所属、東瀬夏希。貴様らの悪行を断罪に来た。
悪逆に十字の誉れなく、悪逆に昇天の救いなし。地獄へ逝け」

呆れ顔で銃を構え、即座に打ち放つ。
成程、銃を使い慣れてはいるのだろう。
だが、銃で戦い慣れている感じはしない。要するに、抵抗しない相手をいたぶっているだけだ。
それでは戦士には勝てない。戦闘状態においては、近距離でも不慣れならば命中させるのは難しい。それほどに、常に変動する状況、常に移動する相手を狙い撃つというのは難しく、戦場慣れが必要なのだ。
しかも、この場にいる研究員は救いようのない外道である。
一切の迷いなく、脳天や心臓を狙っていく。

異常存在対策研究所 > そこからはとても速かった。
作業のように脳天と心臓を弾丸で貫き、外道を地獄へと送り届けるだけ。
結局、誰も構えた銃から硝煙を吹き出すこと無く、門の前に居た研究員達は斃れていった。

門は閉ざされたままだ。しかし、門の中からは物音は聞こえない。
誰か居るのか、居ないのか…それもわからない。
とはいえ、夏希なら開けるのは容易いだろう。壊してもいいし、そのまま開けてもいい。

東瀬 夏希 > 「……まさか「ホタテ貝は邪悪を弾く(コキーユ・サンジャック)」を使う必要すらないとはな。本当にどうしようもない」

少しずれた方向にため息を吐く。
引き金を引くことで人一人をカバーし尽くせるくらいの大きさのシールドを展開する、サンティアゴの固有性能「ホタテ貝は邪悪を弾く」。銃撃戦であれば有効な固有性能なのだが、本当に使うまでもなかった。本当に弱者をいたぶっていただけのようである。

「さて……破壊、は少し危険だな。となるとこじ開ける方向か」

大きな扉を前に、少し考える。
当然このサイズの扉を開ける場合、両手はふさがってしまう。となると武装を構える暇がなく襲撃される可能性がある。開けるのに時間がかかれば余計だ。
だが、それを解決できるAnti Heresy Holy Weapon Seriesも存在している。それを使う時だろう。
そう考えをまとめて、「サンティアゴ」をゲート魔術で送還。
そして、新たに呼び出したのは白銀のガントレット……Anti Heresy Holy Weapon Series Assault typeⅡ「Beowulf」である。
固有性能は「勇士たるは王の務め(ノブレス・オブリージュ)」。効果は使用者の身体能力超強化。
これならば一瞬で扉を開ける程度の力を得られるし、即座に戦闘に移行できる。

「よし」

一言気合を入れて、ビルさえ解体し尽くす怪力でもって、巨大な扉を一瞬でこじ開けようとする。

異常存在対策研究所 > 扉は剛力に軋み、その口を開けた。
開けた、というよりは横に折り畳まれるような形でひしゃげたわけだが。

その中には、誰も居なかった。
唯一、暗い部屋の中で、手術台のようなものに寝かされている人物を除いては。

「……誰かな?新しい研究員の人……
 じゃ、ないよね。研究員の人はそうやって入ってこないし。」

むくりと、それは起き上がった。
脹脛まであるであろう淡い蒼の長髪。整った顔、燃えるような赤の瞳。陶磁器のような、透き通るほどに白い肌。
まるで芸術品のように組み合わさったそれらはしかし、失われた四肢という要素で痛々しく打ち消されていた。

「……誰だい?」

鈴のような声が、問いを投げかけて静寂を揺らす。
その顔には笑顔が浮かんでいたが、どこか虚ろな雰囲気があった。

東瀬 夏希 > 周囲を見渡す。他に研究員はいないようで、いたのは手術台のようなものに寝かされている、恐らくは被検体No.104であろう誰か。
一応油断なく拳を構えながら、問い掛けに答える。

「異端審問教会所属、東瀬夏希。貴様は?」

いきなり襲ってくるとも考えづらいが、それでも警戒に越したことはない。
油断大敵、戦場では甘えた想定一つで簡単に死ねるのだ。

異常存在対策研究所 > 「………。さぁ?
 104って呼ばれてた気もするけど、よく分からないや。」

軽く首を傾げ、先のない手足を軽く振ってみる。切断面はぱきぱきと音を立て、少しずつ再生しつつある。
部屋の中の魔力は妙に薄い。おそらく、これで修復速度をコントロールしているのだろう。

「僕は記憶が無いんだ。気が付いたらここに居ただけで。名前もないし。
 異端審問……よく分からないけど、研究所の人ではないんだよね?」

東瀬 夏希 > 「(再生が遅い…とはいえ、この薄弱な魔力散布量でも回復できる辺り、ヴァンパイアも驚きの回復力だな)」

ざっと分析。これだけで抑え込もうとしていたのだから、お粗末と言う他ない。

「この研究所とは関係ない。寧ろこの研究所を破壊に来た。
……しかし記憶喪失か。自身の由来等もわからないのか?」

この雰囲気だと、分かっていたら素直に研究者に喋っていそうだが、一応確認。
ついでに言うと、数日前の自分でなくてよかった。まともに戦闘すれば、まず勝てそうにない……ヘルシングの固有性能が刺されば可能性はあるが。