2017/02/20 のログ
異常存在対策研究所 > 「うん。全然分からない。なんでここに居たのかもわからないし……
 あ、でもなんか話してた気がするなぁ。埋まってた?とかなんとか?」

んー、と反対方向に首を傾げる。
その雰囲気は、妙に幼い。まるでそう、弟か妹かのような。

「……破壊、ってことは壊しちゃうのかな。
 ってことは、僕は出れる?あ、でも出てもどうしよう。」

東瀬 夏希 > 「ふむ……」

当人がこの調子では、研究員も増長しやすかっただろう。苛立ちもあったかもしれない。
サディスティックを謳う輩は、相手が希薄な反応だと逆ギレするものである。
……見た感じは、無垢と言う言葉がよく似合う。と言うより、本当に情報がなさ過ぎるだけなのだろうが。

「まあ、壊すな。しかし、ううむ……」

考え込む。
出してやるべき、だとは思うが、そこで外の世界で翻弄されるだけ、は困る。
教会にも引き渡せない。異端認定をされては、元の木阿弥だ。寧ろより過酷な生活になるだろう。それでは意味がない。
しかし、行く当てがない、となると……。

「……私と来るか?」

そんなことを口走る。
他にアテがほぼなかったというのもある。鋼の両翼に預けるのも手だが、あそこはあぶれ者の集団だ。
なんかこう、教育にいいか悪いかで言うと、微妙そうな気がした。

異常存在対策研究所 > 「……良いの?」

こてん、と首が折れるかと言うほどに首を傾げる。
まさかという反応だったようだ、丸い目をますます丸くしてきょとんとしている。
全くもって無垢で無知である。

暗くてよく見えないが、あたりの床はコーヒーの飲みこぼしや紙くずなどが散らばって汚い。
どんな心持ちで研究に臨んでいたかの程度がよくよく分かる。

「連れて行ってくれるなら、喜んで行きたいけど。
 でも僕、名前がないから迷惑とかもかけるかもよ?」

そう言って体を寝台に座るような体勢に起こす。
手足がないせいで転びそうになっていたがそこはともかく、行く意思はあるようだ。

東瀬 夏希 > 「ああ、まあ自室のスペースもある程度空いているしな」

武器収納などの関係で、広めの部屋を取っていたので、余裕はある。元々趣味のものも何もないので、それこそ無駄に広い状態である。
しかし、その後の言葉に考え込む。そうか、名前か。

「ふむ……名前、名前か。どうしたものか……」

確かに、名前がないというのは結構困る。日常における利便性も段違いだ。

異常存在対策研究所 > 「別に104とかでも良いけどね?」

へらっと笑う。
その笑い方はやはり虚ろ…というより、「笑う以外の感情の表現を知らない」ように見える。

「付けるにしても、今じゃなくて良いわけだし。」

東瀬 夏希 > 「それだと日常で困るのだ。私が貴様を奴隷として飼っているみたいではないか」

本気で顔をしかめる夏希。
そう言う輩は実際に目にしたことがあるし、大嫌いである。そうみられかねないのは勘弁願いたかった。

「(にしても……本当に笑うしか知らぬのか。やはり……)」

自分と共に、色々と世の中を学ぶべきでは、と思う。
だが、ぱっと名前も……いや。

「そもそも、貴様性別はなんだ?無性か?」

そこを確認してなかった。

異常存在対策研究所 > 「そう?
 ……まぁ、そういうことなら。」

顔をしかめた様子に笑うのを止める。
その行為が何を表しているのかは、いまいち掴みづらいが。

「………?ああ、性別……
 確か……『基底性別は男だが魔力変遷で肉体は両性間で変化する』とか小難しいことを言われてた気がするよ。」

要は、『精神は男だが肉体は可変』とのことである。

東瀬 夏希 > 「そうか、一応は男か……」

考え込む。
そう言えば、幼い頃、両親が言っていた。
妹である真冬が、もし男の子だった場合は、この名前にしようとしていた、と……。

「冬夜。冬の夜と書いてトウヤと言うのはどうだ」

それは、自分に妹ではなく弟が出来ていた場合、つくはずだった名前。
どうせ一緒に暮らすのならば、弟として処理した方がいいであろうし……自分が殺してしまった家族の代わりを、無意識に求めているのかもしれない。

異常存在対策研究所 > 「………トウヤ。トウヤか。」

ふむ、と首を左右に傾ける。

「……いい名前かどうかはわからない。僕がそれを判断するには材料が足りない。無闇に言えることでもない。
 でも、ありがとう。…と、言っておくべきなんだろうね?」

また、へらりと笑う。
青い髪をさらりと揺り動かし、礼を一言。

「ええと、よろしく…ナツ、キ?」

東瀬 夏希 > 「その判断はこれから学ぶといい。何、私も世の中を学ぶ途中だ」

つくづく、数日前に殴り飛ばされていてよかったと思える。
そうでなければ、間違いなくこの相手を殺そうと突貫していたであろうから。

「ああ、それでいい。ナツキだ。さて……しかし、見つかると厄介だ。
姿を隠したりは出来るか?」

弟として連れ帰るにせよ、流石に他の異端審問官に見つかってはいけない。
その間は姿を隠して貰うのがいいのだが。

異常存在対策研究所 > 「そうしようか。お互いに頑張ろう……でいいのかな?」

そう言って、ある程度再生してきた足をぱたぱたと動かす。

「……姿を隠す……うーん、どうしよう。
 ……ちょっとまってね?」

むむむ、と唸る。そして、少し考えた後……

「出来ないみたいだね。
 一応、機材の裏に隠れるくらいはできるだろうけど。」

他人事のようにそう答えた。

東瀬 夏希 > 「ああ、頑張るとしよう」

こく、と頷いた後、考え込む。
この研究所は、事が済めば爆破される。
多少時間を稼ぐことは可能だが……。

「そうだな、私が外の異端審問官に報告をしている間は隠れておいてくれ。その後、私が破壊用の爆弾を設置に回り、爆破する手はずになっている。その時に脱出するといい」

余り人数を割けないのもあって、主要な実働要員が自分だけだというのも幸運ではあった。
これなら誤魔化すことも可能だろう。

異常存在対策研究所 > 「わかった。それじゃあ、出た後は外で待ってるからね。
 ……よいしょ、っと。」

ずるずると這いずって、巨大な扉の外へ。
その瞬間、ばきんという音とともに、一瞬で足が再生した。

「ん、やっぱり足がある方が便利。」

そう言って、ペタペタと冷たいタイル張りの地面を歩いている。
その足もやはり、陶磁器のように美しい。薄汚れたボロ布を纏っているが。

「えーと、こんな感じでいいー?」

かさかさと機材の裏に隠れる。
正直かくれんぼレベルの隠れ方だが、暗い部屋の中で目をごまかすには十分だろう。

東瀬 夏希 > 「(……とんでもない再生力だな)」

魔力が通常濃度であれば即回復とは。
だが、それに驚いている暇もあまりない。

「まあ、それでいいだろう。では私は内部を再確認した後報告に行ってくる。大人しく待っておくんだぞ」

言いながら、すたすたと歩いていこうとする。

異常存在対策研究所 > 「いってらっしゃーい。」

ひょこっと機材から頭を出して見送る。
全く緊張感がない。

内部にはもうめぼしいものはない。
あるいはもう『出荷』された後なのか、見慣れない被験体のレポートなども散見された。
何にせよ、それらはこれからの調査で明らかになるだろう。
研究員達はあらかた捕まるか始末されたようだ。外に出れば、それなりの人数がふん縛られている。

東瀬 夏希 > 『使徒夏希、内部はどうだ』

「これと言って特殊なことはない、ただの下衆な研究所だった。否、研究実態もほぼなかったな。
内部は完全にクリアしたから、後は予定通り爆破するだけだ」

『そうか。では我々は一足先に教会に戻る。後始末は任せたぞ、使徒夏希』

「了解した。そちらの研究者たちの始末は、拷問課に任せるとしよう」

引き継ぎ終わり。この島での活動は夏希の任務であるため、基本的に夏希がやることが多くなっている。
普段なら面倒なだけだが、今回は都合がいい。
簡単な掃討作戦だったのもあり、内部の再検査がないのも都合がいい。
……まあ、かつての夏希の異端嫌いっぷりから、徹底してあるのだろうと推察されているのであろうが。

「さて、と」

他の舞台の帰還を見送った後、内部に戻って爆弾を一つ一つ設置していく。
そして、最後に最奥の部屋に戻ってきた。

「おい、戻ったぞ」

異常存在対策研究所 > 研究者たちは特にどうということはなかった。
夏希を睨むもの、目を伏せるもの、これからの被検体たちの復讐に今から怯えるもの、様々だった。

「あ、おかえり。」

そんなことは知らぬとばかりに脳天気なのがこのトウヤだが。

「それじゃ、これから脱出かな?付いていくだけでいい?」

よいしょ、と物陰から顔を出す。
ぱぱっとボロ布についたホコリを払い落としながらそんなことを聞く。

東瀬 夏希 > 「ああ、行くとしよう。
何、私と一緒について出てきて、そのまま爆破すれば終いだ。特に考えることもない」

一応、残った監視などがないかざっと確認したが、その気配も無し。
今の所自分は、異端審問教会の信用を得たままのようだ。まあ、変化があって数日なので当然と言えば当然だが。

「とはいえ、そのボロ布は具合が良くないな……これでも着ておけ」

爆弾設置中に確保しておいた、研究者の白衣を投げ渡す。まあ、誤魔化し程度にはなるだろう。それでも大通りは避けたいが。

異常存在対策研究所 > 「ん、わかった。
 えっと、これでいいかな。」

裾が長く、足元まですっぽり白衣で覆われてしまっているが…
まあ逆に素足がバレることが少なくなると考えれば問題はないだろう。

「それじゃあ、改めて…これからよろしく、ナツキ。
 ふつつかものですが……だったっけ?」

どこからそんな言葉を覚えたのやら、妙ちきりんなことを言いながら後ろに付いていった。

東瀬 夏希 > 「まあ、いいだろう、それで」

やっぱり大通りは避けよう。まあ、それでも何とかなるとは思うが。

「……それは違う。まあいい、細かい事は今後学んでいけばいい。
よろしく、冬夜」

挨拶をして、新たな「弟」を連れて歩いていく夏希。
異端たちも逃げたろうし、場合によっては、それこそ「鋼の両翼」辺りが保護してくれるだろう。

「(さて、今後はどうするかな)」

少なくとも、もう少し外に出る頻度は増やすべきだろうか。
そんなことを考えていた夏希であった。




―――もちろん、しっかり研究所は爆破した。

ご案内:「異常存在対策研究所」から東瀬 夏希さんが去りました。
ご案内:「異常存在対策研究所」から異常存在対策研究所さんが去りました。