2017/06/11 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 恐らく生まれて初めて、意識して「大切な人」の意向に背いた夜の、明くる日。
その反動もあって、起きた時間は普段よりかなり遅かった。休日だったのが救いである。

(…今日は、家で魔具の調整や修繕でもして過ごしますか…)

顔を洗い、ハウスキーパーが用意してくれているブランチを一人で食べて(今日は彼女も休日であり、外出は自由だ)から、魔具庫にしている部屋に向かい、状態の確認をする。

クローデット > 修繕や調整に細々とした作業のある小振りのものを、必要な道具や材料と一緒に私室に持っていく。
まだ体調は万全でもないし、いざとなったらベッドの上に倒れ込んだり、その上で作業したり出来るようにしておくのだ。

(わざわざお茶を淹れる気分でもありませんし、個人用冷蔵庫の中に、まだ水が残っているはずですから…)

机の上に、持ち出した魔具と修繕道具を置いて…机の傍らの、ドア1つの小さな冷蔵庫を、開ける。

「………あら?」

記憶の計算と、冷蔵庫の中にある水のペットボトルの本数が合わなかった。

クローデット > クローデットの個人用冷蔵庫に入っていたのは、彼女が以前とある「ケダモノ」に「二度」差し出したのと、同じ水のペットボトルだ。

(…あの「ケダモノ」の塒で、薬を飲んだ他にあの「犬」に提供も致しましたけれど…
………更に、一本少ない…でしょうか?)

しかし、「二度目」の出来事が、クローデットの頭に浮上してくることはなかった。

クローデット > 「なぜか」「大切な人」の意向に背いてしまった後…再びこの部屋のベッドの上で目を覚ますまでの間のことを、クローデットはほとんど覚えていない。
「大切な人」の意向につい背いてしまったショックで、ろくなことが出来なかったのだろうと…記憶に蓋をし、そのことすら忘れたクローデットは、軽く考えていた。

(………本当に、愚かな「男」でした)

過去形。
「あの人」が使った魔術が、「ケダモノ」を切り刻んだこと、流れた血の色は、おぼろげに覚えている。
自分のせいで仕留め損ねてしまったけれど、「彼」の孤立具合ならば、あれではそう長くもたないだろうと、決めつけていた。

………自分がその傷を癒したことも、クローデットは忘れているのだ。

クローデット > 夜のうちに事切れたのならば、「彼」は獣として死んだままになってしまうだろう。
…そうなると、「マリア・フォン・シュピリシルド」は永遠に行方不明…ということになるのだろうか。

(…まあ、あたくしに処分は既に一定程度下されておりますし…あたくしを警戒する少数の者以外は、特別困ることもないのでしょうね。
………「彼」には、気の毒ですけれど)

冷蔵庫の中身に少し違和感を覚えつつもペットボトルに手を伸ばすクローデットが…その違和感に気付いて、手を止める。

クローデット > (………ショコラが…お皿ごと、消えている………?)

勉強や、細々した作業のおともにと、ハウスキーパーが焼いてくれていたチョコレート菓子が、皿ごと消えている。
集中力が弱った時に甘いものは有難かったし、溶けて手が汚れないようにの工夫も嬉しかったのだが…。

(………ジュリエットが帰ってきたならば、念のため確認を取っておきましょう)

そう決めて、気を取り直して水のペットボトルを手に取って、冷蔵庫のドアを閉めた。

クローデット > クローデットは、「なぜか「大切な人」の意向に背いてしまった」「ヴィルヘルムの重傷を確認した」以外の記憶に、全力で蓋をしていた。
その重傷を自ら癒したことも、「心優しい、身体の大きな動物」に「子ども」がするように甘えてしまったことも…「ごほうび」のことも、「大切な人」との亀裂を感じて戸惑い、泣いたことも。
特に、傷を癒したことは、術式解析からすら「無意識に」除外して、認識することを拒む徹底振りだった。

でも、そのために、クローデットの社会的な、そしてヴィルヘルムの物理的な死は回避されていた。
クローデットが認識を拒むことで、彼女の「大切な人」にも、「バケモノ」の死が回避されたことや、クローデットの戸惑い、迷いを認識されずに済んでいるのだから。

クローデット > もしそれらが「大切な人」に認識されていたら…彼女は、クローデットを自らの元に留めるために、その障害を排除するために手段を選ばなかっただろう。
「安心するまで」完全にクローデットの身体の主導権を握ることすら、やってのけたかもしれない。

(…まあ、苦しい思いをした後ですし…今日は根を詰めずに作業致しましょう)

しかし、それらの戸惑いをまず自分から心の奥底にしまい込み、しまい込んだことすら忘れたクローデットは、心の穏やかさを取り戻して作業に取りかかった。

もう、亀裂を生じさせた存在は、生きていないのだから、と。
そのうち、「大切な人」がその死体を確認したがるかも知れないが…それは、要求されてからで良いだろう。

今は、卒業発表の準備と日々の営みに、身を委ねていたかった。

ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。