2016/06/30 のログ
鎖ヶ原アストラ > そして、アンジェラ以外の全ての機体に警告音。
「伝家の宝刀Lv8ミサイルパーティーナイッ!!まさに自分以外は全て敵~~~が実践するのはなかなか居ないッ」

囲まれたのがよっぽど気に食わなかったのだろう。
完全に質量を無視したゲームならではの量の追尾ミサイルが。白煙を尾に引き、背景オブジェクトをなぎ倒し、高度飛行での逃げ切りを狙っていた鐙沢宙舞のゴールド・デンジャーをガラクタに変えた。
ジェイソン花山のメタルカリブーンが放つ推進相殺ナックルを持ってしても、飽和攻撃が無敵時間を超えて容赦なく機体を穿っていく。
「またもや星を増やした、誰かあいつを止めてくれーッ!!!」

加熱する実況とは裏腹に、装甲に任せて進むプリズナー360。
エンジン出力も装甲強度もレッドゾーンに近い。
「クリムゾン。この雨が止んだら、キミ、ちょっと、あれ。あの顔のところに一撃食らわしてくれる?」
ミサイルの雨の中、それでもなお向かってくるステルススウィーツのインビジブルナイフを盾で受け止めつつ言う。

鬼灯 怜奈 > 「雨が止んだら……ッてテメエ! ちょっと待ッ! いや止まねッて!」
「ああもッ……クソッ!」

次々と飛来する弾頭に、ステージそのものが急速に焦土へと変えられていく。
対象一切喝采に容赦なく、ミサイルの弾幕を被弾を繰り返しながらも掻い潜るクリムゾンタイドに対してはさらなる追撃が繰り広げられている。
グレネードランチャーによる砲撃はその退路を悉く粉砕し、直撃はないものの、怜奈の心中に激しい圧力をかけるには十分すぎるほどの威力を見せつけている。

舌打ちしながら見やる残弾数は0。弾倉もない。
背部に装備したミサイルは12発。しかしロックオンをする猶予など与えてくれる状況じゃないことは明白だ。
万事休すと言ったところか。観客の誰もがホーリーブルの勝利を確信したことだろう。

「我の手を煩わせることは何人たりとも許さぬ。」
「さあ、首(こうべ)を垂れよ。時間が惜しいでな。」
「敗北を宣言すると良い。」

過剰な砲撃に赤熱していたホーリーブルの機体から、白煙が吹き上がる。
ミサイルの雨もグレネードの砲撃も、全ての攻撃が止まった。

「ここに来て緊急冷却システムの作動だあーっ!」
「しかしアンジェラ物動じせず! まさに強者の貫禄!!」

「このあと猫ちゃんにカリカリを買ってあげねばな。」
「タイムセールまで時間がないのだ。」

ドッと沸く観客の声。すぐにそれをかき消す怒声が轟く!

「ナメんじゃ……ねェェェェッ!!!!」

左腕欠損。頭部半壊。機能停止寸前のクリムゾンタイドが、一直線に突っ込んできた!

「なんとクリムゾンタイド、まだ生きている! 動いている!」
「反撃する武装も残ってないにも関わらず! いや、違う!」
「殴った! 残った右腕で思い切り殴り付けたああああっっ!」
「質量vs質量! これにはホーリーブルもたまらないか!?」

ひと時だが衝撃に大きく体勢を崩すホーリーブル。
起死回生の一手に実況は更にそれを盛り立てる。
だが無常にも、ホーリーブルは終えていた。
グレネードランチャーの弾倉交換を終えていた。

「手間を取らせるな。」

「クリムゾンタイド機能停止いいいい!!」
「やはりTGにおいてランクは絶対なのかあああ!!!!!!」

鎖ヶ原アストラ > クリムゾン・タイドがホーリーブルのカメラアイにダメージを与え、作られた死角。
その隙間が脚の遅いプリズナー360には必要だった。

「残り機体は3,しかしもうこれは決まったようなっと来たきた来た…?えっ、これは…プリズナー360強制搭載!強制搭載です!血迷ったか」
ステルススウィーツは軽量機だ。爆散しない程度に手足をもげば、重量級のフルボディであれば積載量が足りる。
本来はミッションモードや、トロフィー争奪マッチなどに使われる搭載コマンド。
オブジェクト扱いの無力化TGを載せることは、強制搭載と呼ばれる。

アストラは呟く。この千載一遇のチャンスに。
「77、キミの犠牲は無駄にはしない…ドっせい!!」
弾薬が無ければ質量攻撃。
装甲を貫通しなければ質量攻撃。
今有効なのは、まさに質量攻撃。ぶんなげられたステルススウィーツがホーリーブルの後頭部にぶち当たり、
そして追い打ちのガトリングランスが機体を爆散させる。
「我慢比べだ…!!」

あまりの非道に実況が一瞬呆気にとられる。だが、それでも彼はプロだった。
「激突!装甲値VS装甲値~~~~~~~~!ステルスウィーツをぶち当てて、今や二機の耐久ゲージは互角!」
「こちらが減ればあちらも減るぞ!殴った!蹴った!鉄と鉄のぶつかり合い、究極のインファイトだ!」
見る間に真っ赤になっていくゲージ。大いに沸く観客たち。
そして―――



「…ver.5.66では、絶対いけたんだよ」
ゲーム終了後、初対面の怜奈に興奮気味に言うのは、黒髪ロングにフリルシャツのデカい女。
TG部部長を名乗り、そして今さっき削り負けたプリズナー360のギアドライバー。

鬼灯 怜奈 > 「いーや、勝ったのはアタシらだぜ。」

鎖ヶ原の前にずいと携帯端末の画面を押し付ける。
そこには彼女の友人と思わしき人物から送られてきた一枚の画像が表示されていた。

"好評につき本日のタイムセールは終了致しました。"

そんな文言が、ペット用品コーナーのがらあきの棚に張り出してある。

「上位ランカーサマが、アツくなっちゃあイケねェーなァ。」

怜奈らを残し急ぎ会場を抜けたアンジェラは、未だこの事実を知らない。

「ヘッヘッヘ、ざまァー。」

その背を横目にげらげらと笑う怜奈。
彼女の勝利宣言とは裏腹に、馴れ初めは両者共々敗北からのスタートだった。
この出会いの後、意気投合した二人は鎖ヶ原の希望により、正式にTG部を設立することとなる。
現在の部員は未だ2名。部員集めに奔走する話は、また次回以降にて。

つづく。

ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」から鬼灯 怜奈さんが去りました。
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)1」から鎖ヶ原アストラさんが去りました。
ご案内:「いちばん最初の記憶」に   さんが現れました。
    > 。。。

吹いては流れ
吹いては流れ

そうしてどれだけの時を漂っていたのだろう。
湧き立つような本能を持たず、ものを考えたり覚えたりするような知性さえ存在しない。
無名の霧は風の向くまま、常闇の街に流れ着く。
五つの筒を張り付けた肉袋の群れをすり抜けながら
誰に見られることもなく、永劫にも感じられる時を漂い続ける。

      。。。

    > 。。。

吹いては流れ
吹いては流れ

流れた先で、刹那の時を吹き溜まる。

角ばった柱の群れの隙間に、柔らかくて薄い網に包まれた、小さな肉袋を見つけた。
大きな肉袋のように、白と黒の珠を見せたり隠したりしない、異質な何か。

風が吹いて、身は流れ 小さな肉袋の隣に漂う。
そこに在ることを知ってか知らずか、小さな手が霧を掴んだ。

すり抜けるように見えるものが、肉袋の中に吸い込まれていく。

      。。。

    > 。。。

―――光が見えた。

そこは黒と、灰と、白の世界で、慣れてくるにつれて次第に色が増えていった。


―――体が縮こまるような体験をした。

どうしようもなく肉の体が震えてやまず、その脅威を取り除く術を、赤子は持たなかった。
誰かが助けてくれるはずだ―――本能が喚いたが、現実が否定した。


「んぎゃあぁ――!んぎゃあぁ――!」

どうしようもなく慟哭する。

始まりの記憶 そこには誰もいない。
落第街の片隅に投げ出された、独り立ちの始まり。


やがて助けを請う力も衰え始めた頃、もう顔も覚えていない肉袋が”それ”を拾い上げた。

「捨て―――…まぁ、使え――とも――――う」

少量の灰と煙を被りながら、赤子は袋に詰められた。
今まで見てきた風景には似つかわしくない、複雑な構造と奇妙な音が特徴的な硬い袋に。


―――がぎぃん

ふいに耳元で、音が響いた―――

      。。。

ご案内:「いちばん最初の記憶」から   さんが去りました。