2016/10/15 のログ
ご案内:「スラムの更に裏路地」に佐伯貴子さんが現れました。
■佐伯貴子 > (落第街でも特に治安の悪いと言われる場所。
まだ日が高いせいか人影は少ない。
佐伯貴子と、警備課の風紀委員が歩いている。
オオムカデのムカデスは人間の姿をとらず長い姿を晒して畝る。
猫又のこまりは長いヒゲをひくつかせて周囲を警戒する。
彼女らが向かう先は、
この通りに似つかわしくない精肉店であった。
いわゆるお肉屋さんである)
風紀委員会だ。
(気が重くないと言えば嘘になるがこれも仕事だ。
ブタ頭のオークに声をかける)
■佐伯貴子 > 「アナナタチ、クルト、キャクアシ、トオノク」
(オークが煙たそうに視線を寄越す。
佐伯貴子はそれを無視して、
パッケージされて並んでいる肉に、
小型の機械を当てる。
機械からは一瞬光が出て肉に反射する)
「ケケケ、佐伯パイセンも物好きだぜ。
人間のくせにこんなとこ来るのかよ」
(ムカデスが茶化す。
この精肉店には普通は見られないような『商品』が並んでいた。
耳や眼球。
血液の入った輸血パックのようなもの。
骨。
人体解剖図を見たことがあればすぐに分かるだろう。
ここは人肉屋であった)
■佐伯貴子 > まあ、すぐに済むから静かにしていてくれないか。
ここが『正規品』しか扱わないことはわかっている。
(佐伯貴子が端末を操作する。
問題なし。
問題なし。
問題なし。
『問題なし』。
『並んでいる商品に正規学生のものはなし』。)
「佐伯先輩、人間から見ると『こういうの』って、
グロいとかそういうんじゃありません?
私も正直いい気分はしませんよ。
商店街の肉屋さんくらいに」
(猫又のこまりは顔をしかめながらそう言って店内を見回した)
■佐伯貴子 > そうだな、正直不愉快だな。
でもここの検査は金がいいし…何より自分で確かめたいんだ。
(端末を操作しながら答える。
この店に来るのは初めてではない。
そもそも「人間」がここの検査を任されることは少ない。
存在自体を知らないものがほとんどである。
それは落第街の住人にとっても例外ではなく、
堂々と人肉を売っている店が存在するなど、
一部のものしか知らないだろう)
「モンダイナイナラ ハヤクカエレ。
ウチハ ヒンシツヒトスジ。
シイレハ カンペキ」
(オークがうんざりした顔でそういうのであった)
■佐伯貴子 > 「店員さん、なんでこんな危なっかしい店をやっているんです。
こんなことを言うのもあれかもしれないんですけど…
人間さんから見たらちょっと犯罪かもですよ?」
(こまりが怪訝そうに聞く。
値段を見ればそれほどお高くない。
儲かっているようには見えない)
それはな…『食いっぱぐれないから』さ。
この島に『人喰い』がいる限りこういう店は必要になる。
決して潰れることはない。
(オークの代わりに佐伯貴子が答えた。
吸血鬼が血を吸うように。
人喰いは人を食う。
人間は菜食主義でも死なないが、
人喰いは人を食わねば死ぬ。
だから決して潰れないのだ)
■佐伯貴子 > 「ソウイウコトダ。
キャクガ クルマエニ カエッテクレ。
アンタタチハ コノマチニ ニツカワシクナイ」
(オークの店員に追い立てられるように、
3人は店から出ていく。
正確には一人と一匹と一体。
誰も疑問を持っていなかった。
二級学生の肉が売られているという事実に)
■佐伯貴子 > 「ケケケ佐伯パイセンもあそこに並ぶ日が来るかもしれねーぜ。
オレはヒトの肉は食わねーがな。
A5ランクの牛肉よかバッタの方がうめーしよ…」
(ムカデスが軽口を叩く。
そうなのだ。
二級学生には人権がない。
もっといえば、A5ランクの牛よりも価値がない。
少なくともこの島では)
あんまり気分が良くないな。
甘いもので口直しという気分でもないし。
…何か奢ろうと思ったのだがな。
(佐伯貴子がため息をつく。
理屈ではわかっていても生理的に受け入れられない。
それは本能的なものだ)
「じゃあじゃあ、この流れでホラー映画でも見に行きません?
ショック療法というやつです」
(こまりが提案する。
徐々に日常に戻っていく、悪くないかもしれない。
オオムカデや猫又にとって、
ホラー映画は面白いものなのだろうか?
それと同じレベルの話なのだ。
先程の店の存在は。
だからこまりの提案通り、歓楽街へと足を向ける。
映画館へ行くために。
おそらく、『人間』である佐伯貴子を励ますための映画館に)
ご案内:「スラムの更に裏路地」から佐伯貴子さんが去りました。
ご案内:「学生居住区-マンション・烏丸秀の部屋」に比良坂 冥さんが現れました。
■比良坂 冥 > 切り裂かれたベッド、部屋中に散らばる羽毛
そして香る濃密な香り
「───」
烏丸秀の部屋はその風貌をすっかりと変えていた
ご案内:「学生居住区-マンション・烏丸秀の部屋」に烏丸秀さんが現れました。
■烏丸秀 > 食事から大変満足して帰ってくると。
「……あれ」
鍵が開いている。
今この部屋の鍵を持っているのはただ二人。
今日、レイは来ないはずなので、来るとすれば……
「冥、来てるのかい?」
ドアを開けながら言い、寝室へと向かう。
■比良坂 冥 > 部屋の奥、寝室はご覧の有様
充満しているのは雌の臭いという名のコロンで
カーテンの閉まった薄暗い中、小さな呼吸音だけが聞こえる
■烏丸秀 > 「……うわ」
ひどいものだ。
あのベッドと羽毛布団、結構したのに。
まったく、まるで鳥の巣だ。
「冥? また派手にやったねぇ」
やれやれとばかりに言いながら、寝室の椅子に腰掛け
■比良坂 冥 > 切り裂かれたベッドと布団の中から
「……おかえり
…お食事──楽しかった…?」
その姿は見せず、声だけが聞こえて
■烏丸秀 > 「あぁ、楽しかったよ――お茶でも入れようか」
アップルティーのもらい物があったか。
気持ちを落ち着ける物がいいだろう。
「で、この惨状は、嫉妬かい?」
ゆったりと聞き。
■比良坂 冥 > 「───ふぅん…」
楽しかった、その答えにはそう返ってくる
「うん…喉も乾いたし………、
………可愛い女の子だったね」
嫉妬か、という問いに対しては答えず
まるでその光景を見ていたかのような物言いで言葉は続く
■烏丸秀 > 「あぁ、エニィ? 面白いし、可愛い子だよ」
素直に認めながら、寝室備え付けのポッドでお茶をいれはじめる。
インスタントだが、それなりに美味しいお茶だ。
二人分のカップにお茶を注ぎながら。
お茶菓子は用意しない。
お腹いっぱいだし。
■比良坂 冥 > 「そう───」
もぞり、とズタズタの布団が動く
お茶の香りがするりと香ってくる
「……魅力的なんだね…好きなの?」
■烏丸秀 > 「うん、好きだよ。
――この手で、バラバラに壊してしまいたいくらいに」
ふふっと笑いながら言う。
その瞳はまさに、恋する男のものだろう。
『負け犬』と言い続けた彼女の果てに何があるのか。
烏丸はそれを見たい。あわよくば、彼女の果てを用意したい。
アップルティーを彼女の分もサイドテーブルに置く。
自らも口をつけると、ほのかに甘い。
■比良坂 冥 > 「───くす」
くすくすくすくすくす
少女の笑い声が続く
やがてむくりと起き上がる
当然のように何も着ていない、彼女の制服はベッドの周りに投げ捨てられている
「羨ましい」
口の端を釣り上げ笑う
「私のことは壊してくれないくせに」
するりと手を伸ばし、ティーカップを手に取る
■烏丸秀 > 「キミの壊れ方に、ボクが手を加える所は何もないよ。キミはその存在自体が奇跡のようなものだからね」
まるで籠の中の小鳥のように純粋なのに、
まるで巣の中の蛇のようにすべてを食らう。
そんな存在をどう壊せばいいのか。
少しずつ、生きるだけで壊れていく少女。
それに人の手を加えるなど、無粋も良い所だ。
「ボクはこれからも誰かを壊そうとして失い、誰かを壊す事で失っていくだろう。それがボクの愛し方だからね。
でも、冥は違う。冥をただ知りたい。冥の物語の結末が知りたい」
ティーカップを置くと、裸体の冥を見つめ。
「それまでは好きに生きるといいさ。
――あぁ、でも、できればお手柔らかにね」