2016/10/15 のログ
ご案内:「スラムの更に裏路地」に佐伯貴子さんが現れました。
佐伯貴子 > (落第街でも特に治安の悪いと言われる場所。
 まだ日が高いせいか人影は少ない。
 佐伯貴子と、警備課の風紀委員が歩いている。
 オオムカデのムカデスは人間の姿をとらず長い姿を晒して畝る。
 猫又のこまりは長いヒゲをひくつかせて周囲を警戒する。
 彼女らが向かう先は、
 この通りに似つかわしくない精肉店であった。
 いわゆるお肉屋さんである)

風紀委員会だ。

(気が重くないと言えば嘘になるがこれも仕事だ。
 ブタ頭のオークに声をかける)

佐伯貴子 > 「アナナタチ、クルト、キャクアシ、トオノク」

(オークが煙たそうに視線を寄越す。
 佐伯貴子はそれを無視して、
 パッケージされて並んでいる肉に、
 小型の機械を当てる。
 機械からは一瞬光が出て肉に反射する)

「ケケケ、佐伯パイセンも物好きだぜ。
 人間のくせにこんなとこ来るのかよ」

(ムカデスが茶化す。
 この精肉店には普通は見られないような『商品』が並んでいた。

 耳や眼球。
 血液の入った輸血パックのようなもの。
 骨。

 人体解剖図を見たことがあればすぐに分かるだろう。
 ここは人肉屋であった)

佐伯貴子 > まあ、すぐに済むから静かにしていてくれないか。
ここが『正規品』しか扱わないことはわかっている。

(佐伯貴子が端末を操作する。
 問題なし。
 問題なし。
 問題なし。

 『問題なし』。

 『並んでいる商品に正規学生のものはなし』。)


「佐伯先輩、人間から見ると『こういうの』って、
 グロいとかそういうんじゃありません?
 私も正直いい気分はしませんよ。
 商店街の肉屋さんくらいに」

(猫又のこまりは顔をしかめながらそう言って店内を見回した)

佐伯貴子 > そうだな、正直不愉快だな。
でもここの検査は金がいいし…何より自分で確かめたいんだ。

(端末を操作しながら答える。
 この店に来るのは初めてではない。
 そもそも「人間」がここの検査を任されることは少ない。
 存在自体を知らないものがほとんどである。
 それは落第街の住人にとっても例外ではなく、
 堂々と人肉を売っている店が存在するなど、
 一部のものしか知らないだろう)

「モンダイナイナラ ハヤクカエレ。
 ウチハ ヒンシツヒトスジ。
 シイレハ カンペキ」

(オークがうんざりした顔でそういうのであった)

佐伯貴子 > 「店員さん、なんでこんな危なっかしい店をやっているんです。
 こんなことを言うのもあれかもしれないんですけど…
 人間さんから見たらちょっと犯罪かもですよ?」

(こまりが怪訝そうに聞く。
 値段を見ればそれほどお高くない。
 儲かっているようには見えない)

それはな…『食いっぱぐれないから』さ。
この島に『人喰い』がいる限りこういう店は必要になる。
決して潰れることはない。

(オークの代わりに佐伯貴子が答えた。
 吸血鬼が血を吸うように。
 人喰いは人を食う。
 人間は菜食主義でも死なないが、
 人喰いは人を食わねば死ぬ。
 だから決して潰れないのだ)

佐伯貴子 > 「ソウイウコトダ。
 キャクガ クルマエニ カエッテクレ。
 アンタタチハ コノマチニ ニツカワシクナイ」

(オークの店員に追い立てられるように、
 3人は店から出ていく。
 正確には一人と一匹と一体。
 誰も疑問を持っていなかった。
 二級学生の肉が売られているという事実に)

佐伯貴子 > 「ケケケ佐伯パイセンもあそこに並ぶ日が来るかもしれねーぜ。
 オレはヒトの肉は食わねーがな。
 A5ランクの牛肉よかバッタの方がうめーしよ…」

(ムカデスが軽口を叩く。
 そうなのだ。
 二級学生には人権がない。
 もっといえば、A5ランクの牛よりも価値がない。
 少なくともこの島では)

あんまり気分が良くないな。
甘いもので口直しという気分でもないし。
…何か奢ろうと思ったのだがな。

(佐伯貴子がため息をつく。
 理屈ではわかっていても生理的に受け入れられない。
 それは本能的なものだ)

「じゃあじゃあ、この流れでホラー映画でも見に行きません?
 ショック療法というやつです」

(こまりが提案する。
 徐々に日常に戻っていく、悪くないかもしれない。

 オオムカデや猫又にとって、
 ホラー映画は面白いものなのだろうか?
 
 それと同じレベルの話なのだ。
 先程の店の存在は。

 だからこまりの提案通り、歓楽街へと足を向ける。
 映画館へ行くために。

 おそらく、『人間』である佐伯貴子を励ますための映画館に)

ご案内:「スラムの更に裏路地」から佐伯貴子さんが去りました。
ご案内:「学生居住区-マンション・烏丸秀の部屋」に比良坂 冥さんが現れました。
比良坂 冥 > 切り裂かれたベッド、部屋中に散らばる羽毛
そして香る濃密な香り

「───」

烏丸秀の部屋はその風貌をすっかりと変えていた

ご案内:「学生居住区-マンション・烏丸秀の部屋」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > 食事から大変満足して帰ってくると。

「……あれ」

鍵が開いている。
今この部屋の鍵を持っているのはただ二人。
今日、レイは来ないはずなので、来るとすれば……

「冥、来てるのかい?」

ドアを開けながら言い、寝室へと向かう。

比良坂 冥 > 部屋の奥、寝室はご覧の有様
充満しているのは雌の臭いという名のコロンで

カーテンの閉まった薄暗い中、小さな呼吸音だけが聞こえる

烏丸秀 > 「……うわ」

ひどいものだ。
あのベッドと羽毛布団、結構したのに。
まったく、まるで鳥の巣だ。

「冥? また派手にやったねぇ」

やれやれとばかりに言いながら、寝室の椅子に腰掛け

比良坂 冥 > 切り裂かれたベッドと布団の中から

「……おかえり
 …お食事──楽しかった…?」

その姿は見せず、声だけが聞こえて

烏丸秀 > 「あぁ、楽しかったよ――お茶でも入れようか」

アップルティーのもらい物があったか。
気持ちを落ち着ける物がいいだろう。

「で、この惨状は、嫉妬かい?」

ゆったりと聞き。

比良坂 冥 > 「───ふぅん…」

楽しかった、その答えにはそう返ってくる

「うん…喉も乾いたし………、
 ………可愛い女の子だったね」

嫉妬か、という問いに対しては答えず
まるでその光景を見ていたかのような物言いで言葉は続く

烏丸秀 > 「あぁ、エニィ? 面白いし、可愛い子だよ」

素直に認めながら、寝室備え付けのポッドでお茶をいれはじめる。
インスタントだが、それなりに美味しいお茶だ。
二人分のカップにお茶を注ぎながら。

お茶菓子は用意しない。
お腹いっぱいだし。

比良坂 冥 > 「そう───」

もぞり、とズタズタの布団が動く

お茶の香りがするりと香ってくる

「……魅力的なんだね…好きなの?」

烏丸秀 > 「うん、好きだよ。
――この手で、バラバラに壊してしまいたいくらいに」

ふふっと笑いながら言う。
その瞳はまさに、恋する男のものだろう。

『負け犬』と言い続けた彼女の果てに何があるのか。
烏丸はそれを見たい。あわよくば、彼女の果てを用意したい。

アップルティーを彼女の分もサイドテーブルに置く。
自らも口をつけると、ほのかに甘い。

比良坂 冥 > 「───くす」

くすくすくすくすくす
少女の笑い声が続く
やがてむくりと起き上がる
当然のように何も着ていない、彼女の制服はベッドの周りに投げ捨てられている

「羨ましい」

口の端を釣り上げ笑う

「私のことは壊してくれないくせに」

するりと手を伸ばし、ティーカップを手に取る

烏丸秀 > 「キミの壊れ方に、ボクが手を加える所は何もないよ。キミはその存在自体が奇跡のようなものだからね」

まるで籠の中の小鳥のように純粋なのに、
まるで巣の中の蛇のようにすべてを食らう。
そんな存在をどう壊せばいいのか。
少しずつ、生きるだけで壊れていく少女。
それに人の手を加えるなど、無粋も良い所だ。

「ボクはこれからも誰かを壊そうとして失い、誰かを壊す事で失っていくだろう。それがボクの愛し方だからね。
でも、冥は違う。冥をただ知りたい。冥の物語の結末が知りたい」

ティーカップを置くと、裸体の冥を見つめ。

「それまでは好きに生きるといいさ。
――あぁ、でも、できればお手柔らかにね」