2017/02/24 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
ご案内:「クローデットの私宅」にヴィルヘルムさんが現れました。
クローデット > クローデットの私宅は学生街の中にあるため、歓楽街から移動すると、少し時間がかかった。

「あまり遅くなるとハウスキーパーが帰って参りますので、長いお話は出来ないかもしれませんが…せめて、今後の方針くらいは定めましょう。
…お茶を淹れて参りますので、少々お待ち頂けますか?」

靴を履いたまま入れる私宅で、クローデットは、入るなり青年をリビングに導こうと先導した。

いつもの微笑を顔に貼り付けつつも、その瞳から、感情の色を隠したまま。

ヴィルヘルム > 帽子を脱げば,美しいプラチナの髪が露わになる。
…だが服装がそう見せるのか,帽子を脱いでもなお,中性的ではあるが男性味が強く見えるかもしれない。
貴女に導かれるまま,リビングへと足を踏み入れる。

「……えぇ,待たせてもらいます。」

貴女の真意をすべて読み取ったわけでは無い。
だが,青年は僅かながらに緊張の色を表出させていた。
それは,【マリア】としてここに訪れた記憶がそうさせているのか,
それとも【ヴィルヘルム】としての自我がそうさせているのか。

クローデット > クローデットはキッチンに引っ込み…少しすると、温めたティーセットを2つと、ポットを盆にのせて戻ってくる。

「お待たせいたしました」

ガラス玉の瞳のまま、柔らかく微笑むクローデット。
二人でお茶をするのにおあつらえ向きの、向かい合わせのシングルソファが2つとその間の小さなテーブルの家具がリビングには備えてあった。
そして、壁際には巨大な水槽と、その中の「空間」を泳ぐ巨魚。

クローデットは、小さなテーブルの上に盆を置いた。

ヴィルヘルム > 貴女が戻ってくるまで,青年は立ったままで待っていた。
作法を教わった経験があるわけではないが,貴女が準備をしてくれているのに座って待っているのも心苦しかったのだろう。

「………ありがとうございます。」

青年も同様に柔らかく,自然に微笑んだ。
緊張はしているし,不安もあるが…それでも青年は,どこかで貴女とこうしてまた話ができることを,嬉しく思っていたのかもしれない。

横目に不思議な水槽を眺めながら,ソファの横まで進む。

クローデット > 「…おかけになっていても良かったですのに」

青年の礼節には悪い気がしないのか、くすりと笑んではみせるが…瞳に、感情の色が帰ってくることは今のところない。

「…おかけになって下さって、結構ですわ。今、お茶を淹れてしまいますわね」

青年が横に立っている方のソファと、その向かい側のソファの傍にティーセットをそれぞれ置き、それぞれのカップに、濃さが均等になるようにお茶を注いでから、自分も青年の向かい側のソファに腰掛けた。
ティーカップを手に取る。

「………まずは、シュピリシルド様がそのお姿をあたくしの同僚に見咎められなかったことを、言祝ぐべきでしょうか?」

そう、伏し目がちに微笑んで言って、自分の傍らのティーカップに口を付けた。

ヴィルヘルム > 「……失礼します。」

貴女に促されれば,小さく頷いてソファに腰を下ろす。
以前に比べて現代的な服装であり,この家の中でヴィルヘルムはやや浮いて見えるかもしれない。
けれど貴女が続けた言葉に,文字通り機先を制された彼は,僅かにうつむいた。

「そう,ですね…。…………。」

ヴィルヘルムはその時間の大部分を女として生活してきた。
けれど,僅かな時間だけ,男としての自分に,別人に成り代わって…いつしかそれを楽しんでさえいたのかもしれない。
歓楽街で出会った時,真っ先に謝るべきだった。ティーカップに伸ばした手が,僅かに震える。

「……言い訳は致しません。ルナン様。
 マリアではない,別の自分を見てみたくて……こうして,男の姿で幾度か出歩きました。」

それは,クローデットとの約束を破る行為だった。
……わずかな時間だからと言って,それが許される道理はない。

「…………。」

青年は,そう事実だけを述べ,本当に言い訳をしなかった。
本当は弁解もしたかっただろうが,貴女にそれが通じないのは分かっていたし,
恐らく貴女は,それを嫌うだろうとも思っていた。

クローデット > 青年の沈黙を、クローデットは興味深げに見つめる。
意思の光が灯りはするが、それそのものが感情の色を示しはしてくれなかった。

「『思ったより自然に話せる』と仰ったからには…言葉を交わされた方も、少なからずおありなのでしょうね。
…あたくしが委員会本部に呼び出されて叱責される、ということがなかったのですから、その方々はお気付きにならなかったか…あるいは、了解の上で秘密を守って下さったのでしょうけれど」

くすりと笑う、ほぼ吐息の笑声が、細い。

「………「別の自分が見てみたくなった」折、相談して下さればお話がシンプルになりましたのに」

その言葉の響きに、暖かみはなかった。

ヴィルヘルム > 貴女の表情をまっすぐに見つめていれば,あるいは何かに気付けただろうか。
しかし,ヴィルヘルムは貴女の目を見つめることができなかった。
それは罪の意識もそうだったが…

「……そうするべきでしたね。
 ただ,何と言えばいいかな…中途半端なところを,見せるのは恥ずかしいとも,思ったので。」

…男性としてのヴィルヘルムが真っ先に意識した異性が貴女であったことが,多少なりとも関係しているのは間違いなかった。
同様にして,相談先に貴女を選べなかった理由もそこにある。

「…この姿でお話したのは数名です。
 ですが…ルナン様の仰る通りですね…一歩間違えばルナン様にご迷惑をおかけするところでした。」

「申し訳ございません…ルナン様。」

申し訳なさそうに頭を下げる。まだ,この家の中で,貴女の瞳をまっすぐに見る自信は無かった。