2017/05/22 のログ
ヴィルヘルム > 青年は貴女の正体にまったく見当もついていなかったし,
クローデットとの関係性もまったく見えていなかった。
だからこそ,素直な言葉を向けられたのかもしれない。

「…独りになったら,僕だって寂しいよ。」

青年はそうとだけ答えて,苦笑を浮かべる。

「きっと,この世界に来た「ヨソモノ」はみんな独りなんじゃないかな。
 友達も,家族も,みんな一緒に来たなら別だけど,さ。」

…自分はこの世界に来る前から独りだった。
それが心の中に浮かんだ言葉だが,そんなことを貴女に言っても仕方がない。

銀髪の少女 > 「———」

青年の言葉に、時が束の間止まったかのように、「少女」が硬直する。
だが、その硬直が解けた後に訪れたのは…

「…それでも、お前達は、「みんな」が迎えてくれるでしょう…
この世界に慣れるように支え、手を差し伸べてくれる者達がいるでしょう…」

煮えたぎるような、怒りだった。

「………私には、もうクローデットしかいないのに………
クローデットだって、傍にはいてくれないのに………」

《ゆるさない》
《ゆるさない》
《あの子を殺したのは「バケモノ」なのに》
《ゆるさない》
《ゆるさない》

青年の腕を掴む手から伝わる「呪詛」が、痛いほどの憎悪の熱を帯びていく。

「………かの者を、愛を拒む障壁で覆わん………」

ひび割れるような涸れた声が、怒りの熱を帯びた声で詠唱を始める。
少女の細い手は、常人の範囲ではあるが妄執めいた力で、青年の腕を強く握ったままだ。
…無論、青年が「本気」を出せば、逃げるのは不可能ではなさそうだが…。

ヴィルヘルム > 怒り,憎悪,向けられることに慣れてしまった感情。
けれど貴女が向ける憎悪は,これまで向けられてきたそれとは異質なものだった。
憎悪は青年の行動に対してではなく,容姿に対してでもなく,
ただその境遇に,貴女自身の境遇よりも恵まれた異邦人らの境遇に向けられているように感じられた。

……気に障ったわけではない。声にも怒りはこもらなかった。
けれど,青年は珍しく,声を荒げる。


「……だったら!!
 アンタ,こんな馬鹿なコトやってる場合じゃないだろ!!!」

掴まれた腕を,強引に振り払う。
けれど青年は逃げなかった。むしろ両腕で貴女の両肩を掴んで,真っ直ぐに貴方を見つめる。

「クローデットはアンタのことを“大切な人”だって言ってた!!!
 離れてるけど,アンタが居てくれるから大丈夫だって,そう言ってたんだよ!!!」

「傍にいたいなら,アンタがすぐ近くに行ってやれよ!
 こんな場所で,意味わからない人殺しなんか,やってる場合じゃないだろ!!!」

魔術の詠唱を止めるような小細工はしていない。
ただ真剣な瞳で,怒りをまき散らす目の前の少女を怒鳴りつけただけだ。

銀髪の少女 > 「………獣の衣を纏い、汝の姿を恐れる者の目に………っ」」

詠唱途中で、きつく掴まれる両肩。
青年のまっすぐな言葉に…「少女」の瞳が揺らぎ、濃紫が強く主張したように思われた。

「………わたしは…ここには、こられない………」

「少女」が深くうなだれ、今にも泣き出しそうな声で、表面的には意味不明な言葉を零す。
…しかし、それは一時のことだった。

「………意味分からない人殺し、ですって………?
超常の力を、軽率に弱者に向ける者達への「裁き」が…ひとくくりに、されてたまるものですか………」

再び、じわじわと煮えたぎり始める、「少女」の情念。
それを反映してか、禍々しさを増し始める「少女」の魔力。

………いや、これらの言葉の応答を踏まえてなお、「少女」の術式は…文字通りの呪いは、術式を崩壊させていなかったのだ。

「…獣の衣を纏い、汝の姿を恐れる者の目に怯える夜を過ごせ…『リュジスマン・ドゥ・リュヌ(月の咆哮)』」

月の出現に応じて、呪われた者の意識を保ったまま、その身を人狼へと変貌させる呪いをかける術式。
それを完成させながら、「少女」は青年を、その赤い瞳で強く睨みつけていた。

ヴィルヘルム > 「ここに,来られない……?」

貴女の言葉を理解するのは難しい事だった。
だが,まるで人形のようにぎこちない貴女の所作が想像力を掻き立てる。
しかし明確な答えにたどり着くには時間が足りなかっただろう。
そしてその思考の隙は,彼が逃げ去るタイミングを失わせるに十分だった。

「……それって一体,どういう…。」

貴女の魔力が再び禍々しい力を帯びて,やがてそれが発動される。
だが青年は,結局逃げることもそれを防ぐこともしなかった。
彼は貴女の魔法が致死性のものであるだろうと想像していた。つまり,彼は僅かほども,死ぬことを恐れていない。

「………ッ。」

睨みつけるような貴女の瞳を,まっすぐに見つめ返す。
青年は,自らの身体に何が起きたのか,理解していないだろう。
青年は終始,貴女の言葉の意味を考えていた。

銀髪の少女 > 人形じみた不自然な身体の動きは、自分のものでない身体を動かすという間接的な所業の所以。そして、「彼女」がもはや満足に身体を動かせないことの反映。
しかし、それらを読み取るには、青年には前提となる情報があまりにも足りなかった。
…そして、それらの不足が、青年にとって痛恨の隙を生み出すこととなる。

「………こわーいこわーい狼さん、そのまま「私」を潰してしまうの?」

呪いをまともにその身に受けた青年の様子を見て、「少女」の瞳が敵意を緩める。
そして…表情を変えないまま、声だけで嘲笑した。

もちろん、この場に鏡はない。そして、青年はローブとフードでその身を隠している。
しかし…ローブの中で窮屈さを覚える感覚、低くなったように思われる「少女」の背丈。
そして…「少女」の肩にかけられた、毛むくじゃらで鋭い爪の生えた手に気付けば、青年は自身に起こった変化に気付くことが出来るだろう。

ヴィルヘルム > 身体と,言葉の主が別なのでは,ということにはすぐに思い至った。
そして言葉の主ははるか遠くに居るのだろうということも,すぐに理解できた。
そして,青年が初めに聞いた少女の声…焼かれたか,毒を受けたか,喉を傷めたのだろうと思ったあの声が,言葉の主の声だとすれば…。

「…………。」

だが,答えは間に合わなかった。間に合っていたとしても結果は変わらなかっただろう。
漠然とした答えに近い想像が,肉体への変化とともに霧消する。
少女の両肩を掴む手は,見覚えのない…文字通り,バケモノの手だった。
咄嗟に,少女の両肩から手を放す。ふらりと数歩下がって,自分の両腕を見た。
バケモノの手。明らかに,少女の魔術が原因だった。

「ガァァァァッ!!!!」

怒りが咆哮となって溢れ出す……が,青年は地面を思い切り叩き,

「潰さない……潰したくない!!
 君はクローデットの“大切な人”だし…それに君は“君”じゃない。」

肩を震わせる。
獣じみた衝動を,必死に理性で抑え込んでいるのが貴女にも分かるだろう。

「こんなことしなくても……僕は,独りだよ。」

牙を剥き,唸り声を響かせながら…それでも青年は静かに,貴女にそう告げる。

銀髪の少女 > 「………でも、これからは、もっと、一人の夜」

涸れた声が、嘲りにほんのり媚びたような甘さを帯びる。
しかし、女性らしい透明度の高い声ならばまだしも、「少女」のその声では、耳障りさを増すばかりだった。

「…その姿で、クローデットには近づかないで。
………『浮遊(フロッテゾン)』」

獣じみた衝動を必死で抑え込む、人狼と化した青年を冷たく見下ろして。
「少女」はふわりを浮き上がると、どこかへと飛び去った。

名を出した彼女こそ、意志はともかくその呪いを解く術を持つ人物であることは、黙ったまま。

ご案内:「落第街路地裏の一角」から銀髪の少女さんが去りました。
ヴィルヘルム > 地面に巨大な爪痕を残し,前腕を叩きつけたまま。
狼は顔を上げず,貴女に真紅の瞳だけを向けた。

「……君,酷い人だね。」

飛び付こうと力を込めた前腕,しかしその力が解放されることはない。
獣としての本能が貴女を殺せと叫び,人間としての理性がそれを止める。
貴女がすぐにその場を去ってくれたことは,幸いだった。

「ガァァアアァァァァァァッ!!!」

理性の鎖が引き千切れた獣は闇夜を震わせるほどの咆哮を上げ,
裏路地の一画をズタズタに引き裂き,破壊し,そして…

ヴィルヘルム > …暗闇の中へと走り去っていった。
ご案内:「落第街路地裏の一角」からヴィルヘルムさんが去りました。
ご案内:「裏路地」に????さんが現れました。
???? > 夜の裏路地、人っ子一人いないこの場所に、
迷い込み逃げ惑い、呼吸も荒く助けを求める声なき声。
それを軽々しく追い続け、両腕から伸びるワイヤーのようなもので空中を舞うように相手を先回りし、
にげる相手の前に立ちはだかれば、
相手は足で急ブレーキをかけて、勢いを殺しきれず、私の前で尻餅をついて後ずさりする。

『なぜ私の命を狙う!貴様は誰なんだ!?』

「うーんと、なんでって言われたら、依頼されたからだよ?
あと、私は学生。」

ガチャリ、と、両手に銃を構えて走り出す。
相手もタダで殺されまいと銃を

構えた
(構えた、引き金が引かれてもーすぐ発砲、これだと私のこめかみにあたるなー)

どんっ!と相手の銃が鳴ると同時に首を曲げて銃弾を文字通り、避けた。

相手が続いて二発、三発撃とうとも、
その銃弾は私のギリギリを通り抜け当たらない。
距離を詰め相手の構える銃を蹴り飛ばし、
抵抗しようとした相手の手を蹴り飛ばした足で踏み潰した。
すかさずに相手の額に右手拳銃を突きつけ。

「どーん。」
『ドゥン!』

ぴしゃりっ、と血液が相手の背面に飛び散る。
ピクピクとしながら相手は背面に倒れこみ動かなくなった。

「もしもーし?依頼完了でーす!ありがとーございましたー!
…お腹減った、ハンバーガー食べて帰ろ」

平然とした様子で電話し、
平然とした様子で独り言。
…何事もなかったかのようにその場を去った、

ご案内:「裏路地」から????さんが去りました。