2017/11/23 のログ
■鈴ヶ森 綾 > 「この国でも、少し前は養蚕が盛んだったわよ。ケラの類も、一部が糸を使うわ。
…あぁ、ひょっとして異邦の方かしら?」
布石を打ちながらもしれっと会話を続け、小細工を混じえた一撃を見舞う。
しかししてその結果には、面の下で少しばかり目を丸くする。
「やはり。とんだ食わせ者ね。」
先程の台詞、とぼけているという指摘は、たんにここに来た目的以外の意味も含まれていたらしい。
こちらの狙いをあっさりと看破して迎撃してみせた手腕に感心したように呟くと、顔につけた面を持ち上げて改めて対峙する。
「傷つけずに捕らえられないのなら仕方ないわね。あまり趣味ではないのだけど。」
糸での捕獲はあっさりと諦めたのか、
その言葉を言い放つのと同時に右手を小さく翻したかと思えば、
腕が人間のそれの原型を残しながらも爪は鋭さを増し、
皮膚は黄と黒の縞模様のある金属を思わせる硬質のものへと変貌する。
トン、トンと軽くステップを踏むような動きから前置きなしにリズムを変えて踏み込むと、
その変質した右腕を少年の胸のあたりを目掛けて横薙ぎに振るう。
■笹貫虎徹 > 「…え?いや、普通に本土出身の日本人だけど。あー…でも、山奥育ちだから色々と疎いのはあるかもなぁ」
しれっとした会話を暢気に続けながら、彼女のフェイント交じりの初手をきっちり迎撃する。
食わせ者発言には、矢張り少しだけ心外なのか若干だが困ったような表情を浮かべるけれど。
「……あー…うん。面被ってても薄々はそうかなぁ、とは思ってたけど、また凄い古風美人さんというか…。」
と、面を持ち上げて素顔を見せる女を眺め、暢気に感想を漏らすが…見蕩れている訳ではない。
「……と、実力行使かぁ。面倒な事になりそうだなぁ」
嘆くように溜息。だが棒読みみたいな平坦口調なので、本当にそう思っているかは謎だ。
と、彼女の右手が変質していく。爪が鋭く伸び、皮膚は黄色と黒の縞模様。「やっぱ蜘蛛じゃないの…」と、呟いて。
「……お?」
そして、軽いステップから不意に仕掛けられる奇襲攻撃…速い。こちらの胸元目掛けて放たれた爪の一撃。
対して少年は、右手を拳へと変えて…ブレるような非常識な速度で、その爪へと目掛けて右腕を振り抜く!
次の瞬間、金属同士がぶつかるような音を立てて、彼女の爪の一撃を"素手で弾き返す"…流石に、皮膚は破れて血が飛び散るけれど。
少なくとも、皮膚の下…筋肉、骨などが異様な頑強さを帯びているのは伝わるかもしれない。
そもそも、人外の鋭く重い一撃を真っ向から素手で迎撃するのがおかしいのだが。それも何の異能も魔術も用いず。
(…成る程、今の手応えからして鋭いだけじゃなくて硬度もかなりのものなんだなぁ)
と、酷く冷静に分析しながら血塗れの右手を一瞥。出血は少し派手だが大したダメージではない。
と、少年が動く。無造作に一歩だけ滑るように踏み込んで左の拳を彼女の腹部目掛けて繰り出そうと。
決して速度は速くない…が、予備動作というものが殆ど無いカウンターだ。
■鈴ヶ森 綾 > 「それはどうも。今度お茶でもご一緒にいかが?」
軽口と共に不意打ち気味の笑顔を向ける。
その内面を知らなければ、その魔性とも言える笑顔に抗える男はそう多くはないだろう。
「!」
振るった爪の一撃が防がれた、その事自体は良い。
驚くべきは少年が手甲やグローブといった拳を守る物を何も身につけていない事。
飛び散った赤い飛沫は確かめるまでもなく少年の血だろう。
つまりこの少年は、自分の爪の一撃を素手で受け止めたという事だ。
「驚いた。魔術という感じではないようだけれど…異能か、そうでなければ…。」
たゆまぬ訓練の賜物、といったところか。
このような状況でなければ賞賛の言葉でも送りたいところだが、
相手の反撃が差し迫っている状況ではその余裕もないか。
「ぐっ!」
相手のカウンター攻撃に対して打った行動は、何もしない事。
腹に打ち込まれた衝撃で身体が傾ぎ、小さく呻き声を漏らす。
しかしその打ち込んだ拳が白い糸に塗れ、指先を動かすことすらままならなくなる
「まずは左手を…次は、そちらかしら。」
今度は弾かれた爪ではなく、左手が翻る。
そこから走った糸は血を滲ませる少年の右手首を拘束しようとするものだ。
■笹貫虎徹 > 「……ん?ああ、勿論いいけど…美味い茶の店とか疎いんだよなぁ」
彼女の軽口に、相変わらず暢気な態度でコクリと頷く。あちらが軽口に対してこちらは素だ。
同時に、彼女の魅力に当てられた様子は無い。美人なのは認めているし、笑顔も良いと思う。
だが、そこに潜む魔性だけは綺麗サッパリ無反応――とはいえ、その魔性に気付いていないという訳でもない。
「…いんや、俺は異能は無いし魔力がゼロだから魔術も使えない落ちこぼれだよ。
…まぁ、唯一、体術技巧だけ叩き込まれたからそれくらいかなぁ」
と、暢気なままだが内心でマズったなぁ、と思う。左手。拳の一撃を彼女は無抵抗で受けた。
その前に気付くべきだったが、既に左手には糸が巻き付いて覆ってしまっている。
成る程、丈夫な上に粘性があるようで剥がすのは難しそうだ。しかも拳の状態のままだから手も開けない。
そして、血塗れの右手首…を、今度は少年の方が何故か無抵抗にあっさりと受け入れる。
これで、左右の手は糸で拘束されて使用不可能。だが、少年は暢気な調子で。
「……あ、ところでそちらのお名前は?俺、笹貫虎徹っていうんだけど。」
この期に及んで普通に名乗るマイペースさ。ここまで来るとある意味で天晴れか。
そして、この近い距離…"丁度いい"。次の瞬間、彼女に抱擁するように間合いを詰めて――…。
糸で雁字搦めに拘束された左拳…彼女の腹部に密着したままのソレから、気…発勁の一撃を放ち、彼女の内部に浸透するダメージを与えんと。
無論、決まろうが外れようが、拘束状態の拳にはかなりの負荷が掛かり、拘束した糸を真っ赤に染める程に拳にダメージを負う事になるが…。
■鈴ヶ森 綾 > 「…こんな状態から、私を口説き落とそうとでも言うのかしら。」
先程から徒手空拳で戦う少年にとって、両手を塞がれるというのは相当に厄介な状態であるはず。
しかしそれでもなお暢気な態度を崩さない様子に訝しむような表情を浮かべる。
その直後、相手の方から抱き合うように身体を寄せ、左手が腹部に押し当てられた瞬間その意図を察するが、
その行動に対しリアクションを起こすより早く、それはやってきた。
腹を貫いた気の一撃に女の上半身は声も無く後ろへ仰け反り、ヒクヒクと小刻みに震えている。
だが技が決まる直前、少年は奇妙な感触をその手に覚えたことだろう。
体内で練った気が放たれる直前、拳を押し当てた女の身体が『陥没』したのだ。
無論、息を吐いて腹を引っ込めたというようなレベルではない。
そこにあるべき肉と臓腑がごっそりと消滅したのだ。
「…んっ、ふぅ…悪くない一撃だったわよ。ええ、本当に。」
仰け反っていた上半身が起き上がったかと思えば、
背後に回された右手の爪が男の首筋へと充てられ、小さく縦へ引かれる。
そこから滲み出た血を爪の先で掬うと、それを自らの口元に運んでちろりと舌で舐めとる。
■笹貫虎徹 > 「……いや、口説いてるつもりは欠片も無いんだけど」
実際そうらしく、何故か怪訝そうな表情を浮かべる少年だ。お茶に誘われたから素直に受けた、つまりそういう事である。
そして、残念ながら――例え手足を潰され様が殺されようが、少年の態度が変わる事は多分無い。
「―――ん?…あ、こりゃ…"外された"かな」
そして気付いた。ゼロ距離密着状態からの気の一撃。別に異能でも魔術でもない、人間の生命力を生かした衝撃の伝播。
主に内臓など体内にダメージを与える技法だが、彼女の体が不自然に陥没し――手応えが無かった。
(…いやいや、これ完全に筋肉とか内臓がすっからかんなレベルの手応えの無さだよな…凄いねホント)
相変わらず暢気な調子で、しかし思考は素直に感心をしつつも状況は悪化している。
今の一撃で左拳を痛め、右手は手首を拘束されたままだ。…そして、起き上がった彼女が、その爪でこちらの首筋を小さく縦に裂く。滲んだ鮮血が爪に付着し、それを舐め取る様子を眺めつつ。
「…ちなみに、どんなお味で?」
聞いても意味は無いがなんとなく聞いてみる。少年の血液…含まれる精気はそもそも尋常ではない。
人外を殺す体術の鍛錬、気を扱う技法、そして肉体も完全に作り変えられるほどの鍛錬で凝縮された生命力。
全身に秘められた精気の量も質も尋常ではない…精気を糧とする者にとっては、それこそ麻薬に等しいだろう。
そうでなくても、その強烈な濃い味は相手の脳裏にしっかりと刻み込まれるだろうか。
■鈴ヶ森 綾 > 「ふぅん?まあいいわ。アヤよ。…で、名前を知って、どうしようというのかしら?まさか本当にお茶を飲みに行くつもりかしら。」
こちらとしても、まさか真に受けているとは思っていない。
思っていなかったが、どうやらそういう事のようだ。
「その若さで、中々どうして鍛えられているみたいで、感心するわ。
でも残念ね。どうしても相性というものはあるものだから。」
左手を相手の顔の前に翳し、その手のひらに穴を穿って見せる。
断面からは血が流れ出ることもなく、一振りするだけで元の綺麗な状態に戻る。
「この身体は全て仮初め。少しばかり形を弄るぐらいはお手の物なの。
…とは言え、衝撃まで吸収できるわけではないから、今のをまともに食らっては痛いでは済まなかったわね。」
実際少しは堪えていたのか、先程一撃を受けた箇所を小さく撫で擦る。
「興味があるならのなら、自分で確かめてごらんなさい。」
味は、と聞かれてそれへの返答。
言うが早いか、爪の先が少年の口の中にねじ込まれていた。
かなり乱雑に突っ込まれたため侵入の際に唇や口内が傷つき、新たな出血を促す。
自身の唾液と少年の血に塗れた爪を舐めさせようと言うのだ。
■笹貫虎徹 > 「…や、だから普通にお茶のつもりなんだけどなー…んーと、アヤ」
取り敢えず、名前を名乗られただけマシだろう。それが適当な名前だとか偽名だとかそういう可能性はさて置き。
「…参ったなぁ。そういう体の作りなら、"あっち"で攻めた方が効果的だったのかも…ただの打撃とかあんまり意味無し、かぁ」
負け惜しみのようだが、少年にはまだ何か手はあるらしい。とはいえ現状不利でしかないが。
彼女がこちらに己の左手を翳し、そこに穴を穿つ…断面から血は流れる事は無く、しかも腕の一振りで元通りだ。「さすが人外だなぁ」と、矢張り暢気だが。
「…んー、まぁ、まともに当たってたら、内臓数個潰して肋骨全部は叩き折れたんだけど。流石にこっちが甘かったかぁ」
サラリと尋常でない先ほどの一撃についてを吐露しつつ、しかし彼女の特性を考えると矢張りあまり意味が無いだろう。
「…え?いや、別にい――んっ!?」
いきなり爪先を口の中に捩じ込まれた。今ので唇や口内が傷つき血を流す。痛みは"遮断している"とはいえこれはどうしたものか。
で、取り敢えず舐めてみるが…正直、鉄錆びた血の味と彼女の唾液の味が混じった味しかしない。
しかも、今まさに口内出血しているので、彼女の爪に血は纏わりついたままだ。
(…と、いうかこのアヤさん地味にサドというものなんじゃないだろうか…あぁ、うん獲物引っ掛けてる時点でそうだろうけど)
さて、どうしたものかと爪を舐めながら考える。正直、手はあるがこの状態だと少しキツい。
■鈴ヶ森 綾 > 「…社交辞令というものを覚えたほうがいいわね、貴方。まぁいいわ。」
人間が妖怪に人付き合いの仕方を説教されるというのはどうなのだ。
呆れたように肩をすくめ、機会があれば付き合うわ、と言い足した。
「もしも完全に不意をついた一撃だったなら分からなかったけれども。
他に選択肢のない苦し紛れでは…あら、何か奥の手があるのかしら。」
怖い怖いとまるで真実味のない呟きを混じえ、何か隠し玉があるらしい相手の腹に探りを入れて。
「それで…あぁ、味だったわね。天から降る甘い露、まさに甘露のような味わい、と言ったところかしら。
最初は冴えない男と思ったけれど、そんな所まで食わせ者だったわけ。
だからね、決めたの。」
かなり荒っぽく口内を掻き回し、舌や歯茎にも新たに傷を作り、
それからゆっくりと濡れた爪先を引き抜く。
そして引き抜いた爪をどうするかと言えば、そのまま顎を挟み込むようにして少年の顔を固定し、
身体とともに顔を近づけてゆく。
■笹貫虎徹 > 「…んー飾った言葉に意味なんて無いと思うけど?」
淡々と返す言葉は嘘偽り無く本音だ。社交辞令とか上辺の言葉は少年には基本無い。
とはいえ、人間が妖怪に人付き合いについて説教される、というのは流石にこの島でも珍しすぎる一幕だろう。
「…んーー、一応、そういうのも出来るけど。そもそも俺の体術はアヤみたいな人外さん相手のモノだし。
…あー、奥の手って程でも無いよ。それにこの状態だとまぁ、あまり意味が無いしねぇ」
腹の探りあいは苦手だ。だから謙遜と事実を交えてスルリと交わす。
とはいえ、人外相手にまともに戦うのは初めてだが、良い経験にはなりそうだ。
「…うん、まぁ冴えないのは別にいいけど食わせ者は何か嫌だなぁ……はて?」
何を決めたのだろう?と、この状況でキョトンとする少年。矢張りマイペース過ぎるというか緊張感が無い。
そして、荒っぽく口内を掻きまわされて傷が増える。痛みを今は感じないとはいえ、後で地獄を見そうだ。
ややあって、爪は引き抜かれたが今度は顎を挟むように固定された。両腕は動かないし…さて、これはもしや
(…キス、なんて甘いモンじゃないよなぁ。ああ、精気を吸われるのかなこれ)
まぁ、それはそれで。両足は動くので、普通なら攻撃するか逃げる…筈だ。普通なら。
が、少年はちょっとマイペースなので、自分から一歩踏み込んで行き…顔を固定されてはいるが、そのまま口付けしてしまおうと。
当然、精気を吸われる事になるのだが…彼女にもしささやかな誤算があるとすれば二つ。
一つは、彼の精気の量が底無しと錯覚するほどに"多すぎる"事。そして少年が精気を吸われ続けても平然としているであろう事だ。
■鈴ヶ森 綾 > 「…まぁ、そういうものが不要な生き方というのもあるのでしょうね。」
暖簾を押すような手応えのなさに、さすがにそれ以上言及するつもりはないようだ。
「食わせ者がいやなら、曲者でもしたたかな人でも猫かぶりでも、好きなように呼んであげるわよ…。」
先程爪に傷つけられて血が滲む唇に舌を這わせ、さらに血を流させようと唇に噛み付く。
キス、口付けというにはあまりにも情緒が無い。
情熱的だが一方的で、暴力的な交わり。
「貴方を、骨の髄まで頂くわ…。」
外側を一頻り嬲った後は、突き入れた舌を使って互いの唾液と肉とを溶け合わせるように絡め、
そこに混ざる血の香にさらに興奮を昂ぶらせる。
それらの行為はまさに女にとっては食事そのものであり、
この上ない甘美な味わいは際限のない高揚を呼び、顎に添えられた爪が肌に食い込み、
意図せず血を流させる程に抑えが効かなくなっていた。
唇だけでは満足できなくなっているのか、一度顔が離れたかと思えば、
今度は首筋へと狙いをつけたらしい。
先ほどを傷をつけた箇所を舌先で抉るように刺激し、時折歯で肌を掻くようにこすり付け、カチカチと音を鳴らした。
■笹貫虎徹 > 「……と、いうかアヤは自由そうでいいねぇ」
ポツリとそんな言葉。かく言う少年も割と自由気ままなマイペースさではあるが。
しかし、どんな言い方をされても結局、一筋縄ではいかないヤツみたいな扱いは変わらない気がした。
「あーー…うん、もう食わせ者でいいや面倒だし」
彼自身にその気が無くても、言動や行動からしてそう見られてしまうのは否めないのだ。
そして、キスというよりも捕食されるかのような感覚は間違いでもあるまい。
所詮、妖怪の彼女からすれば人間の少年など餌に過ぎないのだろう。一方的で暴力的で。
「…そりゃ、凄い。けどそれじゃ俺が何もしない感じだし、俺もアヤを頂くって事で」
搾取されるだけで終わる程、少年は大人しくないし凡庸でありふれた人間ではなかった。
外側を嬲られ、今度は舌で唾液と肉を解け合わせるように絡められる。
ならば、とこちらも舌を伸ばし逆に彼女の舌を引きこんで舐り返す。
血が多分に混じった唾液は鉄錆びた味。キスというのは本当に物騒だ。
そして、口付けが離れれば、赤い血の唾液のアーチ…そして、宣言どおりまだまだ彼女はこちらを食うつもりらしい。
次に、狙いを定められたのは首筋。先ほど、縦に浅く裂かれた場所に舌を捩じ込むように刺激され、肌を擦る歯がカチカチと音を鳴らす。
「…おおぅ、これは結構……けど」
こちらも彼女の首筋に遠慮なく顔を埋め、軽く噛み付いていこう。仮初の姿とはいうがそれはどうでもいい。
首筋を嬲られつつ、逆にこちらも彼女を喰らうように噛み付いて舐めて削るように歯で撫でる。
両手が使えないのが不便だが、それはそれだ。そして、彼女に嬲られても耐えられるだけの胆力と頑強さが彼にはある。
ご案内:「歓楽街/路地裏」に笹貫虎徹さんが現れました。
ご案内:「歓楽街/路地裏」に笹貫虎徹さんが現れました。
■鈴ヶ森 綾 > 「それはまぁ、妖怪なんてそんなものでしょう。」
等と言ったものの、自分以外の妖怪と遭遇する事など滅多にないのだが。
大変容の前ともなれば、それこそ皆無であった。
「あぁ、服が、煩わしいわ…。」
首を蹂躙するのにシャツの襟が邪魔をする。
それが我慢ならなかったのか、少年の顔を掴んでいた右手がそこを離れ、シャツのボタンを切り飛ばす。
そうして顕になった部分に鼻を押し付け、皮膚の下に流れる血潮を感じようとする。
首の筋肉を口から漏れる吐息が擽り、直後に舌と唇が触れ、飴を味わうように舐る。
「ん、…ふっ、…」
無論、仮初めの身体とは言っても種々の感覚は備わっている。
日常生活で傷を追ってもまったくの無反応では、周囲に奇妙に思われてしまう。
だから、首筋に触れる刺激は、自身の劣情をどうしようもなく煽り立てる。
舌と唇と歯で奏でる楽器のように、その動きに合わせて小さな震えと共に声が漏れる。
「足りないわ…。まだ、この程度では足りないっ」
骨の髄まで、その言葉が示す通り、その行為はまだ終わる気配を見せない。
遠慮も容赦もない動きで少年の足を払い、地面に横たわらせようとする。
■鈴ヶ森 綾 > 一旦中断
ご案内:「歓楽街/路地裏」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
■笹貫虎徹 > 【一時中断】
ご案内:「歓楽街/路地裏」から笹貫虎徹さんが去りました。