2015/06/10 のログ
ご案内:「◆特殊Free(違法描写注意)2」に秋尾 鬨堂さんが現れました。
■秋尾 鬨堂 > 「…軽く流すだけサ」
AUTOガレージTOKIのシャッターをいつもより早めに降ろし、誰にともなく呟いた。
それがざっと一時間?二時間?前。
常世環状高速道路外回りを、言葉通りにクルーズ速度で。
現在地は歓楽区、高架よりも下のほうが明るい地域。
この光の中では、気分がノることもない。
「でも」
でも、今日こうして流していれば
「会える気が、したよーな…」
気持ちは逸り。少し、アクセルを踏み込んだ。
ご案内:「◆特殊Free(違法描写注意)2」に川添 孝一さんが現れました。
■川添 孝一 > 走り屋の血が、走り屋を求める。
オイルが沸騰するほどの走りを。
退屈な夜を吹き飛ばすような……………走りを。
「冗談じゃねぇ…………」
何もかもが冗長だ。誰も彼もがルシファー川添と呼ばれた彼に道を譲る。
ちなみに彼は車に乗るとよくない方向に性格が変わるタイプだ。
高速道路を流していく。見えるクラシックな車。
戯れにPassingをした。
「さて………………どう出る………」
■秋尾 鬨堂 > 「…!」
理屈じゃない。
速い奴には、魔力のようなものがある―、と 誰かに言われたことを思い出す。
それは、テクが優れているとか。度胸があるとか。マシンが特別だとか。
そういうことが要因にはなっても、原因にはなり得ない何か。
後方から感じた何かが、明滅する光という明確な圧力を持って迫る。
「…OK」
こんなに明るい道で。
酒の匂いが、下道から立ち昇ってくるような道で。
関係ないネ。今、始まるんだから―!
踏んでいく!
■川添 孝一 > 「昨日までの俺にGOOD BYE WELCOME 今日の俺」
今、始まる……………男たちのNight……
「Tokoyo Streetで俺の前を走る車は…………必ず後悔する…………………」
アクセルを踏む。ただそれだけの行為だ。
それがこうも熱を持つ。こうも意味を持つ。
二つの流星が今、公道に火花を散らしている。
■秋尾 鬨堂 > 「ヤル気だね そうでなきゃ」
商用車、いわゆる物流トラックに加え、代走やらタクシーやらで今にも息が詰まりそうな路上。
その中を、200km/h超の鉄塊が、器用にスラロームして抜けていく。
一つ。いや2つ。
濃紺のNS-L、現在の電気式自動車から見れば化石のようなマシンが、やや先をゆくか。
「前走にしては、キツいけど…」
奴は着いて来る。確信がある。
程なく異邦人街高架上、荷降ろしに一般車は減るはず―
■川添 孝一 > 心の中で吼える。
俺の車だ。
俺の公道だ。
俺のハンドルだ。
俺のステアリングだ。
俺のアクセルだ。
俺の後悔だ。
俺の夜だ。
「勿体無くってなぁ………………てめぇなんかにやれるかよ………………」
チラとメーターを見る。230km/h。
実測で215km/hは出ているはずだ。
公道でやるから意味がある。
一般人を追い越しながら戦うから意味がある。
「Corneringで仕掛ける…………………パワーは出て当たり前…………問題はその先……」
■秋尾 鬨堂 > 「少し…圧が変わった…か?」
抑えていたものが今にも溢れ出しそうな、そんな強い圧に。
ピストンシリンダーが、今まさに圧縮されるような。
そういう気分は、伝播する。
感じられてしまう。
エキゾーストの咆哮が、どんなに心を隠しても―
聞こえる。
「踏んでこい」
そう、言っている。
俺も言っているし、あいつも言っている。
異邦人街妖花IC、根のように伸びた道々に、一般車両が散っていく。
コーナーで仕掛けるには、ややキツイ道の空き。
先行してコーナーへと入るが―今、追い抜いた一両が予想を外し踏んできた。
一瞬のクリア。
潜りこむだけの、空白地帯が生まれる。
■川添 孝一 > 「開始前で3速8千………………ブーストタレなし…………ベストコンディションだ……………なら」
「変わったのは圧だけじゃない………………夜もだ…………」
「夜は生きている……………そして、今夜は、さ…………伝説が蘇る夜さ……」
コーナーへ入る前に男が獰猛に笑った。
「おおっと……………ガードレールとお友達ってクチか………」
空白地帯にニスモR34が滑り込む。
コーナリングマシンはストレートやコーナーからの立ち上がりがイマイチだ。
だからこそ、コーナーで負けていては話にならない。
「悪友とハンドルは………………切らなきゃ意味がない………」
僅かにリードしながら妖花の根を突き進んでいく。
■秋尾 鬨堂 > クラッシュ。
ひとしきり壁面とチークダンスを踊ったFDが、遥か後ろで停止したのは見なくてもわかる。
空気を読み間違った男が、ひとりステージから転がり落ちる。
読めなかった?違う、空気を塗り替えたのはR34だ。
それにアテられた過剰な防衛反応が、己が身を滅ぼしたに過ぎない。
公道は、200km/h超の世界とはそういうもの。
危険な暴走行為を―いや、走りそのものを!続けるということ。
問題は、避けるためにモタついた距離がそのままRとの距離になっていることだ。
R。今更ながらに、その後塵を拝してから気づく。
黒い翼を模したファイアパターン。
常世の地に舞い降りた堕天使。
環状線内回り、トップランナーの一人。
Rのルシファー…川添!
やり合ったことは、そういえば無かったが。
こんな夜には、有り得ることだ。
「行くかナ…お前は悪魔だなんて」
妖花の根は、枝分かれの先で、たった二車線に収束する。
そして、たった二台。暗き地の底のような静けさの中。
「呼ばれているけど」
ターボの駆動。280km/hを超えてなお踏み込まれるアクセル!
悪魔の叫びが轟いた。
■川添 孝一 > 狂い咲く夜の花
闇を引き裂く俺のEXHAUST NOTES
クラッシュする奴に哀れみを
ブレーキを踏めなかった男に花束を
「走ってみれば………………つまらないもんだ………………」
「俺のSatisfaction……………満足は遠い……………」
その時、確かに聞こえてくる音は。
「何だ…………何が起こった…………………いくらStraightでも…………あり得るはずがない…」
そうか、わかった。
わかってしまった。
この悪魔の叫びを知らない走り屋なんてTokoyoにはいない。
「悪魔のL………………ただのLegend…伝説だったはずだ……………」
「踏むしかない……………踏んで、行くしかない……………向こうへ…」
直線で離される。20メートル。
どれだけ踏もうと結果は同じ。35メートル。
「チギられる…………のか…………………」
一瞬の思考の間隙を突いてコーナーは口を開ける。
「しまっ……………………」
曲がりきれずに車のケツが壁と擦れる。
その時見た火花は月より綺麗で、敗北の味は何より苦かった。
生きるためにブレーキを踏んだ。
恥ずかしいとは思わなかった。
むしろ、幸運だと思った………自分の手足がまだ動いていることを。
■秋尾 鬨堂 > 「わかるヨ、その気持ち」
伝わってきた。悪魔の叫びの中、確かに堕天使の声も。
だが、それすらも呑み込むように。
踏む。踏んだだけ、伸びていく。
回るメーターはとっくに限界値。
ブースト1.5kg、9000回転を超え。600馬力を絞り出す。
それだけか?
そんな、スペックだけで語れるものか。
二人の間に出来た、この距離は。
勝者と敗者の、絶対的な基準など無い公道で。
明確に刻まれたこのラインは!
「だからまた、上がって来るって―」
「この場所まで」
その悪魔は。
狂おしく、身を捩るように―
走ると、云う。
ミッドナイトに、悪魔のLが消えてゆく。
後ろ姿が遠ざかる。
そのねじくれたテールランプは、荒れ狂うエンジンの叫びは伝説のまま―
今、そこにある。