2015/06/26 のログ
ご案内:「◆速度Free(過激描写注意)2」に岡部 吹雪さんが現れました。
ご案内:「◆速度Free(過激描写注意)2」に秋尾 鬨堂さんが現れました。
岡部 吹雪 > 青垣山山頂。
今夜の峠は異常だった。
何処からか漏れ出したのか、"悪魔のLがダウンヒルでバトルする"。
そういう噂が島の走り屋たちの間で躍っていた。

三島ヘルダイバーズ。京谷ナインライブズ。名うてのチームが挙って集まっていた。
山道に推し掛けるは人。人。人。
初夏の香る夜空の下、アスファルトに滾る熱気はうねる様だ。

秋尾 鬨堂 > 高速度セッティングのLが峠を攻めることは極めて珍しい。
幾度と無くデマが飛び交うその情報。
だが、今夜は真実。

「来たぞ…悪魔のLに、ナインライブズの猫ヶ谷だ!!」
有数の難所。
アップダウンが無数に続く、デッド・スクリーム・バレイを抜けた先。
勝負を一望できる席などない以上、ギャラリーが一際集まる
のは『熱気を感じるほどに』コースに近い場所。

岡部 吹雪 > 「やべえよ、なんか俺寒気してきた……!」
「おいやめろよ。俺だってなんか嫌な予感がするんだ……なんか誰も帰ってこないような……。」
「あっきた! きたぞ!」
「先頭は!? おい見え―――!」

連続コーナーの抜けた先!
木々に遮られ、おぼろげだったフロントライトがギャラリーへと光芒を投げ込む!
コーナーに侵入する矢先から車体は横!
まるでダムが決壊したかのよう。色取り取りの影が連続して雪崩れ込む―――!

「嘘だろ。後ろの奴ら"チギ"れねえ……!」

助手席の岡部が、サイドミラー越しの近況報告。
元はと言えば彼が、「四輪初めてみたいから横乗せてくれ」と言い出したのが発端である。
まさか峠を流すだけの予定が、こうも切った張ったの空気に澱むとは。
断続的に左足ブレーキを刻む秋尾のシビアな操作に、再び後続の姿が途絶えたかと思えば
立ち上がりの段階で再び迫る深紅の姿。今夜のバトル……あいつが頭一つ抜けている!

「野郎、"踏み"慣れてやがる……!」
「何者だ!?」

両車後続を引き離し、短めのストレートを抜けた先
目前に広がるは断崖絶壁―――違う!
先すら見えないハイスピードのロングコーナー!
生半可な踏み込みでは速度が足りず、ドリフトが続かないことは明らかだ。
しかしアクセルワークを誤れば、待っているのは逃れえぬ死!
ここは幾つもの走り屋の命を攫っていった、血塗れたセクション。

ハデスの鎌!!!

秋尾 鬨堂 > 「嬉しいネ、岡ヤン」
言葉に連動してシフトチェンジ。
峠でここまで『踏む』ヤツはそういない。
単純に危険すぎるコーナー。
短すぎる直線。踏み込みすぎればそくアウト。
その限界のタイミングを掬い上げるのは熟練の経験と度胸。
前者も後者も、持ち合わせるものは稀。

『生きて帰る』ことを、心のどこかで常に持ち続けつつ―
それでも、『踏んで』いける者だけが、知る領域。

「戦える――ここでも、踏んでくる奴と!」
ハデスの鎌、決して急角度というわけでもない、そのコーナーが命を刈り取るのは。
先が見えず、それでいて徐々に窄まる微妙な曲率。
事故防止の派手なガードレールが錯視を呼び、そして意図的にスピードを下げるように荒らされた路面が足を取る。

様々な要素が複雑に絡み合い―その鎌は完成する。

それを。それを意にも介さず、突っ込む2台!『踏み込んで』いくことだけが、この難所をクリアする術だと知っている。

岡部 吹雪 > アクセルベタ踏み。荷重移動で車体を放り込むようなコーナーワーク。
悪魔のLは理想的なラインを刻み、ド安定の立ち上がり。
ステアリングのキレもいい。いつも通り。この悪魔は伝説クラス。

「見たかよ! これで決ま……」

インに踏み入る深紅の影!
最短距離を精密機械のように刻み付け、今まさに横へと並ぶ!
言葉を失う岡部を他所に、過ぎ行く景色は超高速にバックミラーの遥か彼方!


「くるぞくるぞくるぞ……!」
「どっちだ!? 悪魔か! クリムゾンか!?」
「峠じゃ流石にクリムゾンだ。場数がちげえ。」
「……何! ほぼ同時!?」

レシーバー片手にギャラリーの一人が吼えたのが合図!
あとはただ直線のみ! 横並びにグングンと加速する両車!
ダウンヒルの危険過ぎるランデブーの結末は―――!!!!


    「消えたッ!?」


「嘘だろおい……。」 「冗談だろ!?」


 「見間違いじゃねえのか!」

           「夢でも見てたのか……?」

「だから目の前から……!」


青垣山の麓には、焔の軌跡が刻まれていた。

岡部 吹雪 > ドンガドンガドンガドンガ!


ドンガドンガドンガドンガ!


ドンガドンガドンガドンガ!


ドンガドンガドンガドンガ!

岡部 吹雪 > 頭が痛い……二日酔いか?
ぐらりと重たい頭を揺り起こし、霞む目元を擦り上げ
フロントガラス越しに見据えた景色は砂。砂。砂!
一面、茶褐色の荒野が広がっている……。

「なん、だ……こりゃあ……。」

隣にいるはずの秋尾へと視線を移した先。
ドアの向こうにはいつ止まってもおかしくないような、旧式のバイクを乗り回す屈強な男達!

秋尾 鬨堂 > 一面の荒野、砂と岩が支配する世界。
「エアバッグ…は作動してない、ナ…事故ったわけじゃあ、なさそうだけど」
青垣山にこんなロケーションは存在しない。
当然ながら。

二人、丸い目をして周囲を見渡しても、死の荒野と言わざるをえないその場所で。

だが、人類は死滅していなかった!
「ヨーウィッイオオー!」
革のジャケット。小汚いというには汚れすぎたマフラー。
団結と勇気の証、鉄のチェーンが腕と燃料タンクに巻かれた男。
「「「「ヨーウィッイオオー!!!!」」」」
男。男。男。男。男。男。男。男。

突撃の声に続いて、無数のバイクが宙を舞う。
そのパフォーマンスに意味はあるのか。問いかける声を発するものは居ない。

示威と、なにより楽しいからそうしているであろう男たちを止められるものは荒野の掟のみだ!