2015/06/29 のログ
ご案内:「路地裏」にジブリールさんが現れました。
ジブリール > 【ヒュ――――】

【風切り音が高く鳴いた。細い月が見下ろす路地には青い光が穏やかに差し込まれていた。】

「あらあら」

【人は往来の中にあっても、多数が興味を示さなければ同調する。眼を患っている証の白杖があっても、その眼を白い布が覆い隠していても。それは女にとって当たり前のことだった。
 白杖をつく女を弱者だと考えていたのだろう。弱者であることを誇示することをよしとしない、強者から外れた女を叩く算段だった。】

【だが結果はこの通り。銀の刃を振りかざす"弱者"が"強者"を打ち破った。相手はあまりに大きかったものだから、体をいっぱい使って喉を掻き切るのが精一杯だった。
 その顔と包帯は血に汚れていたが、髪や衣服には"幸運"にもかからなかった。】

ジブリール > 【包帯を外し、女は熱を吐き出すよう外気に瞳をさらした。鈍い色のエメラルドカラーは、月明かりを背負っていてもなお輝いていた。
 口元には僅かな微笑を浮かべて。】

「いやですわ、乱暴なんて」

【ねっとりと滴る赤を振るう。愉悦に笑んだ顔は寧ろ嫌悪の色を映していなかった。】

「でもその怯えた瞳、激昂して血走る眼は素敵ですわ」

【頬に手を当て、体内に燻る熱を吐き出す。女は倒れ伏したソレに跨り、丁寧に瞼を切り落とした。丁寧に丁寧に。その奥にある宝石を傷つけないように。】

ジブリール > 【肉に包まれた"宝石"。繋がる神経。それらをすべてかき分けて、断ち切って、くりぬいて――】

【血液の循環を失ったそこは白くなっていた。新鮮な内に赤黒く血に塗れた青色の眼球を取り出した。自分の鈍い色とは違う、とてもきらきらした宝石。女には無い、色を綺麗に、世界を広く見渡せる瞳。
 女は光の世界に憧れていた。病により狭い世界しか眺められず、こうして暗い時間でしか眼をさらすことしかできないことに憤慨していた。
 女は掌に乗せたソレを、宝石を摘むような動作で掲げていた。宝物を見つけた子供のようにして。】

ジブリール > 【正当防衛にしても行き過ぎていた。此れは女の愉しみに過ぎず、黙したものは動かない肉人形に過ぎない。女もまた強者であり、弱者などこの行為の最中、気にも留めることはない。
 片方だけ抜き取ると穴の開いた眼孔があまりにも不恰好だから、もうひとつ頂いていく。これでこの人間の穴は3つ"増えた"。】

「ズルいですわ。あなただけこのような綺麗なものをお持ちだなんて」

【いとおしく撫で回し、もの憂うよう銀髪を揺らした。
 ――人間は生きている状態で眼球に触られても、痛みは感じない。それでも直に触れば感染症を引き起こすし、失明だってする危険もある。生きている人間のものを触れたら、どうなるのだろうか。興味は尽きない。】

ジブリール > 【興奮冷めぬもいつまでもこうしているわけにはいかなかった。女は袋を取り出した。衝撃に強く魔術防護も図れる特殊なコーティングのされたもの。眼球2つをその中へと、大事そうに仕舞い込んだ。】

「ふふふ……あとで綺麗にしてあげますわ」

【ぬめる指先を肩にかかった包帯で拭う。黙した肉から立ち上がり、包帯握り締めて投げ捨てた。包帯はゆぅらりと風に舞い、ゴミ箱の隙間へと落ちていった。
 犬か掃除屋がやってきて、これを処理してくれないだろうか。そしたら事後処理に困らないのに】

ジブリール > 【――獣の唸り声が聞こえた。どうやら今日はツイているようだ。この場に限り3つも"おねがいごと"が叶うなんて。
 あるいはこの場にいるだけで、と取るか。使い勝手の悪い運任せの魔術など、そう強みになることはない。】

「だからこそ手を用意することが重要となる」

【盤上に広がる戦略を広げる。ことりことりと置かれたものをどのように活用するのか。運も力があってこそ発揮される。
 一匹、二匹――四匹。犬は肉を食らうべく集まってきた。いやしいいやしい下々の獣が、ただの肉を食らいに来た。】

「どうぞ、お召し上がりください」

【女は振り返り、口元を常通り微笑に変えていた。女は新しく取り出した清潔な包帯で、器用に眼を覆い隠す。その後ろではしたなく、醜い音を耳にしながら。】

ご案内:「路地裏」に雨宮 雫さんが現れました。
雨宮 雫 > 「わぁーお    中々凄いかな、かな。」

深い深い路地裏の入り口で逆光を背にした小柄な人影が。
薄ぼんやりと光る翠色の両目が、凄絶な現場を見て―――

   ―――声を楽しそうに響かせた。

ジブリール > 【路地の入り口には何かで封鎖した後もなければ、魔術を使って人払いをすることも無かった。
 女はその手の力も必要ないからだ。それは短絡的とも言うのかもしれないのだけど。】

「―――あらあら、まぁ。ごきげんよう。」

【愉しそうに笑う声が聞こえた。既に巻き直された包帯の奥の目は未だ輝いている。
 声に同調して笑みを零す。まさかこんなところに顔を出してくれるヒトがいるなんて。】

「フィクションでは得られない映像だと思いますわ」

【そんな戯言を、ノコノコとやってきた来訪者に向けた。】

雨宮 雫 > 路地の壁に片手をついて、はぁー と さも残念です という風に溜息をこぼす

「ご機嫌よう、ってすごい挨拶だね。

 事実は小説より何とかかんとか、かな、かな?
 濃ぉいニオイがするから来てみたら、ボクの出る幕無さそうで残念だね、だね。

 でも……」

自分と似たような色の光を宿す目に、包帯越しに見えている光に視線を合わせて かく っと首を傾げて。

「コレもしかして、まだ続行中かな、かな?」