2016/01/16 のログ
ご案内:「落第街の路地裏」にクローデットさんが現れました。
クローデット > クローデットは、今日も公安委員会の見回りの任についていた。
大通りを一通り視察した後、クローデットは狭く、薄暗い路地裏へと足を踏み入れていく。

…と、クローデットの足下に、金属の杭のようなものが、鋭く突き立った。

クローデット > 路地裏の道の先、クローデットと正対してぎらぎらと敵意を燃やした瞳で睨みつけているのは、1人の少年であった。
成長を疎外されたような、クローデットより小さな背丈。まともに手入れされていないだろう薄汚れたぼろい衣服に、ガリガリの躯。
それは、この少年が、世界から長い間疎外され続けてきたことを表していた。

『見つけたぞ…公安のヤツ…!』

ややかすれ気味の、少年らしい声が、憎悪に燃えて震えていた。

クローデット > 「…どちら様ですか?」

クローデットは平静な様子を崩さず、羽根扇子で口元を隠して少年に問うた。
無論、その羽根扇子の下には三日月の形に歪んだ唇があるわけだが。

『狩り』の予感の、喜びに。

『…ふざけるな!
林ぶちょーも、大神たいちょーも、お前達が連れて行ったんじゃないか…!

…俺の、初めての、居場所だった「かたぷれきしー」を、お前達が無茶苦茶にしたんだ…!』

少年の血の滲むような叫びにも、クローデットの心が動いた様子は無い。
ただ、すうっと目を細めて

「………なるほど、そういうことですか」

と呟いただけだった。

「かたぷれきしー」…正確には「カタプレキシー」だが、これは先日クローデットも参加した一斉検挙によって壊滅状態に追い込まれた、違法部活の名である。
過度の情動刺激を副作用とし、場合によっては激しい発作で命の危険もある違法薬物を流通させており…それが歓楽街の領域に及び始めたので、一網打尽にされたのだ。
「林」というのはその違法部活の総まとめ役であり、「大神」というのは、その違法部活の武力行使部隊のまとめ役だ。

少年が勘違いしているのは…「大神」の方は「連れて行かれた」というのとは違う、ということ。
彼は公安の一斉検挙の突入の際に実力で抵抗し…クローデットに、葬られていたのだ。

クローデット > クローデットの平静な様子に、少年はますます怒りに瞳をぎらつかせた。
口調も、ますます荒れていく。

『お前等は、いつも…いつもそうだ!
人のことを、なんにも思わないように扱って…俺達のものを、めちゃくちゃにして…!』

クローデットの視線は、ますます冷えていく。

「…ならば、何故違法薬物を、「表」の街にまで運んだのですか。
落第街に留めていれば、あれほど大規模な公安(あたくしたち)の介入を許すことも無かったでしょうに」

少年は、その問いに、わずかに瞳を揺らがせた。
…しかし、それは一瞬。少年は、きっとクローデットを睨みつけた。

『そんなの決まってる。林ぶちょーがそう言ったからだ。
林ぶちょーが言ったことをやるのが、みんなの…「かたぷれきしー」のためになるからだ!』

その言葉を聞いて、クローデットがくすくすと笑い声を漏らしだす。

『…何がおかしいんだ!』

少年は怒りに声を荒げると、自身の眼前に大量の金属の杭を生み出し、クローデットに向けて放った。