2017/06/11 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏」に比良坂 冥さんが現れました。
比良坂 冥 >  
「………」

華やかで明るい表通りと一転して、
ほんのり薄暗い裏路地に一人の女子が佇む

顔を照らすのはスマホの光
建物の壁に背を止せて、仏頂面…というよりも表情無く画面を眺めている

単なる客待ち
少女の生活基盤を支える、売淫部の収入を得るために今日も此処で立っていた

比良坂 冥 >  
自分を買う相手は別にどんな相手でもいい
身体を大切にする、なんていう考えは持ち得ていないし、
自分の性格で普通の仕事が務まるとも思えない

そう考えれば若い内だけとはいえ寝ているだけでお金が稼げるこの違反部活はありがたいものでもある

──客の取り合いがどうのこうのと内部ではちょっとした揉め事もあるようだが、
自分はその輪にはまるで縁もなく気にせずにいれる

比良坂 冥 >  
自分と同じように立ち、客をひっかけようとする女性もちらほらと見られる

「(…落第街のほうにすれば良かったかな)」

内心そう思いつつも、
今日は"なぜか"向こうを避けなければいけない気がして

歓楽街は騒々しい
裏路地にも、その表の華やかさが聞こえてくる

──自分とは縁のない世界

比良坂 冥 >  
立っているのも疲れたので、街頭の土台にちょこんと腰をおろす

「(…いつまでいようかな)」

客が捕まらない時は捕まらない

「(……電池が切れたら帰ろ)」

適当にスマホで学園のSNSを眺めながらそう決めて

比良坂 冥 >  
スマホの画面の中で広がる会話
学業のこと、部活のこと、学園での生活でのこと───

それらはどれも、薄暗い路地で自分の顔を照らす液晶のライトのように眩しく見える

──自分が生きている世界とは違う、光の世界

比良坂 冥 >  
暗く沈んだ瞳が、明るい画面を覗き込む

羨んだりはしない
生き方は人それぞれ、恵まれた人間とそうでない人間
生まれも違えば、肌の色も環境も何もかも違う

こうやって生きるしかない自分を恥じることはしないし、
立派に行きているのだと誇ることもしない

眩しい世界──学園のSNSを閉じる

メールをチェック、特に新しいメールは来ていない
ここのところは違反部活…売淫部からの連絡事項のみだ
着信にいたっては、最後が今年の春のはじめで終わっている

最後の着信の名前は…、もう見るのも嫌な、あの名前

「(…お客さん釣れないな)」

小さく溜息を吐いて、ポケットへとスマホを仕舞った

比良坂 冥 >  
「──1回5000円でいいよ、どう」

財布の紐が緩そうな中年に声をかける
……が、こちらを見ることもなく歩き去ってゆく

声が小さくて聞こえなかったのかもしれない

「(今日はダメかな)」

立ち上がって、街頭に寄りかかる

「(……お金ないな、今月)」

再びスマホを取り出し、操作をはじめた
連絡先の一覧……
何人か"そういう"関係になっている男子生徒もいる
女子寮には帰りたくないし、違反部活の部室にも今から移動するのは億劫だ

泊めてもらえそうな相手を探す

比良坂 冥 >  
──1人、返信があった

気怠げに背を街灯から起こして

「──やっぱり落第街じゃないとダメかな」

ゆらゆらと歩いて、駅へと向かうのだった

ご案内:「歓楽街路地裏」から比良坂 冥さんが去りました。