2017/11/04 のログ
■ヨキ > ややあって、徐に立ち上がる。
仕立てのよい服を白く汚した埃もそのままに、ビルの外へそっと視線を投げた。
眼下には、林立する街並み。
夜でも煌々と輝くネオンの光までは距離がある。
――隠密行動にはうってつけの暗闇。
窓の縁に長い足を引っ掛けると、あとは一切の躊躇もない。
群れず、手を結ばず、孤高たらんとする影が闇の空へと躍り出た。
ご案内:「落第街の奥」からヨキさんが去りました。
ご案内:「月香の自室」に和元月香さんが現れました。
■和元月香 > 蜘蛛の少女により与えられた傷は、無事完治した。
地道に治癒魔術をかけ続けた甲斐があったらしい。
月香は飽きかけていた怪我人生活の終焉を
それなりに喜び、元の生活へ戻ろうとしていた。
矢先だった。
...利き腕だった右腕に、不気味な変化が現れたのは。
■和元月香 > その日の朝であった。
着替えをしようとパジャマの袖を捲ると、
何かが剥がれた感覚がした。
怪訝に思った月香が右腕を確かめると、
流石の彼女も数秒言葉を失った。
「んんん?...なんじゃこら」
掌から肘にかけて、なんと皮膚が剥がれていたのだ。
全体的に黒く焦げており、周りは赤く腫れ上がっている。
黄ばんだ膿が混ざった血を垂れ流しているそれ。
酷くグロテスクで、むしろホラー映画のメイクと言われた方が
信じてしまうほどには凄惨な火傷だった。
■和元月香 > 火傷をした記憶は無い。
少なくとも、昨日はこんな酷くはなかったはずだ。
...例の交戦の影響で、傷は多少あったが。
「...あ」
例の交戦。
月香はピン、ときた。
「.....あの魔術かー...?」
蜘蛛の少女との対戦の際に酷使していた魔術。
実は本格的に使うのは始めてで、
魔術には全体的に適性がある月香が
珍しく少しだけ何故か手こずって習得したそれ
...炎の魔術だった。
■和元月香 > 月香の魂や内的な性質はともかく、
慣れない魔術を張り巡らされた体がついていけなかったようだ。
しかも悲鳴を上げられないこの体だ。
気付くのが遅くなるのはいつものこと。
「...ん、んんー。普通に動かせるな」
パタパタと血と膿を滴らせながらも、
自然な動作で右腕は動かせることができる。
それにとりあえず安堵する。
■和元月香 > ...暫くして、月香は溜息をつき
ベッドの片付けをし始めた。
その日の内に、月香は大人しく
島内で一番に大きな病院に出かけ、
平気そうな態度が災いして一般の皮膚科へ通され
若いナースに悲鳴をあげられたのは別の話。
ご案内:「月香の自室」から和元月香さんが去りました。