2017/12/03 のログ
ご案内:「美澄 蘭のアパート」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 常世祭が終わり、日常が帰って来た。
とはいっても、常世祭期間のための課題は済ませてしまっているし、蘭のするべきことは再開前の予習・復習くらいだ。
「んー…」
夜。
勉強に区切りをつけた蘭は椅子に座ったまま大きく伸びをすると…勉強道具を整頓して立ち上がった。
携帯端末を持って、ベッドに移動する。
■美澄 蘭 > 「………」
ベッドに寝転がって、端末を操作する。
家族と…「恋人」の連絡先を交互に画面に表示させて…ため息をついた。
今年は、両親が発表会を見に来てくれた。
同好会の打ち上げがあったから、一緒に食事をしたりは出来なかったけれど、このアパートに泊まって、発表の内容をとても褒めてくれて…。
その両親に対して、蘭は「恋人」からの贈り物を隠し通した。
「恋人」が出来たことは、もちろん言わなかった。
■美澄 蘭 > バレンタインデーの「返事」をもらったあの日から、「彼」のことは、母親にも一切話していない。
蘭自身も、まだ内実を理解していないこと。島の外の、表に生きている家族には、どう話したらいいのか見当もつかなかった。
蘭だって、この学園都市でなければ、受け入れていなかった可能性が高いことだから。
それでも、バレンタインデーで突き放されて、泣いて、縋る思いで母に打ち明けて…その後、ぱったりと口を閉ざしているのだ。どう気持ちを整理したのかすら、言っていない。…いや、言えるわけもない。その後、あんな形で和解して、今に至ることなんて。
…母の、淡い空色の両眼に見通されているようで、応対が怖くて仕方がなかった。
■美澄 蘭 > 蘭が彼について知っていることは、あまり多くない。
後ろ暗い仕事をしていること。
それに対する後ろめたさは失っていないこと。
そういうものを良しとしない蘭を流さず受け止める、誠実さを持っていること。
ただ、受け止めることに躊躇い、狼狽える程度には、普通の青年であること。
それら全てを、普段は軽薄な仮面の下に押し隠していること。
…鍛えられた腕が、頼もしい硬さを持っていること。
「恋人」として、そんなに問題のある相手だとは思っていない。…少なくとも、今のところは。
■美澄 蘭 > 無論、「彼」がいずれ打ち明けてくれるはずの事柄が、蘭を心変わりさせないと決まったわけではない。
それ以外にも、何か悲しいすれ違いが、起こらない保証なんて無い。…そんなこと、無いに越したことはないのだが。
「………」
先日のデートを思い出し、熱のこもった息を吐いて…その時抱き締められた肩に、自らを抱くような手つきで触れる。
■美澄 蘭 > 抱き締められることが、嫌だったわけじゃない。
ただ、周囲に見せつけるようなやり方でされたくはなかった。
…周囲の承認は、あるに越したことはない。けれど、それよりも何よりも、「二人の間のこと」として、大切に、抱えておきたかった。
(…「支配されたくないから、支配したくない」。…そう、思ってたはずだったのに)
自分が、彼以外の異性と、彼と同じ距離感で接したいと思わないように…彼にも、自分以外の「誰か」を、「他者」を、そう簡単に同じ距離に招かないで欲しいと、思ってしまう。
(何ていうのかしら、こういうの…「半径に対する独占欲」?)
別に、友人関係やら何やらを制限したいとか、把握したいとか、そこまではいかないのだけれど。
この「距離感」だけは自分のもの、と願いたかった。
■美澄 蘭 > もちろん、蘭はまだ学生で、「男女交際」というものを考えた時、どこまで接近するのかというのは、考えておかなければいけないことだ。相手のためにも、他ならぬ自分自身のためにも。
…ただ、蘭はとある経緯で、「男女交際」の中での懸念事項のうち、特に重いものの一つを、「既に」かなりの確かさでクリアしている。
とはいえ、それに甘んじて、判断を緩めるつもりはないけれど。
(………お母さんに気付かれるかもってことと…私の家族が、私の人間関係についてどう考えてるかは、伝えておいた方がいいわよね)
携帯端末の画面に表示する連絡先を、「恋人」のものに切り替えて………そこで、蘭は意識を手放したのだった。
ご案内:「美澄 蘭のアパート」から美澄 蘭さんが去りました。